夕凪颯の暗殺教室   作:カゲロー@

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イメージ画を描いてみました。皆さんのイメージと違う点があると思いますので、そういうのが嫌な方は見ない方が良いかと。
……思ったより特徴が出なかった………

https://img.syosetu.org/img/user/135005/24136.JPG

貼っておきますね。


第59話 「竹林の時間」

始業式の翌日

HRの時間を座って待つ皆。しかし、場の空気は重い。それはやはり、1つぽっかりと席が空いているからなのだろう。

竹林自身は否定したけど、それでも彼もこの教室にとって大切な1つのピースだったのだ。

 

「……ハヤテ……なんか…やな空気だね」

 

「……まぁな」

 

心配そうに問いかけるシルヴィア。彼女なりに心配しているのだろう。

ちなみに、シルヴィアの席は俺と律の間、窓から二列目の一番後ろだ。

すると、ガラガラッと前の扉が開いた。そして入ってきたのは……

 

「おはようございます」

 

「………なんでいきなり黒いんだよ」

 

南の島の時のように真っ黒に日焼けした殺せんせーだった。前と同じ、前も後ろもよく見ないと判別がつかない。

 

「急遽アフリカに行って日焼けして来ました。これで先生も忍者!人混みの中にいても気づかれません!」

 

「「「恐ろしく目立つわ!」」」

 

3メートル級の真っ黒い物体が動いてたら誰でも怖がるわな…

そんな殺せんせーに対して岡野が言った。

 

「そもそもなんでそんな事を?」

 

「もちろん、竹林君のアフターケアの為です。自分から出て行った彼を止める事は出来ませんが、彼がクラスに馴染めるか、それをしばらく見守る義務がありますから」

 

 

「俺等もちょっと様子見に行ってやるか。危なっかしいんだよあのオタクは」

 

「なんだかんだ言って一緒にやってきた仲間だし」

 

「脱けんのはしょーがないけと、竹ちゃんが理事長の洗脳でやな奴になったらやだな〜」

 

前原、杉野、倉橋が次々に言い、クラスもそういう雰囲気になっていく。

……確かに、アイツが自分で出て行ったならもう止める事は無い。寂しいけど、それを受け入れるべきかな。

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「……なぁ」

 

放課後、昨日と同じように俺達は本校舎に来ていた。昨日とは違い、A組にいる竹林を見るために隠れて校舎の中を見ている。見ているのだが……

 

「なんだようるさいな。気づかれるだろ?」

 

「もう気づかれてるわ!!」

 

こんな大勢で見ていたら気づかないわけが無いのだ。一応烏間先生に教わったカモフラージュ技術を使っているが、植物の種類が違う所為で意味を成していなかった。

 

「結構うまくやってるみたいじゃない」

 

「むしろ普段より愛想良くね?」

 

「ケッ!だから放っておけって言ったんだあんなメガネ」

 

クラスメイトと普通に話す竹林を見て、安心したように言う皆。寺坂の言葉にもなんだかんだ言って棘が無かった。

この分ならきっと竹林はすぐA組の仲間入りが出来そうだ。心配は要らなかったかな。

 

「もう分かったんじゃねぇか?迷惑にならんうちに帰ろうぜ」

 

「いやいやもうちょい見てこうぜ」

 

「………お前等どこか楽しんでないか?」

 

全くこう言うのが好きなクラスですこと。

すると、浅野が竹林に近づいてきた。いつも通りの作り笑いを浮かべながら。少し話した二人は教室を出て行った。

 

「……やっぱ少し気になるな」

 

浅野が関わっている以上、E組に害のあるものである可能性が高い。竹林に干渉する事は出来ないが、アイツなら……

 

「優月」

 

「ん?どうしたの?」

 

「ちょっと、頼まれてくれないか?」

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

カツカツカツカツ…

 

「なぁ、あんな子見た事あるか?」

 

「さぁ?俺は知らないけど……」

 

……全く不本意だ。不本意なのだが……

 

「でも、結構可愛いよな……」

 

「あぁ……転校生かな?」

 

やぁ!再登場の颯ちゃんだよ!皆心待ちにしてたかな!?

 

……なんてテンションなわけが無い。基本E組は本校舎立ち入り禁止なので、自然に入る為にはE組じゃ無い人間でなければならないのだ。だから俺が優月と制服を入れ替え、南の島でやった様な簡単な変装をした。

ん?何で自分から行く気になったんだって?そりゃ……そんな事より浅野の企みを知る事の方が大切だからな。決して女装も良いななんて思ってたりはしないからな………しないからな!?

ひそひそと話している男子高校生の脇を通り抜けていく。廊下の突き当たりは、いよいよ理事長室だった。

 

「律、話しかけられたら俺の口に合わせて喋ってくれ」

 

「了解です!」

 

やっぱ有能過ぎる……

ポケットに入れたスマホにいる律にそう言い、俺は歩みを進める。

突き当たりからまず様子を伺う。部屋の前にいるのは竹林と浅野、丁度理事長室に入って行くところだった。

二人が入ったのを見計らって、ドアに聞き耳をたてる。

 

「ーー…明日は、この学校………となる私塾……いた日なんだ。ここでは………創立記念日として集会を行…ーー」

 

聞き取りにくいが、理事長センセの言っている事はなんとか把握できた。

周りに人がいないかもう一度確認し、俺は再び話を聞く。

 

「ー…一度、全校の前でスピーチをしてほしい……。目を通してみて」

 

「……これは!!?」

 

スピーチの原稿……だろうか。それを渡され、竹林は驚いていた。どんな内容なのか……まぁ、ロクな事じゃないんだろうが。

 

「これを……皆の前で……?」

 

「……同級生をクラスごと更正したとなれば、それは高校まで響く…一流大学の推薦だって見えてくる……」

 

……クラスの更正?竹林に何をやらせる気なのか?

 

「これは、君が強者に生まれ変わる為の儀式だ……かつての友を支配する事で、強者としての振る舞いを身につけるんだ」

 

「……やります………」

 

小さな声で竹林が答えた。"強者"という言葉に突き動かされた竹林は、やる事を選んだようだった。

 

「やべっ!アイツ等が出てくるじゃん!」

 

慌てて廊下の突き当たりまで駆け足で行く。突き当たりで曲がって、出てくる二人が去るのを待った。

 

「行った……かな…?」

 

それを確認し、壁に寄りかかって一息ついた。

何やら、竹林にE組を更正させるとか支配させるとか。イマイチピンとこないが、ロクでも無い事は分かった。

まぁ、後は竹林がどうするかだ。もしかしたら殺せんせーが何かするかもしれないが、俺にする事は無い。

そう思い、立ち去ろうとした。

 

『これは、君が強者に生まれ変わる為の儀式だ』

 

『彼は合理主義ですからねぇ。でも、もしかしたら彼の過去にも何かあるかもしれませんねぇ』

 

……ちょっと、俺も行動してみるか。

身を翻し、理事長室に向かう。ドアの前で軽く深呼吸し、ノックした。

 

「どうぞ」

 

『失礼します……』

 

俺の口パクに合わせて律が喋ってくれる。読唇術も使えるのん?有能過ぎる……

 

「おや?君は?」

 

『あ、えーと……律…自律思考固定砲台の新しい代わりです。一応挨拶にと』

 

どうにかそれっぽい事を言ってみた。どうせ後で嘘だとバレても颯ちゃんはもういないから問題無いだろう。

 

「ふぅん………それでどうしたんだい?夕凪君?」

 

「ふぁっ!?」

 

しかし、既にバレていたようだった。うそん、黒歴史確定でしょ……

 

「変装するならもっと凝った方がいい。髪と格好だけじゃ、よく見ればすぐ分かる」

 

「そ、それは助言をどうも……」

 

二度としないだろうがな。

ともかくバレてしまったので普通に話し始める。

 

「率直に聞きます。竹林に何をやらせるつもりだったんですか?」

 

「それを知って、君は何をするかい?」

 

「別に何も。俺が出来る事はありませんし……ただ、E組に危害を加えるなら黙ってるわけにもいかないんで」

 

「まぁ頑張りなさい。君に何か出来るとは思わないがね」

 

不敵に笑う理事長センセ。その様子は、自分の行う事に完璧の自信があるようだった。

その様子に、俺は少し会話してみたくなった。

 

「……アンタは、殺せんせーや……俺の育ての親によく似ている」

 

「……?」

 

「超人じみていて、それなのに教育に固執していて……でも、アンタは二人とはやはり違う。

………アンタからは、育てる理由ってのが見えない。

どうしてそんな冷徹に徹し切れるんですか?アンタほどの人間なら幾らでもやり方はあるはずなのに、どうして……」

 

ずっと疑問だった。E組制度を何故作ったのか、理事長の真意は何なのか……

ずっと前に殺せんせーに投げかけた質問を、本人にぶつけてみた。

 

「ただ合理的だから、それだけだよ。もう良いかい?」

 

しかし、理事長センセは話す気が無いようだ。笑みを崩さず、じっと俺を見る。

 

「……分かりました。でも、これだけは言わせて下さい」

 

ドアに手をかけながら、振り向いて俺は言った。

 

「この一年見てて下さいよ。あの超生物のせんせーが、この学校ごと手入れしてくれますから」

 

失礼しますと言って、教室を出た。その後の理事長センセがどんな顔をしていたのかは知らない。

 

「あれで良かったのですか?夕凪さん?」

 

「あぁ。大丈夫だ……あとはうちの先生が、全部手入れしてくれるさ」

 

律の疑問にそう答える。廊下を歩きながら、俺は何故か不敵に笑っていたのだった。

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

翌日、創立記念日の集会という事で再び全校生徒が昼休みに体育館に集まっていた。

校長のクソムカつく話を聞いた後、いよいよ竹林が出てきたのだった。事情を知らないE組の皆や本校舎の奴らからは騒めきが聞こえた。

そんな中、竹林が話し始めたのだった。

 

『僕の…やりたい事を聞いて下さい。

僕のいたE組は弱い人の集まりです。学力という強さが無かったために本校舎の皆さんから差別待遇を受けています』

 

淡々と言っていく竹林。しかし…

 

 

『でも、僕はそんなE組がメイド喫茶の次ぐらいに居心地良いです』

 

「「「「!!!?」」」」

 

その言葉に、この場の人間は一層驚いていた。けど俺は、そんな竹林の言葉に笑みがこぼれた。

 

「…ハハッ……メイド喫茶の次って…」

 

驚く皆に構わず竹林は続ける。

 

『僕は嘘をついていました。

強くなりたくて、認められたくて……

でも、E組でも役立たずの上裏切った僕を、クラスメイト達は何度も様子を見に来てくれた。先生は僕のような要領の悪い生徒でもわかるよう、手を替え品を替え工夫してくれた。

家族や皆さんが認めなかった僕の事を、皆は同じ目線で接してくれた』

 

E組の皆と顔を見合せ笑う。A組に行く竹林を応援していたものの、やはりE組にいてほしいという思いは皆にあったのだ。

 

『世間が認める明確な強者を目指す皆さんを、正しいと思うし尊敬します。

でも……僕はもうしばらく弱者でいい。弱い事に耐え、弱い事を楽しみながら、強い者の首を狙う生活に戻ります』

 

すると、ステージ脇から浅野が出てくる。撤回を求めているのだろうが……

すると、竹林は……透明な盾のような物を取り出した。

 

『理事長室からくすねて来ました。私立学校のベスト経営者を表彰する盾みたいです』

 

そう言って、懐から何かを取り出そうとする竹林。

 

「おいおい……マジかよ」

 

予想に違わず、竹林は木製のナイフを取り出した。そのナイフを高く振り上げながら言う。

 

『理事長は本当に強い人です。全ての行動が合理的だ』

 

そして………

 

 

パリィィイン!!

 

 

ナイフを思いっきり振り、盾を破壊したのだった。実はアイツが一番度胸あるんじゃ……?

 

『浅野君によると過去に同じ事をした生徒がいたとか。前例から合理的に考えれば………E組行きですね。僕も』

 

そう言って、竹林はステージ脇に消えていった。

 

「凄ぇな、アイツ…」

 

そう呟きながら、上を見上げた。

そこには黒くなった殺せんせーがニヤニヤしながらいた。きっと、殺せんせーが何か助言でもしたんだろう。

ともかく、今回はこっちの勝ちかな?理事長センセ?

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

6時間目

 

久しぶりの授業での訓練だった。俺達の前に立った烏間先生は、何やら馬鹿でかい本を何冊か持って話し始めた。

 

「二学期からは新しい要素を暗殺に組み込む。その1つが火薬だ」

 

「「「か、火薬!?」」」

 

「空気では出せない大きなパワーは魅力だが、危険な仕様は絶対厳禁だ。

そのため……火薬の安全な取り扱いを一名に完璧に覚えてもらう」

 

「うわぁ……分厚…」

 

「ヤダよあんな国家資格まで……」

 

「……嫌だよ…なぁ?」

 

「…いや、何で皆俺の方向くんだよ!」

 

全員が一斉にこっちを向いて来た。やめてその視線……

 

「だって、お前なら全部一目見れば良いだけじゃねぇか」

 

「そーだそーだ」「やれやれ〜!」「もっと役に立てー」「爆ぜろリア充!」「お前なら余裕だろー?」「女装趣味ー」

 

「誰だ女装趣味っつったのは!?」

 

……まぁ、俺が適任か。

そう思い、手を挙げようとした時だった。

 

「いや、夕凪は後方支援より戦闘向きだ。扱うなら他の人間の方が良い」

 

そう言って立ち上がったのは、竹林だった。

 

「勉強には役に立ちませんが……まぁどこかで役に立つかもね」

 

そう言ってヒョイと分厚いマニュアル本を受け取った。そんな彼に烏間先生はニヤリと笑い、言った。

 

「暗記できるか?竹林君?」

 

「はい。二期OPの替え歌にすれば余裕ですよ」

 

こうして再び竹林が加わり、新学期はようやく幕を開けた。

 

 




次からは少し落ち着きますね。まずはシルヴィアの紹介からでしょうか?
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