真剣で私に恋してください   作:猿捕茨

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二人仲良く

現れたのは頭に巻いたバンダナから考えるに風間翔一。他のメンバーはまだ来てないようだ。

 

それならばまだなんとかなるかな。小雪も吃驚はしているみたいだが逃げるような行動はとっていない。

 

恐らく自分が入れてほしかったメンバーの一人だからだろう。

 

「お前、ここが俺たちの秘密基地だって知ってんのか?」

 

風間が聞いてくる。その瞳は一誠を警戒しているが、同時に楽しそうなバルーンアートに釘づけである。

 

「ん? いやすまない。それは知らなかった。偶々広場のようになってる場所に出てみればそこいいる女の子に会ってね。暇だったこともあってこんなことをしていた。よかったらどうだい? 君もいるかい?」

 

と言って先ほど作って置いてあったダックスフントを差し出す。小雪が小さく「あっ」と声を上げたが風間には聞こえなかったようだ。目をキラキラとさせて俺の差し出したダックスフントを手にする。まぁ、小雪がこれが欲しいというなら後で作ってやろう。

 

 

「どうもありがとう。兄ちゃんここらへんの人じゃないだろ? なんでここにいるんだ?」

 

「父親のところに遊びに来ただけだよ。暇だったからぶらついていた。そうだな、君みたいな男の子じゃバルーンアートは少し退屈かもしれないからもっと別の遊びをしよう」

 

質問されたことをそのまま返さず、興味を引く話題を出して風間の注意を遊びへと持って行く。

 

「なにをするんだ?」

 

「いや、たいしたことじゃない。そこの女の子もこっちに来てこれから俺が言うことを聞いてくれないか?」

 

少しびくっとした小雪だがおずおずと近づいてくる。風間はこれから何をやるのかとわくわくした様子。

 

「さて、最初に二人の名前を聞いておきたい。二人はなんて名前なんだい?」

 

「翔一。キャップでもいいぜ!」

 

「……小雪」

 

なんとも両極端な反応である。

 

「それじゃあキャップ、そして小雪。二人に指令を授けよう! 近くに散らばっている小枝や手ごろな大きさの物を拾って俺のところに届けるのだ! そうすればちょっと面白いことを見せてあげよう。制限時間は十分!」

 

「なんでもいいのか?」

 

「うむ、なんでもいい。小雪ちゃんも出来るかな?」

 

「うん!」

 

「それじゃあゲームスタートだ!」

 

そして二人はそれぞれ他の場所を探すように散った。

 

俺はあまり行わない気配感知の範囲を広げ、二人に何か起こらないように注意を向けながらバルーンアートを作る作業に入る。

 

プードルに始まり、サーベル、腕に抱き着く猿、カメ、フクロウ、ドラゴンなどといった小学生ならば欲しがりそうなものを作っていった。

 

 

その頃、五分ほどが経ち風間は手頃な小枝を抱え、更なる大きさのものを求め、最初に行った場所とは異なる場所へと歩を進めていた。

 

そこで遭遇したのが先ほど一誠が誘った小雪という少女。風間は彼女を一誠と同様に今まで見たことがなかった。

 

ここは風間達にとっての秘密基地である。一誠はどうやら害意を持っているわけではないようなので良いのだが彼女はどうかわからない。

 

もしかしたらここを狙う奴らのスパイかもしれないのだ!

 

だからこそ風間は小雪に声をかけた。

「なあ! お前!」

 

「ふぇ!? ぼくのこと?」

 

「そうだ! お前だ! ここら辺で見たことない奴だけど何の目的があってここに来た!」

 

胸をそらして堂々という。こういうときはひるんだときが負けなのだ。

 

「あのね、仲間に入れて欲しかったの」

 

「俺たちのか?」

 

「うん……」

 

「んー、今のところは保留だな! さっきの兄ちゃんと一緒に遊んでる間に決める! それでいいか?」

 

「……うん!」

 

保留という言葉を聞いて少し不安な様子の小雪だったが風間の明るい表情や最初に断られなかったからか元気よくうなずくのだった。

 

二人が小枝を持って秘密基地の位置に戻るとそこには多くの風船で出来たドラゴンや花、フクロウといった子供心を刺激するものが容易されていた。

 

「兄ちゃんすっげーな! これ全部兄ちゃんが作ったのか!?」

 

「すっごおーい」

 

「まぁ、二人が探し物をしている間、暇だったからな。これは兄ちゃんから君たちへのプレゼントだ」

 

といって二人それぞれの好みに合いそうなものを渡していく。素直に受け取ってくれたのを確認して内心で安堵する一誠。10分前まで自らに近寄ってきてくれなかった小雪が風間の出現により自らの手で渡したものを受け取ってくれる程度になってくれたことが嬉しい。

 

これからはより楽しんでもらい、信用してもらう段階に入る。

 

「さあ、二人が持ってきたものを一つづつ兄ちゃんに向かって放り投げてくれ」

 

そう声をかけられて小雪はいいものなのかとオロオロするが風間はニヤッとする。その表情は宛ら完全無欠のいたずら小僧である。

 

「いいのかよ兄ちゃん? おもいっきり行くぜ!?」

 

と声を上げると同時に小枝を放り投げる。その投擲速度は小学4年生にしては速い。

 

しかし風間や小雪は知らないながらも一誠は剣聖の斬撃を毎日のように目にし、対峙し、打ち勝つことも出来るようになってきたような男なのだ。この程度、どうということもない。

 

投げられた小枝をなんら問題なくキャッチし、小雪にも目配らせをして小枝を投げさせる。この時点で風間は「スゲー」と言って一誠にわくわくした視線を集中させている。

 

小雪から戸惑いがちに投げられた小枝もキャッチし、その手には二つの小枝がある。

 

「さぁ、二人ともこれから予想問題を出すぞ? これから兄ちゃんがこの小枝でジャグリングをしていく。二人は適当に小枝を投げてくれて構わない。そうして追加されていく小枝を兄ちゃんがジャグリングしきれなくなる本数を予想してくれ。もしその本数を当てられたら兄ちゃんが当てた人にアイスを奢ってあげよう!」

 

「ホントかよ兄ちゃん! 俺こういうの得意だから当たって泣きっ面さらしても知らないかんな! 頑張って当てようぜ小雪!」

 

「う、うん! ぼく頑張るよ!」

 

二人悩む様子を見ながら微笑ましい気持ちになる一誠。やろうと思えば一誠は50本くらい余裕でジャグリングすることが出来る。

 

けれど一誠はこのような形にして二人のうち多い本数を当てた方の本数でわざと失敗するつもりであった。

 

そうして当てた方にはご褒美にちょっと高いアイス。外した方には残念賞として安いアイスを買ってあげるつもりだった。この蒸し暑い日に元気に遊ぶ二人にご褒美として提案したのだった。

 

「決めた! 10本! これ以上は出ないだろー」

 

「ぼくは20本! このおにいちゃんならこれくらい出来るって! アイスはぼくが貰ったよー」

 

相談しているうちに仲良くなったのか二人顔を合わせながら言い合っている。どうやら高いアイスは小雪が貰うことになるようだった。





考えてみたらネタでも習作のように自己鍛錬したいわけでもなかったので通常投稿に移行しました。
なに考えてんだバカかこいつと思ったらその通りなので切るなりなんなりしてくだしあ

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