東方末妹録   作:えんどう豆TW

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少し短めに


沈む太陽、嗤う大妖

 

「本当に大丈夫なのでしょうか・・・」

 

 気味の悪い目玉が蠢く世界に少し不安をはらんだ女性の声が響く。声を発した主は金髪のショートボブで金の瞳を持つ女性だった。頭には2本の角が生えたような帽子を被っている。中華風の服を身に着けたその女性からは九本の尾が生えていた。

 彼女の声に対して返ってきたのは複数の笑い声だった。失笑、冷笑、嘲笑、少なくとも悪意の含まれた笑い声に彼女は目を吊り上げて怒鳴った。

 

「貴様ら、何が可笑しい!」

「あら、藍は私の人選が間違っているというの?」

 

 怒鳴り声を上げた女性―――藍と呼ばれたその女性に返したのはこれもまた金髪の女性であった。ロングの髪をリボンで結んでいる。紫にフリルの付いたドレスを纏い藍を紫の瞳でじっと見つめ優雅にたたずんでいる。

 

「紫様、そういうわけでは・・・ただ人数が人数なので」

 

 紫と呼ばれた女性は微笑んでいた、しかしその眼は藍ではなく他の3人を捉えている。

 一人は未だに嘲笑を絶やさない緑髪の女性。深紅の瞳を持つ目を細めて嘲笑する彼女からはただならぬ殺気が溢れている。チェックのロングスカートをふわりと浮かせていかにも待ち遠しいといった様子で口を開く。

 

「別にあたしが言っても構わないのだけれど?そこの狐さんは指でも咥えて眺めていたらどうかしら」

「なんだと!」

「まあまあ、落ち着きなさいな藍。それに貴女が行ったら全部殺してしまうでしょう?私達は交渉のために戦を仕掛けるのよ」

 

 緑髪の女性の長髪に再び怒鳴り声を上げる藍を紫が宥める。

 

「紫様、こいつらには幻想郷のために戦うという意識が全く感じられません」

「ええそうよ、希少な魔石をくれるって約束だもの。ちゃんと後でもらうわよ?」

 

 藍の言葉に反応したのは緑髪の女性ではなく別の女性、というより少女だった。

 金髪で人形のような容姿をしている青のワンピース少女は手元の人形を弄りながら顔を向けずに返答した。

 

「人形遣いが、人形如きの手入れによくもまあ熱心になるものだ」

 

 藍が言葉を終えると同時に少女は藍に顔を向けた。その表情は一切の感情を切り捨てたように冷たく体からは殺気が溢れている。

 

「死にたいのなら直接言いなさい。この子達を侮辱した罰、その命を以て受けてもらうわ」

「貴様如きが私に刃向うのか?ただの魔法使いが滑稽を通り越して呆れるしかないな」

 

 両者の間に不穏な空気が流れる。今にも殺し合いが始まりそうな空気の中最後の女性が声をあげる。

 

「はいはぁい、そこまで~。喧嘩なんてちっともお腹を満たしてくれないわよ~?」

 

 その女性もまた少女と呼ぶにふさわしい見た目をしていた。ウェーブのかかった淡い紫の髪を揺らしながら両者の間に入る姿は可憐とも優雅ともいえる。どことなく掴みどころのないふわふわした印象を与えられる。

 

「はいはい、皆様方。幽々子の言う通り喧嘩するために集めたわけじゃないのよ。今回は幻想郷に新しく出現したセンスの悪い館についてよ、といっても鎮圧なのだけれど。外には門番と思しき妖怪が一匹と館の周りに雑魚の群。これは幽香にまかせるわ」

 

 幽香と呼ばれた緑髪の女性は口の端を吊り上げた。見た者はそのまま卒倒してしまいそうなほど残酷な笑みだ。

 

「後は館内にスキマを仕掛けたから各自で館の住人と戦ってもらうわ。戦うといっても私が主と交渉を成立させるまでの時間稼ぎでいいわ。私は主ともう一人、側近かしら?これのところに行くわ。藍とアリスはそれぞれもう一つ吸血鬼がいるからそれと魔法使いのところに、幽々子はかなり力のある人間のところ、お願いね」

「仰せのままに」

「同族が相手なのね、やりやすいわ」

「人間が相手なのね、適当にがんばるわぁ」

 

 藍、アリスと呼ばれた金髪の少女、幽々子がそれぞれ反応を示す。

 そして紫が言葉を終え全員を見る。暫くすると目玉の蠢く”スキマ”が裂け目を作った。

 

「それでは皆様、ご健闘を」

 

 紫の言葉を最後にそれぞれが裂け目へと踏み込んだ。

 

 

 

 

 

 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆

 

 

 

 

:Side Liliy

 

 

「配下たちが暴れ出したわ、私達も持ち場につくわよ」

 

 レミリアお姉さまの言葉に大広間に集まった全員が頷く。美鈴は門番なのですでに先頭に入っている可能性もある。

 外は日が落ち夜となっていた。日が沈み次第開始の作戦は順調のようだった。

 

「最終確認。私とフランは時計塔、リリィはここの大広間、咲夜は中央廊下、パチェと小悪魔は図書館、いいわね?」

 

 これにもまた全員が頷く。

 

「リリィと咲夜には一人で戦ってもらうことになるけど・・・大丈夫?」

 

 心配そうに尋ねてくるレミリアお姉さま。私は咲夜と顔を合わせると笑顔をレミリアお姉さまに向けた。

 

「任せてください、スカーレットの名に懸けて必ずや成功させてみせます」

「お嬢様の望む結果を」

 

 今回の侵略は殺すことが目的ではない。力を知らしめること、舐められないことが目的だ。それをわかって咲夜も私も返事を返したのだ。

 尚も不安そうな表情を浮かべるレミリアお姉さまを見て、私は不敵な笑みを浮かべ自信満々に声をかける。

 

「別に、倒してしまっても構わないのでしょう?」

「・・・ぷふっ」

 

 ぽかんと口を開けて固まるレミリアお姉さまの横でフランお姉さまが噴出した。

 

「ふふっ、あははははは!そんな台詞吐いてるとやられそうで心配だよ」

「フランお姉さま、そんなに笑わなくてもいいじゃないですか」

 

 一応真面目に考えたのだ、ここまで笑われると流石にちょっと傷つく。そんな私達の様子を見ていたレミリアお姉さまの口に自然と笑みが浮かぶ。

 

「それじゃあ、おもてなしの準備を始めましょうか」

 

 私達は再び頷くと解散した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 空間が歪む。おそらく館にいる全員がこの変化に気付いているだろう。

 相手方はどうやら館内に直接細工をしたらしい。私とパチュリーの防護魔法を破るとは相当出来る相手だ。私の警戒心はさらに高まっていく。

 突如私の目の前の空間が裂けた。どうやら相手は空間を操る術を使うらしい、となると私の前に現れたのと同じようにお姉さま達や咲夜、パチュリー達のもとに同じ変化が起こっているところだろうか。

 ここを離れて館内のサポートに回るか迎え撃つかを考える暇もなく目の前に”お客様”が姿を現す。

 それは金髪で青いワンピースを着た少女だった。

 

 

「初めまして魔法使いさん、わた・・・・・・あれ?魔法使い?」

 

 彼女は現れるとすぐに挨拶をしようとして私の翼を見て固まったように見えた。しかし魔法使いというのはどういうことだろう。

 

「貴女、魔法使い?」

「いえ、魔法は使いますが私は吸血鬼です」

 

 少女の質問に丁寧に返答をすると彼女は暫し考えて顔を上げた。

 

「紫の術を妨害したのね」

「えっと、妨害したかどうかは知りませんが館内には防護魔法が張ってあります」

 

 再び丁寧に返答すると今度は納得したようだ。少女は感心したように私を見るが、私からしたらその紫とかいうヤツが私とパチュリーの防護魔法を破ったことの方が驚きだ。その聞き覚えのある名前のそいつは防護魔法などモノともしないというのだろうか、もしそうだとしたら笑いごとにすらならない。

 

「改めて自己紹介するわ。私はアリス・マーガトロイド、魔法使いよ」

 

 彼女が言い終わると5体の人形が彼女の周りに浮かぶ。どうやらこれが彼女の魔法らしい。

 

「ではこちらも自己紹介を。リリィ・スカーレット、吸血鬼です」

 

 お辞儀は忘れない。いつも自己紹介の時にはこの動作が無くてはならないのだ。

 

 

 

 

 

 

 私が言い終わると彼女は私に右手を振りかざす。それが合図となって人形たちが私に向かって突撃してきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




吸血鬼異変編です
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