夕凪颯の暗殺教室   作:カゲロー@

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かなり間が空いてしまった……
待っていた方、本当に申し訳ありませんでした!
しばらくこの作品を続けて更新いたしますので、よろしくお願いします!!

……前回がシリアスだったから繋げるの大変だった……

それでは、第2章!開始です!


第2章 『サクリファイス』
第61話 「茅野の時間」


「サクリファイス……か……」

 

目の前のカップに入れられたコーヒーを見つめながらそう呟く。入れたミルクがコーヒーに混ざっていくのを見ていても、自分の思考がまとまる気配は無かった。

命を付け狙われているとは元より聞いていたが、それはどこかのヤクザかマフィアかと思っていた。十分脅威なのだが、今は殺せんせーがいる。何より烏間先生率いる防衛省特務部の人達がついているのだ。よって、大した心配はしていなかった。

しかし蓋を開けてみれば、ソイツはあの"死神"に届きそうだった殺し屋だと言うのだ。そりゃ、身の危険を感じざるを得ない。正直、結構怖がってたりするのだ。

 

「颯君?」

 

ふと優月にそう呼ばれる。しばらくぼぅっとしていたのだろう、彼女は少し不安そうにこちらを見ていた。

 

「ん?あぁ……悪いな」

 

「……今悩んでるのって、サクリファイスっていう殺し屋の事?」

 

「……ん……まーな……」

 

「あー……えーとね……」

 

そう言うと、優月は目を泳がせながら言葉が出てこないようだった。そりゃそうだ、"颯君なら出来る"も気にしなくても大丈夫"も、全て無責任な言葉に聞こえるだろう。

 

「優月」

 

「……うん?」

 

「こんなこと言うのもあれだけどさ、いざとなったら……お前はーー」

 

そう言いかけて、ふと優月の方を見る。

急に優月はムッとした顔になる。何か気に触る事でも言っただろうか?と思い、問おうとすると……

 

「ど、どうしたんーームギュグゥ⁉︎」

 

いきなり俺の両頬をつまみ、つねってきた。痛いッ痛いって!!

 

「颯君」

 

「ふ、ふぉのまへひほれをはなひてーー(その前にこれを離してーー)

 

「もし危険になったらその時は俺を見捨てろ、とか言おうとした?」

 

「!!?」

 

驚いてフガフガ動かしていた口を止めてしまう。まさにそれが、言おうとしていたことだったから。

 

「はぁ、図星みたいだね………いい⁉︎どんな事があってもさ、自己犠牲とか誰も望んでないからね!どれだけ颯君が主人公みたいでも、自己犠牲を美徳と思っても、それで一人欠けたら、この暗殺教室は成り立たないんだから!何より……」

 

ふぁ、ふぁふぃぅおひっ(な、なにを言っ)……っふぇいひぎひゃぁあ!」

 

俺の頰をつまむ力の強さが段々強くなっていき、声にならない悲鳴が上がる。

しかし、少し俯いた優月が次に見せた顔が、今までに無いくらい真剣だった。またも俺は、口ごもる。

そして、口を開いた優月が発したのは……

 

 

「恋人の私を残してそんなことさせないからね!颯君が自分を犠牲にするなら………私は自殺する!」

 

 

そう、はっきり言ったのだった。

 

ふぉまふぇっ!?(お前っ!?)ふぁふぃふぉいふふぇぇーー(何を言ってーー)

 

「だからっ!」

 

少し大きめに声を上げる優月。そして、再び俺を見据えて言った。

 

 

「私を殺さないでね。颯君」

 

 

「ふ……ふぁい……」

 

ニッコリとそう言う優月に、俺はそう返すしかなかった。ようやく頰の手を離してくれた優月は腰を下ろし、自分の頼んだ紅茶に口をつける。

これこそ南の島でのシルヴィアに負けず劣らずのヤンデレのようなセリフだったが、俺は分かっていた。俺の頰に力を入れる彼女の手が、少しだけ震えていたことを。

それほど、俺を大事に思ってくれてるんだ。決して強くないのに、死をも覚悟してくれた。他ならぬ俺の為に。自分が俺にとって、かけがえのない存在だと、信じて……

今更になって少し疑問に思ってしまった。自分の境遇も考えずに単純な恋心に身を任せてしまったことに。この少女に、これだけの業を背負わせてしまったこと……それが、正しい選択だったのだろうか……

ふぅ、とため息をついて、一旦思考を止めた。コーヒーを少し啜り、笑って言う。

 

「……全く、まだ結婚もしてねぇのに、一生ついていくみたいな宣言されちゃったな」

 

「ハハハ、ちょっと気を急ぎ過ぎたかな」

 

「でも………ありがとな」

 

「……うん!」

 

きっと、俺の恋人である不破優月は、俺から手を離さないだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……あれぇ?夫婦の会話は終わり?」

 

 

「「ッッ!!?」」

 

唐突に、隣からそんな声が聞こえた。その悪魔のような声音は、とても聞き覚えのあるもので……

 

「どうせならもっと言っちゃってよ!結婚の約束でも良いから!」

 

声の主はクラスメイトの中村莉桜、そしてその後ろには、千葉龍之介と速水凛花がいたのだった。

 

「いやいや〜、何やら神妙な顔つきで話していると思って静かに近づいてみれば、夫婦でイチャコラしてるだけだったとは〜」

 

「んなっ!イチャコラなんかしてねぇ……ってかこの席に座んなって!」

 

三人は俺達の席に座ってくる。なんともメンドくさい奴が来たもんだ……

今更だが、今がどういう状況か言っていなかったな。

ここは椚ヶ丘駅近くにある喫茶店だ。学生にも人気で、他校の学生が何組かいたりしている。そこに、俺と優月は放課後に来ていた。

サクリファイスが俺の命を狙っている、そう聞いてから、俺の中では中々考えがまとまらなかった。そんな中、優月は俺を察してここに誘ってくれた。そして冒頭に戻る、ざっと言えばこんな感じだ。

 

「いやぁ、近づく私達にも気づかずに二人の世界に入り込むなんてねぇ〜」

 

「い、一体いつから居たの……?」

 

「確か……」

 

「"サクリファイス……か……"のとこだな」

 

「ほぼ最初からじゃねぇか!?」

 

声をかけてくれればいいのに、ほんと性格悪いな!てかいつからスナイパーコンビはゲス側についたんだ!?

 

「夕凪も言うよね〜。"まだ"結婚してないってことは、これからあり得るってことなのかなぁ〜?」

 

「んなっ!ちがっ……//」

 

「え?違うのぉ?」

 

「………くっ///」

 

そう言われ口ごもってしまう。否定できるわけないだろうが卑怯者め……

すると、速水が呆れたように口を開いた。

 

「ったく、考える前にやれる事やりなよ。アンタは」

 

「そうだな。サクリファイスってのは何か知らないけど、まず殺せんせーや烏間先生に相談するのが先だぞ」

 

千葉の言葉にハッとする。うちには頼れる先生達がいたのだ。彼らに相談するのが、第一にすべき事だろう。

 

「そうか……そうだな。今度相談してみるよ」

 

ありがとな、とその場にいる皆に告げ、俺は気恥ずかしさを隠す為にコーヒーを啜った。

 

「さーて、私達も何か注文しよっと」

 

「とりあえず私はコーヒーでも」

 

「優月、俺らは何かデザートでも頼むか」

 

「じゃあ宇治銀時丼とかーー」

 

「あれはあったとしてもやめとけ!」

 

某マンガの殺人的なスイーツを想像して必死に止める。仕方なく無難にチョコサンデーにしていた。俺はプリンの小さめのパフェ、中村は紅茶、千葉と速水はコーヒーを頼む。

 

ピロリン♪

 

ひと段落つき、しばらく他愛もない会話をしていたところで不意に、ポケットの中のスマホが音を鳴らす。

そして、それは俺のスマホだけではなかった。

 

「クラスのグループか……」

 

皆のが一斉になったっていうことはそういうことだろう。5人で取り出し、開いてみる。そこには……

 

茅野カエデ: 暗殺計画を考えたよ!!

明日からの三連休で準備するから、皆協力して下さい!m(*_ _)m

各自エプロンを持って来て!!

 

そんな文面が送られてきた。

 

「暗殺計画……茅野がか?」

 

「エプロンってことは、何か料理系の暗殺なのかなぁ」

 

「毒も仕込み弾もあらかた試したと思うけどな……」

 

そんな会話をしているうちに、ウエイターさんがデザートやドリンクを運んでくる。少し話を聞かれていたのか若干顔を引きつらせていたので、少し小声で話す。

 

「でもさ、茅野ちゃんののことだからきっと、甘いものとかスイーツとかで考えてるんじゃない?」

 

「うーむ、確かに……」

 

「殺せんせー、甘いものに目がないもんね」

 

大体分かってきた気がする。殺せんせーの大好きなスイーツで警戒を解かせ、その隙に暗殺。大まかはそんなとこだろうな。

 

「じゃ、明日はそれに使うスイーツ作りってわけかな」

 

そう言いながら、先ほど頼んだデザートのカップを持って見せる。

 

「例えば、こんなプリンとかさ」

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「ぷ……プリンとか……って……ッ!」

 

翌日、学校に来てみて驚く。作戦は大体予想通りだった。殺せんせーが目がないデザート、今回は廃棄された卵を手配し、作ったプリンを使って食べてる間に暗殺を仕掛ける。

今までと違うのは、新たに竹林が学んだ火薬を使い、殺傷力の高い爆弾を使うこと。

そして……肝心のプリンが……あまりにも……

 

「大きすぎるだろッ!!?」

 

目の前に鎮座するのは、プリンの型であろう容器なのだが、それの高さは俺の身長の倍以上もあった。

 

「まさか茅野……これって」

 

「そう、今から皆で巨大プリンを作りたいと思います!

名付けて……プリン爆殺計画!!」

 

どうやら先日、殺せんせーとプリンを食べていたらしい。そしてその時言われたのが……

 

『いつか自分より大きいプリンに飛び込んでみたいですねぇ〜。お金無いからできませんが』

 

「ええ叶えましょうそのロマン!!ぶっちゃけ私もそれやりたいけど!!」

 

目をギラつかせながら熱弁している茅野。やたらとテンションが上がっているようだ。

 

「プリンの底に爆薬と対先生弾を密封しておき、殺せんせーがそこに着くと同時にドカン!!ってわけ!」

 

「……やってみる価値あるかもな!」

 

「殺せんせー、エロとスイーツには我を失うとこあるもんな……」

 

「それに、後方支援に徹していた茅野が前に出て計画してる意外性がある」

 

そんな言葉から、茅野の熱意が伝染していく。磯貝の掛け声におー!と答え、茅野の指示でプリン作りを始めていく。

平和だなぁ、としみじみ思いながら苦笑する。

 

「ハヤテ、ハヤテ……」

 

すると、シルヴィアが袖を引っ張りながら話しかけてきた。

 

「ん?何だ?」

 

「ここの暗殺って……いつもこんな感じなの……?」

 

「え?…………あぁ、普通暗殺って言ったら、隠密に迫ってナイフを振ったりするもんだもんな」

 

俺の言葉にコクコクと頷くシルヴィア。彼女のことだ、今まで暗殺にはとても密接に関わってきたんだろう。

 

「まぁ……うちの標的(ターゲット)はあのマッハで動くタコだからさ、正攻法は殆ど試したさ。それこそ、俺たちより強い軍や暗殺者がな」

 

でも、と言葉を続ける。

 

「未だに殺せんせーは殺せてない。正攻法だけじゃダメなんだよ。だから、油断させたり奇想天外なことをしたりして殺せんせーを狙う、あの手この手で俺らは暗殺をやってきた」

 

「……ふーん………なんか……楽しそうだね……」

 

笑顔で巨大プリン作りに取り掛かる皆を、微笑みながら見ているシルヴィア。

そんな彼女の横顔を見ながら、フッと笑う。

 

「……まぁな。楽しいよ」

 

この教室での暗殺の日々は、とても楽しい。

 

 

「ところでハヤテ………私もプリンに飛び込みたい」

 

「……は?」

 

何を言い出すのだろうか?と、聞き返そうとする。しかし、シルヴィアはわなわなと震えだし……

 

「だって……だって夢じゃん!……スイーツ好きにとってこれほどやりたい事も無いんだよ!?ねぇハヤテは分かる!?」

 

「いっ、いや分かるって言われても、てか何でそんな饒舌ーー」

 

そう言いかけた時、更に人影が。

 

「そうだそうだ!!私にとっても夢なんだぞ!!?」

 

「しっかりしろ計画発案者!!」

 

茅野までもが叫びだし、スイーツ好き二人が騒ぎだす。

 

「「私もプリンに飛び込みたい!プリンに飛び込ませろぉーー!!」」

 

「「「「100億とったらやれや!お子様コンビ!!」」」」

 

騒ぐ二人を羽交い締めにして、俺たちは淡々と準備を進めるのだった。

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

馬鹿でかいタンクローリーから大量の溶き卵が、同じく馬鹿でかいボウルにドバドバと投入されていく。

 

「あと、基本の材料は砂糖に牛乳、バニラオイル。順次投入していってね」

 

「でもカエデちゃん、前にテレビで巨大プリン失敗してたよ?自重で潰れちゃって」

 

その倉橋の言葉にも、何てことないと言うように茅野は言う。

 

「その対策として、強度を増すために凝固剤にはゼラチンの他に寒天も混ぜてあるの。それにゼラチンより溶けにくいから、9月の野外でも崩れにくいの」

 

その後、一班から順に溶かした材料を型に流し込んでいく。サイズがサイズなので、クレーン車で持ち上げながらの大掛かりな作業となった。

すると、茅野が何やら箱を持ってきた。中を覗くと、そこにはフルーティな色のブヨブヨした物体があった。

 

「はい!これを時々投げ入れて」

 

「……何これ?」

 

茅野が渡してきたそれを、片岡は持ちながら疑問を放つ。

 

「オブラートで包んだ味変わりだよ。ずっと同じ味ばかりで飽きないように、フルーツのソースやムースが溶けるようになってるの!」

 

「へぇ……食べる側にも気遣ってるってわけか。暗殺するのに律儀だなぁ」

 

「まぁね。大好きなプリンだし、折角ならこだわりたいからさ。

あ、あと全部流し終わったらパイプを通して冷却水を流す。これだけ大きいと外気だけじゃ冷えないからね」

 

全て抜かりなく計画している茅野に、一同は思った。

 

(((((す、すげぇ……!)))))

 

「どれだけプリン好きなんだよ……アイツは」

 

「前はプリンで朝昼晩いけるって言ってたな……」

 

二班の男子達とそんなことを話す。卵をかき混ぜながら、茅野が大きな声で指揮するのを見ていた。

そこでふと、疑問が浮かんだ。

 

「そういえば、茅野っていつ椚ヶ丘に来たんだ?確か入学式にも居なかったし、編入したって話も聞かなかったし」

 

「ん?……あぁ、夕凪は素行不良だったか」

 

「言い方が悪い……」

 

岡島の言葉に少し肩をすくめる。そういえば俺って素行不良に成績不振だった気が……あれ?俺が一番どうしようもない奴?

 

「4月に編入してきたんだよ。夕凪や殺せんせーがここに来る、ちょっと前に」

 

三村の言葉でそんな新事実を知り、少し驚く。

しかし、ここでさらなる疑問が浮かぶ。

 

「じゃあ何で……あいつはE組にいるんだ?編入試験ってのに受かったなら、A〜Dのクラスにいるはずだろ?」

 

「え?そりゃ……えーと、何でだろ?」

 

千葉は迷ったようにそう言った。4人も、その矛盾に気づいたようだった。

んー……と、手を止めて考える。すると……

 

「ちょっとニ班の皆!?サボってないで頑張ってよ!」

 

「うぉっ!茅野!?」

 

当の本人がいきなり脇から話しかけてきたので驚く。

 

「も……もう混ぜ終わったから持って行っていいぜ」

 

「茅野ちゃーん!クレーンの準備できたよー!」

 

俺がそう言うと、ちょうど中村がそう叫んだ。はーい!と答えて向こうへ向かっていく茅野。

 

「……あ、さっきの事聞き忘れたな」

 

「まぁ忙しいからな。後にしとけよ」

 

そう言って俺達は、型へ流す作業へと移る。

まぁ、E組に来る理由は大抵本人にとっても苦いものだからな。ここは聞かないでおくようにしよう。

……案外あのちっちゃいのが、狡猾な軍師よりナイフや銃の達人より、天才暗殺者よりも脅威だったりして。

 

「……なーんてね」

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

そして二日目。

一晩置き、昨日型に入れたプリンは十分に冷えているだろう。

パイプを抜いて空気を入れ、型枠を外す。

最後に、緩めのゼラチン寒天でプリン肌を滑らかに整え、カラメルソースを上にかけてバーナーで炙れば……

 

「「「「できたぁぁぁあっ!!」」」」

 

全員が巨大プリンの完成に歓声を上げる。出来上がってから改めて、その大きさと完成度に圧倒された。

その後、殺せんせーを呼んでいよいよ爆殺計画に移る。

 

「……こ……これ……!これ全部先生が食べていいんですか!!?」

 

「どーそどーぞ。廃棄卵を救いたかっただけだから」

 

「勿体無いから全部食べてね〜」

 

中村と倉橋の言葉に、もちろん!と涙を流しながら答える殺せんせー。心底嬉しそうな様子に思わず苦笑した。

プリンに飛びかかる殺せんせーを尻目に俺らは教室に戻った。起爆のタイミングを、伺うために。

起爆のタイミングは殺せんせーが底に近づくとき。周りのプリンが無くなり、爆薬に取り付けた小型カメラの画面に、うっすら光が映った瞬間……!!

竹林がリモコンを握る。その瞬間を待つのに、俺も手に汗を握った。

 

「プリン……爆破……」

 

すると、窓に手をついて見守る茅野がそう呟いていたのに気づく。

 

「プリネーゼ………沢山の実験……プリン……念願の夢………プリン……プリン…プリン……」

 

「か……茅野……?」

 

まさかと思い、茅野に声をかける。肩に手を当てようとした、その時だった。

 

 

「ダメだぁぁぁぁあっ!!!」

 

 

茅野は突然、叫びだした。

その声に皆が驚くが、茅野は止まらない。

 

「愛情込めて作ったプリンを爆破なんてダメだぁぁああ!!そのリモコンを寄越せぇぇぇえ!!」

 

そう叫びながら竹林の方へと向かっていく茅野。慌てて俺は後ろからその背中を羽交い締めにする。

 

「ばっかお前!爆破する為に作っただろが!!計画台無しにする気か!?」

 

「うっさい!このままずーっと校庭でモニュメントとして飾るんだい!!」

 

「「「腐るわ!!」」」

 

茅野のアホな考えに皆でツッコむ。

ちょ……なんでこいつこんな力強いの!?

 

「おい!お前らも手伝え!」

 

「ったく!プリンに感情移入してんじゃねーよ!?」

 

寺坂も一緒になって茅野を抑える。よし、だいぶこれで抑えられる……

 

「……………るい」

 

「……え?」

 

更に、震えた声で呟く人物が。

 

「殺せんせーばっかズルい!!!私もプリンに飛び込みたい!!」

 

シルヴィアが、そう叫びだしたのだった。

 

「ちょ、そいつ抑えろ……」

 

俺の叫びに、岡島と前原がシルヴィアを抑えるべく飛びかかる。しかし……

 

「大人しくしてrブフォエッ!?」

 

「「「岡島ァ!!」」」

 

見事な飛び蹴りが岡島の顔に炸裂。一撃でノックダウンした。や、やべぇぞ、あいつが動き出したら止められねぇ……

 

「二人ともやめろ!100億あればこれより巨大なプリンだって作れるだろが!」

 

「うるさいヘタレ!」グサッ!

 

「へ……へた」

 

「女装趣味のくせに!」グサッ!

 

「じ、じょそ……そんーー」

 

「キモオタ!」「素行不良!」ナルシスト!」「シ○太郎!」「自家発電三郎!」

 

グサッグサグサッ!

 

「………ぅぅ……」

 

「「「もうやめたげて!?」」」

 

二人の言葉にハートがボロボロになる俺であった。

 

「爆破するくらいなら私達も飛び込むぞぉぉ!!」

 

「おぉぉぉお!!」

 

「こいつらを止めろぉ!!」

 

「優月……こんなヘタレで女装趣味で自家発電な俺で……ほんとゴメンなさい」

 

「そんな事ないから!顔上げて!?」

 

「止めろぉ!!グハッ!」

 

「プリィィィィイン!!」

 

「すいやせんしたぁ……生きててすいやせんしたぁぁ……」

 

「颯君!?」

 

暴れる二人に取り押さえようとする男子達、そして体育座りで謝り続ける俺。

客観的に見れば、カオスそのものだ。

するとそこに……

 

「ふぅ……ちょっと休憩」

 

なんと、殺せんせーは起爆するはずだった爆弾を持って教室に現れたのだった。

 

「遺物混入を嗅ぎ取ったのでねぇ。地中に潜って外してきました。

プラスチック爆弾の材料には強めの匂いを放つものもある……竹林君、先生の鼻にかからない成分も研究してみてください」

 

「………っ……はい」

 

殺せんせーの言葉に竹林は悔しそうに返した。

暗殺失敗、まぁいつもの結果でもあるそれに、皆は苦笑する。

すると殺せんせーは一瞬消えた。次に姿を現した殺せんせーが持っていたのは、器に小分けにされたプリンだった。

 

「プリンは皆で食べる物ですよ。綺麗な部分を分けておきました。

ただし……廃棄される予定の卵を食べるのは、経済のルールに反します。食べ物の大切さと合わせて次の公民で考えましょう!」

 

そんな殺せんせーに、はーい!と答える。

プリンがクラス全員に行き渡り、それぞれがそれを楽しんでいた。

 

「惜しかったね茅野。むしろ安心した?」

 

渚の言葉にあはは……と笑う茅野。暗殺には失敗したが、このプリンを前に皆も満更でも無さそうだった。

 

「ったく、我を忘れてこっちを攻撃してくるなよ……」

 

「はは……ゴメンね、夕凪君」

 

「ゴメン…じょs………ハヤテ」

 

「お前は今何を言いかけた!?」

 

俺の叫びを無視してシルヴィアはプリンを口に運んでいた。ったく、と呟きながらも、俺もいちごムースが溶けていたそのプリンに舌鼓を打つ。

 

「でも、茅野がここまで徹底してやるとは思わなかった。楽しかったし、意外だったよ」

 

「ふふ……本当の刃は親しい友達にも見せないものよ」

 

そう言って茅野は、プリンの器を殺せんせーに向ける。標的(ターゲット)を狙う、暗殺者のように。

 

「また殺るよ。ぷるんぷるんの刃だったら、他にも色々持ってるから」

 

ほぅ、そりゃ楽しみだ。そう思いながら茅野を見つめた。

この教室では誰もが暗殺者だ。

リミットまではまだ半年、どんな意外性が見れるのか……楽しみだ。




何話か本編沿いの話になります。
次はケイドロですね!

あ、あと、クリスマスには"ミカンと炬燵(ry"の方も更新します。クリボッチ確定の僕にどうか付き合ってくださいませ。
ゲストに来てくれるのは……我らが愛すべきあの方です!
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