夕凪颯の暗殺教室   作:カゲロー@

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少し修正しました。よくよく考えたら、ナイフが10センチも腹に刺さったら死にますね。
死なない程度に刺さったと解釈して下さい。


第43話 「叫びの時間」

 

目を覚ます。陽の光が眩しく、思わず目を細めてしまう。

 

「……んっ……んん〜っ」

 

起き上がり、伸びをする。そして、辺りを見回した。

ここは……あの大木の根元か?

あれ?俺は何してたんだっけ?思い出せない、ここには居なかったはずなんだが………まぁ、気のせいか。

小学5年生のこの体にも、一瞬違和感を覚えた。けど、それもきっと気のせいだ。

ここは、此衣と朋樹と出会った大木の場所、俺は小学5年生で、大木の根元で寝ちゃっていたんだ。

 

「……でね、そ…時友達が……」

 

「へぇ、……子って………だね…」

 

ふと、隣に人が居るのに気づいた。此衣と朋樹だ。2人で話している。3人で遊んでいて、俺が寝てしまったのだろう。

俺は、2人に話しかけようとする。

 

「悪いな2人共。俺、どのくらい寝てた?」

 

しかし……

 

「でね、……が…………ったんだ!」

 

「……なんだぁ、あれ?……も……」

 

あれ?無視られた?

聞こえなかったのか?でも、1メートルも離れてないのに気づかないのか?

俺は隣に居た朋樹の肩を叩こうとして手を伸ばす。

 

「おい……どうしたんだ……ッ!?」

 

しかし、見えない壁に阻まれたように、触れる事は出来なかった。

もう一度触れようとする。しかし、それでもやはり触れられない。しかも、絶対に気づく筈の距離で叫んでも、2人は気づかなかった。

 

「ッ!何だよこれ!!何で声が伝わらないんだよ!!何で触れられないんだよ!!どうなってんだよ!!!」

 

「…………、…………。…………」

 

「…………?……、…………」

 

ついに、向こうからの声も聞こえなくなってしまった。どれだけ叫んでも届かない。どれだけ触れようとしても触れられない。

俺はその場にへたり込む。2人は楽しそうに話している。それが見えてるのは俺だけで、2人には俺が、見えていない。

こんなに近いのに、こんなに遠い。

俺と2人には、明確な壁が隔てられていた。

 

……何だ、いつものことじゃないか。

段々と、曖昧だった記憶が蘇ってきた。俺はあの夏の帰り道、2人の後ろ姿を見て、離れることを決めたんだ。

けど、なら何で、俺は2人と遊んで、それでこんな所で寝ていたんだ?そもそも……ここは現実なのか?分からない、分からない……

 

「……ッ!俺はっ!どうすれば良いんだよッ!!!」

 

俺の叫びに答えてくれる人は、誰もいなかった。

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

目の前の光景が、理解出来なかった。

さっきまで優勢で、攻めていたはずの夕凪君が、蹴り飛ばされて、その後刺された。それは一瞬だった。誰も、助けに入る余地すらなかった。

ナイフを抜かれた夕凪君は、そのまま倒れる。バタンと倒れる音が鳴って、ようやく、私の意識は覚醒した。

 

「「「「「夕凪(君)!!」」」」」

 

皆で叫び、駆け寄る。夕凪君の刺された所から血が流れてきた。

 

「寺坂君!荷物の中から救急箱を出してくれ!」

 

「お、おう!!」

 

烏間先生はそう言って自分のワイシャツを脱ぎ、縦長に破く。そして残った方で傷口を抑え止血していた。

 

「出血でショックを起こして、一時的に意識を失っているだけだ!内臓に刺さってたり主要な血管が傷ついていなければなければ、止血していれば助かるはずだ!」

 

烏間先生は焦っていた。その様子から、夕凪君がかなり危ない事が分かった。

私は……夕凪君の為に……何ができるの……?刺されて……今にも息絶えそうな、好きな男の子の前で……何をしてあげられるの……ッ!?

倒れる夕凪君を前に、私は、悲しさと悔しさと、己の無力さを悟った。

 

「退いて………トドメをさす……」

 

すると、ナイフ使いの少女はそう言った。

……そうだ。傷を癒すことは出来なくても、これなら出来るんだ。

私は、倒れた夕凪君と少女の間に入り、両手を広げた。

 

「夕凪君は……殺させないッ!」

 

「不破……」

 

「……さっき言ったはず。邪魔しない限り危害は加えない………邪魔するなら………斬るよ……?」

 

斬る、そう言われて恐怖した。少女の殺気が怖かった。けど、退くわけにはいかない。

 

「夕凪君は大切な仲間、絶対に殺させる訳にはいかないの!私は非力だけど………でも、それでも夕凪君を守る!!」

 

こんな、根拠も何もないことしか言えなかった。理屈では、私がこんな事をした所で何も変わらない事は分かってる。でも、理屈じゃない。感情なんだ。守りたいっていう、気持ちだけで動いている。

 

「ああ、夕凪には死なれちゃ困る」

 

すると、寺坂君が出てきて言った。

 

「アイツには借りがあるしな。よく馬鹿にされるけど、なんだかんだで良い奴だし」

 

「寺坂君………」

 

「馬鹿なこと言ってるけど……何だかんだでアイツと話してると楽しいし」

 

「さっきだって、俺達が緊張してる時にも落ち着かせる為にわざわざ話してくれたし」

 

「速水さん……千葉君……」

 

3人に続いて、皆も少女の前に立つ。夕凪君を守る為に、救う為に。

すると、少女が口を開く。

 

「……ナイフで腹を刺した……内臓を刺していれば……壊死して死ぬ……生き残る確率は………少ないはず……」

 

「ヘッ、だからなんだってんだよ!そんなこと承知で今蘇生してんだ!それに、夕凪なら生きて帰ってくるに決まってらァ。しぶとそうだしな!」

 

寺坂君がそう言うと、少女が言った。

 

「ここで……夕凪颯を渡すなら……他の人はこの先へ通してあげる……」

 

「「「「「!?」」」」」

 

「貴方達は……他にも救う人がいるはず……ここで夕凪颯を見捨てれば……その人達が助かる可能性は……あるはず……」

 

確かに、助かるか分からない夕凪君を助けるのに時間を費やすより、皆を助ける為に向かった方が合理的だ。

どちらが正しいかなんて、決まってる。

 

「選んで……夕凪颯を助けるか……ウイルスにかかったクラスメイトを助けるか……」

 

「……フッ、そんなん決まってらぁ」

 

少女の言葉に寺坂君はそう言う。そして、皆で声を合わせていった。

 

「「「「「両方とも助けるに決まってる!!」」」」」

 

「誰かを守る為に誰かを捨てるなんて発想は私達には無い。誰か1人でも欠けたら……私達の暗殺教室に、意味なんて無くなる!!」

 

私は、そう言い切った。皆も、同じ意見だった。

すると少女は小さく溜め息を吐き、いった。

 

「……馬鹿な人達……なら、邪魔するものとして…………斬る」

 

そう言って少女が突っ込んできた、その瞬間だった。

カルマ君が、少女を横から蹴り飛ばしたのだ。

 

「グッ………!?」

 

意識外からの重い攻撃、少女は呻き、飛ばされた。

 

「勝手なこと言ってくれるねぇ。夕凪君を殺させる訳無いじゃん」

 

少女は受け身をとって、すぐさまカルマ君に向かっていく。しかし、また別の方向から蹴りが放たれたため、それを躱す。

 

「夕凪君は俺の大事な生徒だ。絶対に死なせる訳にはいけない」

 

そう言ったのは、シャツ姿になった烏間先生だった。

 

「……貴方、毒のおじさんの毒にやられてる……赤髪の人だって……素早さじゃ夕凪颯に劣ってる……相手になるの?」

 

「ああ、いけるさ。赤羽君、フォローを頼む」

 

「………了解」

 

そう言って2人は戦闘体勢に入る。この2人なら、この子を倒す事が出来るかもしれない!

先に動いたのはやはり少女、高速の突きを繰り出す。烏間先生はそれを避けると蹴りを繰り出した。それを飛んで避けた少女は、攻撃後に硬直している烏間先生に切り掛かった。

それに、すかさずカルマ君が拳を繰り出す。少女は攻撃に入っていたため避けられず、拳はしっかり当たった。

 

「よしっ!いいぞカルマ!」

 

こっちから見ても、烏間先生とカルマ君の方が優勢に見えた。このまま押し切ればいけるかも……

そういえば、烏間先生が戦闘に加わってるってことは、応急処置はどうなってるんだろう。

気になり後ろを向くと……

 

「磯貝君!止血には周りを圧迫するのが有効です!!渚君と茅野さんは止血したら包帯を!迅速に処置をお願いします!!」

 

殺せんせーが素早く指示を出してくれていた。

烏間先生と殺せんせー、2人とも、やっぱり頼りになる。

 

「お、おい、ヤバイんじゃないか?」

 

すると、木村君がそう呟いた。戦闘の方を見てみると、少女は先程に無い動きをしていた。

 

 

(クッ……!迎撃体勢を崩さない事で、赤羽君の攻撃を牽制しつつ俺へ攻撃している!)

 

(迂闊に手が出せない……ヤバイな、もう適応されてる……)

 

 

少女蹴りなどの体術を多く混ぜて、攻撃に対応していて、2人とも攻めあぐねていた。それほど、少女は強かった。

 

「……これで……終わり!」

 

「ッ!?」

 

すると少女は、烏間先生に足払いをした。回避直後にやられたため、倒されてしまう。

 

「クッ!」

 

カルマ君は蹴りを放つ。しかし、それを少女は難なく躱した。少女はカルマ君に向かって突き攻撃を放とうとしていて、カルマ君はナイフに集中して迎撃しようとした。

しかし……

 

「なッ!?消え………」

 

カルマ君は少女が消えたと錯覚し、後ろに回った少女の蹴りをモロに食らってしまった。

それは、さっき夕凪君が倒された技だった。

 

「……これで……終わり……」

 

少女は立ち上がろうとする烏間先生を思いっきり踏みつけ、行動不能にする。

これで、2人。最も戦闘力の高い2人が、やられてしまった。

 

「………これで、分かった?……なら、夕凪颯を渡して……」

 

皆の中で不安が生まれる。カルマ君と烏間先生ならきっと大丈夫だと、心の奥で思ってたのかもしれない。

けど、そんなに甘くなかった。少女は紛れもなく強敵だった。

 

「……でも、それでもッ!夕凪君は渡さない!」

 

私は、少女に向かって叫んだ。

 

「どうして……その男をそこまで守るの?……何を思って……そこまで守ろうとするの?」

 

そんなの、決まってる。

 

「理由なんかない!守りたいから守るの!救いたいから救うのッ!!」

 

はぁ、はぁ、と息が切れてしまう。柄にもなく、こんなにも熱くなった。

すると少女は……

 

「救いたい……か………別に、この人達には……言っていいか……」

 

そう呟いていた。そして私達に向き直ると、こう言ったのだった。

 

 

「私は……夕凪颯を守る為に……夕凪颯を殺しに来た……」

 

 

 

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