Admiral of Roughneck~From black to white~   作:八意 颯人

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第101話「悪夢の始まり」

柏木を治療してから数分後、幻想郷『紅魔館』の『王室』にて……

 

「……どうやら『一つ目の厄介事』が済んだようね。良かったわ……」

 

王室に置かれている椅子に座って安堵の溜め息を溢している『蝙蝠の翼を持った女性』こと『レミリア・スカーレット』は『紅白に配色されている若い巫女』こと『博麗 霊夢』に自身の能力で『柏木の死』という『最悪な運命』が無くなった事に胸を撫で下ろすと霊夢はレミリアの姿を見て、少し驚きながら聞いた。

 

「ええ……ってか、アンタ……何時の間にモリ〇ン並の『スケベボディ』に成長したのよ」

 

霊夢は『自身が知っているレミリアの姿』と『大きく異なっている姿』に戸惑いながら聞くとレミリアは微笑みながら言葉を濁らす様に答えた。

 

「何、『咲夜に関する交換条件』として『吸血鬼としての私の我が儘』を聞いて貰っただけよ」

 

「……勇人の血を飲んだ訳ね。ちなみに、どの位『飲んだ』の?」

 

()()で『1リットル位』飲んだかな」

 

「アンタだけでは無く、フランも飲んだのかい……ってか、アイツ………よく貧血にならなかったわね」

 

「そうね。まぁ彼の味は……あの時、彼は酒を飲んでいたせいでもあるが『高級ラム酒を贅沢に使った甘さを抑えたパウンドケーキ』と『ウイスキー』が混ざった『"甘美な甘さ"と"ほろ苦さ"が残る"大人の味"』だったわね……思い返すと、また飲みたくなるわ……洋酒を彷彿させる様な強い深味に、それに負けない甘美な味を腹一杯に……ジュルリ……」

 

「……そこまで聞いてないわよ。ってか止めなさい。ガチでアイツが貧血になるから……んで、話を戻すけど私に頼みたい事って?」

 

霊夢はレミリアの吸血鬼特有の『吸血衝動』に呆れながら忠告しつつ『本来の目的』である『レミリアからの依頼』について触れるとレミリアは先程までの物欲しそうな大人の色気を醸し出した妖艶な雰囲気を一掃するかの様に咳払いをし、威厳のある雰囲気を醸し出し、真剣な表情で霊夢に言った。

 

「ゴホン……そうだったわね。霊夢、咲夜は今、勇人の命令で数名のメイド達を連れて『艦船と言われている平行世界』……確か『アズールレーンの世界』だっけ?その世界に滞在しているの。それで貴女には……」

 

「……私も『二人の勇人』の為に『アズールレーンの世界に行け』と言う訳ね……答えは『NO(イヤ)』よ。此方も生活が掛かっているからね。ボランティアなら早苗に頼みなさいよ……ったく、咲夜に任せれば良いのに面倒臭い事を押し付けるわね

 

霊夢はレミリアの依頼内容を先読みをし、面倒臭そうに答えるとレミリアは「心の声が出てるわよ霊夢」と苦笑しながら一喝(ツッコミ)をしつつも、レミリアの依頼に全く乗り気では無い霊夢が快く2つ返事をする為の秘策である『ある条件』を霊夢に提示しながら呟いた。

 

その条件とは……

 

 

「………()()()()()()()()()()()()()()()()()?」

 

「ッ!?」

 

「しかも『俊夫さん』から聞いた話では『()()()()()()()』と聞いていたからね。まぁ貴女が受けないのなら美鈴(メイリン)に頼んで……」

 

「喜んで受けさせて貰うわ!すぐに紫に連絡して頂戴!!」

 

「……金絡みになると目の色が変わるわね貴女。本当に()()()()()()()()()()()()かしら?巫女としてのプライドあるの?」

 

……『高額報酬』がある事を提示したのだ。

 

レミリアは霊夢が巫女の身でありながら『醜い欲望丸出し』で自身の依頼を快く承諾した事に呆れながら毒を吐くと霊夢は……

 

「プライドだけで生活出来るかぁぁぁぁ!!しかも勇人の祖父(ジイ)さんの『金絡み(小遣い有り)の依頼』なら喜んで受けるわよッッッ!!」

 

……目の色を変え、息巻きながらレミリアの悪態に答えたのだ。

 

レミリアは先程までの『怠惰』で『やる気の無い雰囲気』を醸し出していた霊夢が目の色を変え、鼻息を荒くしている表情を見て物凄く呆れながら忠告した。

 

「………単純ね貴女。なら佐世保に居る優花に頼んで彼方に転送させて貰えれば良いわ。間違っても、あの隙間妖怪には()()()()()()。でないと貴女にも『取り返しのつかない悪運』が来るからね」

 

「あー……何となく想像付くわ……あの紫なら『それなら分け前(マージン)を貰うわ♪』と言いながら殆ど持って行くからね……分かったわ。それじゃ佐世保に行ってくるわ……邪魔したわ」

 

霊夢は「……そして待ってなさい!!私のお小遣いィィィィ!!!」と完全に自身が『金の亡者』と主張するかの様に目の色を変えながら紅魔館を後にすると部屋の隅に隠れる様に聞いていた『ネグリジェに似た柔らかい衣装を身を纏った紫色の髪をした若い女性』が先程の一連の経緯を聞いて苦笑しながらレミリアに言った。

 

「………こんな『子供染みた嘘』に乗るなんて……意外とチョロかったわね。レミ……まぁバレたら()()()()が……」

 

「……後で勇人に頼んでおくわ『パチェ』」

 

レミリアは『ネグリジェ風の衣装を着た女性』こと『パチュリー・ノーレッジ』の忠告に少し青ざめながら答えるとパチュリーは呆れながらも親友であるレミリアが何故、霊夢に依頼した『本当の目的』について触れた。

 

「……まぁ良いわ。それで何故、霊夢をアズールレーンの世界に?」

 

「………『勇人に対して未だ嘗てない程の厄介事』が見えたからよ。だから霊夢には勇人の厄介事による『余波』を他の世界にまで影響を受けない様に彼方の世界で対策を発案させる為に行かせたのよ」

 

「未だ嘗てない程の厄介事?しかも、その厄介事に関する対策を霊夢がアズールレーンの世界で?話が少し突飛しているわね……詳しく教えてくれないかしら?」

 

パチュリーはレミリアの神妙な表情に少し狼狽えながら聞くとレミリアは神妙な表情を崩さず、ただ一言だけパチュリーに言った。

 

「…………5年前、勇人に封印された筈の『アイツ』が現れた運命を見てしまったの……」

 

「ッ!?嘘でしょ………だって『アイツ』は暴走した勇人の手によって惨殺され、再生(転生)しない様に厳重に封印した筈じゃ……」

 

パチュリーはレミリアが発言した『アイツ』について聞くと、自身の……いや過去に幻想郷で起きた異変の中でも『全ての世界のバランスが崩壊する程の史上最悪な異変』だった為、その事を思い返すかの様に顔面蒼白になり、狼狽えながら聞くとレミリアは頭を抱えながら答えた。

 

「確かに『アイツ』は勇人に惨殺された後、封印されたわ。それについては私も封印に関わっていたから間違い無いわ……だけどね、誰かの陰謀で『アイツ』を復活させたのよ……()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「……勇人に恨みを持った者が『金沢連続失踪事件(この事)』を聞いて、『アイツ』を復活させ、彼を社会的に……いえ文字通り『()す気』で復活させた……という訳ね……もし『アイツ』が手始めに行うとしたら……」

 

「……手始めに『アイツが嘗て居た世界』を手中に収め、この世界の住人達を何かしらの方法で味方に着け、勇人は断頭台で処刑される罪人の様に住人達の前で『見せしめ』として殺されるわ。しかも『コッチの問題』が『最悪の結果』になったら………」

 

「……『今まで起きた事件に関する全ての責任を勇人が償う』と彼を嫌うマスコミ達は意気揚々と大きく報道し、『アイツに洗脳された国民達』はマスコミに踊らされ、下手すれば『同犯者』である『佐世保鎮守府に所属している艦娘含め全隊員』と『一族含め彼に関わった者"全員"』を断頭台に……考えただけで恐ろしいわね」

 

「……全くよ。だから手始めに霊夢を彼方に行かせ、『彼方の勇人』いえ『彼を含め佐世保鎮守府の艦船達』に協力を求めているのよ」

 

レミリアは自身の能力で『一番最悪な結果』である『勇人含め佐世保に関わりを持っている全員』が『彼らの義賊紛いな行い』によって処刑される運命を見て、それをパチュリーに簡潔に伝えると、パチュリーはレミリアの発言に少し引っ掛かる所があるのか、難しい表情になりながらレミリアに聞いた。

 

「……だけど引っ掛かる所があるわ。何故レミは彼女を『彼方の世界』に?避難させるだけなら兎も角、対策を練るのなら『アイツが嘗て居た世界』に居た方が、より良い対策が出ると思うが……」

 

パチュリーは自身の疑問点である『霊夢を"アイツが嘗て居た世界"に行かせない様に仕向けた事』について聞くとレミリアはパチュリーの質問に重い溜め息を溢しながら理由を言った。

 

「………簡単な理由よ。『アイツが嘗て居た世界』が『彼方の過去の世界』だからよ。つまり……」

 

「……アイツを殺す為の『手掛かり』が有ると読んだ訳ね」

 

パチュリーはレミリアの答えに納得するとレミリアは「……そうよ」と答えつつ、再度難しい表情になり、声を唸らせながら言った。

 

「しかし………う~ん………何か引っ掛かるのよねぇ~……」

 

「引っ掛かる?何が?」

 

パチュリーはレミリアが相当悩んでいる様子を見て、首を傾げながら聞くとレミリアは眉をハの字にし、相当悩んでいる表情になりながら答えた。

 

「……アイツが、どうやって『この世界に介入した方法』が見当つかないのよ。アイツには隙間妖怪や勇人、優花そして先程『複製した平行世界の隙間妖怪の能力』が使える様になった柏木さんみたいに、()()()()()()()()()()()()()()()()()のよ。一体どうやって……」

 

「……優花や柏木……だっけ?その()()()()()()()()か、または()()が勇人を()()()()()()をしようとして……」

 

パチュリーは『アイツ』が『この世界に介入する方法』として優花か柏木の内のどちらかと手を組む……つまり『勇人を裏切る事』を予想するとレミリアはパチュリーの予想を否定するかの様に物凄く呆れながら答えた。

 

「……それは無いわ。優花は勇人に助けられた事で絶対的な信頼を寄せているし、一方的ではあるが『勇人(最愛の人)に尽くす女』よ。それに柏木さんは勇人と『同じタイプ』で『非常に義理人情に重んじる男』よ。あの二人が裏切る事は、まず無いわ………だけど………」

 

レミリアはパチュリーの予想を否定した理由を答えつつ、『裏切り』に関して一番『心当たり』のある人物を思い出し、神妙な表情で声を詰まらせるとパチュリーはレミリアが声を詰まらせている原因である『裏切る可能性のある人物』を神妙な表情で答えた。

 

「………紫の事を言っているのね。その『裏切り者』って……」

 

「……そうよ。あの隙間妖怪の事よ……何時もの『気紛れ』を起こして『アイツ』を……」

 

「……泣けるわ。それ……」

 

パチュリーはレミリアの真意である『紫が気紛れを起こして裏切る事』を察し、幻想郷では『恒例行事(何時もの事)』なのか「……またかよ」と言わんばかりに物凄く呆れ、頭を軽く抱えながら呟くと一部始終を聞いていたであろう如何にも『魔女』と言わんばかりの『白黒の魔導師の衣装を纏った金髪の10代後半の女性』が血相を変えながら王室に入り、二人に強い口調で反論した。

 

「ちょっと待て!!何で紫が裏切り者だと決め付けているんだ!!アイツは確かに『気紛れ』で『何考えているか分からん奴』だが私達を……特に勇人を裏切る事は絶対しない奴だって事を知ってんだろ!!!」

 

「何で貴女が居るのよ!!この『泥棒魔女』!!」

 

「『泥棒』とは失礼な!!魔導書(グリモワール)()()()()()()()()()()()だぜ!!」

 

「それを世間一般では『泥棒(借りパク)』と言うのよ『魔理沙(まりさ)』!!今すぐ『借りた魔導書(モノ)』を返しなさいよ!!でないと勇人を呼ぶわよ!!」

 

パチュリーは『魔導師に似た衣装を纏った女性』こと『霧雨 魔理沙』に彼女に対しての不満である『魔導書を返して欲しい事』を怒鳴り散らしながら勇人を使って脅すと魔理沙はパチュリーの『勇人を使った脅し』が少し効いたのか「また後で返すから、そう怒んなって……な?」と先程の鬼気迫る気迫は何処へ行ったのやら、少し狼狽えながらパチュリーを窘めるとレミリアは先程の『裏切りに関する問題』について溜め息を吐きつつも呆れながら魔理沙に聞いた。

 

「……まぁ、パチェの事は『何時もの事』だから置いといて………魔理沙、貴女の意見を聞きたいわ。何故あの()()()()()()()()()()()()()()()()()?」

 

レミリアは神妙な表情で魔理沙に聞くと、彼女は先程の狼狽えを打ち消すかの様に強い口調でレミリアの意見に答えた。

 

「簡単な事だぜ!アイツは5年前『勇人の命』と『能力』を奪おうと画策し、奪った能力を使って幻想郷を破壊しようとしたんだぜ!そんな奴に寝返る事は『勇人を裏切る』……いや『幻想郷を捨てる事』になるんだぜ!だから……」

 

「……此処の統括者として裏切りは()()()()()()()……という訳ね」

 

「そうね……貴女にしては『まともな事』を言うのね」

 

「まともな事って……あのなぁ……」

 

レミリアとパチュリーは魔理沙の意見に納得すると魔理沙はパチュリーの嫌味に少し頭に来たのか、眉を軽くピクピクと痙攣させつつも、パチュリーに対して反論したい気持ちを抑えながらレミリアが不安事を一掃しようと鬼気迫る強い口調でレミリアに聞いた。

 

「まぁそういう事だぜ!それにレミリア、アンタが5年前、勇人に言ったじゃねぇか……『貴方の未来(運命)は"数々の酷く残酷な未来(運命)"が待っているわ。だが貴方なら"新たな仲間達"と共に乗り越えられると信じている』って……だから勇人はレミリアを信じ、柏木さんや優花みたいな新たな仲間達(佐世保の連中)と共に『数々の残酷な未来(運命)』に打ち勝ってきたじゃねぇか!!それとも何だ?『勇人がアイツに殺された未来(運命)』を()()()()()()()()()()()()()()()()()()?5年の間に牙を抜かれ『()()()』になったのか?レミリア?」

 

魔理沙はレミリアに『勇人が敗北する運命』つまり『殺される運命』についての有無を強い口調で問い質すとレミリアは………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……言ってくれるわね。貴女……私を舐めんじゃないわよ!!!上等じゃない!!!あんな『ゲス天使』の思い通りにはさせないわ!!パチェ!!今すぐ昼寝中のフランと美鈴を叩き起こして外の世界に行って対策を練るわよ!!」

 

「……霊夢の件について前言撤回するわ。貴女も単純ね……だが嫌いじゃないわ」

 

……魔理沙の挑発に自身の『吸血鬼としてのプライド』に火が付いたのか魔理沙の挑発に乗る様に躍起になり、苦笑しているパチュリーに指示を出し、外の世界に向けて急いで博麗神社に向けて飛び立った。

 

そして残された魔理沙は……

 

「………アリスの所に行くか。レミリアも躍起になったんだし……」

 

……レミリアが躍起になった事を嬉しく思い、自身の友人であり『人形師』兼『魔法使い』である『アリス・マーガトロイド』の所へ足を運んだ。


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