夕凪颯の暗殺教室   作:カゲロー@

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暗殺教室の漫画をふと読み返しました。相変わらず20巻の最後には泣かされます。
ふと思ったのですが、死神の脳内再生されるボイスが宮野真守さんなんです。この気持ち、分かってくださる人は居ませんでしょうか?
福山潤さんの声を否定しているわけじゃありません。殺せんせーの声、とても好きです!
長文失礼いたしました。ではどうぞ!


第54話 「二人の時間」

「ヌルフフフ……皆さん満喫していますねぇ〜……良いですよぉ〜」

 

「ねぇ……あれ……」

 

「うわぁ……変態……」

 

一日中パーク内を転々としながら、生徒達を観察していた殺せんせー。目立たないようにと纏った黒装束も、こんな巨体では更に不審者っぽくするだけだった。

 

「おやおやぁ〜……夕凪君と不破さんは良い雰囲気ですねぇ〜、夕凪君はどうするんでしょうか〜」

 

双眼鏡を覗きながらそう呟いていると……

 

「君、ちょっと良いかね?」

 

警備服を着た人に話しかけられたのだ。

 

「……にゅや?」

 

「通報があったんだ。変な男が奇怪な声を上げながらストーキングしてるって。事情を聞きたいから来てくれないか?」

 

「……にゅやあぁぁああっ!??」

 

手(触手)を掴まれ連行される殺せんせー。

 

「ち、ちょっと待ってください!私は教え子達を見ているだけでストーキング等とーー」

 

「例えそうでも、こんな不審者丸出しだと他のお客さんも怖がるんだよ。良いから来てくれ」

 

「にゅやあぁあぁあぁっ!!」

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

殺せんせー:誰か承認として来てくださいぃ……警備室ですぅ……

 

「何やってんだあのタコは……」

 

「さぁ……」

 

呆れ顔で届いた通知を見る俺と不破。今は構ってる暇無いんだよ。

スマホの電源を落とし、ポケットにしまった。

辺りはすっかり暗くなり、時刻はもうすぐあの時間を示そうとしている。

ポッターエリアから離れた俺達は、沿道に集まる人々の少し後ろの所に立っていた。

 

「夕凪君」

 

「ん?」

 

「今日、楽しかった?」

 

「……あぁ。凄ぇ楽しかった」

 

「それなら良かった……千葉君と速水さんとさ、行く前にこんな事話してたんだ。"夕凪君に振り回されてばっかだね"って」

 

「確かに、勝手にどこ行くか決めて、電車に乗るまで皆知らなかったんだもんな」

 

「本当だよ。行き先くらい教えてくれたって良かったのに」

 

その言葉にハハハと笑う。

すると、不破は少しトーンを落ち着かせて言った。

 

「……修学旅行の時も思ったけどさ、ずっとこんな時間が続けばって思っちゃうよね。学校で過ごす時間も、暗殺してふ時間も、皆で遊ぶ時間も、ずっと続いて欲しいって……心底思うんだ」

 

少し俯きながら言う不破。俺も、何度そう思ったことだろうか……

 

「………ああ。でも……そんな事はあり得ない。いつかは終わる。この楽しい時間も……だからさ、俺は目一杯今を楽しみたいんだ。後悔したくないし、今日みたいに沢山思い出を作りたい」

 

それが俺の答えだった。もう、逃げて後悔したくない。終わりにしっかり向き合い、今を楽しむんだ。

 

「お、遂に始まったぞ」

 

話していると、時間になった。

キャラクターが乗せられたフロート車が次々と出てくる。夜の中発光するそれらは、迫力があり、幻想的でもあった。大音量の音楽が更にムードを掻き立てる。

 

「綺麗……だね…」

 

「…ああ………」

 

しばらく見入ってしまう。でも、ふと我に返った。きっと、この時間はすぐ終わってしまう。この幻想が終わるまでに、伝えないと。

 

「不破、聞いてくれ」

 

俺は、そう切り出した。

 

「……うん。何?夕凪君」

 

そう言って、不破は俺の方に向き直った。

ふぅっ、と深呼吸をする。頑張れ、俺!と、脳内で自分を奮い立たせた。

 

「……あ、えーと、そのだな……」

 

「……?」

 

しかし、次の言葉が出てこなかった。あれぇ?さっき少し脳内練習したのに……

口ごもる俺を、訝しそうに見る不破。ヤバい、早くしないと……でも、今まで友達として接して来た奴に、いきなりこんなのって………

……いや、それで良いんだ。今までの事、それに対して思った事、一つ一つ紡いでいけば良いんだ。

そう考えると、すぐに言葉が出てきた。

 

「4月に初めてE組に来た時、俺は壊れかけていた。苦い記憶、心の葛藤で、おかしくなりそうだったんだ。でも、あの日殺せんせーに出会って、変わったんだ。

それから人と関わるようになった。勉強も暗殺も遊ぶ時も、何もかも皆と一緒で、本当に楽しかったんだ」

 

それでさ、と俺は続けた。

 

「俺達のファーストコンタクト、覚えてるか?」

 

「うん。朝、行きつけの本屋さんでジャンプを買い損ねた時だよね」

 

「あぁ。ひょんな所で会ったけど、それから仲良くなった。好きな漫画の事を2人で話したりするのが、凄ぇ楽しかったんだ。きっと、コイツとはずっと友達で居られるんだろうなぁ、なんて、思ってたんだ。

………つい最近まではさ」

 

そこで、少し言葉を止めた。ここから先が、俺の真意なのだ。

途端に、緊張してしまう。このまま伝えたら、今の関係が壊れてしまうんじゃないか、そんな考えが頭をよぎった。

怖い、また昔のように関係が壊れるのが、怖い、皆が去ってしまうのが、怖い、怖い、怖くて、怖くて……怖くて!

 

ピトっ

 

「教えて。夕凪君がどう思ってるのか。私は逃げないから」

 

不破は俺の頰に触れてそう言った。さっきまでの考えがすぅっと消えていく。

そうだ。向き合わないと。昔だって、俺が逃げたから壊れてしまったんだ。また、同じ間違いを繰り返すわけにはいけない。向き合うんだ。

 

「最近……いや、もっと前から思ってたのかもしれない。お前の笑顔に不意にドキッとする時があった。俺はずっと、その正体が分からなかった……いや、きっと分かってながら、目を背けていたんだ。でももう、逃げない。普久間島で此衣と朋樹と話してから、向き合うって決めた。

 

俺は、不破の事が好きだ。

 

好きな漫画の話をしている時は楽しかった。

笑顔を見せられるとドキドキした。

普久間島で庇ってくれた時は本当に嬉しかったし、

鷹岡に掴まれていた時は守りたいと思った。

どんな時でも、不破が愛しく思えた。きっと俺の中では、特別な存在になってるんだ。だから、お前の隣に居たい。友達じゃない、恋人として、居てほしいんだ。だから………俺と、付き合って下さい」

 

人生で初めて、告白した。

凄い恥ずかしくて、夜でも赤くなってるのが見えるのではないかと思う。

でも、堂々と前を向いた。不破を見て、答えを待った。そして……

 

「ねぇ夕凪君、ここが小説の世界って知ってた?」

 

「………………………what's?」

 

「うん、だから、ここが小説の世界ってーー」

 

「バカバカちょっと待て!!」

 

このタイミングで何言ってんだこの子は。いくら1人だけメタ発言が許されてるからって……

 

「ごめんね。唐突過ぎたね………私はさ、思うんだ。誰かに書かれた架空の世界、それも一つの世界なんだって。その世界の一人一人は生きていて、それぞれの暮らしをしている」

 

だからね、と不破は続けた。

 

「ここが漫画の世界だろうが小説の世界だろうが関係無い。どんな世界だろうと、私達は1人の人間で、一人一人に物語がある。そして、その物語の中でーー

 

私は君に恋したんだから。

 

ずっと気の合う友達だと思ってた。漫画の話は楽しかった。貸してもらった漫画は面白かった。一緒にいて楽しかったんだ。

……でも、あの日から変わった。鷹岡に掴まれてやられそうになった時、あんなになって助けてくれた夕凪君を見て。ずっと……好きだった」

 

「不破………」

 

不破は、更に言葉を紡いでいく。今までの想いを……俺に対しての……想いを……

 

「夕凪君、前に君の事を"ジャンプの主人公みたいって言ったの、覚えてる?」

 

「あぁ。鷹岡にコテンパンにされて、俺が修行してきた時だろ?」

 

忘れるわけがない。記憶能力以前に、E組での出来事を、忘れるわけがない。

 

「うん……誰にでもできる事じゃない。多くの人は持ってない物を、夕凪君は持ってるんだと思う。いつも馬鹿なことやって、顔は良いのに学園の王子様とは程遠いかもだけど……」

 

程遠いて……

 

「でも、仲間想いで、人の為に本気になれて、皆のことを本当に大切に思ってくれてる」

 

「……」

 

「完全記憶能力なんて言う特殊能力も持ってるし、凄い努力できる人だってことも知ってるよ」

 

「……」

 

「そして、どんな強敵と戦っても、自分の信念を貫いてきた。貫いて、強敵に勝ってきた。ほら、これで揃ったよ」

 

「………?」

 

良く分からずに考えていると、不破は俺の方を向き、真っ直ぐに俺を見た。

 

「友情、力、勝利、全部持ってる。夕凪君は私には勿体無い位、最高の主人公だよ!」

 

主人公…か……俺にそんな資格があるのだろうか……

でも、不破はそう言ってくれた。だから、それには答えないと。

 

「だから……私は夕凪君の隣に立ちたい。私を、君の……ヒロインにしてくれませんか?」

 

「……あぁ。お前にとって最高の主人公の、ヒロインになってくれ」

 

これで、恋人同士……という事になるのだろう。俺達らしい、独特な告白だったけど……想いは伝えられた。

2人で笑い合い、俺はそっと彼女を抱き締めた。パレードの光や音は凄く、全ての人はそちらを向いていた。俺らの姿は闇夜に隠され、2人だけの空間がそこにはあった。

 

これまで、色んな事があった。嫌な思い出、思い出したくないものもあった。それに、俺には命を付け狙う暗殺者だっている。

でも、2人でなら乗り越えられる気がした。俺達の関係は決して柔くない。きっと、お互いの力になれる。嫌な記憶だってそうだ。これから、これからも、俺らはそれらを塗り替えていくのだろう。

言葉は、自然に出てきた。

 

「これからよろしくな。優月」

 

「うん。よろしく。颯君」

 




やっとくっつきましたね。やったね夕凪君、ヘタレ脱却だよ!
さて、次の回は遊びますので。
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