Admiral of Roughneck~From black to white~   作:八意 颯人

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第93話「千川の決意」

1300 舞鶴鎮守府内のグラウンドにて

 

大和「八意先生、薬を持って来ました」

 

永琳「ありがとう大t……え……これ全部……佐世保の医務室に保管してある薬?」

 

大和「はい、そうですが?足りませんか?まだ有りますよ」

 

大和は長門から受領した大量の医薬品が入っているであろう山積みになっている段ボールを片手で負傷者を治療している永琳の所に持ってくると、永琳は華奢な大和が大量の医薬品が入っている段ボールの山を片手で持って来た事に驚いているのか、目を瞬きをし、少し狼狽えながら聞いた

 

永琳「じゅ……充分過ぎるよ、ってか重くなかった?」

 

永琳は大和の怪力に驚愕しつつ、大和を気遣うと、大和は某鬼のライダー(仮面〇イ〇ー響鬼)みたいな砕けた敬礼(ポーズ)をし、微笑みながら答えた

 

大和「鍛えていますので……ってね♪」

 

永琳「そ……そう……なら、それ全部、鈴仙に渡して……」

 

大和「あれ?スルーですか……受けると思ったのに……分かりました、鈴仙さん、これを御願いします」

 

大和は自身の冗談(ジョーク)が永琳に通用しなかったのか、少し残念そうに苦笑しつつ、永琳の隣に居たブレザー(学生服)風の制服に身を纏った兎耳の女性『鈴仙』こと『鈴仙(れいせん) 優曇華院(うどんげいん) イナバ』に山積みになった大量の段ボールを鈴仙に渡そうとすると、鈴仙もまた大和の怪力に驚いているのか、焦りながら言った

 

鈴仙「はい、分かりましt………って!?無理無理無理無理!!!こんな大量な段ボール、持てる訳無いじゃないですか!!」

 

永琳「あら?貴女も『現役の軍人』でしょ?なら持ちなさい」

 

鈴仙「()()()ですよ師匠!!もう除隊してますって!!それに大和さん達(艦娘達)と一緒にしないで下さい!!」

 

大和は永琳が鈴仙に鬼みたいな『命令(無理難題)』を押し付け、鈴仙は焦りながら答えるのを見て少し苦笑しながら鈴仙に言った

 

大和「まぁまぁ鈴仙さん、荷物持ち等の補助はしますので、そのまま治療に専念して下さい……」

 

永琳「……仕方無いわね……鈴仙、そのまま作業を続けて頂戴」

 

鈴仙「ホッ……言われなくても、そうしますよ……では大和さん、包帯を出して下さい……それと勇次さん、此処で煙草を吸わないで下さい……でないと尻に弾幕(座薬)をブチコミますよ」

 

勇次「……それは勘弁願いたいな」

 

鈴仙は永琳の命令(無理難題)が回避された事に安堵したのか溜め息を吐きつつ、補助に回った大和に指示を出しながら負傷者達の治療に専念し始めた

 

 

 

 

 

 

 

同時刻 グラウンド内のベンチにて

 

龍崎「……ふぅ……ん?少佐?」

 

龍崎は負傷者達を運搬し終え、煙草を吸い、ベンチに座り、小休憩を取っていると龍崎に近付いてくる千川に気付くと、千川は持っていた缶コーヒーを渡し、龍崎を労った

 

千川「……お疲れ様、龍崎曹長」

 

龍崎「……此方こそお疲れ様です少佐、後、娘と美奈が大変御迷惑を……」

 

龍崎は千川に深々と頭を下げ、申し訳無さそうに言うと、千川は微笑みながら言った

 

千川「気にしてないよ、所で上城は?」

 

龍崎「アイツは今『平行世界』に行って『平行世界のワシ』……ん?『平行世界のアイツ』やったっけか?……まぁ『平行世界(アッチ)の上城さん』を治療している所や……じゃなかった、している所です」

 

龍崎は勇人が自身の片割れである為、『平行世界の勇人』であると同時に『平行世界の龍崎』に混乱しつつも、播州弁(方言)を混じりながら簡潔に答えると、千川は「相変わらずの仕事馬鹿(ワーカーホリッカー)だな……アイツ……」と苦笑しながら呟き、そのまま龍崎に言った

 

千川「別に良いよ、普段通りの喋りで……」

 

龍崎「し……しかし……」

 

龍崎は千川の気遣いに戸惑い、狼狽えながら聞くと、千川は微笑みながら答えた

 

千川「君だって大将(上官)である上城(アイツ)の事を方言丸出しで喋っていたじゃないか、今更、敬語使われても違和感しか出ないよ……それに僕は上城みたいに君を『戦友(親友)』として接したいのだ」

 

龍崎「……堪忍な、千川さん」

 

千川「だから気にしなくて良いのに……所で龍崎君、君に『確認』したい事があるのだが……」

 

龍崎「確認?何や?」

 

龍崎は千川の言葉に甘えるかの様に頭を少し下げ、少し微笑みながら言うと、千川は龍崎の素性を知る為に神妙な表情になり『ある確認』をした

 

その『ある確認』とは……

 

千川「ああ、龍崎君……君は現世で間宮……いや美奈と再婚する為に海軍に入隊し、僕達に近付いたのか?」

 

龍崎「……………は?ワシが美奈と()()?」

 

千川「ああ……」

 

……龍崎が現世で美奈と再婚する為に近付いたか否かの確認だった

 

龍崎は千川の言葉(確認)を聞いて驚愕したのか、目が点になりながら瞬きをしたが、すぐに正気に戻り、少し呆れながら言った

 

龍崎「……んな訳無いやん、美奈が建造する前には、もう舞鶴鎮守府の憲兵として着任してたわ、それにワシは()()()や、()だって居るわ」

 

千川「ホッ……そうか……それは良かっ……え?龍崎君が……()()()!?しかも()()()!?」

 

龍崎「……この様子やと、ワシは独身だと思っていたやろ?」

 

千川「……すまない、てっきり……」

 

千川は、てっきり龍崎は独身だと艦違い……ではなく勘違いをしていたのか、龍崎の言葉に驚愕していると二人の後ろから柊が缶コーヒーを飲みながら近付き、驚いている千川に呆れながら言った

 

柊「人は見掛けに依らない物だぞ……少佐」

 

千川 龍崎「ッ!?中佐!?お……お疲れ様です!!」

 

二人は柊を見て立ち上がり、挨拶(敬礼)をすると、柊は微笑みながら「お疲れさん」と労いながら龍崎に言った

 

柊「……やはり『大将の片割れ』だけであって、煙草の吸い方や口の悪さは大将に瓜二つね」

 

龍崎「……いや、アイツ……じゃなかった、大将の場合は過去の境遇……いやワシの身勝手な行動をしたせいで、ああなってしまったのかと……」

 

龍崎は柊の言葉(冗談)を真に受けたのか、少し俯くと千川と柊は落ち込んだ龍崎を励ます様に微笑みながら言った

 

千川「自分を責めるなよ龍崎君、アイツは君に感謝しているんだ」

 

柊「そうよ、それに私達もまた『救済龍(ヒーロー)』を作ってくれた貴方に感謝しているのよ……」

 

龍崎「ヒーロー……か……ワシの行動が、そないな事をしてたんか……所で、お二人さんの『子供の時の夢』ってなんや?ワシは記憶を持った状態で転生したから考えた事が無いんや」

 

柊 千川「子供の時の夢……か……う~ん……」

 

龍崎は二人の励ましから立ち直ったのか、微笑み、場の雰囲気を更に和ませる為なのか、雑談内容である『二人の子供の時の夢』について聞くと二人は過去を思い返す様に深く考え、千川は思い出したのか、微笑みながら自身の子供の時の夢を龍崎に告白した

 

千川「……確か、僕の子供の時の夢は……『正義の味方』になりたかった……かな」

 

柊「フフフ……もう『なっている』んじゃない……」

 

龍崎「……せやな」

 

柊と龍崎は千川の子供の時の夢である『正義の味方』を聞いて、微笑みながら言うと、千川は『自身の子供の時の夢』と『今の立場』と比べ、少し違っていたのか、眉を八の字になり、少し渋りながら言った

 

千川「う~ん……確かにそうだけど、少し違うんだよな……今の立場も一般人から見れば『正義の味方』かもしれないが……僕が言いたいのは上城や優花君そして柏木大将みたいに艦娘と共に前線で戦う事を言っているんだ……だが……」

 

柊 龍崎「だが?」

 

柊と龍崎は千川も勇人や柏木みたいに『艦娘と共に前線で戦う夢』に多少呆れつつも、千川の最後の言葉に引っ掛かったのか、首を傾げながら復唱すると千川は少し俯きながら夢の続きを説明した

 

千川「……その夢を掴めるのは、生半可な覚悟……いや『全てを失う覚悟』を持たないと掴めない()だと知ったのは上城が自身の命を賭けて僕や艦娘達を守った『大本営襲撃事件(あの事件)』や『舞鶴大異変(今回の事)』で痛感し、僕は、その夢を()()()()()……そして、それと同時に上城は無意識ではあるが僕に『新たな夢』を与えてくれたんだ」

 

柊 龍崎「新たな夢?」

 

二人は勇人が千川に与えたであろう『新たな夢』について聞くと、千川は先程まで俯いた表情から一転、何かに吹っ切れたかの様に微笑み、二人に『自身の新たな夢』について語り始めた

 

千川「……僕には『僕しか護れない場所』がある……って事かな」

 

龍崎「千川さんしか……」

 

柊「護れない場所?」

 

二人は千川の新たな夢である『千川が護る場所』に単純な意味合いで受け取ったのか少し疑問を抱き、千川の気持ち(本音)を探る為に聞き返すと、千川は微笑みながら自身の気持ち(本音)をぶつけた

 

千川「うん、上城や柏木大将みたいに日本……いや『この世の未来』まで護れる程『スケールの大きい事』は出来ないが、二人が安心して護れる様に僕は『僕しか出来ない事』……『舞鶴鎮守府(此処)美奈達(みんな)を護る事』にしたんだ……これだけは二人には()()()()し、()()()()()()()()よ」

 

龍崎「……成る程な」

 

千川は確固たる決意を表しているのか、目を遠く見つめ、神妙な表情で二人に本音をぶつけると、柊は千川の本音を聞き、微笑みながら言った

 

柊「素敵な夢ね……少佐、その夢……私達も持っていいかしら?」

 

柊は千川の夢に共感したのか、千川に願うと、千川は微笑みながら言った

 

千川「良いですよ……この『思い()』は僕だけの『()』では無いのですから」

 

龍崎「……『護る()』……か……千川さんらしいな……所で中佐の『子供の時の夢』は?」

 

龍崎は千川の決意()を聞き、納得したかの様に微笑みながら呟き、柊の『子供の時の夢』について聞くと、柊は微笑みながら龍崎に言った

 

柊「フフフ……私も少佐と『()()()()()』を持っていたのよ……子供の頃に見たプリキ〇アを見て、私もプリキュ〇になりたかったのよ……子供らしい幼稚な夢よ」

 

龍崎「フッ……娘と同じ()を持っていたんやな……」

 

千川「中佐って……意外と乙女な物を見てたのですね……」

 

柊「うっさいわね少佐……私だって見るわよ……今も……」

 

龍崎 千川「え……今も……ですか?」

 

二人は柊の爆弾発言に顔を引き釣り、かなりドン引きをしているのか、狼狽えながら聞くと、柊は自身の呟きが二人に聞こえたのを知ると慌てながら弁解をし始めた

 

柊「ちょ!?い……今のは無し!忘れて頂戴!!」

 

龍崎「ほほう……」

 

千川「りゅ……龍崎君、上城みたいに悪巧みを思い付いたような笑みを溢すのを止めてくれないか?凄く嫌な予感がするのだが……」

 

龍崎は柊の隠れた趣味を知ったのか、悪意のある不敵な笑みを溢し、千川は龍崎の悪巧みを察したのか、上官である柊に悪戯をするのを止める様に説得をしたが、龍崎はスマホを弄り、某動画サイトを開き、『とある動画』を流した

 

それは……

 

龍崎「ポチッとな♪」

 

 

 

 

 

 

 

 

ちょっと背の高さが、ちっちゃい女の子

 

イケてるお姉さんに憧れているよ。

 

口癖は「めちょっく!」

 

それと「フレフレ!」とみんなを、よく応援する。

 

 

 

変身に使うのは『ミラ〇ク〇スタル・ピ〇ク』

 

爆弾を守りたい!という気持ちと、みんなを応援するプリキュ〇、〇ュアエ〇ルに変身!

 

 

 

 

 

柊「みんなを応援!元気のプリ〇ュア!キュ〇エール!」

 

 

キラーン☆

 

 

 

永琳 鈴仙 勇次 大和 柏木隊「………」

 

柊「ッ!?」

 

龍崎「ククク……計画通り」

 

千川「だから止めろと言ったのに!!」

 

……そう、龍崎はプリキュ〇の変身シーンを流したのだ

 

龍崎は柊が台詞ところが決めポーズまで取った事に悪意丸出しの笑みになり呟き、千川は頭を抱えながら龍崎にツッコミを入れると柊は自身が先程までプリキュ〇の変身シーンを再現していた事によって周りが温かく、そして冷たさが混じった視線を感じたのか、赤面しながら、その場に居た全員に……

 

柊「……その場に居る全隊員に告ぐ、私の『特別防衛機密(密かな楽しみ)』を決して漏洩しない(言わない)でぇ!!」

 

全員「あ……はい……」

 

龍崎「ククク……久々に面白い物が見れたな♪」

 

千川「……せっかくの良い雰囲気が台無しだよ……」

 

……涙声が混じった怒鳴り声で、その場に居た全員に釘を打つかの様に『柊の特別防衛機密(自身の隠れた趣味)』を漏洩しない様に強く言い残し、脱兎の如くグラウンドを後にした

 

そして、それを見てた美奈と未来そして美咲は……

 

美奈「……二人共、ああ言う大人になっちゃ駄目よ、いいね?」

 

未来「……どっちの方の大人に?」

 

美奈「……お任せするわ」

 

美咲「……自滅とは言え、中佐……ドンマイです……」

 

美奈「……私達はそのまま宴会の準備をしましょ」

 

未来 美奈「はーい」

 

……柊に同情しつつ、何事も無かったかの様に再び宴会の準備を再開した


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