東方末妹録   作:えんどう豆TW

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リリィの戦闘は後回しとなったのだ(納得いくものが書けなかったため)

戦闘描写は難しくなかなか納得がいきません
暫く更新ペースが落ちてしまうかも・・・


七曜の魔法使い、九尾の式

 私がこの館に来たとき、ここは図書室だった。

 部屋の8割は本棚で埋まっていて、座るスペースと机、入り口とそれをつなぐ通路が残りの2割だ。

 私がここを使い始めた頃から館の主の妹、リリィ・スカーレットは研究室の方をよく使うようになった。私が謝るとまた借りに来るから管理を頼むと仕事を押し付けられた。

 私の喘息が発覚するとリリィは物理的に図書室を拡大した。なんでも錬金術と言って魔術に近いものであるらしい。物質を分解し再構築する魔法と言っていた気がする。この日から図書室は図書館となった。

 しばらくして召喚魔法を試した私に小悪魔という従者ができた。今は図書館の司書をやってもらっているが相変わらず得体のしれない悪魔だ。

 メイドの十六夜咲夜が来てからは彼女の能力で更に拡張してもらった。本来の使い方ではないだろうが主人の友人の頼みくらいは快く聞いてくれるようだった。

 そんなこんなで今に至るがずっとこの図書館に引き篭もっていた私からすればこの館の変化の象徴とも言える場所の一つだった。

 

「小悪魔、紅茶をお願い」

「こちらに用意しております」

 

 小悪魔は咲夜のような能力はないが優秀な従者であると思う。主人への悪戯と下手な嘘が無ければ完璧なのだが完全で瀟洒な従者とはいかないようだ。

 

「今日は変なキノコは入ってないのね、安心したわ」

「アレはマジックマッシュルームと言って色々な促進効果があるんですよ」

「ええよく知ってるわ、幻覚作用さえなければ服用してもいいかもしれない」

 

 次やったら一生魔法で作った岩山に閉じ込めてやろう。いつものような会話を繰り広げる私達の間にいつもと違う空気が流れる。

 

「まったく、紅茶くらい静かに飲ませてもらえないかしら」

 

 誰にというわけでもなく呟く。

 次の瞬間、私達の少し遠方に奇妙な裂け目が出来た。中から一人の女性が出てくる。

 まず目を惹くの九本の神秘的ともいえる尾だ。本で読んだことがある、おそらく九尾という狐の妖怪であろう。しかしその実力は他の狐と次元が違う。

 次に帽子。2本の角が生えているようにも見えるそれはおそらく狐の耳を隠しているのだろう。

 案外幻想郷は私達のことを危険視しているのかもしれない。何せここまで戦力を投じてくるのだ、おそらくこれと同程度の妖怪をそれぞれに送り込んでいるはずだ。

 出てきた九尾は少し訝しげな顔をしていた。

 

「・・・お前、吸血鬼か?」

「生憎私は魔法使いよ、吸血鬼に会いたいなら主かその妹を訪ねてみたら?」

 

 どうやらお目当ては私ではないらしい。九尾は顎に手を当ててブツブツ言いながら考え事をしている。

 

「紫様の気まぐれか?しかし今回はそれなりに真剣だったし・・・まさか能力を狂わせたものがいるのか?」

 

 九尾はこちらを向いて口を開いた。

 

「おい、魔法使い。お前は妨害の能力者か?」

「正直に答えると思ってるのかしら?まあでも防護結界を張ったのは私よ、もう一人いるけど」

 

 私の返答を聞くとまた考え事をする九尾。まったく敵前でよくもまあ余裕でいられるものだ。舐められてあまりいい気はしない。

 

「でも幸運じゃない、私は吸血鬼より弱いわよ?貴女より弱い保証はないけど」

 

 あからさまに挑発すると物珍しげに小悪魔がこちらを覗いてくる。そもそも敵対する者と今までこの館で出会ったことはないのだから仕方がない。

 

「言うではないか魔法使い殿。精々お眼鏡に敵うことを願うよ」

「私も存外運は良い方でね、今だって目の前にいい実験材料が現れたもの」

 

 皮肉と挑発の応酬。しかし今の言葉には流石の九尾様も気分を害したようで顔を顰める。

 

「実験材料だと?」

「ええ、九尾の尻尾なんてなかなか手に入らないわ」

 

 尻尾にはプライドがあるらしい、表情を険しくして妖力を放ってくる。

 

「貴様には指一本触れることは出来んがな」

「あら、私が出るまでもないわ」

 

 口争いは私の勝ちだ、後はあの尻尾を拝借するだけだが―――。

 

「小悪魔」

「なんでしょう、パチュリー様」

「アレの尻尾を一本取ってきなさい、対象の生死は問わないわ」

「御意」

 

 私は小悪魔に命令をすると椅子に深く腰掛けた。

 命令を受けた小悪魔が九尾の方へ近づいていく。

 

「なんだ、召使如きが私の相手か?」

「そうですよ、貴女の尻尾を取ってくるように命令されたんです。一本だけ持って帰ればいいので動かないで頂けると助かるのですが・・・」

 

 プライドを傷つけられたのか九尾は怒りをあらわにしている。挑発された挙句本人は出ないのだから当たり前ではある。

 

「出来るものならやってみるがいい、力づくでな!」

「あーあ、手間が増える・・・」

 

 両者が妖力を高めて飛ぶ、それが試合開始の合図となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「狐火」

「わわっ!危ないですねぇ」

 

 先程からは九尾の方が優勢だ。優勢といっても小悪魔は攻撃を全くしかけようとしていないので一概にとは言えないが、せめて時間稼ぎだけじゃなくて尻尾も持って帰ってきてほしい。

 

「さっきからちょこまかと!」

「そっちこそ動かないでください、尻尾が動いて狙いがつけられないんです」

 

 私も加勢するかと考えて億劫なので辞めた。それにあの悪魔の実力も見ておきたいのだ、九尾と同等に戦っている時点で低くないことは確実だが。

 しばらくしてやる気を出したのか小悪魔は手に槍を作り構えた。鋭くとがった形状の三叉の槍だ。

 

「そろそろ貰いますよっと!」

「ッ!!」

 

 私は一瞬目を見張った。小悪魔は一瞬のうちに九尾の後ろに回り槍を振り上げていたのだ。間一髪反応した九尾は身を翻し振り向き様に焔を放つがその焔は小悪魔の槍によって掻き消される。

 

「あー失敗です」

「・・・貴様、何者だ」

 

 残念そうに呟く小悪魔。対する九尾は信じられないといった顔だ。

 

「使い魔如きに私が反応できないだと?いや・・・」

 

 距離を取って考え事を始める九尾。どうやら考え事をすぐ始めるのは癖のようだ。

 

「私は幻想郷の管理者、八雲紫様の式の八雲藍だ。お前の名を聞こう」

 

 突然名乗り始める九尾――もとい八雲藍。小悪魔を己の名乗るに値する相手として認めたということだろうか。

 

「私は小悪魔です」

「ふざけるな!」

 

 嬉しそうに答える小悪魔に対して怒鳴る八雲藍。真面目に答えろといったところか。

 

「本当に名前が小悪魔なんです。あそこの主人――パチュリー・ノーレッジ様に頂いた名です」

「・・・解せんな、お前ほどの実力を持った者がどうして格下の魔法使いに仕える?」

 

 少し顔を顰める。貶されたことではなく実際に小悪魔に実力で劣っていると自己分析したからだ。少なくとも館の者よりも弱いというのは嘘だったわけだ。

 

「召喚されたからです、当たり前でしょう?それに私は紅魔館(ここ)が好きなんです、それ以外に理由はありませんよ」

「・・・そうか、失礼した」

 

 私は驚いて口が開いたままだった。あの気が強そうな狐が謝ったこともそうだが何より小悪魔からそんな言葉が出るとは思わなかった。格下に仕えているのだから不満もある者だろうと思っていたからだ。

 

「ああ、でも魔界で与えられた皮肉のこもった称号ならありましたよ」

 

 思い出したように付け加える小悪魔、その顔はどこか苦々しい記憶を思い出しているようにも感じられた。

 

 

 

 

 

 

「『価値無き者(ベリアル)』――――でしたかね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 九尾――八雲藍は焦っていた。

 八雲藍は妖怪の中でもトップクラスの実力を持つ者だ。白面金毛九尾――そう呼ばれ畏れられ崇められ神格化にすら近い畏れを得て狐の頂点に立った。

 しかしそれも昔の話、今はある一匹の妖怪に仕えている。主の名を八雲紫、幻想郷の管理者であり白面九尾の大妖怪を手懐けた恐ろしい妖怪でもある。

 藍はそれを正しい判断だと思っている。自分より上の者に仕えることは生きるためにも、そして彼女自身の尊厳のためにも必要なことだった。実際に藍は紫に助けられたことが何回もあった。

 しかしそれは自分の格を落とすことにはなり得ない。藍は依然白面九尾の大妖怪なのだ、その事実は紫に仕えた後も変わらない。

 それがどういうことだ。大妖怪であるはずの藍が目の前の悪魔風情に後れを取ることなど想像も出来なかった。だが事実それは起こってしまった。

 藍は無意識のうちに歯噛みしていた。劣勢なのは明らかに藍の方だ。何千年生きてきた藍は小柄な悪魔一匹に翻弄されている、その目の前で起こっている事実から目を背けたくて仕方がなかった。

 小悪魔からの連撃から逃れている藍の横から炎の塊が飛来する。藍はかろうじて自分の妖術と相殺させることで難を逃れた。

 

「横槍は勘弁していただきたいな魔法使い殿」

「魔法使いは合理主義よ、効率よく労力が少なく勝利が得られる方法を取るの」

 

 藍は舌打ちを一つしてその場から飛び退いた。体勢を立て直して次は魔法使いの方へ攻撃を仕掛ける。

 

「小悪魔、カバー」

「了解」

 

 短く言葉を交わして槍で藍の焔打ち消す小悪魔。パチュリーは後ろに隠れてやり過ごす。

 

「なに!?」

 

 藍は目を見開いた。小悪魔の後ろに隠れたはずのパチュリーが消えたのだ。藍は魔力の残骸をもとに探知を開始する。しかしその隙に小悪魔は藍に接近して槍を振るう。それに対応をしている藍の後ろから炎が再び飛んでくる。

 

「クソッ!埒が開かん!」

 

 パチュリーと小悪魔は絶妙なタイミングで攻撃を仕掛け二対一の状況をフル活用していた。

 藍は二人から距離を取ると人型の妖力を生み出した。それはすぐに形を取ると藍の横に控えるように下がった。

 

「あれは・・・式神?」

「ご名答だ魔法使い。私の能力は『式神を操る程度の能力』、総力戦ならこちらも人数を増やさせてもらおうと思ってな」

 

 藍はさらに三匹の式神を生み出す。

 

「そんな簡単にしゃべっていいのかしら?」

「無論だ、これぐらいしか能がないものでな」

 

 苦笑交じりに皮肉を言う藍。しかし既に十数匹の式神が彼女の周りで身を固めている。

 

「小悪魔、なるべく外側から」

「はい、援護します」

 

 パチュリーは詠唱を始めると自らの周りに防御魔法を展開した。そして再び長めの詠唱に入る。

 小悪魔は外側から冷気のようなものを放って式神の数を減らしていく。

 そこに藍はパチュリー目掛けて飛躍する。

 しかし―――

 

「行かせませんよ」

「っ、邪魔をするな」

 

 行く手を阻む小悪魔。しかし藍は冷静に式神をうまく駆使してそれを妨害する。

 

「ッ!パチュリー様!」

「はあああぁぁぁぁ!!」

 

 小悪魔の妨害を妨害を切り抜けてパチュリーに手を伸ばす藍。しかしその目に映るパチュリーの顔は笑っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「『大いなる大地の理(ラ・ヴィエンテ)』」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 次の瞬間藍を襲ったのは天狗の暴風をもろに受けたような衝撃だった。すぐさま防御結界を張った藍だったが、その結界は魔法を受けた瞬間土壁のように粉砕された。しかし藍の顔には笑みが浮かんでいる。

 藍と対局の位置に倒れているのはパチュリーだった。

 

「ふ、ふふっ・・・あいこだな」

「・・・えぇ、まったくとんだ執念ね」

 

 藍は結界を張りながらも魔法を放ったパチュリーが防御魔法を解いた瞬間を見計らって結界の”スキマ”から妖力弾を飛ばして吹き飛ばしたのだった。

 

「パチュリー様」

「残念ながら起き上がることも出来ないわ、ごめんなさい」

 

 藍はゆっくりと起き上がりフラつきながらもパチュリーの方へ歩いていく。小悪魔は二人の間に立つように立ちはだかった。

 藍と小悪魔は互いに黙って睨み合っていたがやがて藍が口を開く。

 

「・・・主人を庇いながら戦うのは大変なんじゃないか?」

「・・・貴女こそ、フラフラですよ?今の私なら一撃で貴女を葬ることができる」

 

 再び口を閉じる両者。先に口を開いたのはまた藍の方だ。

 

「確かにその通りだな、ただしその時はそれも道連れだが」

 

 藍が指差す先には倒れているパチュリー。

 

「そう殺気立つな悪魔、私は別にお前らを殺せと命令されているわけじゃない」

「・・・じゃあ何が目的なんです」

 

 藍は少し態度を崩した。小悪魔は依然藍のことを睨みつけている。

 

「ただの時間稼ぎさ、紫様もお前たちを無下に扱おうとは考えていないみたいだ」

「どういうことです?」

「そのままだ、出来ればお前たちを幻想郷の一員として取り入れたいのだろう、そっちの主には条約を押し付けるつもりらしい」

 

 小悪魔は藍の返答を聞くと押し黙った。代わりに口を開いたのはパチュリーだった。

 

「つまりここでお互いに退きましょうってことね」

「話が早くて助かるよ」

「そう、貴女の尻尾は是非とも欲しかったのだけれど・・・」

「残念だな、諦めてくれ」

 

 心底残念そうにため息を吐くパチュリー。小悪魔にもすでに戦意はなくパチュリーに濡れタオルを差し出している。

 

「腰を打って動けなくなる主も考えものですね」

「愚痴を言う暇があったら患部を冷やしなさい」

「はいはい」

 

 二人のやり取りを見ていた藍は苦笑して腰を下ろした。ダメージは彼女の方も大きかったらしく治癒が異常に遅かった。

 やがて少し回復してから口を開いた。

 

「ところで、吸血鬼の姉妹はお前が言うほど強いのか」

「ええ、生まれて初めて種族の差というものを実感したわ」

 

 藍の質問に答えたのは仰向けになったままのパチュリーだった。

 

「そこの悪魔よりか?」

「さあ?そこのは胡散臭いからよくわからないわ、よくわからないのは吸血鬼も同じだけど」

「ひどいじゃないですかパチュリー様、こんなに尽くしているというのに」

 

 パチュリーの言葉に小悪魔が反論するが彼女は聞く耳を持とうとしない。

 

「やはり当主が一番強いのか?」

「うーん・・・レミィは戦闘向きじゃないわね。一番攻撃的なのは次女かしら」

「そ、そうか」

 

 藍はパチュリーの返事を聞いて少し顔を曇らせた。彼女は主の心配をしていた。

 

「別に、貴女より強いのなら紫様とやらは大丈夫だと思うわよ?だってレミィも妹様も実戦経験は少ないもの」

「ならいいのだが」

 

 藍は安堵のため息を吐く。しかしパチュリーはでも、と付け加えた。

 

「リリィ・・・三女の方には誰が行ってるの?」

「三女なのか?まあそうだな。私が本来そちらへ行く予定だったのだからそのリリィとやらのところにはアリスという魔法使いが行っているはずだ」

「一人?」

「ああ」

 

 藍の返事を聞くとパチュリーは少し考えてから再び口を開いた。

 

「リリィも魔法が好きなの、きっと喜んでいるわ。私もそっちの方が良かった」

「魔法を好む吸血鬼か、珍しいな」

「そうでしょう?でもそのアリスって子、一人なら危ないわよ」

 

 パチュリーは少し真剣な顔になった。

 

「一番強いのが三女ということか」

「強いというより戦い慣れているといった方が正しいわね。自分の力の使い方も、戦い方も、一番理解しているのはリリィだから」

 

 パチュリーの眼はどこか不安げだったが藍はそれに気が付かなかった。

 

「まぁあの魔法使いもかなり手強い。簡単には死なんだろう」

「冷たいのね」

「助けるほど義理があるわけじゃないからな」

「そう」

 

 それ切りパチュリーは黙り込んだ。未だに彼女の眼から不安の色が消えなかったが、その真意に気付いているものはそばに控えている従者だけだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




綺麗な描写ができるよう精進します
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