人類を愛し、人類が求める魔王   作:聖:

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第2話

「な、なんであの短時間に”フォレス・ガロ”のリーダーと接触してしかも喧嘩を売る状況になり、しかもゲームの日取りは明日!?準備している時間もお金もありません!一体どういうつもりがあってのことです!聞いているんですか4人とも!!」

「「「ムシャクシャしてやった。今は反省しています。」」」

「黙らっしゃい!!!」

「………」

「そして悠斗さんは会話に参加しなさい!!」

激怒する黒ウサギ。それをニヤニヤと笑って見ている十六夜。

「別に良いじゃねえか。見境なく選んで喧嘩売ったわけじゃないんだからよ。」

「ですが!!」

黒ウサギと4人が話している中、悠斗は本を読み聞いている。内容は右から左に流れていくが。

「はぁ……仕方ない人達です。ですが、”フォレス・ガロ”程度なら十六夜さんが1人いれば楽勝でしょう。」

「何言ってんだよ。俺は参加しねえよ?」

「当たり前よ。貴方なんて参加させないわ。」

フンと鼻を鳴らす2人。そしてまた一悶着。

「……ああ、もう好きにしてください。」

黒ウサギは呟き肩を落とすのだった。

 

 

 

黒ウサギが次の目的地、”サウザンドアイズ”というコミュニティの支店を目指しペリベッド通りを歩く中、脇を埋める街路樹に飛鳥は不思議そうに眺め呟く。

「桜の木…ではないわよね?花弁の形が違うし、真夏になっても咲き続けているはずがないもの。」

「いや、まだ初夏になったばっかりだぞ。」

「……?今は秋だったと思うけど。」

ん?っと噛み合わない3人は顔を見合わせ悠斗を見る。

「秋だったと思うよ。」

悠斗の言葉に耀は勝ち誇ったかの様なドヤ顔で十六夜と飛鳥を見る。黒ウサギは笑って説明した。

「皆さんはそれぞれ違う世界から召喚されているのデス。元いた時間軸以外にも歴史や文化、生態系など所々違う箇所があるはずですよ。」

「へぇ?パラレルワールドってやつか?」

「近しいですね。正しくは立体交差並行世界論というものなのですけども……今からコレの説明を始めますと1日2日では説明しきれないので、またの機会ということに。」

曖昧に濁し黒ウサギは振り返る。どうやら店に着いたらしい。商店の旗には、蒼い生地に互いが向かい合う2人の女神像が記されている。

あれが”サウザンドアイズ”の旗なのだろう。

日が暮れて看板を下げる割烹着の女性店員に、黒ウサギは滑り込みストップを、

「まっ」

「待った無しです御客様。うちは時間外営業はやっていません。」

黒ウサギは悔しそうに店員を睨みつける。

「なんて商売っ気の無い店なのかしら。」

「ま、全くです!閉店時間の5分前に客を締め出すなんて!」

「文句があるならどうぞ他所へ。あなた方は今後一切の出入りを禁じます。出禁です。」

「出禁!?これだけで出禁とか御客様舐めすぎでございますよ!?」

「なるほど、”箱庭の貴族”であるウサギの御客様を無下にするのは失礼ですね。中で入店許可を伺いますので、コミュニティの名前をよろしいですか?」

「……う。」

言葉に詰まる黒ウサギ。しかし十六夜は何の躊躇いもなく名乗る。

「俺達は”ノーネーム”ってコミュニティなんだが。」

「ほほう。ではどこの”ノーネーム”様でしょうか。よかったら旗印を確認させていただいてもよろしいでしょうか?」

黒ウサギは心の底から悔しそうな顔をして、小声で呟いた。

「その……あの……私達に、旗はありま」

「いぃぃぃやほおぉぉぉお!久しぶりだ黒ウサギイィィィ!」

黒ウサギは店内から爆走してくる着物風の服を着た真っ白い髪の少女に抱きつかれ、少女と共にクルクルと転がり街道の向こうにある浅い水路まで吹き飛んだ。

十六夜達は眼を丸くし、店員は痛そうな頭を抱えていた。

「…おい店員。この店にはドッキリサービスがあるのか?なら俺も別バージョンで是非。」

「ありません。」

「なんなら有料でも。」

「やりません。」

真剣な表情の十六夜に、真剣な表情でキッパリ言い切る女性店員。

黒ウサギを急襲した白い髪の幼い少女は、黒ウサギの胸に顔を埋めてなすり付けていた。

「し、白夜叉様!?どうして貴方がこんな下層に!?」

「そろそろ黒ウサギが来る予感がしておったからに決まっておるだろうに!フフ、フホホフホホ!やっぱり黒ウサギは触り心地が違うのう!ほれ、ここが良いのかここが良いのか!」

「し、白夜叉様!ちょ、ちょっと離れてください!」

白夜叉と呼ばれた少女を無理やり引き剝がし、頭を掴んで店に向かって投げつける。

クルクルと回転した少女を十六夜が足で受け止めた。

「てい」

「ゴバァ!お、おんし、飛んできた初対面の美少女を足で受け止める、とは…何様……だ。」

「十六夜様だぜ。……?」

白夜叉は視界の端に映った顔に眼を奪われた。その視線の先には悠斗。

「お、おんし。」

「白じゃないか。久しぶりだね。」

白夜叉の驚愕した顔とは真逆に悠斗は朗らかな微笑みを浮かべている。

「な、何故おんしがここに?いやそれよりも今まで何処にいた?」

「ん?その反応からすると、私を呼び出したのは君では無いようだね。」

「呼び出した!?おんしをか!?誰がそんな。」

「まあまあ、立ち話もなんだしさ。店に入れてくれないかな?それと今は悠斗と名乗っているから。」

「あ、ああ。こっちじゃ。」

白夜叉に促され、悠斗は中に入って行く。黒ウサギ達は困惑しながらも後に続き中に入った。

「生憎と店は閉めてしまったのでな。私の私室で勘弁してくれ。」

5人と1匹は和風の中庭を進み、縁側で足を止める。障子を開けて招かれた和室の上座に腰を下ろした白夜叉は、十六夜達に向き直る。

「もう一度自己紹介しておこうかの。私は四桁の外門、三三四五外門に本拠を構えている“サウザンドアイズ”幹部の白夜叉だ。黒ウサギにちょくちょく手を貸してやっている器の大きい美少女と認識しておいてくれ。」

耀が小首を傾げて問う。

「その外門、って何?」

「箱庭の階層を示す外壁にある門ですよ。数字が若いほど都市の中心部に近く、同時に強大な力を持つ者達が住んでいるのです。」

黒ウサギが描く上空から見た箱庭の図は外門によって幾つもの階層に分かれている。

その図を見た3人は口を揃えて、

「……超巨大タマネギ?」

「いえ、超巨大バームクーヘンではないかしら?」

「そうだな。どちらかといえばバームクーヘンだ。」

「ふふ、うまいこと例える。その例えなら今いる七桁の外門はバームクーヘンの一番薄い皮の部分に当たるな。更に説明するなら、東西南北の四つに区切りの東側にあたり、外門のすぐ外は”世界の果て”と向かい合う場所になる。あそこにはコミュニティに所属していないものの、強力なギフトを持ったもの達が棲んでおるぞーーーその水樹の持ち主などな。」

白夜叉が薄く笑い黒ウサギの持つ水樹の苗に視線を向ける。

「して、誰が勝ち取ったのかな?やはり悠斗か?」

「いや、違うよ。」

「この水樹は十六夜さんが蛇神様を素手で叩きのめしてきたのですよ。」

黒ウサギが自慢げに言う。

「なんと!?クリアではなく直接的に倒したとな!?ではその童は神格持ちの神童か?」

「いえ、黒ウサギはそうは思えません。神格なら一目見れば分かるはずですし。」

「む、それもそうか。」

「白夜叉様はあの蛇神様とお知り合いだったのですか?」

「知り合いも何も、あれに神格を与えたのはこの私だぞ。」

小さな胸を張り、呵々と豪快に笑う白夜叉。

だがそれを聞いた十六夜は物騒に瞳を光らせて問いただす。

「へえ?じゃあオマエはあの蛇より強いのか?」

「ふふん、当然だ。私は東側の”階層支配者”だぞ。この東側の四桁以下にあるコミュニティでは並ぶ者がいない、最強の主催者なのだからの。」

最強の主催者、その言葉に十六夜、飛鳥、耀の3人は一斉に瞳を輝かせた。

「そう…ふふ。ではつまり、貴方のゲームをクリアすれば、私達のコミュニティは東側で最強のコミュニティという事になるのかしら?」

「無論、そうなるのう。」

「そりゃ景気のいい話だ。探す手間が省けた。」

3人は剥き出しの闘争心を視線に込めて白夜叉を見る。白夜叉はそれに気づいたように高らかと笑い声をあげた。

「抜け目ない童達だ。依頼しておきながら、私にギフトゲームで挑むと?」

「え?ちょ、ちょっと御三方様!?」

白夜叉は慌てる黒ウサギを右手で制す。

「よいよ黒ウサギ。私も遊び相手には飢えている。」

「ノリがいいわね。そういうの好きよ。」

「ふふ、そうか。しかし、ゲームの前に1つ確認しておく事がある。」

「なんだ?」

白夜叉は着物の袖から”サウザンドアイズ”の旗印の紋が入ったカードを取り出し、壮絶な笑みで一言、

「おんしらが望むのは”挑戦”かーーーーもしくは、”決闘”か?」

刹那、3人の視界に爆発的な変化が起きた。

3人が投げ出されたのは、白い雪原と凍る湖畔、そして、水平に太陽が廻る世界だった。

「……な……!?」

余りの異常さに、十六夜達は息を呑む。

まるで星を1つ、世界を1つ創り出したかのような奇跡の顕現。

唖然と立ち竦む3人に、今一度、白夜叉は問いかける。

「今一度名乗り直し、問おうかの。私は”白き夜の魔王”。太陽と白夜の星霊、白夜叉。おんしらが望むのは、試練への”挑戦”か?それとも対等な”決闘”か?」

白夜叉の笑みに再度息を呑む3人。

「水平に廻る太陽と……そうか、白夜と夜叉。あの水平に廻る太陽やこの土地は、オマエを表現してるってことか。」

「如何にも。この白夜の湖畔と雪原。永遠に世界を薄明に照らす太陽こそ、私がもつゲーム盤の1つだ。」

白夜叉が両手を広げると、地平線の彼方の雲海が瞬く間に裂け、薄明の太陽が晒される。

「これだけ莫大な土地が、ただのゲーム盤……!?」

「如何にも。して、おんしらの返答は?”挑戦”であるならば、手慰み程度に遊んでやる。だがしかし”決闘”を望むなら話は別。魔王として、命と誇りの限り闘おうではないか。」

「………」

飛鳥と耀、そして十六夜でさえ即答できずに返答を躊躇った。

しばしの静寂の後、諦めたように笑う十六夜が、ゆっくりと挙手し、

「参った。やられたよ。降参だ、白夜叉。」

「ふむ?それは決闘ではなく、試練を受けるという事かの?」

「ああ、今回は黙って試されてやるよ、魔王様。」

苦笑と共に吐き捨てるような物言いをした十六夜を、白夜叉は堪えきれず高らかに笑い飛ばした。

一頻り笑った白夜叉は笑いを噛み殺して他の2人にも問う。

「くく……して、他の童達も同じか?」

「……ええ。私も試されてあげてもいいわ。」

「右に同じ。」

悔しそうな表情で返事をする2人。

一連の流れをヒヤヒヤしながら見ていた黒ウサギは、ホッと胸をなでおろす。

「も、もう!お互いにもう少し相手を選んでください!”階層支配者”に喧嘩を売る新人と、新人に売られた喧嘩を買う”階層支配者”なんて、冗談にしても寒すぎます!それに白夜叉様が魔王だったのは、もう何千年も前の話じゃないですか!!」

「何?じゃあ元魔王様ってことか?」

「はてさて、どうだったかな?」

ケラケラ笑う白夜叉。ガクリと肩を落とす黒ウサギと3人。

と、そこに、

「白。」

今まで黙っていた悠斗が白夜叉を呼ぶ。

「その”挑戦”や”決闘”は私にも問うているのかな?」

悠斗が微笑みながら白夜叉に問う。そこにいる全員が悠斗の笑みに息を呑む。あれは、下手に刺激することはしてはいけないと誰もが脳裏をよぎった。

「い、いや。悠斗には言ってはいない。」

「そうかい?そこの少年少女達と共に来たから、私にも試練を与えているのかと思ったよ。」

「いや、それは無いのだが…悠斗。」

「ん?どうしたの?」

白夜叉が真剣な表情で悠斗に近寄り小声で話しかける。

「後ほど私と手合わせ願えないか?」

「……うん。いいよ。白がどれほど強くなったか見てあげる。」

「ありがとう。」

白夜叉が深々と頭を下げる。その光景に黒ウサギ達は驚愕の表情で此方を見る。先程まで、白夜叉の存在に圧倒されていたのに、その白夜叉が悠斗に向け、頭を下げている。

「………えっと、悠斗、さんは何者なのですか?」

「ん?唯の読書好きな少年だよ?」

「そんな訳無いのですよ!?白夜叉様が頭を下げるほどのお方なのですから!」

「まあ、それは後で話すから、取り敢えず3人の”挑戦”を終わらせようよ。」

「……わかりました。白夜叉様、お願いします。」

黒ウサギからの詰問を先延ばしにし、3人の”挑戦”が始まる。目の前に降りてきたグリフォンを見て驚く3人。そして手元に現れた羊皮紙を見る。

 

『ギフトゲーム名 ”鷲獅子の手綱”

 

・プレイヤー一覧

逆廻 十六夜

久遠 飛鳥

春日部 耀

 

・クリア条件 グリフォンの背に跨り、湖畔を舞う。

・クリア方法 ”力” ”知恵” ”勇気” の何れかでグリフォンに認められ

る。

・敗北条件 降参か、プレイヤーが上記の勝利条件を満たせなくなった場合。

宣誓 上記を尊重し、誇りと御旗とホストマスターの名の下、ギフトゲームを開催します。”サウザンドアイズ”印』

 

「私がやる。」

読み終わるや否やピシ!と指先まで綺麗に挙手したのは耀だった。

耀の瞳は真っ直ぐにグリフォンに向いている。キラキラと光るその瞳は、探し続けていた宝物を見つけた子供のように輝いていた。隣で呆れたような苦笑いを漏らす十六夜と飛鳥。

「OK、先手は譲ってやる。失敗するなよ。」

「気を付けてね、春日部さん。」

「うん、頑張る。」

頷き、悠斗を見る。悠斗は微笑みを浮かべて耀に言う。

「春日部さん、君なら大丈夫だ。己の力を信じて。」

「うん。」

耀はグリフォンに駆け寄る。グリフォンは大きく翼を広げてその場を離れた。戦いの際、白夜叉を巻き込まないようにする為だろう。

と、そこへ白夜叉が悠斗に話しかける。

「悠斗、少しいいか?」

「うん。いいよ。」

白夜叉と悠斗は皆から離れる。十六夜が横目に此方を見ていたが、気にせず白夜叉は小声で悠斗に話し掛ける。

「いろいろと聞かねばならぬ事が多くて、何から言えばよいのかわからぬのだがな。」

白夜叉は頭を掻く。

「おんしは今まで何処におったのだ?あれから探し廻ったのだが、おんしを見つける事が出来なかった。」

「それはそうだね。なんたって此処には居なかったのだから。」

「…やはりか。薄々そんな気はしておった。先程おんしが”私が呼び出したのでは?”と言っておったからそうだと思ったのだがな。」

「私も最初は白夜叉が私の居場所を見つけて手紙を寄越したのかと考えていたけど、どうやら違う誰かだったようだね。」

「なら誰が…。」

「ふふ、まあ誰であろうと今はどうでもいいかな。どっちみちそろそろ此処に戻ろうかと思ってたからね。」

白夜叉が真剣な表情で悠斗を見る。

「ほう。何の目的じゃ?まさか私に会いに来てくれたのか?」

悪戯っぽい笑みを浮かべる白夜叉。

「うーん。それも理由の1つにはあったよ。」

「……へ?」

笑みが崩れ、呆然とした表情で悠斗を見る。徐々に頬が赤くなっていくのが分かるが、悠斗は気にした様子もなく続ける。

「それとまあ、そろそろ妹と再会してもいい頃かなと。」

「…………」

白夜叉の顔から血の気が引き、蒼白となる。先程から白夜叉の顔の変化が激しい。悠斗は白夜叉の表情の変化にクスリと笑う。だが、白夜叉はそんなこと気にする余裕など無かった。

「え、今。妹と、言ったのか?」

「うん。」

「し、しかし!おんしの妹は…死んだではないか?」

大きくなりそうな声をどうにか抑える。

「確かに。妹は戦いに敗れ、死んだ。」

悠斗は白夜叉から視線を外し、雪原を見る。耀がグリフォンにしがみつき折り返し地点を通過した所だった。

「でも、妹の存在自体が消滅した訳では無いよ。」

「……」

「その理由はいろいろあるけど、強いて挙げるとすれば……」

視線を白夜叉に戻す。

「人間の思いや夢、そして欲望がある限り、私達兄妹は滅びはしないさ。」

悠斗は白夜叉に優しい笑みを浮かべる。

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