新社会「イクシーズ」―最弱最低(マイナスニトウリュウ)な俺―   作:キングオブコージ

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想起:夜明けを夢見る妖怪横丁

『初めまして、僕の名前は叢雲鳳世。君の名前は?』

 

 名前?……名前なんて、ない。

 

『君は雨を降らせることができるんだね。どうだろう、人々の為に雨を降らせてみないかい?』

 

 これまでは気分で雨を降らせてた。思いきり降らせた日は、溢れた川の光景を虚ろに眺めてた。もしこの力に意味があるなら、それを教えてくれるなら。

 

『綺麗に実った稲穂たちだ……。みんなも喜んでいる。君のおかげだ』

 

 私の力で喜んでくれる……?本当に……?

 

稲穂之神(いなほのかみ)……そうみんなは呼んでいるよ。君は救世主だ!』

 

 救世主?私が?いや、本当の救世主は。みんなと私を紡いでくれる、鳳世君みたいな人だ。

 

『ねえ、稲穂之神。君の祭殿が出来たんだよ!みんなが作ってくれたんだ!』

 

 う、うん。あのね。呼び名を付けてくれたのは嬉しいんだけど、少し仰々しいから。もっと、気軽に鳳世君には呼んでほしいかな。

 

『そうだね……、じゃあ。稲穂が風に吹かれて波打つ姿から、穂浪(ほなみ)。なんてどうだろう?』

 

 うん、それがいい!じゃあ、これからもよろしくね鳳世君!

 

『穂浪のおかげでこの世に漂う神々は怖くないってみんなも分かってくれた。これからも想いの溢れるこの世界を大事にしていこう!』

 

 本当に、本当にありがとう。鳳世君が懸け橋になってくれるから、私たちもみんなと一緒に生きていける。

 

『……最近、少しだけ懸念があるんだ。人達の中に、神様を異形だと唱える人が一部居るんだ。呼ぶなら、神ではなく妖怪、だと……』

 

 うん、分からないものの怖さは私にも分かる。私も最初は人を分からなかったから。でも、そうじゃないって鳳世君が教えてくれた。きっとその人たちにも分かる日が来るよ!

 

『はぁ……。ある神が、ほんの些細な行き違いから人を怪我させた。どうしよう、僕はどうすれば』

 

 話せばきっと分かってくれるよ。みんなを導いてきた鳳世君ならきっと……!

 

『暴徒と化した群衆に神が討たれた。あれは妖怪だと……、考えるよ。僕が、なんとしても君たちの居場所を作る』

 

 ……無理は、しないでね?

 

『決めた。決めたよ。今の人々と我々が分かりあうのは無理だ。だから、僕が一人二役をやる。神々を守る者と、人々を導く者。その二つを、僕がやる』

 

 ……私は、いつでも鳳世君の味方だからね。

 

『見つけたんだ!この世とは別に、世界の狭間に!丁度いい場所があった!其処に神々のみんなで移ろうと思う。いつか、人々と分かり合える時まで……!』

 

 ほんと!?きっとみんな喜んでくれるよ!

 

『ふふっ、見事に何もない場所だ。でも、神々のみんなで力を合わせればここを何でもある場所に出来る』

 

 うんっ、私も、いっぱい頑張るよ!

 

『ようやく形になって来たね、此処まで来ると現世とそう変わらない。此処を、そうだな……。「妖怪横丁」、いっそ、そう名乗ってやろうじゃないか。此処が僕達の居場所だ』

 

 すごい……っ、みんなの、鳳世君の想いがこの町を創ったんだ……!

 

『「妖怪百科・百物語」。これの副本を現世にいくつも置いてきた。もし現世で強い神力を持つ人、神が産まれてきても、これを手に取ればこの妖怪横丁に迎え入れる事が出来る。僕の知らない所でも、手を差し伸べられるように』

 

 ……っ、やっぱり鳳世君はすごいよ!寂しい思いをする子をもっと救えるんだね!みんなの救世主だ!

 

『ようこそ妖怪横丁へ。私の名前は刑部之也、そうだね……誰でも無い者さ。君の名前は?』

 

 いらっしゃい新人さん!私の名前は穂浪っていうんだ、よろしくね!

 

『もうあれから幾つになるのか……。妖怪横丁も栄えてきた。私にはまだ叶えたい夢がある。いつかはまた、人々と手を取り合う日が来るんじゃないかって思ってきた。あの日の幻を、ずっと見ている』

 

「うん、之也君が行くところなら。私は何処まででもついていくよ」

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