島でのオリ回は、今後の展開や夕凪君の過去に大きく関わってきます。その為必然的に長くなってしまい、分かりにくくなってしまっていると思います。
ダラダラと長ったらしい文ですみませんが、それでも読んで下さると嬉しいです。
あれから、どれ位経ったのだろう。
ほんの数分かもしれない、数時間経ってしまったかもしれない。
「……………、………!……、……」
「…………………。……、………?」
相変わらず、声は聞こえない。俺が木の幹に座っているのにも、気づいていない。
俺は、どうしたら良いんだろう。どうすれば、ここから解放されるのだろう。
「……そうじゃん。俺がここから立ち去れば良いんだ」
気づいてみれば、簡単なことだった。そうすれば、この空間から抜け出せるんだ。
俺は立ち上がり、歩き出す。木の元から去る。2人から、去る。
………本当に、それで良いのか?
ドクンと心臓が跳ねた。心の中で、俺が語りかけてきたようだった。
2人は想い合っている関係、そこに俺がいるのは、ただ邪魔なだけだ。そう思って、俺は2人の元を去った。
けど、俺は本当は、どうしたかったんだ?2人と離れたかったのか?
……違う。離れたくなかった。
親友と誓った2人と、ずっと遊んでいたかった。
醜くても、邪魔者でも、2人の側に居るかった。
ホントウハ、ハナレタクナンテ、ナカッタンダ……
「朋樹ッ!!!此衣ッ!!!」
振り返って、本気で叫んだ。心の底から、2人を求めた。汚くても醜くても邪魔者でも、俺は2人と居たかった。
もう、あんなギクシャクした関係なんて……嫌だ………
すると……
「「……颯?」」
2人が、俺の目の前にいた。俺の声を聞いて、返事をしてくれた。朋樹が俺の肩に触れる。此衣が俺の頬に触れる。
2人に、触れることが出来た。
その瞬間、今まで出来ていた壁が、音を立てて崩れ去った。
気づくと、すべて思い出していた。さっきまでホテルで、ナイフ使いの少女と戦って、刺された事まで思い出した。
その他にも、暗殺教室のことも……朋樹と此衣の事故の事も思い出した。
体も変わっていた。小学5年生だった俺の体は元の体に。朋樹と此衣は……高1だろうか?最期に見た時よりも成長した姿だった。
「朋樹と此衣がいるって事は……死んだのか?俺……」
「……いや、死んでないよ。出血のショックで気絶してるだけ」
朋樹がそう言うので、俺は少し安心した。
「……じゃあ、ここはどこなんだ?」
「私達もよく分かんないけど……しいて言うなら、神様が用意してくれた特別な場所……なのかな?」
「何だよ……それ」
此衣のよく分からない例えに、思わず苦笑してしまった。
「……颯。折角の機会だから、話したいことがあるんだ」
「ん?なんだ?」
一転して真剣な顔で言う此衣を不思議に思いながら、俺はそう返した。
すると、此衣はいきなり、俺に向かって頭を下げた。
「お、おい此衣…「ゴメン!」」
いきなり謝る此衣に、俺はただ戸惑った。
「それについて僕も……本当にゴメン!」
「朋樹まで!?どうしたんだよお前ら?」
もう訳が分からない。謝られるようなことをやられた覚えがないんだが……
「まず、何についての話か教えてくれよ」
「………小4の春休みの始めに、宿題終わらせようって言って、皆でそれぞれ宿題やっていた日、覚えてる?」
「ああ。てか、何でそんな日の事覚えてるんだ?」
普通なら忘れてそうなもんだが……
「その日ね、勉強に飽きちゃった私は、玄斗さんの部屋に忍び込んだの。それで、1つのファイルを見つけた。私はそれを覗いたの」
「……それで?」
「そこには、颯の事が載ってた。殺し屋に両親を暗殺されたこと、それで孤児院に来た事。そして…………颯が、ある殺し屋に命を狙われてる事」
「……………」
多分、それはあのナイフ使いの言っていた、"マスター"なのだろう。そいつが、俺の命を狙ってる。
「それを知った時、ファイルを見た事を後悔した。これからの颯の運命は……私1人でどうにか出来ることじゃ無いんだ。って」
だからあの日、玄斗さんの部屋の方から出てきた此衣は、様子がおかしかったのか。
此衣がそう言い、次に朋樹が語りだす。
「……此衣は最初に、僕に相談してきたんだ。でも、僕にもその事実は重かった。だから、2人で玄斗さんに、見てしまった事を正直に話したんだ」
「……それで、玄斗さんはなんて?」
「"絶対に他言しないように。もちろん、颯君にもだよ"って言った。これまでにない程、真剣な顔で。取り敢えず、ファイルの内容が事実である事を知った」
成る程、そういうことか。大体の経緯は分かった。
「それで……何で謝るんだよ?隠してた事だって玄斗さんに言われての事だし、他に何かあったか?」
すると、此衣が語りだす。
「玄斗さんにそう言われたから、私達は黙ってることにした。けど、次に颯にあった時に、こんな事思っちゃったんだ。"颯には、過酷な未来がやって来る"って。殺し屋に命を狙われる、危険な世界に引きずり込まれるんだって。
……私はその瞬間、颯にどう接していいか分からなくなった。今までやって来た普通の会話が……出来なくなっちゃった……」
「僕も……正直どうしたらいいか分からなくなった。それが結果的に、颯との壁を作ることになっちゃった。何とかしなきゃって思ってたけど出来なくて………小5の夏、君は僕らと、殆ど話さなくなっちゃった……」
「……その時、凄い後悔したんだよ。でもどれだけ悩んでも、どうしたら良いのか……わからなくなって……そのまま、ギクシャクしたまま……死んじゃったんだ……」
「……それじゃあ……あの事故の時俺を助けたのは………」
「うん……僕らの所為で、関係をギクシャクさせてしまった事、それに罪悪感を感じて……咄嗟に颯を助けたんだと思う……」
此衣は、境遇の所為で人一倍責任感が強い。朋樹も凄い真面目な性格だ。2人は、俺の境遇を偶然知って、それで、親友なのに何も出来ない事を悔やんで、過酷な俺の運命に対してずっと悩んで、それで、俺と上手く話せなくなったと言うのだ。
……何だよ……それ……
恋心なんかじゃない、全部、俺の愚かな勘違いだった………
俺も2人に話した。小4の春休みの日から、2人と関係がギクシャクしていたのを何とかしたいと思っていたこと。だけど小5の夏に、勝手に勘違いして、2人から離れていったこと。それを言えずに、事故で永遠に会えなくなったこと。
俺は、全部理解した。
簡単な事だ。あの夏の日、俺は逃げるんじゃなくて、2人に声をかけていれば良かったんだ。そんな些細な勇気で、関係は取り戻せたんだ。
「……なんだよ……簡単なことしゃねぇかッ……なんで……なんでッ……そんな簡単なこと……出来なかったんだろうなッ……俺ッ……」
「ううん……私達が………玄斗さんに言われたこと破ってでも……ううん。颯を信頼して……責任なんて感じないで………いつも通り接する事が出来たらッ………」
「……結局………3人共……壊れるのが怖かったんだ………僕も、怖かった……颯だけ過酷な運命を背負って……それがどうしようもなくてッ……」
どうしようもなくお人好しな2人と、どうしようもない勘違いをした俺。
「「「……うわあぁぁあん!!」」」
俺達は抱き合い、思いっきり泣いた。3人しか居ないこの空間で。
神様が用意してくれたこの不思議な世界で、ようやく俺達は、お互いの事を理解出来たのだった。
「……ふぅ、まさかこの歳で、大泣きするとは思わなかった……」
「へへ、目がまだちょっと痛い……」
「2人共、目が真っ赤だよ?」
「ばっか、お前だってそうじゃねぇか」
「え!?嘘!?」
俺が突っ込んでやると、朋樹が慌てて顔をおさえていた。その様子を見て、此衣が噴き出す。それにつられて、俺達は3人で笑った。
「ハハハッ……ふぅ……じゃあ、俺はもう行くよ」
「……うん、そうだね。颯はまだ生きてるんだから、戻らないと」
「そうだね。束の間の再開だったけど………色々、会えて良かった」
「……おう。俺もそう思う」
ずっとモヤモヤしてたものがとれた。2人とのわかだまりは、これで無くなったんだ。
「ああそうだ。最後に聞いていいか?」
「ん?いいよ」
此衣がそう言ってくれたので、聞くことにした。
「お前らってさ、お互いの事どう思ってんの?」
一瞬キョトンとした顔になり、2人で目を合わせる。そして、言った。
「もちろん、好きだよ?」
「ラブじゃなくて、ライクの意味でね」
俺はフッと少し笑った。そして手を振りながら言った。
「じゃあな。大親友」
「「頑張ってね。大親友」」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「私は……夕凪颯を守る為に……夕凪颯を殺しに来た……」
言っている意味が、私にはよく分からなかった。だってどう考えても矛盾しているからだ。
「はぁ?意味ワカンねぇよ!救う為に殺すってどう言うことだよ!?」
寺坂君が、全員の疑問を代弁してくれた。すると、少女は口を開いた。
「……私は1つ、嘘を付いた……マスターが出した本当の命令は……夕凪颯を捕縛し……マスターの元に連れてくること………決して殺してはいけない………そう言っていた……」
「……え?じゃあ……何で夕凪を、殺そうとしてるんだ?」
菅谷君の疑問に、少女は答える。
「……私のマスターは……冷酷非道………夕凪颯はマスターに必要な情報を持っている……そして、私が夕凪颯を連れて帰れば………マスターは、ありとあらゆる方法で、夕凪颯から情報を得ようとする………」
少女の表情が、少し沈んだように見えた。不思議と悲しそうな表情で、少女は続ける。
「マスターに拷問された人間を……何人も見てきた………酷い時には、人間の形では無くなっていた人もいた…………私は、これ以上……そんな人を見たくない……ッ」
少女はそう言って唇を噛み締める。初めて、この子の人間らしい顔が見えた。
話を聞いていた皆は険しい顔になる。思ったよりずっと、夕凪君は重い境遇だったのだ。
「私がこの任務を失敗したところで………いつかきっとマスターは、夕凪颯を捕らえる……その時、彼は………地獄のような苦痛を……味わうことになる……」
そう言って少女は、私達にナイフを向ける。
「だから………私は夕凪颯を殺す………殺して……私も死ぬ………」
その顔は、決意した顔だった。
ここで彼女を倒しても、夕凪君はずっと追われ続ける。その情報を求めて、敵はいつまでも追ってくるのだ。
そして、捕まれば……
私は……どうすればいいんだろう……夕凪君にとって……どの選択が一番、幸せなんだろう……
「オイオイ、勝手に人の生き死にを決めてんじゃねぇよ」
すると後ろで、そんな声が聞こえた。
「てかそのセリフ、どこのヤンデレだよ。テンプレ過ぎてちょっと笑っちゃったぜ」
腹に包帯を巻いた彼は、立ち上がり、そのまま歩いてくる。
「とにかく、どんな事情があろうが、俺は殺される気なんかねぇ!どっかの変態野郎に追われててもだ!」
彼は、私達の前に立つと、少女を指差して言うのだった。
「俺は、お前をぶっ倒す!そして、治療薬を奪う!それだけだ!!」
夕凪君は、そう宣言するのだった。