衛宮さんがセイバーじゃなくて抜剣者を召喚しました。   作:さわZ

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老害は悪い文明!
私情により投稿が大変遅れました。
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第五話 最優の英雄

 宵の時間も過ぎた冬木の地で巡り合った機械兵士と抜剣者の二人はお互いのマスター及び未確認勢力のアーチャーとリンの事を忘れ、自分達の腕をこれでもかと広げてお互いに駆け寄った。

 数多くの人を助けてきたアティだが助けられなかった者達もいる。ヴァルゼルドという機械兵士は助けることが出来なかった者の中の一人だ。ヴァルゼルドもまたそんなアティに心残りを残したまま逝ってしまった存在だ。

そんな二人だからこそ聖杯戦争という血で血を洗うような悲劇の中で巡り合えた二人だからこそ歓喜に打ち震えた。

 

 『教官ドノォオオオオッ』

 

 「ヴァルゼルドォオオオオッ」

 

 だからこそ起こった。

 ウッカリトラブルメイカーな機械兵士。そして何故かトラブルの先かその最中に抜剣者。

 舗装されている道で小石も無く、かといってヴァルゼルドの自重で道が陥没したわけでもない。それなのに躓く機械兵士。お前は本当に機械なのかと問いただしたい。

 車も人も急には止まれない。それは機械兵士も抜剣者も同じである。止まるんじゃねえぞぉ。

 

 『ア』

 

 「え?」

 

 ヴァルゼルドの駆けだしたスピード+ヴァルゼルドの装甲強度+妙に尖ったヴァルゼルドの兜部分の額+無防備・無警戒のアティの額。

 

 まずその勢いと質量と勢いを一点に集中した一撃で体力の七割。

 その一撃に堪えて支えることも出来ずに押し倒されるアティ。実質、超重量級ともいえるヴァルゼルドのボディプレスを受けて体力の二割近くを削られる

 

 『教官ドノッ、無事デアリマスカッ』

 

 「・・・ヴァルゼルド、貴方に会えて、良かっ、た」

 

 慌ててアティの上からどくヴァルゼルドだったが、彼女はどこか満足そうな、どこかやり遂げたような顔を見せながら体から淡い蒼い光を放ちながら体が透けていくような気配を見せていた。抜剣覚醒まであと3。

 

 「・・・がふっ」

 

 『教官ドノ?!教官ドノォオオオオオオッ!』

 

 冬木の町で機械兵士が叫ぶ。シロウとリン。ヴァルゼルドを召喚した少女のマスター三人が目を点にする。アーチャーが今のうちにアティとヴァルゼルドを倒してしまうべきかと考える。冬木の夜は長い。

 ちなみにこの場にアティやヴァルゼルドが追い払ったランサーとキャスター。まだ見ぬアサシンやライダーがいたら迷わず二人にトドメをさしていただろう。

 

 

 

 

 場所が分かって再び衛宮邸。

 ヴァルゼルドが頭突きからのボディプレスでアティをKOしてからしばらくして正気に戻った両方のマスター。片方はトドメを刺せという言葉と何をするんだと止める言葉が行きかう中、ヴァルゼルドはアティを助けて欲しいと言う。リンはとりあえず何やら最近感じた何とも言えない疲労感にアーチャーはまたかとため息をついた。

 ヴァルゼルドに甘いのか、アティを助けて欲しいと何度も懇願する彼に折れてとりあえず今は戦わないであげるわとヴァルゼルドのマスターもため息をついた。シロウもまたヴァルゼルドがアティをわざと傷つけたわけではないとわかり、安心のため息をついた。

 そのままアティが快復するまで彼女を介抱しようとしたが、ヴァルゼルドのマスターはまたドジをしたらいけないわと離れた所で待機していた自分のメイドを呼んで介抱させた。無表情で無骨な格好なのにどこか無力感と頼りなさを感じさせる雰囲気を醸し出すヴァルゼルドの背中。

 そんな背中を見向きもせずメイドが準備した車の後部座席に乗せられるアティとシロウ。貴女も来るとリンを誘う。まぁ怖かったら別にいいけど。と言葉も添えて。

 売り言葉に買い言葉。乗ってやろうじゃないのっ。車に乗り込むリン。今日で何度目になるか分からないため息をつくアーチャーも乗り込んだ。さすがにヴァルゼルドでは人間サイズの車には乗れない。そう思った矢先ヴァルゼルドの着込んでいた甲冑をパージさせていく。パージされたパーツは零体化し、残ったのは手甲、脛当てにあたるプレート四枚と子どもの頭くらいの大きさの球体。黒いマスコットに小さな天使を思わせる小さな羽が二枚を生やしたライザーと呼ばれる種族と同じ姿になって少女の腕の中に納まり助手席に乗った。その光景にシロウとアーチャーは男心をくすぐられた。

それからシロウの案内の衛宮邸へとたどり着いた。

 

 「うう、危うく抜剣覚醒するところでした」

 

 『誠ニ申し訳ナカッタデアリマスッ』

 

 衛宮邸につき、客間に運ばれる間にヴァルゼルドは再び元の機械兵士の姿に戻り、アティを担いだメイドの後に続く。客間に用意されたテーブルに座る面々。ヴァルゼルドのマスターのメイドたちは少女とヴァルゼルドを挟むように立っているが。

 衛宮邸に用意された客間で三陣営のマスターとサーヴァントはお互いに状況とこれからどうするかを説明した。

 

 「私はこの戦争を止めたいと思っています」

 

 「俺も戦争反対だ。だからこそこの戦争に参加した。願いがあるとするならこの戦争を止める」

 

 「私はこの戦争に勝ちたいだけよ」

 

 「・・・私は記憶が無いのでね。叶えたい願いも思い出せないな。ただ、この戦争に呼ばれたからには叶えたい願いがあったという事だ」

 

 つまり今のところはこの四人に叶えたい願いはない。だから今のところは休戦。ゆくゆくは同盟を組んでいこうとアティは言うがリンとアーチャーは否定的だ。そして、

 

 『・・・スミマセン、教官ドノ。本機ニハ叶エタイ願イガアルデアリマス』

 

 「私にもあるわよ」

 

 イリヤスフィール・フォン・アインツベルン。イリヤでいいわ。そう名乗った少女はヴァルゼルドのマスター、イリヤはスポーツマンシップのような言葉を鼻で笑った。意志の弱い奴がこの戦争を生き残れるとは考えられないからだ。

 

 「そんな・・・。ヴァルゼルド。貴方には殺し合いをしてまでも叶えたい願いがあるんですか?」

 

 アティがヴァルゼルドの言葉を聞いて悲しそうな表情をするその表情を見るとヴァルゼルドの意志も崩れそうになる。だが、それを崩さないように、そしてアティを悲しませないように言葉を紡ぐ。

 

 『・・・スミマセン。教官ドノ。ダケド、ケシテ、決シテ。本機ハ貴女トハ戦イマセンッ。教官ドノノ教エニ背イタリナドシナイデアリマスッ』

 

 「ヴァルゼルド・・・。貴方の願いというのは何ですか?」

 

 『ソレハ「ストップよバーサーカー」、・・・マスター』

 

 自分のバーサーカーの言葉を打ち切るイリヤ。これ以上喋られると不利になると感じたから止めた。だが、

 

 「ちょっと待ちなさい!そいつがバーサーカー?!というかどこ出身の英霊よっ!思いっきりロボットじゃないっ!」

 

 「ヴァルゼルドはバーサーカーだからヴァルゼルドなんですよ」

 

 「意味わかんないから。というかあんた達顔見知りなのね」

 

 バーサーカー。狂戦士のクラスを得た英霊は理性を無くして他のステータスの上昇、戦場をかき乱す。それなのに目の前のヴァルゼルドは狂っているようには見えない。まあ、確かに平衡感覚が狂って転んだようにも見えるが・・・。

 ヴァルゼルドの本来の性格は文字通り機械じみた性格だ。命令があるまで無言で待機し、命令を受ければ何の感情も無く淡々と任務をこなす機械だ。だが、そんな誤作動が生じた。そんなバグから生まれたのが今のヴァルゼルド言う人格だ。

 アティとヴァルゼルドの出会いは忘れられた島。そこに流れ着いたアティはその人格だけではなく人間でいう所の神経に関する機能にバグもあって動けない所でそれを何とかしようと奔走し始めたアティを『教官ドノ』と慕い始める。だが、修理を重ねていくというのはヴァルゼルドの本来の人格が蘇り、バグである人格を消し去るという事。

 本来の人格を取り戻したヴァルゼルドは暴走しアティとその仲間達に襲い掛かった。何とかそれをやり過ごしバグである人格のヴァルゼルドが現れる。そして言う。自分という人格を消してその体をアティ達の役に立ててほしいと、

 バグである自分という人格は修理をすればするほど消えていく。だが、自分という人格を消さない限りまた暴走してアティ達を傷つける。そうなるくらいなら自分の人格を消してせめて体だけでも役立てたいと願い出た。

 アティは悩んだ。だが、ヴァルゼルドの意志を汲み取り彼の人格を消し去り真っ白な状態。機械じみたヴァルゼルドに自分達を仲間だと設定し直して体だけはアティ達と共に戦った。

 つまり、今のおっちょこちょいなヴァルゼルドはバグの人格。バグ。狂った人格。

 イリヤがヴァルゼルドをバーサーカーというクラスで召喚しなかったら今のヴァルゼルドはなかった。

 

 「というか貴女がセイバーかどうかも怪しいのだけれど・・・」

 

 そもそもリンが召喚した英霊。アーチャーも出自不明なんだが。

 セイバーは最優の英霊。理性を失わない。バーサーカー程のステータス向上は見込めないが上昇はする。理性があり、バランスよくステータスを上昇させることが出来るからセイバーというのは最優の英霊とも言われる。

 

 「あ、あはは。たしかに最優とは言いづらいですね」

 

 アティは恥ずかしそうに自分の後頭部を掻く。確かに自分がそんな優れた被召喚者ではないなと自嘲した時だった。

 

 「イイエ、教官ドノハ確カニ最優ノ英霊デアリマスヨ」

 

 ヴァルゼルドは語る。自分がイリヤの元に召喚されてからこの世界の英雄・反英雄の事を自分の体からインターネットを通じて様々な知識を得た。

 確かに教官ドノはそこに記されていた英雄・反英雄の戦果・戦力は劣るかもしれない。だけど。

 

 『教官ドノハドノ本機が知る英雄ノ中デ誰ヨリモ優シイ。最モ優シイ英雄デアリマス』

 

 「っ。ありがとう、ございます。ヴァルゼルド。英雄なんて呼ばれるよりも、その言葉。とても、とっても、嬉しいですよ」

 

 ヴァルゼルドの言葉が本当に、心の底から嬉しそうな笑顔を見せた。それは異性ならだれしもが見惚れてしまう笑顔を浮かべていた。

 まるで恋人同士のような雰囲気にリンとアーチャーは耐えられないのか席を立つ。

 

 「やれやれ、つきあってらんないわ。アインツベルンの人がいるならこの戦争の詳しい事もわかるでしょ。帰るわよ、アーチャー。ああ、あと同盟の方はパスね」

 

 「ふむ。そうだな。これ以上お人好しのたまり場に居るとこっちまで腐抜けてしまいそうだ。同盟など組んだらすぐに敗退しそうだ」

 

 アーチャーの皮肉にアティはしょぼんとし、シロウは憤ったが、その空気を一変する事をヴァルゼルドが返した。

 

 『ダカラコソ教官ドノノ周リニハ多クノ仲間ガ集マルノデアリマス。誰カノ為二走レル教官ドノ周リニハ教官ドノヲ支エタイ人達ガ集ウノデス』

 

 アーチャーは何も言えなかった。

 ただ一人で走ってきた男がいた。誰かの為にと走った男がいた。だがその男の周りには・・・。

 

 「どうしたの、アーチャー?帰るわよ」

 

 「・・・ああ」

 

 シロウとアティに玄関まで見送られたリンはアーチャーに抱きかかえられ超人じみた力跳躍し、夜の街の中へ消えていった。

 

 「はー、やれやれ。あのアーチャー私のヴァル、じゃなかった。バーサーカーに言い負かされてやんの、ぷーくすくす」

 

 『本機ハ教官ドノノ事ヲ話シタダケデアリマスヨ?』

 

 「なんでイリヤが偉そうにしてんの」

 

 「シロウ君、空気読んでください。コミュニケーション能力も正義の味方に必要な物ですよ」

 

 サーヴァント達に言われ咳払いをするマスター達。

 

 「さーて、何を教えて欲しい?教えたら殺し合いだけど」

 

 「え?嫌ですけど?」

 

 「え?嫌だけど?」

 

 『エ?嫌デアリマスケド?』

 

 「あんた達戦争する気あるのぉおおおおっ!」

 

 そしてツッコミ役がリンからイリヤにバトンタッチした。

 




アティ先生は史上最高のヒロイン兼英雄だと思うんです
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