真剣で私に恋してください   作:猿捕茨

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なんか書けたので二話まで投稿

基本的にこういったの書いたことない人なのでよくわかんないのでアドバイス等あったらどうぞ


大成の思いと一誠の思い

由紀江の誕生から一年が経ち、一誠は黛の道場へ鍛錬に行き、鍛錬が終わると由紀江の相手をし、暗くなるまえにと奥方に言われ家に帰り、そして夕食の後に素振りを行ってから就寝するというサイクルが出来上がっていた。その上で入学を果たした小学校では輪の中にするりと入り、友人を増やすのにも成功していた。

 

そんな一誠の成長を見てきた大成は思う。一誠は才能に恵まれ、今のところ驕ることなく成長している。しかしその太刀筋を見ていて大成は気付いてしまった。

 

一誠の太刀筋は黛家の継承する流派には向かない、と。基本的に一誠の筋力の付き方とその気の流れは腕以上に脚に集中している。黛の剣は居合を最も得意とし、体術も使うが一誠の筋肉の付き方や気の流れからしてそれに向いているとは思えなかった。

 

しかし一誠の剣は剣聖として名高い大成をして惹かれるものがあった。一誠の剣には人を引き付けるものがあった。そして一誠の才を埋もれさせるには惜しいという言葉では足りない程だったのだ。だから大成は一誠の稽古する姿を見ながら考えていた。

 

一誠にはただひたすらに基礎を叩き込み、大成との対戦を通して自らの剣を会得して欲しいと。そう考えるに至ってから稽古の時には常に一誠の動きを観察しながら注意を促してきた。

 

その中で大成が最も驚嘆したのが一誠の類い稀なる足の器用さであった。その他にも優れた分野はある。自らを相手にしても挫けない不屈の精神だったり、一足の踏込の速度であったり、大成をして油断していた時を狙える戦略目であったりと数えればキリがない。されどやはり、最も驚嘆に値するものと言えば器用さなのである。一誠の器用さの源泉はその体幹の安定、驚異のバランス感覚、鍛え上げた柔軟性、そして異常とも言える足の発達によるものである。

 

大成が一誠に稽古をつけていたときにこんなことがあった。一誠の握りが甘かったところを狙い彼の持っていた竹刀を弾き飛ばしたら一誠は弾き飛ばされた竹刀など眼中にないとでも言うかのように放置し、大成に肉薄、当身を食らわせた後に足を振り上げ竹刀を足に掴みその竹刀で攻撃に移ってきたことがあった。この時はまだ基礎も教える前だったのでどのような形でもいいから竹刀で一撃加えてみろと言ってあったのだがこれには予想外だった。他にも由紀江をかまっていた時には足の指で由紀江の服を掴み、持ち上げたほどだ。その足の力は凄まじく、幾らかの凹凸があればそこを足の指で掴み、踏ん張りにすることも可能であった。

 

腕の方も足に比べれば劣るが器用なようで弾き飛ばした竹刀を腕の回転に合わせるように這わせ元の握りに戻すということすらこなして見せた。

 

 

そして大成は一誠を鍛える傍らに体術を重点的に鍛えることにした。そうすることで一誠には自らの剣を見出してほしいと考えたのだ。

 

 たとえその方針に賛同しなかったとしても構わなかった。沙也佳が誕生した時に一瞬呆けていたとはいえ、一誠は自らに対して一撃を入れることが出来るほどの逸材なのだから。

 

 

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なんか知らんが剣術の道場に通っているのに剣術より体術をやってる時間が長くなってる現状。

 

小学生へと上がり、鬼のような稽古は覚悟していたがお前には剣は向いてないのだ! とか暗に言われているようでちょいとショックを受けている。

 

この世界が真剣恋の世界だというのは理解したので鍛えすぎて身長が伸びなくなるという懸念は抱いていない(むしろ鍛えて身長伸びなかったら百代さんとか岳人はちびになってるはずだ)。だからこそ、この道場で体動かすのが楽しいと思えているので鍛えていこうと思ったら剣術じゃなくて体術メインである。しかも黛の中でも比較的珍しい足技を重点的に。なんだこれ。剣聖と名高い黛大成さんの教えだから素直に従っているがこれでいいんだろうか?

 

なんせ『気』とかが物質的威力を出す世界だというのにその気の概念すら教わっていない。これは俺に見込みがないってことなんですかねぇ?

 

「一誠」

 

「はい! 師匠!」

 

師匠(大成さんのことである。稽古の時のみこの呼び方を義務づけられた)に声を掛けられ修練を中断する。すると師匠は真剣な顔で座し、俺にも正面に座るように促す。俺が正面にしっかりと正座するのを見届けると厳かに口を開いた。

 

「今日で君をこの道場に迎えて三年になるね」

 

そういえば今日で俺も7歳か。と今更ながらに気付いて首肯する。

 

「三年間君を見ていてわかったことがある。君は黛の流派には向かない」

 

なんという大胆発言。ま、まあ向いてないというだけである。俺としては通り魔に勝てるくらいの強ささえあればいいのだ。

 

「だが同時に私は確信しているのだよ。君は類い稀な剣士になるだろうとも。だから今後、君は自らの考える型で勝負を組み立て、私に勝負を挑みその中で自らに最も合った剣を見つけ出して欲しい。道場は今までのものと異なり、離れにある方の道場を使用してくれ。聡明な君だからこそ今話した」

 

更なる大胆発言。俺に我流でいいから勝負を挑めと。そう仰りますか。俺としては剣で食ってくつもりはないんだが……けれど現代におけるもう一人の父親ともいえる大成さんの言いつけである。なるたけ言いつけを守るのが良いでしょう。

 

「わかりました。ならば伺いたいことがあります」

 

「なんだね?」

 

「師匠は気を扱い、斬撃すら飛ばすと聞きました。その他にもかの有名な川神院でも気を扱う術は存在するとか。そしてその気を扱う術によって体を強靭なものとすることすらできるとか。その気の扱い方、教えてはくださいませんか?」

 

かなり気になるところである。俺もこの世界に生まれ、武術を学んだからにはちょっと得意げになれるようなものを扱いたいのである。

しかしその言葉を言ってみたところ大成さんはキョトンとしてしまった。なにか聞いてはいけないようなことだったのだろうか?

 

「何を言ってるんだい? すでに君は気を使って私と戦っていたじゃないか」

 

「い、いえ、そのような覚えないのですが」

 

「じゃあ無意識かい? 私との稽古の時、君は足に気を集中させていたように思うのだが……だからこそ教えなくて良いものと思っていたが……わかった、気の扱い方も伝授しようじゃないか」

 

「ありがとうございます」

 

 

そうして俺は新たなる一歩を踏み出したのだ。

 

 

それからの俺の日常は過酷の一言である。師匠である大成さん。あの人あんなこと言って置きながら去り際にさらりと「あ、基礎を疎かにするべからず。今後は基礎の内容を倍にしなさい」とか宣ってくれちゃったのである。

 

現在、俺の日常は学校へ行き、黛の離れの小さな道場へ行き、基礎鍛錬を行いながらどのような動きが自分に合うのか考察し、基礎を終えた後にその考察に則った動きを形にし、その成果を見せる為に師匠に勝負を挑み、無残に敗れ、日によっては黛家で夕飯に招かれ、家に帰ったらその日の勝負の問題点を洗い出しては素振りをするというなかなかにバカなスケジュールで動いていた。

 

 




こんな上手くいくわけがない?

仕様です。

まぁこの主人公に恋愛フラグはそう立たないので許してやってくだしあ

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