家を出る。何気ない日常の始まりだ。
俺が昨日考えた作戦、半分は真面目だが、半分はただ面白いからという理由だ。ふざけて考えた作戦が、意外と上手く出来てたので決行した。
まぁ、当の本人が作戦に参加しなくては示しがつかないだろう。俺も、やってやろうじゃないか。
早朝から人の通りが多い椚ヶ丘の街、今日も多くの人がいた。
俺は、そっとしゃがみ、指を地面に付ける。前足の膝を曲げ、後ろ足は伸ばす。クラウチングスタートだ。
周囲の人が少しざわつき始めるが、知ったことではない。
「……3……2……1……」
作戦……開始!!
「いぃぃぃぃやっっっほおぉおぉおおおおおぉう!!!!」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
椚ヶ丘学園 正門前
「……ゼィ……ゼィ………」
校門の壁の所で手を付き、呼吸を直す。自分で言ったのにアレだが、ヤバイほど疲れるな……
「……ぅぉぉおぉおおおおッ!!」
すると、叫び声が聞こえてきた。振り向くと、杉野が猛ダッシュで走って来た。おぉ早い、流石野球少年。
「……ぁぁぁあぁああぁああッ!!」
すると更に、叫び声が聞こえてきた。そっちを向くと、前原も猛ダッシュで走って来る。あいつも元サッカー部だっけ?
「「……ゼィ…ゼィ………」」
2人共、同じように壁に手を付いている。2人は俺より距離が遠い分、疲れているようだ。
でも、作戦決行中だ。気を緩める訳にはいかない。
俺は大きく息を吸い、そして……
「おっはよぉぉぉお!!!杉野ォ!前原ァ!!」
「お……おう!夕凪!!おはよう!!」
「よしお前らァ!!ここからE組校舎まで競争だァ!!!」
「「ええ!?」」
「ええ!?じゃない!!走る事こそ青春!!お前らァ、位置に付けェ!!」
そう言って、俺達は3人でクラウチングスタートを取った。
「よーいドンでスタートだ。ズルするなよ……」
「「お、おう!」」
「よーい………うどん!!」ズザァァ!
2人共こけた。ハハハ面白ぇ。
「ちょ、おま……ふざけ「と見せかけてよーいドン!」おい!!」
俺は前原の言葉を遮り、スタートさせる。おかげで一歩リードだ!このままブッチ切りでゴールだぜ!
「「「うぉぉぉおおぉおぉおおぉおおおぉぉおお!!」」」
朝の山に、3人の叫び声が響きわたる。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「……その店でさ、きゅうりが……」
「へぇ……磯貝君も大変だね……」
……ドッタンバッタンドッタン!!
「……何か騒がしいね。なんだろ?」
「さぁ?」
ガラガラピシャン!!
「っしゃあ!!一番乗りぃ!!」
「ゆ、夕凪君?」
「前原に、杉野も……」
教室の扉を開けると、渚と磯貝が話していた。
「おはよう2人共ォ!!今日もいい日だな!!」
「あ、うん……」
「いつもと変わらない気がするが…」
「細かいことは気にするな!ハーッハッハッハッ!!」
そう言って俺は高笑いをする。客観的に見ると超キモいな。
「ねぇ杉野、夕凪君どうしたの?」
「あぁ。これは夕凪の作せn「このバカタレが!!」痛え!殴るなよ!」
俺は杉野に詰め寄り、小声で話す。
「お前……初日の朝に作戦パァにする気か?極秘っつったろ!!」
「あ……ああそうだった、悪い……」
「お前もハイテンションになるんだ……恥なんか捨てろォ、全てをさらけ出せ!」
「わ、分かったよ……」
そう言って、俺達は向き直った。
「あれぇ!?まだHRまで時間がたっぷりあるなぁ!!時間が勿体無い!おい前原、杉野、グラウンドでキャッチボールでもしようぜ!!」
「えぇ!?俺達走って来たばかり「このチ○カスが!!」痛え!殴んな!あとチ○カスとか言うな!」
前原がふざけた事を言い出すからだ。こいつら、まだノってきてねぇな。俺なんて家出てすぐハイテンションだったのに。
「前原テメェ……走った位で疲れたとか言うんじゃねぇ!!時間を無駄にする事は禁忌の所業だ!!分かったか!!」
「わ、わぁったよ!やってやろーじゃねぇか!!キャッチボール!」
「よぅしそれでこそお前だ!よし、校庭行くぞ!!」
「お、おう!やるなら全力投球だ!!俺の投げる球お前らに取れるか!?」
「言うじゃねぇか杉野!!どんな球だって取ってやんよ!」
「っしゃあお前ら!!行くぜ!!」
ドッタンバッタンドッタン…………
「………何だったんだろ?」
「……さぁ?」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
キーンコーンカーンコーン
「では、HRを始めましょう」
朝の出席確認&一斉射撃の時間だ。渚の号令がかかる。
「起立!!気をつけ!!」
一斉に銃を構える。俺を除いて。
(ヌルフフフ、今日もやる気満々ですねぇ……おや?夕凪君はエアガンを腰に差しましたが……え?ブリッジ!?)
ブリッジの姿勢を取る。そして、渚の号令がかかった瞬間……
「礼!!」
「キェァァェェェェァァァァァ!!!!!!」ガサガサガサガサ!
「にゅやぁああぁっ!その状態でこっち来ないで下さいぃ!!」
殺せんせーが叫ぶが、知ったことではない。俺は教壇の横まで来ると、頭で体を支えてその体制を維持し、両手でエアガンを抜く。そしてブリッジの体制のまま撃った。
「にゅやっ!?何ですか君の狙撃は!?」
皆の射撃を避けながら俺にツッコむ殺せんせー。その声音には焦りが見えた。
よし、効いてる効いてる……
「早く出席確認してよ殺せんせー!!他の奴らも待ってるぜェ!!!」
「わ、分かりました!では出席を取ります!」
(てか、もしかして……)
(((((あれをやらなきゃいけないの!?)))))
ふっふっふっ、発案者の俺が率先してやってんだ、他の作戦メンバーもやらざるを得ないさ!
「カルマ君!」「はい」
「磯貝君!」「はい!」
さて岡島よ……貴様もやれ!!
「岡島君!」「キェァァァェェァァァァァア!!!」
岡島はブリッジのまま這ってきて、エアガンを乱射した。
ヤベェマジでやりおった!面白ぇ!
「岡島君も!?どうしたんですか!?」
「構うなよ殺せんせー!俺もブリッジがしたいんだぁ!!!」
「そ、そうですか……」
さて……岡野はどうする?
(えぇ!?ホントにやるの!?……どうしよ………)
「岡野さん!」
(………やっぱ無理!!)
「はいっ!!!」
岡野は大声で返信をすると、ナイフを持って机を踏み台にし、殺せんせーに飛びかかった。
「にゅやっ!?岡野さんも!?射撃の時間ですよ!?」
「今はっ!ナイフで切りたい気分なんだっ!!!」
そう言ってナイフを振り回す。正直、岡野までやりだしたらどうしようとか思ってた。女子とかスカートだし……
大声は忘れてないので、良しとしよう。
だが…………
俺と岡島は振り返る。そして、男子の作戦メンバーの顔を見た。
(((ひぃっ!?)))
お前ら………強制ブリッジな。
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「吉田君……」「は、はい……」
「ぜ、全員揃ってますね……今日は連絡無いので、これでHRを終わります……」
殺せんせーの声と共に、射撃が止む。殺せんせーが教室から出て行くと、残ったのは……ブリッジをした男達、それを呆然と見つめるクラスメイトだった。
俺達はあの後、這い回っては狙撃を繰り返した。さも地獄絵図だっただろう。俺は笑いを堪えるのに必死だったが。
ブリッジをした男達は、皆絶望した顔だった。何やってんだ俺みたいな顔。
てか、寺坂がキェェァァァ!って言って飛んできた時は笑い転げそうだった。ヤバい、思い出すだけでヤバい。
まぁ、楽しんでるのは俺だけな訳で……
教室がしんと静まり返る中、俺は立ち上がり、言った。
「失敗しちゃったZE☆」
「「「「何がしたいんだよ!?」」」」
作戦を知らない皆からのツッコミが飛ぶ。
「え、えーと……何かの作戦?」
「作戦?何を言っているのだ渚君!俺達はただブリッジをしたかっただけなんだ!!そうだろう千葉!!」
俺はそう言って、立ち上がった千葉の肩を叩く。すると……
「……フ…フフ……もういいや……」
千葉がそう呟いた。マズイ、計画のことバラすつもりか!?
千葉は一呼吸置くと、言った。
「やってやろうじゃねぇかあぁぁああああぁあッ!!!」
「「………へ?」」
「こうなりゃとことんハイになってやる!!夕凪!?次の授業は何だ!?」
「あ、ああ!!音楽だ!!」
「そうかぁ!!俺達のBeatがアツくなるぜ!!!」
「クラシックの歴史の授業だったが……よし分かった!!俺が後で殺せんせーに申請して、ロックの歴史の授業に変えてやるぜ!!」
「それでこそお前だ夕凪!!」
「「ハーッハッハッハッ!!」」
「ち、千葉が壊れた……」
速水がそう言うが知ったことか。千葉がその気になってくれて良かった。
「こうなりゃとことんやってやる!」
「千葉には負けられねぇぞ!!」
「「「おぅ!!」」」
いつしか、千葉のアツさは他の男子作戦メンバーに伝わっていった。
「イイぞお前ら!ようし、殺せんせーに申請してくる!ついてきてくれ!!」
俺はそう叫び、教室を出て職員室に向かう。皆はそれについて来た。
もちろん、移動はダッシュだ。
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アツくなった男子達が消え、教室は再び静寂が訪れる。いたたまれない気持ちなのは、作戦女子メンバーの5人だ。
ブリッジはせず、5人で大声出しながらナイフで切りかかったが、男子ブリッジ組とはテンションの高さが違った。
「うん……私達、どうしよ……」
「正直あれに着いて行くのは辛いけど……」
「でも、あれだけ頑張ってるのに、作戦失敗とか可哀想だし……」
「うん、私達も引き受けた身だし……協力してあげよう……」
「「「「「はぁ……」」」」」
「え、えーと、作戦てどんな?」
「「「「「ごめん、極秘なんだ」」」」」
「そ、そうなんだ…………」
「……1時間目からは、頑張ろっか……」
「「「「……おー………」」」」
男子達が帰って来るまで、教室はいたたまれない感じになった。