衛宮さんがセイバーじゃなくて抜剣者を召喚しました。 作:さわZ
「だ、大丈夫ですか?!肩から血が出ているじゃないですか!」
赤い髪を生やした青年シロウは突如現れた同じ赤い髪をした女性に声をかけられていた。
忘れ物をしたから学校に取りに行くと赤い槍を持った男に追われて、刺された。そこから気が付けばちょっと時間が経っていて、シャツは血で真っ赤。多少困惑しつつも自宅に戻ると再度赤い槍を持った男に襲われて、自宅にある蔵に逃げ込むもののもう駄目かと半ばあきらめそうになっていたら、突如目の前が光り、赤い髪の女性が自分を見て慌てだした。
シロウはちょっと特殊な家に引き取られた『正義の味方』を目指していた青年だった。日本人にしては珍しい赤い髪だが目の間の女性の髪は明るみを帯びた、少ない月明かりでもその艶やかな髪は光を弾いていた。よく見ればその毛先はその瞳と同じライトグリーンになっている。
女性の風貌は赤い上着に上に白いマントのような上着を重ねて着ていた。白いスカートに白い帽子とその髪色を際絶たせるような紅白であり、どこか親しみを持てそうな女性だった。
「ええっと、キッカの実は何処にありましたっけ?ああ、ええっと、これじゃない。あれ?何でサモナイト石が、私持ってきましたっけ?しかも治療用じゃないし」
目の前の女性は自分の容態を見るなり、スカートのポケットやマントに手を入れて何かを探しているようだが出てきたのは白い石だけだった。その白い石に自分の姿が映し出された瞬間に思い出す。そうだ、自分は赤い槍を持った男に襲われている最中だった。
「こ、ここは今危険な所なんです、だから早く逃げ」
逃げて。と、言いきる前に目の間の女性は何かを察知したかのように自分を抱きかかえて蔵の扉の前から離れる。そのスピードは常人では出すことが出来ないほどのスピード。シロウの目からすると赤い風が自分を包み込んだようにも見えただろう。
その直後に起こる爆音。それと共に崩れ落ちる蔵。落ちてくる瓦礫から逃れるためにあえて女性はシロウを抱えたまま蔵から脱出すると、シロウの前にあの紅い槍が襲い掛かって来たが女性はそれをまるでダンスをするかのように回避する。
赤い槍の矛先が女性の赤い髪を数本刈り取っただけで何とか事なきを得る。
「・・・へぇー、小僧。お前も聖杯戦争の参加者だったのか。そんでサーヴァントを上手く呼び出したってわけか」
赤い槍を持った青いスーツのような物を着た男性が、崩れ落ちる蔵から飛び出したシロウと女性の方を見てそう呟いた。今の今まで自分を襲ってきた男だ。おそらくこの蔵を壊したのも彼の仕業だろう。自分に襲い掛かって来たスピードに蔵を壊したパワー。どう鑑みても普通の人間に出来そうなことではない。
「貴方ですか、さっきの爆発は!この子が死んだらどうするんですか!」
「殺すつもりで攻撃したんだから仕方ねえだろ。ま、関係ない奴を殺すのは忍びなかったがいまじゃあガッツリ関係しているから少しはつっかえが取れたってところ、だな」
「・・・。っ、聖杯?願望器?って、なんで私こんな事を知っているの?」
不意に女性が頭に手をやり浮ついた様子を見せると、槍を持った男はやれやれと言った具合に話しかける。
「召還されたばかりで、現状が把握できていないみたいだな。そっちの小僧も同じようだから一応説明しといてやる。俺達はな、聖杯っていう願いを叶える為の道具を奪い合う敵ってことだ。そして、それを使うには俺やお前さんみたいな英霊の魂がいるんだよ。まあ、理解出来なくてもいい。ただそういう事が今なお起きているってだけだ」
男はそう言いきると同時に槍を持ち直す。
「俺はランサー。お前の心臓を穿つ者だ。で、お前は・・・。消去法だとセイバー、か?見た所だと剣は持っていないようだが。まあ、さっさと用意しろ。無手の奴を殺すは趣味じゃねえ」
「あの、その殺し合いはどうしても必要なんですか。その願いは聖杯を使わなければ敵わない夢なのですか」
「あのなぁ、甘ちゃんみたいな事を言うなよ。お前にだって叶えたい願いはあるだろう。それを叶えられるチャンスがあって聖杯があれば何でも叶うんだ」
「それでも、それでも話し合いあえばいいじゃないですか。お互いの折衷案を出し合えば殺しあう事なんて・・・」
「お前さんにもあるんだろう願いが。そこの坊主にも。俺はともかく俺のマスターとは絶対に馬が合う訳がねえ。それに俺のマスターと話し合いをしてももっとひどい事になる。お前だけの力でどうこうできるほど甘いもんじゃねえ!だから、セイバー。そんな甘っちょろい考えならここで消えちまえ!この先にまっているのは何人人ものの死が現れる戦争だぞ!」
矛先を完全に女性の方に向けたランサーに対して女性は白の前で見せた白い石を握りしめていた。
「…希望は何処にだって残っています。何故なら私は、私達は生きているんですから」
セイバーは何を思ったのか腰に下げていた剣ではなく、何もない所に手を伸ばす。
「力もなく意志も無いお前にそれを通せるのか?」
「…力はないのかもしれない。だけど、意志はあります」
女性のスカートにあった白い石がほのかな光を放つとその光は彼女手に集まり剣という形を作り出す。
「へえ、やっぱりセイバーだったか。まあ戦闘態勢に入ったのは覚悟を決めたという事か。」
「いきなりの事で未だに理解は出来ていませんが、私はあなたを止めますっ。そしてその上で一緒に戦わないで済むことを探します!」
女性はあくまでも話し合い。そして戦争には非協力的だ。そして、優しい性格をしているからこそここまで自分を引き留めようとしているのだろう。だが、いかなる犠牲を払ってでも願いを叶えたいマスターと英霊がいる。思想、意志、信念、野望。そのどれをとっても自我を通したいという欲に動かされる。女性の『戦わない』もまたそれに含まれている。
だからこそ赤髪の女性は剣を取る。かつて魂の楽園と言われたリィンバウム。そこにあった『忘れられた島』を知る彼女だからこそ、殺し合いという手段で目的を達成しようとしている存在を許さない。そんな存在にだからこそ彼女は手を伸ばす。別の方法を考えましょう。私も手伝いますからと。
その島ではまず元軍人だった自分とは分かり合えないと思っていた陽気な海賊たちだった。その次はその島に住む人間を忌み嫌う亜人や妖精といった人ではない存在達。彼等といざこざを起こしながらも自分達は分かり合えた。その島の人達と触れ合う事で自分が受け持った生徒との距離も縮められた。だが、良い事ばっかりじゃないのも確かだ。
元同僚の。自分が所属していた軍隊がそこに住む住人達を傷つけようとした。それを止めようとした。自分が持つ剣を奪おうとした。軍人である彼女達がそれを欲している事情も分かる。だが、それを明け渡すこと。それは分かり合えた島の住人達を裏切る行為だった。彼等の命を差し出すような事だった。だから自分は剣を取った。何度も話し合おうとその剣を持って彼女達を退くことはあっても決して自分から傷つけようとはしなかった。
だが、力は力を呼ぶのか、軍人である元同僚との戦いも終え、どうにか和解の席を持とうとした時、法も人情も溝に投げさる存在達が自分達に襲い掛かった。自分と同じ力を持つ存在と何度も戦った。そして、彼女の持つ剣は戦いたくないという心と共に砕けた。
「へぇ、それがあんたの獲物か。だが、そんな生っちょろい剣と甘ったるい思想はすぐに壊れるぜ!」
ランサーが弾かれたように女性の持つ剣にぶつかると同時に白い剣は砕け散った。だが、砕け散った剣の欠片たちは再度彼女の手に集まり再び形を成した。それは彼女が今まで何度もくじけそうになった時、彼女が守ろうとしていた人達が実は自分を支えてくれていたように彼女の持つ剣は何度でも蘇った。
「ちっ。あの紅い弓兵と似たような力か!」
女性と何度も打ちあうランサー。それは赤い槍が白い雪を舞い上げているかのような光景を作り出していた。砕かれるたびに再び手に握られる白い剣は何度でも何度でも彼女の手に集まり形を成す。
「・・・私の考えは確かに甘いかもしれません。世界は優しくないのかもしれません。だけど、私はそれを貫きます!その先に私が守りたい人達の笑顔があると信じて!」
女性の持つ剣が一際大きく輝くと今まで数回の衝突で砕けていた白い剣の光はより濃厚になり、辺り一面を明るく照らしていた。
「だから、ランサーさん。私はあなたを止めてこの戦争を終わらせる!」
自分の剣が壊れた事で自分の心も壊れてしまったと思っていた時、自分が受け持っていた生徒が島を襲ってきた組織の暗殺者がいる危険性も有るのに、砕けた剣の欠片を集めてくれた。剣が壊れたから心が壊れた。それなら剣を直せば貴女の心が治るかもしれない。それぐらいしか思いつく事がなかったと泣きながら抱きついてくる生徒を自分は強く抱きしめた。そうだ、剣が無くなったから戦う事が出来ない。皆を守る事が出来ない。それが怖くてふさぎ込んでいたところで仲間になった海賊。島の皆にお前は剣無しでもよくやった。お前があちこちに顔出してくれたおかげで俺達は分かり合えた。そこに剣は関係ない。
「ふんっ。ならこの槍を受けてもそう言い張れるんだったら考えてやるよぉ!」
男の持つ真紅の槍が赤黒い光を放ちながら凄い力を帯びていくのはシロウにも感じ取れた。それに対峙する女性も自分が持つ剣を魔力で強化するかと思っていたが、それは違う事だった。
「ランサーさん。貴女の攻撃はとても鋭く凶悪です。だからこそ私も切札を使います」
白い剣を構えたままだが女性の体からは蒼の光が零れだすと同時に天へと吹き抜ける。その青い光の奔流の中に一際蒼く輝く宝石で作られたかのような剣が現れた。
「・・・ごめんね。本当はずっとよばずにいれれば良かったんだけど」
白い剣を片手に持ち、空いた片方で青い剣を取ると女性の風貌が変わった。髪は銀の色になり瞳はライトグリーンから青い瞳に。そして彼女の来た洋服の一文も彼女の体に合わせて少しだ変化している。
「準備はいいな?行くぜ、ゲイ・ボルク!!」
「果てなき蒼(ウィスタリアス)!私に力を!」
高速移動するランサーをどうにか目で追った女性だが、ランサーの動きを見た瞬間、早さで放勝てないと思った女性は先程出現させていた白い剣とは別の剣を作り上げ、いや、呼び出した。
どんな青よりも蒼。海のように透き通り、空の様にどこまで吸い込まれそうな剣が彼女の手に出現した。
お人好しで子ども達の笑顔が何よりも好きだった彼女。誰かを守り抜く。そんな彼女の姿を見て、誰かがそう言い伝えられることになる。異世界で語り継がれる蒼の魔剣を持つ英雄。赤い髪の女性。アティがこう呼ばれるのにそう時間はかからなかった。
抜剣者(セイバー)。守り、切り開く者。
その蒼の魔剣は彼女の心で出来ていた。
サモンナイト6が出るという情報を目にしてふと書いてしまった。
Fateあまり知らんのに・・・。
セイバーって言ったらアティ先生(もしくはレックス先生)が真っ先に思い浮かんだんで。次回の更新は未定です。
邪神様も書かんといかんし、ドラクエも・・・。
他の作品に行き詰ったらローテンションで書いていきますんで更新は気長にお待ちください