真剣で私に恋してください   作:猿捕茨

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温泉

着替えの浴衣と諸々を持ち脱衣所に突撃すると丁度あちらさんも風呂だったのか脱衣所に男子4人の姿があった。

 

「おや、大和君たちではないですか」

 

後ろにいた冬馬が目ざとく見つけて声を掛ける。それに対しそれぞれが反応を見せる4人。

 

まぁ、脱衣所の前で棒立ちになるのも何なのでさっさとロッカーの前に行って服を脱ぎ始めようとする一誠。後方であれがまゆっちの兄ちゃんかという小声が聞こえてくるが話は風呂に入ってからでも問題ないだろうと判断してさっさと風呂に行ってしまう一誠。

 

あまりに4人をスルーして行ってしまったので他の面子はしばし呆然としてしまったほどだ。

 

「えーと、あれがまゆっちのお兄さんでいいんだよな?」

 

思わず大和が冬馬たちに聞いてしまう。

 

「ええ、肉親ではないみたいですが一応そういう役割みたいですよ。温泉を楽しみにしていたみたいなので早く入りたかったみたいですね」

 

「よっぽど入りたかったんだなぁ」

 

などと風呂場と脱衣所を繋ぐ扉を見ていると風間がハッとした表情をして一気に服を脱いで走り出す。

 

「風呂に入る一番槍はゆっずらーん!」

 

そういってガラッと引き戸を開けて風呂場に消えていく風間を見て相変わらずの様子に自らたちも準備を始めだす風間ファミリーの面々。

 

自分たちもさっさと支度を済ませてしまおうと準も冬馬もロッカーに向かうのだった。

 

 

 

 

男子組の邂逅が結構あっさりしたものだったのと同様に女子組の方も案外穏やかな邂逅を済ませていた。

 

「おー、めんこい女子が一人追加されたなぁ」

 

と言って小雪にちょっといやらしい視線を送るのは武神、川神百代。その視線に思わずたじろいでしまう小雪だが風呂に入りに来たのにここで帰ってたまるかという思いで後ずさりかける足をロッカーへと向ける。

 

「モモ先輩、流石にお風呂場でそういうのはよした方がいいと思う」

 

「なんだー、嫉妬かぁ、こいつー」

 

と諌めた筈の京に抱き着く百代。そのやり取りにも慣れっこなのか一子が小雪に気さくに話しかけてくる。

 

「ええっと確かSクラスの人よね? 葵君たちと一緒に来たってことでいいのよね?」

 

「うん、聞いた話だと明日は僕たちと一緒の行動予定らしいからよろしくね」

 

一子の気さくな対応にどうにか言葉を紡ぐ小雪。この行動や話を一誠が聞いたらよく言えましたと頭を撫でているところだろう。

 

それぞれが自己紹介をして風呂場に行く。その自己紹介の時、先ほど一誠と二人で話をしていた娘と目が合い微笑む。一誠に聞いた話では妹がこちらに来ているとのことで名前を由紀江と言っていたからこの娘がその人なのだろう。

 

身体を洗った後にゆっくりと温泉に浸かる集団だったが京がいきなり立ち上がり言い出した。

 

「身体も清潔になったところで、男湯を覗きたいと思います」

 

「なんで? 覗きたい人でもいるの?」

 

純粋な質問が小雪からあげられる。他のファミリーは京が大和を好いていることは知っているが部外者である小雪は知らなかった。

 

えっとそれはですね、と小雪の近くでこっそりと自分との体系を見比べていた由紀江が説明をした。すると出てきた答えが

 

「じゃあ僕も覗きするー」

 

である。一瞬、京が大和狙いなのかと威嚇しようとしたが続いて一誠のを確認してみたいと言葉が出てきたので一安心する京。

 

その言葉を聞いて慌てたのは由紀江である。じ、自分も続くべきなのだろうか? けれどもそういったことをしていいのだろうか? けど小雪さんにだけ一誠さんの裸を見せるというのは……!

 

とオロオロしながらとりあえず引き留めようとしたところ一子が口を開いた。

 

「やめときなさいよ。それに大和とそっちの小雪ちゃんは一誠さんだっけ? その人以外の裸見ちゃったらどうするのよ」

 

そういわれてぴたりと止まる二人。脳内で再生されるのは風間ファミリーの面々の容姿。意中の相手の裸を見るのとそれらを一緒に見るはめになるかも知れない可能性を天秤にかけてしかたなく覗きを中止する二人。

 

「けれども聞き耳くらいはたてさせてもらいましょう。京イヤーは地獄耳」

 

「僕も耳はいいんだよねー」

 

二人そろって耳を澄ます。ついでにちょっと気を使って聞き耳に参加している人が一人いたりする。

 

 

 

 

「うぁあ、蕩けるわ」

 

そういって普段は柔らかいながらも鋭い光を湛えている瞳は目じりが下がりリラックスモードだ。

 

「確かに、いい湯ですね」

 

「じろじろと人の裸みないでくださいよ、若」

 

ちょっとばかし大和たちへ視線が行きそうになった冬馬に注意を促す準。しっかりとしたいい相方役である。

 

「けどまゆっちのお兄さんが葵君たちと一緒にここに来ているなんてびっくりだね」

 

モロが話題をふると大和も同調してこちらを見てくる。

 

「一誠さん、でしたっけ? まゆっちとは何歳離れているんです?」

 

「んー? 一応言って置くけど肉親じゃないぞ。その問には5歳離れてると答えておこう。いま大学三年な」

 

のんびりして口からでる言葉もまったりしているが聞かれたことにはしっかり答える。そして体をまだ洗っていた岳人がこちらに堂々とした歩みで自らの愚息を誇るように闊歩してきた。

 

「見ろ貴様等! 俺様の筋肉美!」

 

「少しは隠してよ! 他の人もいるのにそうやって! それにグロいんだよガクトのは!」

 

モロの言葉をはっはっと笑い飛ばして自らの愚息を誇る。

 

「銃でいう所のバズーカだな、俺様のジュニアは! 筋肉という戦車に乗ってるからインパクト抜群だ」

 

「まだ対象が目の前を通ることなく発砲出来てないけどな」

 

「砲身磨いてばっかで訓練続きなんだよなーって何言わせてんだコラ!」

 

大和と岳人が二人してキレのある会話をしているがモロはその言葉を聞くなり耳を塞いで離れてしまう。

 

その会話を耳にしながら冬馬が一誠を見てくる。

 

「筋肉という意味でなら一誠さんもかなりのものですよね」

 

「まぁ、鍛えてはいるからなぁ」

 

気の抜けた返事を一誠がすると耳ざとく筋肉というワードを拾ったのか岳人がこちらに食いついてくる。

 

「ほお、どれくらいのもんなんです? まあ、流石に俺様には負けるだろうが一応な」

 

先ほどまでキャップたちを巻き込んで自らの愚息談義をしていた岳人は自らの筋肉を誇るようにポーズをとる。

 

「いやいや、鍛えているっても俺のはそういう感じの筋肉じゃないから岳人くんには負けるよ」

 

謙遜して風呂から上がろうとしない一誠。そう言っているとより食いつくのが風間ファミリーというのか、他の面子も一誠に近寄って来た。

 

そもそも脱衣所から風呂場に入るまで一誠はさっさと脱いでさっさと入ってしまったので誰も一誠の愚息を見ていない。これは不公平ではないかと大和が言い出した。

 

ついでにそれに同調するように風間や冬馬が乗って仕方なく立ち上がる一誠。

 

その無駄な贅肉を削ぎ落とし、鍛えられる筋肉は極限まで鍛えられた究極ともいえるような肉体美に最初岳人は打ちのめされ、他の面子は一誠の一物を見て驚愕する。

 

「バカな! 戦艦の主砲クラスだと!?」

 

「すっげーでけーな」

 

「うわあああ」

 

「俺のマグナムで負けることになるとは……」

 

「ほう」

 

「若、じっくり見ちゃいけません」

 

といった反応が返ってくる。

 

「いやいやいや、んな反応すんなって。しかもまじまじと見られたら流石に照れるっつーの」

 

そんな反応が返ってくるとは思わなかった一誠は即座にざぶんと温泉に浸かる。

 

男たちは適度にバカだった。

 

 

 

 

 

「おおおう。凄い展開」

 

京は冬馬たちと話している間の風間ファミリーでの愚息談義にぽーっとしてしまっている。

 

「「戦艦の主砲クラス……」」

 

そして思わず聞き耳を立てていた二人は同じ言葉をつぶやいてしまう。

 

京がマグナムの威力を百代に聞いてその威力に慄いていると小雪も同様に百代に戦艦の主砲の威力を聞いてみた。

 

「はあ!? 流石にそこまでいくとわからんぞ」

 

そう返ってきた言葉に慄いてしまう小雪と聞き耳を立てていた由紀江。

 

……戦艦の主砲クラスって……一体……と考え込んでしまうのだった。




愚息だなんだと言った話するのでR15をタグに追加
なんかこの作品に追加した方がいいタグがあったらお知らせください。

しかしこの作品、一話あたりの文章量がすごく少ないなぁと今更ながらに思ってしまった。
文字数あんま気にせずメモ帳に書き付けて適当に区切らせて投稿してたからなぁ。
まぁ、文字数多くしようと頑張りすぎるとやる気続かなくなるからいいや。

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