夕凪颯の暗殺教室   作:カゲロー@

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夏休み長くなったなぁ、と思いながら話数を数えてみたのですが、夏休みだけで24話使いました……長引かせ過ぎですね。スミマセン。


第57話 「夏祭りの時間」

夏休みも最終日を迎えた。

 

「はぁっ!!」

 

「おぉ!やるねぇ!」

 

玄斗さんに特訓してもらってどれくらい経っただろうか。俺は、自分でも実感できるほど成長していた。

今日こそはっ、この余裕ぶった人に一泡吹かせてやるっ!!

そう意気込み、多彩な蹴りや拳を放つ。玄斗さんの一つ一つの挙動に注意し、玄斗さんの動きに合わせて動く。

 

「しっかし、夕凪君も変わったね!前にあった時よりも更に生き生きしてるよ!何かいい事でもあったかい?」

 

「さぁ!?どうでしょうね!?戦闘中に会話とかっ、随分余裕そうじゃないですかっ!」

 

あるいは会話で集中を途切れさす作戦か?どちらにしても構わない!このまま押し切る!

そう考え、必中の蹴りを放とうとした瞬間だった。

 

「もしかして……彼女かい?」

 

「ふぁっ!!?!?」

 

予想外の言葉に気を取られ、バランスを崩されてしまう。そしてそのまま、手を取られて投げられてしまった。

 

「ぐぇっ!?」

 

「その反応は図星なのかな?」

 

「ひ、卑怯ですよそんなの!!」

 

「良いじゃないか。これも作戦のうちだよ。ところで……彼女が出来たのかい?」

 

「………まぁ、そうですけど」

 

「ほっほぅ〜……」

 

なんだこの反応は……まさか、この人もあいつらと同じゲスな人種なのか?

 

「いやねぇ、孤児院を営むに当たってさ、子供達の恋愛沙汰とかも聞きたいなぁなんて思っててねぇ〜」

 

「そうすか……でも、他の奴に聞けば良いじゃないですか」

 

「一番年長の奏矢君は全くそんな話を持って来ないし、他の子はまだそんな歳じゃないし、あまり聞く事が無かったからねぇ」

 

「……別に、付き合いたてでまだ何も無いですよ」

 

「"まだ"って事は、これからする予定でもーー」

 

「ああもう!その話は無しです!!」

 

これ以上この話を続けんのはまずい。思ったより玄斗さんも下世話だった。てか、俺の周りの人間はこんなのしか居ないのかよ……

 

「ごめんごめん………そういえば夕凪君、紫苑君に会ったりしてないかい?」

 

「紫苑……ですか?」

 

「あぁ」

 

「それは……その………一回だけ会いました。学校帰りに俺の家の前に居て、何故会いに来たかは分からないけど、ただ一言……」

 

「何て?」

 

「……"僕は、君を許さないから"って」

 

「……そうか………」

 

その会話で思い出す。いくら此衣と朋樹と和解できたとしても、アイツとはまだ出来て無いんだ、と。

いつかは、アイツとも向き合わないと……

 

「実はね、彼がここを出て行く前に、僕に特訓させてくれって言ってきたんだ。君と同じように」

 

「紫苑が?」

 

意外だった。運動は好きでは無かったはずなのに。

 

「あぁ。一通り教えたんだが、ある時急に、それをやめたいって言い出してね。そしてすぐに孤児院を出て行った。引っ越し先の住所も教えず、そのまま行方知れずなんだ」

 

「それは……おかしいですね」

 

「あぁ。だからちょっと心配でね。何か彼について分かった事があれば教えてくれないか?」

 

「分かりました。そうします」

 

その依頼を引き受ける事にする。確かに、紫苑の事は気がかりだった。

気づくと、まぁまぁ時間が経っていた。

 

「じゃあ俺、午後からは勉強の予定にしてあるんで」

 

「分かった。またおいで」

 

俺はバックから着替え用のTシャツを取り出し着替える。その他諸々もスポーツバックにしまい、帰り仕度を終えた。

 

「今度時間がある時に、彼女さんの事でも話そうよ」

 

「……失礼しました〜」

 

そう言って部屋を出る。最後の誘いはスルーだ。そのまま玄関に向かおうとした、その時だ。

 

「颯……」

 

「うぉっ!!何してんだお前は!?」

 

角から、奏矢が顔を覗かせていた。ホラーさながらの表情と体勢のまま、奏矢は言った。

 

「ハヤテクン、カノジョデキタッテホントナノ?」

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「…………」ナンデコイツガオレヨリサキニ……

 

近況報告がてら、コイツと少し話す事にした。自販機の前に立ち、何にするか迷う。ブツブツと呪詛のようなものを後ろで言っているが気にしない事にした。

 

「まぁ、趣味とかが合ってな。色々あってそうなったってわけ」

 

「いーなー、俺のクラスに話が合う女子なんて居ないぞ」

 

「巡り合わせってやつだよ」

 

レモンティーに決めてボタンを押し、ガタンッと落ちてくるそれを取り出す。

 

「なぁなぁ、その娘可愛いのか?」

 

「ん?あぁ。活発そうな感じで顔は整ってるな………てか、うちのクラス皆可愛いかもな」

 

「はぁ!?何その天国みたいな空間!?」

 

俺は、先日USJで全員で撮った写真を見せてやった。

 

「………お前ら男子連中死滅しやがれ」

 

「酷いな!?」

 

見てからの第一声がそれだ。人格疑うぞ……

 

「で?お前の彼女さんはどの娘だ?」

 

「ん……この娘だよ」

 

「へぇ、可愛いじゃん………でも、俺だったらこの娘が良いな〜」

 

そう言って指差すのは、速水だった。残念だったな、その枠は既に埋まりつつあるんだ。

 

「良いなぁ〜、今度遊びに行っても良いか?」

 

「どうせそのうち体育祭とか文化祭とかやるから、そん時に来てみろよ」

 

そう言ってスマホを閉じた。

 

「羨ましいよ。俺らのクラスじゃあさ、クラスの勘違いブスがうるさくてーー」

 

「ははっ、それは………」

 

言葉が止まったのは、イレギュラーな事態が起きたからだ。

 

……なんでお前がいやがる……殺せんせー……

 

「……どしたの?」

 

「…え?あぁいや、何でも……」

 

奏矢の丁度後ろにいる為気づかれていない。しかし、これ不法侵入じゃ……

すると、殺せんせーは何やらデカい看板を取り出した。そこには……

 

【夏祭りのお知らせ!今晩7時 空いてたら椚ヶ丘駅に集合!!】

 

と書かれていた。そういえばそんなのもあったか。それにしてもその日に言うのは急なんじゃ……

 

【他の方も誘ってますので、夕凪君も是非!】

 

それだけ見せると、殺せんせーは飛んで……いかずに、奏矢が見ていないうちに苺ミルクのボタンを押した。そして、それを持って飛んで行った。

………金欠だからってパクるなよ……

 

「颯?どうしたんだ?」

 

「ん?あぁ……夏祭りに、クラスの奴らと行こうかな〜なんて思っててさ」

 

「ふ〜ん」

 

懐かしいな。昔何回か孤児院の皆で行った事がある。

まぁ、最後くらい遊びますか。

 

 

「あれっ!?自販機に金取られた!?」

 

「………スマン、俺が奢るから許してやってくれ」

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

夏祭り。屋台が並び、いつもは静かな境内が人で活気付く時間だ。

やはり、急だったのか人数は半分ほどだったが、それでも良いだろう。

 

「いやぁ、思いの外集まってくれてよかった!誰も来なかったら先生、自殺しようかと思いました」

 

「それじゃ来ない方が正解だったね」

 

中々残酷ですこと……

周りを見渡してみると、各々がそれぞれの楽しみ方で祭りを満喫していた。俺は優月と共に、屋台を回って見ていたのだった。

 

「あ!りんご飴だ!」

 

「ほぅ、じゃあ買ってくか……」

 

りんご飴を買うべく屋台に近づくと……

 

「りんご飴2つ………ってアンタかよ!!」

 

そこには、タオルを額に巻いた殺せんせーがりんご飴を売っていた。てか、よく見ると分身して他の店にもいる。

 

「いやぁ、皆さんがどんどん景品を取って店じまいさせてくれるお陰で、どんどん稼げますねぇ〜。ヌルフフフ……」

 

「私達は小遣い稼ぎに利用されてたのね……」

 

優月がそう呟きながら、二人で金を出す。毎度あり〜という言葉と共にりんご飴を渡され、店を立ち去ろうとしたその時だった。

 

「おっ、夕凪君じゃないか?」

 

「玄斗さん!?それに、奏矢!?」

 

2人揃ってそこにいた。しかも玄斗さんは男性用和服着用だった。あの人昔から着てるんだよな……

 

「颯君、この人達って前に言ってた……」

 

「あぁ。孤児院の経営者の玄斗さんと同級生の奏矢だ」

 

「霧島玄斗です。よろしくね」

 

「不知火奏矢だ。よろしく」

 

「あ…不破優月です。よろしく…」

 

「2人がいるってことは、他のチビ達も来てるんですか?」

 

「あぁ。それぞれ楽しんでるよ」

 

見回してみると、確かに見知った顔の子供達がいるのに気づいた。皆色々な屋台にはしゃぎ回っている。

 

「ところで夕凪君……その娘は君とどんな関係なのかな?」

 

「え?あいやそれはーー」

 

「玄斗さん、実は……」

 

俺の言葉を遮って奏矢は玄斗さんに耳打ちし始める。ウンウンと首を縦に振りながら聞く玄斗さんは、だんだんとゲス顔になっていくのだった。

 

「これはこれは夕凪君、邪魔したね〜」

 

「2人の時間の為に俺らは退散しますか〜」

 

「ええと……颯君?何で不知火君は私達の事を知ってるのかな?」

 

「スマン、話の流れでな……」

 

ニヤニヤしながら見てくる2人にイラつきながらそう言う。すると……

 

「にゅやっ?霧島さんじゃないですか!」

 

「うおっ!?急に現れた!?」

 

殺せんせーの分身がそう言って現れたのだった。案の定奏矢は驚いていた。

 

「私、夕凪君の担任をしています。殺せんせーです。ヌルフフ…」

 

「あ、ど、どうも……(殺せん……あだ名なのか?)」

 

殺せんせーの挨拶に、戸惑いながら奏矢が答える。そんな中、霧島さんは驚かずにいつもの表情で殺せんせーに話しかけた。

 

「お久しぶりです。相変わらず大きいですね。会ったのは4月ごろでしたよね?」

 

「ヌルフフフ……その節はお世話になりました」

 

そう言ってお互い握手していた。触手がバレたりしないよな?

そう言えばこの2人は面識があるのか。俺の事を施設の経営者に聞きに行ったって言ってたもんな。

 

「それじゃ、僕達はこれで。夕凪君の事をよろしくお願いします」

 

「じゃーな颯、2人の時間を楽しめよ〜」

 

「大きなお世話だ」

 

そう言って、2人は去っていった。

 

「なんというか……玄斗さんって思ったよりフレンドリーな感じなんだね」

 

「あぁ、まぁな。そう言えば殺せんせーは会ってたんだっけ?」

 

「………………」

 

そう問いかけたのだが、殺せんせーは黙っていた。

 

「……殺せんせー?」

 

「……え?あ、すみません、何でしょう?」

 

「どうかしたのか?」

 

「いや、前にも思ったのですが……彼はどこか同業者の香りがしますね」

 

「まぁな。育てる素質はあると思うよ」

 

飴とムチを上手く分けてる気がする。人柄からも、子供に好かれそうだ。

 

「……まぁ良いでしょう。私は店に戻ります。もっと稼ぎますよ〜。ヌルフフフ……」

 

そう言って殺せんせーの分身は消えた。

 

「さて、そろそろかな……優月」

 

「ん?」

 

「ベストスポットがあるんだ。一緒に行かないか?」

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「んっ……人が多いな」

 

そろそろあの時間だからか、人の流れが先ほどにも増して激しくなっている。

 

「はぐれると困るし……手、繋ぐか」

 

「う、うん、そうだね……」

 

少し緊張しながらも、優月の手を取った。そう言えば、手を繋いで歩いたりもしていなかったな……

少しドギマギしながら、再び進んで行く。

本堂へと向かって参道を歩いていくうちに、屋台が出てないからか、だんだんと人気が無くなっていく。ようやく本堂に辿り着くと、俺はその脇を通り、目的の場所に案内した。

 

「颯君、ここってーー」

 

「すぐに分かるさ。そろそろだ……」

 

優月の疑問にそう返す。そして、遂にその時間だ。

 

「わぁ……!」

 

夜の空に、1つの光が地上から登っていった。その光は遥か高く上がると、大きな音を立てて弾けた。花火が、夜空を彩っていたのだった。

 

「……綺麗………だね」

 

「………あぁ……」

 

俺が案内したのは、花火がよく見えるベストスポットだった。祭りに来たものの金を使い果たして暇になってしまった俺と朋樹と此衣は、あちこちを探索していた。そして、ここを見つけたのだった。あの時の景色も決して忘れていない。

花火が次々と上がっていく。ここは静かで雑音は無く、音を立てて弾ける花火に、2人とも心を奪われていたのだった。

そしてピークを過ぎた頃、ふと呟いたのだった。

 

「……色々あったね。四月からこれまで」

 

「……あぁ。けどきっと、これからも色々あるよ」

 

暗殺に受験に沢山の行事、いつまで経っても暇になる事は無いだろう。

 

「まぁ、前にも言ったけどさ……これから、よろしくな」

 

「うん、よろしくね。颯君!」

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

  

防衛省 情報本部 会議室

 

「……というわけで、夏休みの暗殺の結果も考慮し、団体での暗殺に成功した場合、賞金を上乗せする。

実質の賞金アップ、総額300億円だ」

 

「そして……2学期の初めに、新たに暗殺者を送る。本人たっての希望だ。烏間、頼んだぞ」

 

「分かりました」

 

(しかし……彼女が来るとはな……)

 

驚きながらも、烏間は資料を眺めていた。

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

とある研究室

 

「夏休み暗殺の報告書は参考になった。最近の若者は発想が柔軟だねぇ」

 

資料を見ながらそう呟くのは、白装束に身を包んだシロと名乗る男。そしてその傍らでは、触手を操る少年がデカいトラックを破壊していた。

 

「いよいよ決着だ2人とも……罪深い生き物め。必ず、奴の息の根を止める」

 

「…………」

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

そして、祭りの会場にて。

 

「いやぁ、稼ぎました。9月分のお菓子はこれで困りませんねぇ」

 

祭りで荒稼ぎしたお金を、大事に数えている殺せんせーがいた。

そんな殺せんせーに、近づく影が1人。

 

「おや?君も楽しめましたか?明日からはまた勉強ですから、今日くらいは羽を伸ばして……」

 

「…………………、…………」

 

「……え?」

 

最後に1つ、花火が上がる。皆がそれに目を奪われる中、殺せんせーはその人物の言葉に、唖然としていた。そして一言呟く。

 

「……E組を……抜ける?」

 

それぞれの思いが交差する中、波乱の新学期が幕を開ける。

 

 




ようやく夏休みまで終えました。これまで見てくださった皆さん、本当にありがとうございました!
新学期はやりたい事だらけです!頑張って書いていきますので。
"ぼくらの"の方も並行して頑張っていきたいと思います。これからもよろしくお願い致します。
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