東方末妹録   作:えんどう豆TW

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今回から主人公視点です


スカーレットという名

 最初に見たのは二人の少女だった。

 一人は青のかかった銀髪で主にピンクを基調とした服と帽子、私の一番上の姉で名をレミリアという。

 もう一人は金髪でちょっと変わった羽を持っている、私のもう一人の姉フランドール。

 フランお姉さまはいつも私に絵本を読んだり一緒に遊んでくれたりする。レミリアお姉さまは私に吸血鬼のことや優雅な振る舞いを教えてくれる。

 私は二人のことが大好きだった。リリィと名を呼んでくれる二人が大好きだった。いつも一緒にいてくれる二人が大好きだった。お父様に嫌われてる私を笑顔で迎え入れてくれた二人が大好きだった。だけど、だから――――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『あいつは欠陥品だ、スカーレット家の娘として認めることは到底できない』

 

 3歳になってすぐの時だ、たまたま本館にいた私はお父様とお母様の会話を盗み聞きしてしまった。

 

『あの子に罪はありませんわ、あなただってわかっているでしょう?』

 

 反論するお母様の声、しかしお父様は聞く耳を持たない。

 

『アレをレミリアたちに近づけることはできない、地下室に隔離する』

 

 私はうすうす気づいていたのだ、自分が娘として認められていないことに。それでも、もしかしたら、抱いていた微かな希望はその時その一言で粉々に砕け散った。

 そうか、私はいちゃいけないんだ。あの二人とは一緒にいられないんだ、いたらお姉さま達の迷惑になってしまうんだ。とても悲しかったけどお姉さま達の迷惑になるのはもっと嫌だった。

 その日から私は自分でお姉さま達を拒絶した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 私の日課は本を読むことだ。別に部屋に閉じこもっているわけではない、レミリアお姉さまから教えてもらったことを生かして彼女に頼らずとも調べ物ができるようにと考えた結果だ。特にスカーレット家のことは知っておくべきだと思い本を読み漁った。自分が認められていない名のことを調べるのはつらかった。何度も泣きそうになったし本を引き裂くような衝動に駆られたこともたくさんあった。そんなむなしい努力もあっていくつか自力でわかったことがある。

 一つはスカーレット家の決まりごとのようなものについて。長男がいないときは長女が家を継ぐ、決して他の吸血鬼の下についてはならない、基本的には狩りはせずに下の吸血鬼に任せる、など。どうやらスカーレット家は相当に力を持った吸血鬼らしく、曰くツェペシュ末裔だとか。なるほどドラキュラのお話はフランお姉さまの呼んでくれた絵本にあった気がする。有名な吸血鬼の末裔ともなれば力も強いのだろう。

 次に吸血鬼という生物について。特にスカーレット家の力の強い吸血鬼は全ての生物的なスペックが他の生物を大きく上回るらしい。魔力、妖力、パワー、スピード、その他諸々といったところか。

 そして最後に、これが一番大きな収穫と言えるだろうか。それは『程度の能力』についてだ。ある程度力を持つ生物は先天的に、或いは後天的に能力を持つことができるらしい。おそらくお姉さま達にも私にもあるのだろう、吸血鬼のトップとなれば先天的に持っていてもおかしくはない。この能力は個人の性質を表すともいわれ、各人の認識や魔力で補ったりパワーアップさせることができるということだ。さらにこの能力は自己申告制、つまりは自分でしっくりくるものを見つけ自分の認識によって使えるということなのだろう。

 私は地下室と図書室を往復する日々を送っていたが、別段つらいことはなかった。たまにあるお父様からの暴力といつも来てくれるお姉さま達を拒むことくらいだろうか。唯一この別荘『紅魔館』で顔を見る執事長はお姉さま達が私に近づいてもお父様には黙っていてくれているようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 この2年間でリリィの生活についてわかったことがある。地下室にいないときは図書室に言って本を読んでいるし、地下室にいるときは目を瞑ってじっとしている。理由を聞くと能力のイメージを探しているらしい。私は驚いたが自力でいろいろとこなしていくリリィの姿は姉として誇らしくもあり、また少し寂しくもあった。

 最近は魔法の勉強もしているらしくその才能は私とフランだけでなく執事長も目を見開くほどだった。彼もある程度力を持つ妖怪なのでリリィの魔力の質の高さや適性に驚いたのだろう、早くも劣ってしまったと嬉しそうに話していた。彼は執事長という立場にありながら私たちに親身にしてくれる。リリィもある程度は心を許しているようだ。

 一つ気がかりなこと、いつもリリィは私たちを見るとどこか悲しそうな顔をするのだ。気を遣わせてしまっているというのがわかってしまうので私もフランも誤解することはなかったが、それでも拒絶されるのは悲しかった。

 それから彼女の容姿について。淡い桃色の長髪に緋色の瞳、私と色違いの服、薄いシトラスグリーンに黄緑のレース。フランは自分の服の色違いがよかったらしいがそんなものはなかったのだから仕方ない。そして片方だけの翼...。

 彼女自身は別に気にしていないようだが虐待の原因の一つとなっているそれは彼女にとって本当に気にしていない程度のものなのだろうか。

 結局私とフランはそのことをリリィに聞くことはできなかった。




前半リリィ、後半レミリアです。しばらくはこの二人の視点になるかと思います。
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