プロローグ 「墓参りの時間」
「・・・久しぶりだな、ここへ来るのも・・・」
俺、夕凪颯は、墓参りに来ていた。
「さっき朋樹のところへ行ってきたんだ・・・此衣、やっぱり何で二人とも俺を助けたのか・・分かんないや。もちろん、今生きているのが二人のおかげなのは知ってる。だけどさ・・・」
そして俺は、想いを吐き出した。
「・・ずっと三人は一緒だったのに、何で俺だけ生きてるのかな・・」
まあ、こんなことを墓の前で言うのは不謹慎だろう。
「すまん・・また夏には来るよ。」
そう言って俺は、相良朋樹(さがら ともき)と橘川此衣(きっかわ このえ)の墓を後にした。
自転車のカギを解除し、帰ろうとしたとき、誰かが近づいて来るのが分かった。振り向くとそこには・・・
「玄斗さん・・・」
「・・やぁ、颯君。」
霧島玄斗(きりしま くろと) 俺が居た施設の管理人で、俺の第二の親のような人だ。
俺の本当の親は、5歳のときに殺された。二人とも警察官だったので、恨まれることがあったのだろう。幼くして両親を亡くした俺を施設に引き取ってくれた。俺の恩人なのだ。
ちなみに、施設には結構な人数の子供がいる。それを養って学校まで連れて行っているこの人の通帳を見てみたい。
「・・どうかな、学校生活は。勉強頑張っているかな。」
「・・すみません。まだ、勉強にやりがいは感じられません。それに、あの学校では良い学校生活なんて送れませんよ。」
「すまないね。椚ヶ丘のあの仕組みは知らなかったんだ。勉強にやりがいを感じれば、少しでも事故のことを忘れられるかと・・・」
「玄斗さんには感謝してますよ。まぁ、どっちみち俺には完全記憶能力がありますからね。」
俺は、《完全記憶能力》と呼ばれる能力を持っている。ちなみに自閉症ではない。この能力だけ何故か生まれつき
持っているのだ。
何かアニメの特殊能力みたいでカッコ良いが、良いことだけとは限らない。
「引っ越してもあまり意味はありませんでした。ふとしたときに、鮮明に思い出してしまうんですよ。
・・二人が血溜まりの中で倒れている姿を・・」
そう、忘れられないのだ。どんな嫌な記憶でも。二年経った今でも、事故のときの光景をはっきりと覚えている。
ちなみに、俺は今、施設を離れれば少しは忘れられると考えて一人暮らしをしている。
「・・あともう一つ、暴力沙汰になってしまって、特別強化クラスに入ることになりました。
今は停学中です。」
「君が暴力なんて、何かあったのかい?」
「ちょっと、二人のことで気に触ることを言われたので・・・」
「・・そうなんだね。」
「まあ、それがなくても成績足りなかったですし・・・
・・・すみません。椚ヶ丘を勧めてくれた玄斗さんを裏切ることになってしまって・・・」
「そんなことなら良いんだ。もし辛いなら、近所の公立中学校に転校しても良いんだよ?」
「良いですよ。転校するのも面倒ですし。」
「そうか・・・辛いことがあったら相談してね。いつでものって上げるから」
「・・分かりました。」
俺は軽く礼をして、自転車を進めた。
この人には感謝しきれないな。この優しい笑顔の人に何度も助けられてる。そして俺は、その恩を仇で返している。
自転車に乗り走り出した俺は、そんなことを思い、呟いた。
「何やってるんだろうな・・・俺は・・・」
帰宅した俺は、部屋を見渡した。
テーブルの周りには漫画や小説が積まれていて、棚にはゲームのケースが乱雑に置かれている。
一応水回りなど必要最低限の所は片付けてあるが、全体的に見るとやはり散らかっていた。
俺はゲームの電源を入れた。引っ越ししてからはずっと、漫画や小説を読むか、ゲームをするかしてきた。
もちろんその程度で勉強が間に合うはずもなく、俺はE組に落とされた。
まあ、本当はあいつらを殴ったからなのだが。
けれど、俺はあまり気にしていない。おそらく今までとは変わらないだろう。今までもずっとぼっちだったし、差別なんてどうでも良い。
変わるとすれば毎日山登りしないといけないことだろうか。
・・・結構変わるじゃん。やっぱ転校しようかな・・・
まぁ、これ以上玄斗さんに迷惑を掛ける訳にもいかないだろう。転校して浮くのも面倒だ。今まで通りでいよう。
・・いつか、俺も変われるのだろうか・・・
最後にこんなことを思いながら、俺はゲームの世界にのめり込んでいった。
明日から始まる新学期。そこで、落ちこぼれのクラスメートとタコのようなせんせーと過ごして、自分が変わっていくことなど、知るよしもなかった。
拙いですが、今後もよろしくお願いします!