ものの数分で森を抜け、
小屋の立ち並ぶ集落にやって来た。
叢雲「着いたわね」
地面に降り立つと、フラフラした。乗り物酔いしたらしい。
叢雲「艦娘が乗り物酔いなんてね、、」
額に手をつき、顔を振る。いくばか楽になった。
暁「ここで艦娘の艤装を作ってるの?」
小屋からは何やら工具の音が聞こえている。
白露「そうだよ!こっち、こっち!」
藁葺き屋根、土壁、昔作りの家が立ち並んでいる。
白露に手を引かれ、その中でも1番大きな家に入る。
不釣りあいな分厚い鉄の引き戸をスライドさせる。
そして階段を降りると、冗談の様な光景が目に飛び込んできた。
暁「すごーい!」
中は鉄骨で補強された巨大な工場であった。
ローラーに乗って艦娘の艤装が流れ、
妖精さんが移動に合わせて組み立て作業を行っている。
白露達は最新鋭の工作機械を避けながらラインに近づく。
白露「妖精さん!友達、見つけて来たよ!」
黄色いヘルメットを被った妖精さんに白露は中腰で話し掛ける。
泥棒ひげのおじさん妖精が振り返った。
親方「おう、白露ちゃん、おかえり」
人の良さそうな妖精さんは気軽に答えてくれた。
叢雲「ここは一体何なのよ?」
周りを見渡しながら、叢雲が問う。
親方「おう、お前は叢雲だな?
よく艤装をぶっ壊してくれる問題児の」
叢雲はムッとする。
叢雲「余計なお世話よ、見たところ、工場の様だけど、
大層なカモフラージュをして何なのよ?」
親方「ここは軍の秘密工場だ、
お前達、艦娘の艤装をここで作ってる。
おっと、そんな格好じゃ寒いだろ、
これを付けな」
叢雲は思い出した様に顔を赤くして、シーツを掴み、体を隠す。
親方から艤装を受け取り、背中に装備した。
羽織っていたシーツが細切れの繊維に変わり、服を形成する。
叢雲「ふぅ、やっぱりこの格好が一番落ち着くわね」
いつもの叢雲の服、白のセーラーワンピース、黒のタイツ姿に変わった。
頭部周辺のビットを大きく逸らせ、伸びをした。
叢雲「白露もここで修理を?」
親方「ああ、こいつは大変だったぞ」
ドンガラガッシャーン!
突如、屋根を破り火だるまの女の子が落ちてきた!
妖精1「!?」
女の子は台所の鍋に頭から突っ込む。
人1人ゆうに入る大鍋には、妖精さん達の夕食、モツ煮込みがグラグラと煮込まれていた。
妖精2「熱つっ!!」
妖精1「あーーー!!」
女の子「あっつーーーい!!」
鍋の中で暴れる女の子、バシャバシャと中身が溢れた。
飛び散る煮汁に妖精さん達は急ぎ距離をとった。
1人の妖精さんが急ぎ工場の親方の元へ駆けつける。
妖精1「親方、空から女の子が!」
親方「なに映画みたいな事言ってるんだ」
妖精1「本当だって!」
親方の手を引き、台所に向かう。
大鍋の中身はぶちまけられ、モツ煮込みの海を女の子がのたうち回っていた。
女の子「あちちちちちっ!!」
親方「なんじゃいこりゃ!?お前達何してる!早く医務室に運べ!!」
妖精2「親方、でもこの子、艦娘ですぜ?」
親方「艦娘だぁ?」
親方は女の子に近づく。
親方「こいつは、おったまげた、白露じゃねーか!
おい、担架もってこい、ドックに運べ!!」
白露「いや〜、あの時は熱かったなぁ」
あははと笑い、ポリポリ頭を掻いてる。
親方「おかげでこっちは晩飯抜きになっちまった。
まぁいい、無事助かったんだからな。並の人間なら死んでたぜ」
叢雲「艦娘は頑丈だからね」
叢雲は工場の奥に歩いて行く。そこで一際大きい艤装を見つけた。
叢雲「ここで一番強力な艤装はこれかしら?」
親方「ああ、そうだ」
叢雲「これ、貸して」
親方「何言ってんだ、お前が装備出来る様な代物じゃねぇぜ。なんなら試してみな」
暁「叢雲、もしかしてその艤装であいつらを?」
叢雲「ええそうよ、瑞鶴が失敗した今、
敵を止められるのは近くに居る私達しか居ない、だから!」
艤装を背負い、立ち上がろうとする。
叢雲「ふぬぬ!」
力を込め、試すも上がらない。
白露「叢雲、私にもやらせて」
白露に交代するもダメ
暁「2人がかりなら、いいんじゃないかしら?」
2人で背負おうとするもダメ
親方「敵を倒さなきゃならないってのは分かるが、、無駄だよ、駆逐艦にぁ扱えんさ
動かせてせいぜい砲身位、なんたってそれは扶桑型戦艦のもんだ。駆逐艦とは馬力が違う」
叢雲が半ばヤケになりながら背負う。
叢雲「ぐぬぬぬぬっ!私達がっ!あいつらを止めなきゃ!
街が!基地が!みんなが!やられるの!このっ!このっ!」
精一杯の力を込め立ち上がろうと頑張る。
顔に青筋を立て、真っ赤にし、息巻く
暁「叢雲、無理しないでよ」
親方はやれやれと肩を竦める。
親方「やる気があるのはいい事だがな、ちと真っ直ぐ過ぎる。
おい、お前達、クレーン持って来な!」
妖精さん達「へい!」
白露「何するの?」
親方「お前達でも使える様に工夫すんのさ」
叢雲「白露、準備OKよ、動かしてみて」
白露「了解〜」
エンジンが唸り、トラックが進む。
暁「砲身もちゃんと動かせるわ!」
親方「射撃のテストは外でやってくれよ〜」
叢雲「分かってるわよ」
トラックの荷台に搭載された扶桑型戦艦の艤装、
そこに座り込む様に艤装を装備する、叢雲と暁
2人ともミニスカートの巫女服姿
トラックの運転席には白露が楽しそうにハンドルを握っていた。
叢雲「準備OK、行けるわ!」
背負って移動不可の艤装をトラックに載せ、移動式に仕立て上げたのだ。
妖精さん達がシャッターを上げる。
叢雲「親方、行ってくるわ!」
親方「おう、敵をぶっ飛ばしてやれや」
ニコッと笑う親方に手を振り、
トラックは工場を出発した。
上流
川の水が飛沫を上げ、先を争う様に流れている。
流れを逆らいながら、深海棲艦2体がチンタラと進行している。
戦艦ル級「タイシタコトナイ カンサイキダッタワネ
ツマラナイ」
重巡リ級「ボス、ハヤクノボリマショウ、ツイゲキガアリマス!」
戦艦ル級「タノシクナイジャナイ
ダイジョウブヨ、モットタノシミマショウ」
重巡リ級はため息をついて、
従うしかなかった。
基地
敵陣の真っ只中、一隻で滑走する艦娘が居た。
警笛を鳴らし、わざと敵の注意を引いて走る。
飛龍「ほらほら、当たらないわよ?しっかり狙いなさい!」
四方から魚雷、軽やかにステップを踏みやり過ごす。
正面から敵艦載機の水雷が走る。
飛龍「よっと!」跳躍して飛び越える。
敵の第二波、戦闘機の射撃、肩の甲板で攻撃を防ぐ。
飛龍「まだまだ、こんなの擦り傷!友永隊、やっちゃって!」
飛龍の艦載機が敵を追い、撃墜する。
慌てる敵に狙いを定め、弓を引く、
風なり声を帯びた矢は、敵の脳天を貫いた。
コンゴウ「ヒリュウ、もう少しだ
それまで耐えてくれ」
冷静な眼差しのコンゴウは慎重に演算を続ける。
山道
荷台を大きく揺らしながらトラックは道の悪い山道を、走り続ける。
白露「ふーんふふーふ〜ん♬」
鼻歌混じりにハンドルを握る白露
叢雲「白露!もっと丁寧に運転しなさいよ」
ガタガタ揺れる度、トラックに体を打ち付ける。
艤装は鎖で固定されているが、体は自由に動ける様、固定されていない。
通信で文句を言うもあまり効果はない様だ。
暁「それがレディに対する態度なの!」
暁も我慢ならず声を上げる。
白露「あ、ごめんごめん、気をつけるよ〜」
トラックはカーブに差し掛かる。
ドリフト気味にタイヤを滑らせ、スピードを落とさずに曲がった。
暁「きゃあ!」
強いGがトラックを襲う、お尻を強く打ってしまった。
叢雲「いたたたた、、、」
白露「お、川が見えて来たよ!」
森が開け、川沿いの道に出た。
激流が白い泡を吐いて唸っている。
その川に二体の深海棲艦が見えた。
薄暗い夕暮れの日差しを浴びた体は、黒の瘴気をまとい不気味であった。
眼だけは黄金に光りその不気味さを際立たせていた。
重巡リ級「ナンダ アレハ?」
土煙を上げ暴走するトラック
白露「敵だよ〜!!見つけた!叢雲、暁、出番だよ!」
キャッキャと嬉しそうに喜ぶ白露
叢雲「ようやく敵に追いついたわね」
積年の恨みを晴らす機会、
砲門を向けた。
暁「叢雲、撃つよ?」
叢雲「ええ、やるわよ!」
爆音と共に放たれた砲弾、一直線に重巡リ級に直撃した。
重巡リ級「グワァ!!」
右肩から右下腹部まで吹き飛び、大量の黒い体液が吹き出す。
トラックは大きく傾き、肩輪走行になった。
白露「アハハハハッ!楽しいね!」
楽しげにハンドルを切り、車を元に戻す。
ガタンと荷台が弾む。
叢雲「いたっ!」
暁「ひぐっ!」
叢雲「同時に撃つのは止めた方が良さそうね」
図太い空の薬莢が排出され、山道を転がった。
重巡リ級「テ、テキダト!?」
戦艦ル級はキラキラした瞳で、叢雲達を補足した。
戦艦ル級「フフフ、アハハハ!テキダ、テキガキタゾ!
カエッテキタノネ、ステキナイリョクジャナイ」
辛そうに息を吐いてる重巡リ級を楽しげに眺める。
重巡リ級「ボ、ボス、ハヤクニゲテ、、」
次弾装填が済んだ扶桑型艤装
叢雲「扶桑型戦艦 叢雲! 地獄の底から帰って来たわ!」
カッと光り、トラックが煙に包まれる。
それは重巡リ級の最期に見た光景だった。
上半身をまるまる吹き飛ばされた重巡リ級の残骸は、
力無く激流に流されていった。
暁「敵重巡撃破!やったわ!」
叢雲「ふん、当然よ
この艤装なら、敵に勝てるわ」
勝機を見た叢雲は嬉しそうに笑う。
戦艦ル級「スバラシイ タノシイワ」
ウキウキしているのは叢雲達だけではなかった。
戦艦ル級は川を猛スピードで登り始める。
白露「逃がさないよー!!」
トラックも戦艦ル級のスピードに合わせ、川沿いの道を並走した。
暁「やっちゃうんだから!」
暁が砲弾を放つ。
戦艦ル級は砲弾を確認すると、それを撃ち落とした。
暁「あれ、当たってない?」
叢雲「撃ち落としたですって!?なんて精度なの!」
動揺する艦娘達を嬉しそうに見る。
戦艦ル級「タノシソウ、、カンタン二 コワスノハ モッタイナイワネ
コンナノハ ドウカシラ?」
トラックの進行方向を狙い、戦艦ル級が砲弾を放つ。
白露「アハハッ!危ない危ない!」
目の前道が土を吹き出し、大穴が開く。
右へ左へ大きくハンドルを切り、巧みに穴を避けた。
叢雲・暁「わぁ〜〜!!」
視界が川から地面に変わり、流れる道に顔が付きそうになる。
道は傾斜のある道に差し掛かり、トラックは横転しなかったが、
それでもかなりバランスが悪い。
戦艦ル級「ホレホレ ドンドンクルゾ〜 ヨケキレルカナ〜?」
敵の攻撃は続く、白露は避けるのに精一杯、叢雲達はろくに照準を合わせられないでいた。
白露「あちゃー!!」
その時白露はハンドルを切り損ねて、
砲撃で空いた穴にタイヤが入ってしまった。
瞬時にエンジンをふかし、勢いのついたトラックは肩輪走行になる。
勢い余って、転倒する角度まで達してしまった。
暁は重心が傾くのを体で感じると、砲門を地面に向けた。
暁「やらせないんだから!」
放たれた砲弾は地面で炸裂し、その反動でトラックは傾きを戻した。
大きな音と共に荷台が弾む
叢雲「ぎゃん、、やるじゃない」
暁「えへへ」
暁はVサインをする。
戦艦ル級「ソロソロ ホンダイニハイルカ」
照準を叢雲達に向ける。
叢雲「敵の砲門がこっちに向いたわ、
来るわよ、暁!」
敵の砲弾は弧を描き、
叢雲達に降ってきた。
艤装に命中、艤装の一部が破損した。暁「大丈夫、戦えるわ!
白露、蛇行運転して!」
白露「アハハハハッ!了解!」
トラックは大きく蛇行した。敵の攻撃、叢雲達の攻撃、
お互いが撃ち合いそれぞれ弾は山や森を破壊した。
戦艦ル級「ソウダ、ソレデイイ
モットウチアイマショウ」
戦艦ル級は金色の瞳を輝かせていた。