新社会「イクシーズ」―最弱最低(マイナスニトウリュウ)な俺―   作:キングオブコージ

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雨天決行

 深い夜、雨が降る中、その切り取られた世界の中で、二人の少女と見られる二人が向かい合う。片や、ピカケの花火があしらわれた黒い浴衣に身を包んだ少女、片や、寒色の花柄……あれは紫陽花だろうか、があしらわれた赤い浴衣に身を包んだ少女。共に綺麗な黒い長髪と幼げでも端正な顔が目を引き、お互い手には日本刀を持っている。

 

 偶然にしては出来すぎか、運命のいたずらか。なんて、一般人から見た感想はその程度だろう。残念ながらそんな程度の語りで済まされるにはあまりにも規格外な現状だった。

 

 ──一閃。見合った二人の間に瞬時に生まれたのは、それだった。地を一枚刃の下駄で蹴って天雨で切りかかったアルトは、対する穂浪の紫陽花で受け流された。後、地に足をつけないままのアルトが靄の弾丸を三発左手 から放ち、それは穂浪が作り出した水の壁にて緩和され、無意味のものとなった。

 

「それ、衝撃の類か。遊んでるの?」

 

「測ってんだよ、随分元気な女でありますなあ!」

 

 あまりコイツにかける時間は無い。なぜなら、早くイオリを助けに行かないと絶対にマズい事になる。それぐらいは分かる。刑部之也、あの男の動きはまだ一度も見れてないが……あれはヤバい(・・・)

 今はまだ大人しくしているが、大人しい間に最善手を打つべきだ。クソっ、こんな時に瀧聖夜も八雲鳳世もなにやってんだ……!

 

 アルトは小手先の技で釣りを仕掛ける。対する穂浪、冷静に最小限で対処していく。明らか様な時間稼ぎ。むしろ、此方が相手に乗せられている。お手本のように、綺麗に──それがアルトの感じた印象だった。

 

 水の糸、水の防壁、それにこの止められた時間。理解(わか)る。これは雨が、世界を閉じ込めたんだ。雨と、その雨に打たれた者はこの一定空間内で動きを止めている。例外を除いて。

 恐らく動けるのは、少なくとも神域の者。それと、雨の外から来た者……そこに該当するのは、この中ではイオリ・ドラクロアだけか。

 イオリだけは神域では無いにしろ、あのシゴロだったか?羽の男が連れてきたって事は意味があるんだろう。だから役割は任せたい。ので、早く目の前の奴を始末しなくては。

 

 ……使わせてもらうか。

 

 アルトは浴衣の中に左手を忍ばせ、その手を思いっきり引き抜いた。取り出したるは木材の『からくり人形』、それを1、2、3……12体出した。一つ一つが等身大のそれをだ。

 

「…は??」

 

 珍妙な光景に目を開いて驚く穂浪。

 

「さあさおどろけ皆の衆、吾輩秘蔵のお宝祭り──」

 

 どこにそんな質量が入るのか。そんな穂浪の突っ込みも聞かぬまま、槍・弓・薙刀・斧・火縄銃、多種多様な武器をもったからくり人形たちが穂浪に襲い掛かる。

 

「──存分にっ開演ッッ」

 

「なっっ」

 

 これまでした旅の中で、密かに趣味だったこれくしょん……大事な、本当に大事なそれらをお披露目してでも、今はこの場に決着を付けるべきだ。広範囲から襲い掛かる剣林弾雨、これは生半可では止められない。

 目前の神を八つ裂きに。できるなら何も惜しくはない。

 

 さあ、終いだ。あめふらし!!

 

「……雨よ、降れ」

 

「それが、今更っ!」

 

 ぽつぽつっザー、ザーザーザザザザー。穂浪の呟き通りに再び雨が降り出した。いや、これは雨が降り出したというよりは。

 

 世界に感じるいつも通りの認識。止まっていた時間が動き出したんだ。

 

 なんで?今更?もう一度時間を止めるつもりか?いや、発動する前にからくり人形たちが奴を貫く自信がある。つまり、手遅れ──

 

 ぷつり。

 

 そんな音がした気がした。そこから2秒程。届く筈の武器が奴に届かない。其処で気づいた。奴がこれまでわざわざ止めていた時間、必殺のアドバンテージを解き雨を自由にした、本当の理由。

 

「雨を紡ぎて、網とする──」

 

 アルトの秘蔵のからくり人形たちが、逆に()()()()()()()()()()。なぜ──直ぐにその理由を視界が捉える。降る雨たちがまるで意思を持っているかのように舞い踊り格子のようになって襲い掛かってきたのだ。

 

 先程までとは、質量が違う。

 

 散らばる残骸を尻目に、アルトは穂浪と対峙する。再び雨の格子が、勢いをもってアルトに襲い掛かろうとしていた。

 

「この包囲網、どうにかできる?」

 

 瞬時、焦りか。秘蔵が八つ裂きにされたよりも何より、必殺だと思った一打を無に帰された事への苛立ち。

 

 お前に、構っている暇なんか無いのに!!

 

 もうどうにもならない状況。だから、いいや。幸い奴の背後には人は居ない。アルトは覚悟を決めて、天雨を手から落とし、言葉を紡ぐ。

 

 加減なんて、知らないからな。

 

()()混沌(こんとん)終焉(しゅうえん)女神(めがみ)

 

 目の前に両手を開いたアルト。其処に闇が溜まる。

 

(うつ)るは唯宵(ただよい)(すべ)()()め」

 

 そして、そこにありったけの光が注ぎ込まれる。アルトの呪詛がかった黒髪から闇が剥がれ落ち、光を放って金色に染まりゆき靡く。

 

「「破光(はこう)(よる)”」」

 

 ありったけの光を呑み込んだ闇が破裂し、無際限に拡張し、目の前を全部、黒色に染めていった──

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