ただそれだけで突っ走ります。
気が付くと、白い空間に立っていた。目に映るのは一面の白。
そこにたった一つあるのは、木製のみすぼらしい椅子。
俺、
「あぁ。俺死んだんだっけ。」
普段の俺なら考えられないような、冷静さだ。そう自分で自己分析できている時点でおかしい。
いつもの俺は、感情的なはずだ。怖いものは苦手。痛いものも苦手。人を傷つけるのも苦手。
こんな状況ならば、発狂し、泣いているだろう。なぜか、この空間ではそんな気にならない。
「死んでから精神が成長するとか、ふざけてるだろ。」
自嘲気味にそう呟くと、どこからか声が聞こえる。
「それは違います。あなたの精神が成長したのではなく、この空間の持つ精神安定的な作用のせいです。」
声と共に、足音が後ろから聞こえる。振り向くと、そこに一人の青年が立っていた。
ちょっと、イケメンで腹がた・・・たない?
「僕がイケメンですみませんね。この姿の方が色々と都合がよいのですよ。」
「ナチュラルに心読むなよ・・・。」
やはり、今の俺はおかしい。普段なら鋭いツッコミを入れていたはずなのに。
高校でもそんな立ち位置だった。トップカーストの四番手ぐらいの立ち位置で、盛り上げ役。
そんなことは、どうでもいい。今は自分の知的好奇心を満たさなければならない。
「あなたは、いったい・・・?」
「あぁ。僕はあなたの世界で言うところの《神》ってとこですかね。」
にわかには信じられないようなワードが聞こえてくる。だが、不思議と疑問や懐疑心などは生まれてこない。やはり、この空間の効果だろうか?
「それで、神様は俺に何の用ですか? もしかして、転生案内とかそういうものですかね?」
トップカーストに所属しながら、そういったジャンルの物語は読んでいた。
言うまでもなく、誰にも言っていない。こんなことが知れたら、一気に底辺だ。
話は変わるが、俺はIS(インフィニット・ストラトス)という小説が好きだった。
なかでも、ヒロイン候補の一人であるシャルロット・デュノアというキャラクターが好きだった。
「どれぐらい好きか?」と聞かれたら、「自分のすべてを投げ打ってもいいぐらい、好きです。結婚しよう。」と、プロポーズするぐらい好きである。
なぜ、今こんな話が出てくるかというと、"転生"というジャンルには、自分の好きな世界にいけるといったものが多い。
これが、その類なのではないかと期待していたからである。
「話が早いね。そうだよ。君は転生する権利が与えられた。というか、僕が気に入ったから転生させてあげることになったんだ。いやー、なかなかいないよ。あんな死に方した人なんて。
好きな小説を高いところから取ろうとしたら、足を滑らせ、頭から落ちて死ぬ。
それだけなら普通なんだけど、おもしろいのは、小説の表紙が折れ曲がるのを阻止しようと、本を庇って自分から頭を差し出すところだよね。いやー、滑稽だね。あっはっは。」
「しかたないですよ。IS5巻はシャルが表紙だったんだ。むしろ、身を呈して守れたなら本望ですね。」
明らかにバカにされているのに、不思議と口に出るのは冷静な言葉ばかり。
まあ、トップカーストの連中に自分の趣味を隠しながら生きるのも疲れていたからいいのかもしれない。
「それで、ここまでバカにしたんだ。もちろん、転生先はISの世界ですよね?」
「あぁ。そこは気を利かせておいたよ。むしろ、そこの世界以外だと君が納得しないでしょ?」
「あ、ありがとうございます!」
感動のあまり涙がこぼれ落ちる。
「この空間では涙なんて存在しないはずなのにね。ナツヒ君。君の魂の力はすばらしいね。これなら、僕が与える特典も受け入れることができそうだね。」
「特典・・・ですか?それって、転生とかによくあるやつですよね。常人離れした力とかそんなものですか」
「そうだね。何か希望あるなら聞くけど、なんか希望とかある?」
「少し考えさせてください。」
ISの世界に行ける。それだけで心が舞い踊る。
俺は何がしたい?いや、答えは一つだ。
「俺は・・・、シャルロット・デュノアを守れる力が欲しい。たった一人の
「わおー。僕の思った通りの答えだね。そう言うと思って、これを用意したよ。」
神がそう言うやいなや、閃光が俺の体を包む。思わず目を閉じる。
「いやーごめんごめん。もう目を開けていいよ。」
目を開けると。
「君の専用機。僕は黒騎士って呼んでるよ。まあ、性能は第三世代ぐらいってとこかな?
これが君への特典だよ。」
そう神が言うと、黒騎士は輝きだし、その輝きが収まると、黒騎士のあった場所には黒の指輪が落ちていた。
神がその指輪を拾い上げ、俺に手渡してきた。
「これが、黒騎士の待機形態、好きな指にはめるといいよ。」
「わかりました。」
俺は、自分の右の中指に指輪を通した。
「薬指じゃないのは残念だけど、まあ、今はそんなもんだね。あとは、ある程度の身体能力と剣術の心得を特典として与えるね。やっぱり騎士っていったらお姫様を剣で守るものだからね。」
「ありがとうございます!」
「いやいや、お礼なんていらないよ。僕は君が気に入っただけなんだ。君の暮らしぶりをここから見てるから期待してるよ。じゃあ、そろそろ時間だね。」
俺の体を光が包み込む。なんだか、ふわふわした感じだ。
「最後に一つだけ。よい人生を。」
最後に見えたのは、神の心底楽しそうな笑みだった。
こうして、俺はISの世界に転生した。
よろしくお願いします。