「俺は、お前をぶっ倒す!そして、治療薬を奪う!それだけだ!!」
俺はそう宣言し、少女を指差す。
「………さっきの話、聞いていたの………?」
「ああ。俺がお前のマスターとやらに狙われてんだろ?そしてそれを阻止する為に、お前は俺を殺しにきた」
「ならッ!!………おとなしく死んで……それが、貴方の為………」
叫ぶ少女。無感情だった顔は、段々と人間らしい感情を見せていく。
でも、関係ない。俺の答えは決まってる。
「地獄のような拷問とか、知った事か!迎え撃てばいいんだよ!逃げる為に死ぬなんて……最も愚かなやり方だ」
「……ッ!」
「時間が惜しい。さぁ、もう一度戦おうぜ!」
そう叫んで、俺は戦闘体勢に入った。
すると、後ろにいた殺せんせーがいった。
「夕凪君、体の調子はどうですか?」
「あぁ、刺されたのが嘘みたいに絶好調だ!さっきよりもずっと、早く動ける気がする」
すると、殺せんせーは真剣な声で言った。
「……それは、多分出血によってアドレナリンが分泌されているからでしょう。君は興奮状態になっています。しばらくは身体能力が増加します……が、それは血圧を増加させます。そうすれば、止血した所からまた出血するかもしれません………短期決戦でお願いします」
「……分かった。早めに済ます」
そう言って、俺は目の前にいる少女に向き直った。そして、1つの疑問を口にした。
「……1つ、聞いていいか?」
「……何?」
「お前、本当に俺を殺す気あるの?」
「!?………」
予想外の言葉に、少女は目を開いて驚く。俺は構わず続けた。
「俺を殺すなら、俺を刺した時にもっと奥深くに差し込めばいい。喉を掻っ切っても良いし、毒ナイフでも良いだろ?でもお前は、それをしなかった」
「……ッ!」
「あと、カルマと烏間先生。恐らく足止めしてくれてたんだろうけど………邪魔したら殺すとか言ってたのに、わざわざ蹴りでトドメをさしてる。お前は、最初から誰も殺す気がない………いや、誰も殺せなかったんじゃないのか?」
「……黙って……」
「しかも、冷酷非道なマスターに逆らってまで、俺を救おうとしてる……お前ってさ。
誰よりも、優しいんじゃないか」
「黙れぇぇぇぇえッ!!?」
今までからは想像がつかない位、大きな声を出した少女。それに皆が驚いた。
「はぁッ……はぁッ……貴方に何が分かる……突然家族を失って、その後マスターに拾われて………その後は、ずっと殺す事を強いられてきた、幼い私は、逆らえなかった………殺しなんてしたく無いのに、何人も殺してきたッ!!」
そう言う少女は、小瓶を取り出した。
少女はそれを、ナイフに塗る。
「致死性の毒………少しでもかすれば……貴方は死ぬ………優しい言葉も認める言葉も要らない………殺す事しか出来ない私は………貴方を殺す事で救う!」
そう言って、少女は突っ込んでくる。これで、最後の戦いだ。
前と同じように、胸を狙った突きが来る。横ステップで躱し、次に備えた。
先程と同じ連撃、しかし、流れるような速さは無かった。多分、怒りで攻撃の繊細さが無くなっているんだ。
「どうした?随分焦ってるな」
「ッ!?………殺す!」
最小限の動きで躱す。少しでも当たればお陀仏だが、それでも当たる気がしなかった。
しかし、殺せんせーに言われた通り、長期戦はヤバい。早めに倒さないとな。
俺達は一旦距離を置き、体勢を整える。
「……次で決めてみせる………」
そう少女は呟き、ナイフを構えた。
恐らく、さっきの技は使わない。ナイフの一撃必殺に固執している以上、ナイフを捨て身にするあの技は使わないはずだ。それに使ったとしても、今の心が乱れている状態なら、あんな自然な体運びとフェイクは使えないはずだ。
俺は軽く構えた。さて……どう来る?
ダンッ!!
少女は、思いっきり床を蹴った。何か技を使うわけではない。純粋な速さで一気に距離を詰め、一突きを狙う。必殺の一撃だった。その速さは、今までの比ではない。
でも……俺はそんな一撃を待っていた!
「………なッ!?!?」
俺は横に、最低限に動いた。反応できるとは思っていなかったのだろう、少女は驚きの声を上げていた。俺の反応速度は、殺せんせーのお墨付きだ。
俺は右腕を引き、拳を握る。そして、ナイフを向けて突っ込んでくる少女の鳩尾に、拳を叩き込んだ。
「グハァッッ!!?!?」
俺が玄斗さんに教わった必殺技は、カウンターだった。
しかし、ただのカウンターじゃない。俺の観察眼と反応速度を生かし、相手の攻撃の全てを見切って、最高の一撃を叩き込む。
基本、カウンターは、攻撃していて相手が無防備であり、さらに相手の攻撃の運動能力も威力に加わるため、それだけで一撃必殺になりうる攻撃だ。
俺は、自分の見切り能力で、そのカウンターの練度を限りなく上げている。それによって、必殺技にしているのだ。
少女は呻き声を上げて吹っ飛ぶ。恐らく起き上がることは無いだろう。急所に叩き込んだのだ。
俺の……勝ちだ!
「「「「「やったああ!!」」」」」
皆が駆け寄って来て、揉みくちゃにされる。強敵を破り、皆喜んでいた。
「なんだぁ、夕凪君倒しちゃったのかぁ」
「カルマ!大丈夫か?」
「大丈夫大丈夫、蹴り飛ばされただけだから」
あっけらかんとして答えるカルマに、俺は安心した。
「全く、ヒヤヒヤしたぞ。でも………良くやった。夕凪君」
「烏間先生……ありがとうございます!」
てか、2人が足止めして無かったら殺されてたかもしれないんだよな。感謝しないとな。
あと、俺を手当てしてくれた人達。
「渚、茅野、磯貝、それに殺せんせー。ありがとな、手当てしてくれて。危うく出血多量で死ぬとこだった」
「どういたしまして!」
「夕凪君が無事で何よりだよ」
「ああ。よく生きててくれたな」
渚、茅野、磯貝がそう言う。
すると、後ろから急に抱きつかれた。見てみると、不破が俺の肩に顔を埋めていた。
「……私、夕凪君が刺された時、頭が真っ白になった……このまま死んじゃったらって思って、凄い……怖くて……でも生きて帰ってきてくれた。本当に……無事でよかった……ッ」
そう言って涙を流す不破。
「不破……ありがとな。そんなに心配してくれて。でも、大丈夫……大丈夫だから………」
俺はそう言って頭を撫でてやる。不破はうん……と言って、涙を拭った。
「さて……まだ起きてるかな?」
俺はそう呟きながら近づいた。少女の元に。
少女は、意識が朦朧としているようだった。倒れる少女の傍に、俺は座る。
「…………負け……た…の?…ゲホッゲホッ!!……ッ」
「あぁ。俺が勝って、お前は負けた」
「……そぅ…………」
すると、少女は何かを取り出した。それは、さっき使っていた毒の小瓶だった。
何をしようとしていたのか分かったので、俺は小瓶を奪い、投げ捨てた。
「………私は、マスターに逆らった……きっと、生きて帰っても殺される。もっと酷いことになるかも………だから……死なせて……」
今にも消えそうな声でそう言う。俺は溜め息をつき、言ってやる。
「言ったろ?逃げる為に死ぬなんて、最も愚かなことだって」
そう言って少女を起こし、抱き締めてやる。
「マスターから逃げながら、生きる。それ位簡単じゃねぇか。殺しなんて止めて、普通の女の子として生活するんだ。お前だってそれを望んでるはずだし、お前なら出来るはずだよ」
「……でも……私、行くところもないし……」
「そこにいる烏間先生は、防衛省の特務部にいる、日本国家の人間だ。色々と交渉して、何とかしてくれるはずたよ。ですよね?烏間先生?」
「……ああ。君の事は全力で保護する。普通の生活を送ることも可能だ」
「だってさ」
それを聞くと、少女は俺の胸に顔を埋めてきた。
「もう……普通に戻っても良いの?」
「ああ」
「誰かを……殺さなくて良いの?」
「ああ!」
「そっか……本当に………ありがとう……」
そう言って、少女の意識は途切れた。
俺は少女を、休憩用のソファに寝かせてやる。
俺は皆の元へ振り返る。皆はもう、既に準備が整っているようだった。
「……さて、時間食っちまったな。急ごう。黒幕は直ぐそこのはずだ!」
「「「「「おう!」」」」」
オリジナルなので拙い所が多いと思いましたが、見てくださりありがとうございます!
いよいよアイツか………