忘れ去られし大罪 ~The Nine Deadly Sins~   作:キリュウ

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第2話 : <豚の帽子>亭

 

 

 

その酒場は辺鄙な丘の上に建っていた。経営しているのは金髪の少年。今日も旅の商人や騎士といった遠出をしてきた者たちが酒場を利用していた。

 

「おまちどぉっ!<豚の帽子>特製ミートパイ!!」

 

酒場のマスターである少年が出来立ての料理を走って持ってきた。

 

「おぉっ!うっまそー!!」

 

待っていましたと言わんばかりに客たちは運んでこられたミートパイをすぐに頬張った。

 

「不味━━━━━━━っ!!!!!」

「やっぱり」

 

口に含んだ瞬間全員がミートパイを吐出し、それがマスターの少年に飛び散るが少年はわかっていたのかきっちりそれを御盆でガードしていた。

 

「こら、てめぇなんつーもん出すんだっ!!」

「入ってきたときになんでもいいって言ったじゃん」

「だからってこんな不味いもん客に食わせるとかどんな酒場だよ!」

「やれやれ・・・困ったお客だな」

「ンだとやるかガキ!」

「おい、こいつ剣持ってるぞ」

 

一人の客は不味い料理を食わされ怒り心頭だったが、もう一人の客が少年が剣を持っていることに気が付き止めに入った。

 

「ったく、・・・片付けろ」

 

少年が仕方ないという態度で指を”パチン”と鳴らす。一体何の合図なんだ!?と二人の客は焦ったが、呼ばれて出て来たのは・・・豚だった。

 

「ったく、たりーな~~~、オレになんの用だよ~~~?」

 

それも人の言葉を話す豚だった。

 

「ぶ・・・豚?」

「豚?ナメんな看板豚だっつの」

 

客はてっきりガーディアンでも雇ってるのかと不安だったので、出てきたのが豚でかなり拍子抜けしたようで、人の言葉を話していることにツッコム余裕もなかった。

 

「ホーク、床掃除頼む」

「ちっ・・・面倒くせー。どうせ食わせるならもっとマシな残飯食わせろよな」

「豚の丸焼きならマシに作れそうな気がするな~焼くだけだし」

「んまぁ~~~い!!!この残飯サイコー!!!」

 

少年の、豚の丸焼き、を強調する発言にホークと呼ばれた豚は慌てて先ほどの発言を訂正する。

 

「お前らも一本取られたか!」

 

前に似たようなやり取りをしたことのあった他の客が笑いながら今のやり取りを見ていた。

 

「でも酒ならいいモン揃ってるぞ!なんせオレいろんな土地を動いて回ってるからな」

「じゃ、じゃあうまい(・・・)酒を」

 

今度は間違ってもまずいものが出てこないように念入りに、うまい、の部分を強く言ったのは仕方のないことだろう。そして少年はカウンターに戻って一つの酒瓶を持ってくる。

 

「ほら、これがおすすめだな」

「どれどれ、バーニャエール?」

「あぁこれがうまいんだぜホント」

「じゃ、じゃあ少しだけ・・・」

 

酒瓶を開けて少しだけジョッキにうつした。先ほどのことがあったから完全には信じられずジョッキには余り多く酒を入れていない。そして恐る恐る一口ちびっと口に含む。

 

「・・・おぉっ!たしかに・・・酒は(・・)うまい!」

「そんなに飯はまずいかね~」

「「「「「不味いわ!!!」」」」」

 

酒場にいた全員からまったく同じタイミングで少年につっこみがとんだ。そして客足がとまり店の中の人が固定されつつあるときに、ある客が噂話を始めた。

 

「そういや聞いたか?さまよう錆びの騎士の噂!」

「錆び付いた鎧を着こんだ、最近出没するっていうユーレイ騎士だろ?なんか気味が悪いよなぁ」

「しかもそいつうわ言のように何か囁きながらさまよってるって・・・」

「たしか・・・七つの━━━何だっけ?」

「ほら、そこの手配書!」

 

一人の客が酒場の壁にかかっているボードを指さす。そこには七人の顔と名前が描かれた紙が貼りつけられていた。そして客は先ほどわからなかったことがわかったと手を叩き言った。

 

「<七つの大罪>!!!」

「━━━10年前に王国転覆を謀った大罪人・・・だっけ?」

「こいつらってまだ捕まってないんだろ?」

「ああ、一人たりともな」

「けど、一部では全員死んだって噂もあるらしいぜ?」

「死んでるな、そりゃ絶対!聖騎士たちが許すわけないもんよ」

「でもよ、この手配書って毎年更新されてるんだぜ?ってことはよ、聖騎士たちもまだ探してるってことなんじゃねぇの?」

「まさか錆びの騎士が<七つの大罪>のユーレイだったりして?そんで他の仲間を探して回ってるのかも」

「なぁ小僧の店員さんはどう思うよ?」

 

酔っぱらった客の一人が少年に尋ねた。少年は酒瓶を片付けながら答えた。

 

「おいおい、俺は小僧じゃねぇよ。メリオダスだ。━━━それとな、俺は店員じゃなくて、店主(マスター)な!」

「マ、・・・店主(マスター)?こんな子供が?」

「ん~?あれ?メリオ・・ダスってどっかで聞いたことあるような・・・」

 

ガチャン・・ガチャッ・・ガチャン・・ギィーッ

 

その時、酒場のドアが開く音が聞こえてきた。

 

「らっしゃい!!」

 

少年は客に挨拶するためにカウンターから顔を少しのぞかせ、他の客も誰が来たのかとドアのほうを見た。

 

「━━━━━っ」

 

客の全員が息をのんだ。理由は単純明快。入ってきたのが先ほど噂していた錆びの騎士だったのだ。錆びの騎士は「コフー・・・コフー・・・」と深い呼吸をしながら酒場に入ってくる。客は全員、自分の座っていた席から一斉立ち上がり、錆びの騎士から離れるように壁に張り付いた。

 

「・・なな・・・つの・・・たい・・ざ・・・い・・」

「で・・・・でたあぁぁあぁぁぁ~~~~~っ!!!」

「<七つの大罪>だ~~~!」

「助けて~~~!!」

「こ、殺される~~~~!!!」

 

客は全員、叫び声をあげながら金を払うことも忘れて、錆びの騎士から逃げるように酒場から出て行った。そんな中、酒場の店主(マスター)である少年はカウンターを飛び越えてゆっくりと錆びの騎士に近づいていく。その動きには一切の恐れもなく、ただ客を出迎えるような、そんな態度だ。

 

「・・・お前、誰だ?」

 

少年が錆びの騎士に尋ねた瞬間、先ほどまでしっかりとした足取りで歩いていた錆びの騎士は何かがぷつりと切れたかのように後ろ向きにぐらっと揺れ、”ドシャアッ”っと倒れた。

 

”げれんっ・・げれんっ・・”

 

その倒れた拍子に先ほどまで被っていた兜も取れてしまった。どうするこれ?と少年とホークは目で話す。一先ず少年は倒れてしまった騎士の鎧をすべて脱がし、酒場の2階にある寝室まで運んだ。

 

「━━━━女の子だぜ」

 

ホークが鎧の中から出てきた人物を見てそう漏らした。あれだけ重たそうな鎧を着ていたのがまさか華奢な女の子だとは思っていなかったという声だ。

 

「いや・・・この寝顔、この体曲線(ボディライン)、このニオイ、この弾力・・・やっぱり女だな!」

「この・・・確信犯!!!」

 

ベットの上に横たわっている少女の胸を揉みながら話す少年の頭をホークが”がじがじ”と噛み少女から引き離す。胸を揉んだからなのかはわからないが、少女が目を覚ましむくりと上体を起こした。

 

「あ・・・あの・・・ここは?」

「おぉ起きたか、なんかフラ~~ッと店に入ってきて、いきなりぶっ倒れたんだよ、お前」

「店?・・・ここは何かのお店なのですか?」

「あぁ<豚の帽子>亭!オレの店なんだぞ」

「あなたが・・・店主(マスター)さん・・・?」

「よく言われるんだけどな~そんなにおかしいか?」

「い、いえ!その背中のもの・・・でてっきり剣士さんかと・・・」

「あぁ、これか?」

 

そう言って少年は背中から背負っている剣を鞘から抜き去った。

 

「きゃっ・・・!!!」

 

勢いよく剣を抜く少年を見て驚いた声を出したが、落ち着いて少年が抜いた剣を見てみると剣の大部分が折れてしまっていて剣としては役に立たないのは明らかだった。

 

「へへーっびびった?柄だけでもチラつかせてりゃそれなりに見えんだろ?これぞ食い逃げの抑止力ってやつだ!!」

 

少年が持っている剣の柄は少し変わった形をしていて、その柄は一匹の龍が少し歪な8の字を描くかのような形をしたデザインだった。

 

「酒場にはいろんな客が来るから店主(マスター)も大変なんだよ」

「てめぇの飯を食わされて、その上、金も取られる客のほうがよっぽど気の毒だぜ!」

 

ホークが喋ったのを少女はマジマジと見つめていた。そしてベットから降り、ホークをいきなり抱きしめだす。

 

「わぁ~~~~~っ!!喋る豚さんだぁ!!この前、父上に誕生日プレゼントにおねだりしたんです!」

「ホークだぜ!」

 

この少女、誕生日プレゼントに何というものを頼んでいるのだろうか。本人には変なものを頼んだという認識はないようである。

 

「・・・そだ、腹減ってないか?よけりゃ食わしてやるよ!」

「ひぃ!?」

「ポークちゃんを?」

「ポークじゃねぇ!!ホーク!!ってかオレを食べようとすんな!!」

「残念ながら店の飯!ニシシ・・・」

「全然残念じゃねぇ!このクソが!紛らわしい言い方すんな!プゴっ!」

 

二人と一匹は酒場の1階に移動。そして少年はいそいそと料理を作り始める。何を作るのだろうか?・・・ミートパイだった。

 

「ほれ、食え」

「はい・・・いただきます」

 

少女は出されたミートパイを綺麗にナイフで切り分けフォークでそれを一口分だけとり、口に含んだ。

 

「どうだ、まずいだろ?」

「・・・・・・・はい。」

「「やっぱり」」

 

当たり前だ。先ほどの客に不味いと言われたばかりの料理を出しているのだから。別の料理でも出せばいいのだが、なぜこのチョイス。少女は偉く真面目な気質なのか、この不味いミートパイの二口めを口に含んだ。そうして三口めにいくところで少女の目から涙がこぼれた。

 

「おい!お前の料理が不味すぎて泣いちまったじゃねぇか!」

「ち、ちがうんです・・・おいしいんです、この料理・・・」

 

この料理が不味いのは客が証明済みだ。いつも残飯として食べているホークも彼女が嘘を言っているのはわかっている。けれど、彼女の言葉の思いが偽りではないことは彼女の表情が示していた。

 

「なぁ・・・お前、あんな鎧姿で何してたんだ?お前だとあんな鎧じゃ動きづらかっただろうに」

「探しているんです・・・<七つの大罪>を・・・そう言えば私、どうやってここまで来たんだろう」

 

”ドンドンドン!!ドンドンドン!!ドンドンドンドンドンドンドン!!!”

 

その時、酒場のドアをけたたましく叩く音が響いてきた。・・・しかもなぜか三々七拍子。やかましい。

 

「開けろ!!村人からの通告があった!!」

 

ドア越しにでもはっきりわかるくらい大きな声だった。

 

「我々はふもとに駐留する聖騎士様配下の騎士団!<七つの大罪>とおぼしき錆びの騎士を捕らえに来た!!」

 

おそらく先ほど出て行った客たちの誰かが近くの村人に話してそれが噂として広まったのだろう。

 

「なんかうるせぇ奴らが来た」

「・・・聖騎士」

 

少女は何か思うことがあるのか小さくではあったが呟いた。それを少年はしっかりと聞いていた。

 

「おとなしく出て来い!さすれば我々も剣は抜かん!」

 

中々店のドアが開かないので騎士たちがいらいらし始めた。

 

「30秒だけ待ってやる!それまでに出てこなければ実力こう「いらん」早っ!!!」

 

ビビッて出てくるのを渋っているのかと思ったら予想外に早くドアが開いて騎士の一人が驚いた。しかし、一応騎士だけあって一瞬驚いてはいたがすぐに冷静になり出てきた少年をじろじろと睨む。

 

「おい、錆びの騎士はどうした?」

「あぁ錆びの騎士ね・・・出て来いよ!」

 

少年に呼ばれて奥から”ガシャン、ズシャン”と音が聞こえてくる。

 

「ハッ!随分物分かりがいいじゃない・・か・・」

「フッ・・・オレを呼んだか?この錆びの騎士ホークを!!」

 

出てきたのは先ほどの少女ではなく、錆びの鎧を身にまとった豚だった・・・ホークだった。

 

「こ、この豚が<七つの大罪>ですか!?」

「んなわけないだろ!!」

 

リーダー格らしき人物にこいつが<七つの大罪>なのか?と不安げに尋ねる騎士がいたが、明らかに<七つの大罪>なわけがない。<七つの大罪>には少なくとも豚はいないからだ。

 

「なんと!オレは残飯処理騎士団団長なんだぜ!」

「「「「「んな騎士団あるか!!」」」」」

 

錆びの騎士を捕らえに来ていた5人の騎士が一斉にホークにつっこむ。

 

「この豚でよければ煮るなり焼くなり好きにしていいぜ?」

「どっちも堪忍しろ!!」

「ガキィ!!」

 

怒ったリーダー格の騎士が店主(マスター)である少年の襟元を掴み持ちあげた。少年は苦しくはないのか、特になにも抵抗することなくプラーンとされるがままだ。

 

「騎士を愚弄するとはいい度胸だな!!」

 

持ちあげた少年を怒りに溢れた目で睨む。少年はそれを恐れることなく見返していた。

 

「アリオーニさん!裏から女が逃げていきます!もしかしてあいつが錆びの騎士なんじゃ!」

「な、何!?追え!おそあくそいつだ!」

「「「「おぉ!!」」」」

 

アリオーニと呼ばれたリーダー格の男が他の4人に追うように指示する。その時には持ちあげていた少年を放り投げるように投げ捨てていた。

 

「っつっとっと」

 

投げられた少年は空中で回転してから地面に脚をつけた。

 

「おいおいダイジョブか~」

「あぁ・・よしホークあいつ等追ってちょっと倒してきてくれ」

「あぁ?何で俺がそんなこ「全員倒せれば、今晩の飯の量2倍にしてやる」まかしとけ!」

 

ホークは全速力で騎士たち5人を追いに走った。少年も服についた埃を丁寧に叩いてから少女を追いかけ走り出す。先に走っていったホークや騎士団の5人を軽々と追い越し少女を見つけると素早く木の上に上り身を潜めた。そのことにホークや騎士団5人はまったく気づかず騎士団5人はホークに蹴り飛ばされダウンし、リーダーのアリオーニは崖の近くでホークに吹っ飛ばされたため落ちて行ってしまった。

 

「わりぃな、てめらぁに恨みはねーが・・・これで今晩の飯の量2倍!」

 

ホークは自慢の嗅覚を使って木の上に隠れている少年と少女の場所まで移動した。少年もホークがやってきたことに気が付き、木からおり、抱きかかえていた少女を地に下ろした。

 

「あの、二度も助けていただいてなんと・・・お礼を言えばいいか」

「━━━んで、さっきの話の続き聞かせてくれよ」

「・・・私が<七つの大罪>を探し旅する理由は、聖騎士たちを止めるためです」

「それじゃ・・・」

「ちょい待った、お嬢ちゃん!」

 

少年が何か話そうとするがホークが待ったをかける。

 

「聖騎士っていやこのブリタニアを守る騎士の中の騎士、英雄だろーが?」

「そうです、たった一人でも一国の兵力に匹敵する力を持つ恐ろしい存在です。そんな彼らがブリタニア(この国)に戦をもたらそうとしていたら?」

 

少女が言う話にホークも少年もぴくりと反応する。国を守るための聖騎士がどんな理由にせよ、わざわざ戦を起こし、民を危険にさらすなど許されることではない。

 

「今の王国は事実上、聖騎士たちの手中におちました。そんな彼らの命令に逆らう者は容赦なく━━━じきにこの辺りにも影響が及んでくるでしょう」

「ま・・・マジかよ!!」

「大変だな~」

 

少年の返事は呑気なもので、ホークもジト目で少年を見ていた。

 

「でもさ、それと<七つの大罪>とどう繋がんだ?」

「唯一・・・聖騎士たちを止める希望があるとすれば<七つの大罪>だけなんです!!!」

「.....お前さー<七つの大罪>がどんな奴らなのか知ってて探してんのか?」

「<七つの大罪>・・・七匹の獣の印を体に刻んだ七人の凶悪な大罪人から結成された王国最強最悪の騎士団だったそうです。彼らは今から10年前王国転覆を謀った疑いで王国全騎士から総攻撃を受けちりぢりになった・・・」

「んで全員死んだって噂もあったけな」

「そんなに凄い人たちが簡単に死ぬわけがありません!!」

「んーでも大罪人なんだろ?」

「現実に人々を苦しめているのは、聖騎士たちなんです!」

 

少女は泣きそうな声で叫んだ。それを少年は真剣な目つきで視線を逸らすことなく彼女の目を見続けた。そんな二人が話していた場所が突然ぐらぐらと揺れだし、崖が一瞬で崩落した。

 

「きゃっ・・・!」

「うわぁぁあぁ!」

 

少女とホークは叫ぶことしかできず、少年はただただ落ちるに身を任せ、二人と一匹は仲良く崖下に落ちて行った。そしてその落ちていく三人を上から眺めている男がいた。その男はおそらく崖を斬ったであろう剣についた汚れを払うために一振りしたあと左の腰にある鞘に戻した。

 

「おっと・・・通告にあった人間かどうか確かめるのを忘れておった。決定!!身元不明者二名死亡!!・・・ってことでいいかの?」

 

ホークにやられた騎士4人が男の後ろで待機していた。

 

「し・・・しかし崖下にアリオーニさんが・・・」

「ならば三名死亡にしておけばよい」

「そ、そんなぁ!!!」

「ツイーゴ様!それはあんまりです!」

「ならば・・・七名死亡か?」

 

ツイーゴと呼ばれた男が先ほどのアリオーニと呼ばれたリーダー格の男よりも位が上のようだ。そんなツイーゴは部下の非難に対しお前らも死ぬか?と脅すような視線を向けながら尋ねた。そんなことを言われては何も言えず4人とも押し黙ってしまった。しかし、一人の部下が先ほどツイーゴが崩落させた場所から少し東側の崖を指さした。そこには先ほど落ちて死んだはずの少年と少女とホーク、そしてホークが落としたアリオーニが少年に抱きかかえられながら存在していた。

 

「お前たち何を勝手に生きておる!?儂の死亡決定を変更するでないわ!」

 

ツイーゴはあからさまに怒りを露わにする。

 

「おい、起きてるか?」

「う・・ん」

 

少年は抱きかかえていたアリオーニをそばに下ろすと少女の意識があるか確認をとる。どうやら少女も意識はあるようで今の自分の状況に少し頬を染めながらも少年の言葉に頷いた。

 

「よし!オレが合図したら森に向かって走れ!いいな」

「は、はい」

 

そこでツイーゴが少し含んだ笑いをしながら少女に近づいてきた。

 

「これは儂も運がいい!!その耳飾りの紋章は王家のもだ、つまり御身は━━━決定!エリザベス王女!!」

 

どうやらツイーゴの決定!というのは口癖らしい。

 

「エリザベス王女?」

「エリザベス王女っつったら王国の第三王女じゃねぇか!?」

 

ホークの王国情勢の知識に脱帽である。

 

「御身には王国から捜索指令が出ておりましてな。逃げようなどとは思わんことですぞ?生きたまま捕らえよとの命ではありますが━━━事故死ならば致し方ないでしょうなぁ?」

「走れ!」

 

少年が森に走るようにエリザベスに指示する。それにツイーゴは反応して剣を抜いた。

 

「決定━━━━っ!!事故死っ!!!」

 

ツイーゴの剣で森の木々が一斉に切られ、先ほどまでうっそうに茂っていた森も一瞬で見通しがいい空間となってしまった。これでは隠れて逃げ切るどころの話ではない。もはや隠れる場所が無くなってしまった。エリザベスも先ほどの剣圧でへし折られた木々につぶされそうになったが、間一髪少年が盾になり怪我をすることが免れた。少年は目だった傷は無いようだが、着ていた服は所々やぶけてしまっていた。

 

「ようっ」

 

目をつぶって転がっていたエリザベスも自分に木々の圧迫が無いことに気が付き目を開けると、目の前で少年が自身に覆いかぶさって守ってくれていたことに気が付いた。

 

「ホークも無事・・みたいだな」

「この豚串状態が無事だと?うわぁぁん!!おっ母~~~~!!!」

 

ホークは泣きながら酒場のあるほうへと走っていく。その時ツイーゴの横を通り抜けていったが、ツイーゴはホークを完全に無視していた。エリザベスは何かを決心したのか、苦い顔をした後、ツイーゴの方へと歩きだした。

 

「エリザベス!おい、どこにいくんだよ?」

「━━━逃げ切れません」

「お前━━━━諦めるわけにはいかねぇって言ってただろ?」

「私がおとなしく投降すればあなたの命を無闇には奪わないはずです」

 

ツイーゴはまたエリザベスに向かって剣を振った。その衝撃で今度は地面が深く抉れていく。それをまた間一髪少年はエリザベスと抱えて避けた。

 

「おねがい!あなただけでも逃げてください!」

「う~ん、ありゃオレたち両方殺す気みたいだけどな」

「どうして・・・っ」

 

エリザベスは堪え切れず涙を流しだした。

 

「私・・・嬉しかったんです。たった一人で<七つの大罪>を捜す旅に出て・・・でも旅なんてしたことなくて、すごく不安で、正体がばれないよう着慣れない鎧をくたくたになるまで歩いて・・・けど、誰を頼ることもできなくて。なのに、あなたはどこの誰とも知れない私にやさしくしてくれて、だから私は・・・名前を知らないあなたたをこれ以上巻き込みたくないの!!」

 

少年はエリザベスの言葉を最後までだまって聞いていた。そして少年は何かを思い出しているかのように目をつぶると微笑み、そして目を開け言った。

 

メリオダス(・・・・・)それがオレの名前だ!」

 

エリザベスは聞こえた来た単語に耳を疑った。なぜならそれは先ほど<豚の帽子>亭で噂になっていた大罪人の一人の名前と同じだからだ。

 

「うそ・・まさか・・・そんな、だって・・・その姿はまるで・・・そ、その(シンボル)は獣の、いえ、(ドラゴン)の━━━!!」

「ふんっ!!」

 

そこでちょうど二人が倒れていた場所にまでやってきたツイーゴが先ほど同じように剣を振り下ろした。しかし、その剣圧は二人を斬り裂くのではなく、ツイーゴの頬を斬り裂くこととなった。

 

「ど、どういうことだ!儂の剣は確実にお前たちを仕留めた!だが一撃をもらったのは儂じゃと!?・・・なんだ、それは!?」

 

メリオダスは剣を抜いていた。酒場でメリオダスがエリザベスに見せた刃折れの剣だ。

 

「メリオダス・・・あなたは本当にあの(・・)━━━」

「メリオダス?ま、まてよ貴様の顔には見覚えが・・・いや、だとしたら何故昔と姿が変わっていない!?」

「オレが誰だか・・・わかったか?」

 

メリオダスは腰をかがめて左手に持っている剣を右腰のほうに軽く引いた。その行動にツイーゴは焦り魔力を全開にしメリオダスに振り下ろす。

 

「ま、まさか、貴様は本当に・・・貴様はぁぁぁぁぁ~~~~~っ!!!」

 

それをメリオダスは紙一重で避けた。いや避けたのかどうかはわからない。メリオダスはその場から1mmも動いてはいないからだ。もしかしたらツイーゴの剣が空振りしたのかもしれない。とにかく、ツイーゴの剣は空振りに終わった。しかし、魔力を込めたツイーゴの剣は先ほどのような衝撃破が飛び出すはずなのにそれもない。今度はメリオダスが先ほど引いていた剣を左手の方向に軽く振りぬいた。

 

「け、決定・・・この・・・尋常・・・ならざ・・・る・・力は・・あの・・伝説の!?」

 

その言葉を最後にツイーゴの身体は地面から離れ高々と上空に打ち上げられた。

 

「お前たちのいう括りならこうだな<七つの大罪>憤怒の罪(ドラゴン・シン)メリオダス!」

 

とまぁメリオダスの決め台詞かかっこよく決まりツイーゴは遠くのほうへと飛ばされていった。そばにいたエリザベスは今の出来ごとにフリーズしているのかぼぉ~っとメリオダスの方を見ていた。メリオダスは剣を背中の鞘に仕舞ってからエリザベスの方に振り向いた。

 

「これで、一人目が見つかったわけだな・・・エリザベス!残りのメンツなんだけどさ、オレも用があって最近あいつらを捜し始めたんだ。情報集めのために酒場をやりながらな。これで看板娘がいてくれたら客も情報ももっと集まるんだがな~」

 

そこで少しだけメリオダスは区切った。そして、こう続ける。

 

「一緒に・・・行くだろ?」

「・・・はいっ!!!」

 

”ドゥンッ!!!”

 

音だけ聞いたら何か小さな隕石でも降ってきたのか思うくらいの音だったが、降ってきたのは豚だった。いや、豚だと言ってくれなければわからないだろう。それくらいでかかった。その豚の上にはなぜか建物が括りつけられており、その建物こそ<豚の帽子>亭そのものだった。なぜ豚の背中に乗っかっているのかは不明すぎる。

 

「ナイスタイミングホークママ!」

 

どうやらホークの母親らしい。.....いや、その設定はいくらか無理があるような気がするが。

 

「まぁ呼んできてやったのはオレ様だけどな!こんなとこさっさとおさらばしよーぜ!」

 

そのホークママの上にはホークが乗っていて、先ほど刺さっていた木の枝も抜けていた。ホークママに抜いてもらったんだろうか?.....いや無理だな。ホークが垂らしてくれた縄梯子をメリオダスはエリザベスを抱えながら器用に昇って行った。

 

「そういやエリザベス、お前ここにどうやって来たのかわからないとか言ってなかったか?」

「あ、はい。そうなんです。どこかの森で倒れそうになった記憶はあるんですけど、そこからどうやってここまできたのかどうしても思い出せなくて」

「多分それ、ヘルメスだな」

「ヘルメス?何だそれ?うめぇのか?」

「お前は食い物にしか興味がないだけだろ。ヘルメスは人だ。そんでオレの探してるメンバーの一人でもある」

 

エリザベスが首を横にかしげる。

 

「ヘルメス様・・・ですか?手配書にはそのような名前は無かったように思いますけど」

「あぁそうだな、まぁあの手配書にはオレの探してる仲間が二人いないからな」

「え、でもメリオダス様、<七つの大罪>は七人からなっているんですよね?」

「あぁそれな?勘違いしてるわ」

「なんでそんな勘違いすんだよ。聖騎士って実はバカなのか?」

 

ホークの指摘は最もである。手配書になっていない罪人がいるなど危険極まりない。

 

「いんや多分、あの時(・・・)あいつら二人がいなかったのが原因だろうな」

「つまり<七つの大罪>は全員で九名ってことですか?」

「そうなるな」

「てかその大罪人のヘルメスって、何でお前ぇはわかるわけ?」

「エリザベスがうちに来た時にオレを見た瞬間に何かが切れたかのように倒れただろ?あれは鎧に術がかけられてた。その術を得意としてるのがヘルメスってわけだ」

「ヘルメス様・・・でもどうしてメリオダス様に会わせるようにしたのでしょうか?」

「さぁな~そこまではわからん。まぁあいつも色々不思議な奴だからな」

 

そこでメリオダスは話を止めホークママに聞こえるように叫んだ。

 

「ホークママ!適当に次の村見つけてくれ!」

「て、適当でいいんですか!?」

 

エリザベスが余りの適当加減に驚くがホークがいつものことだから諦めてくれと頭を振りながら言った。メリオダスの言葉に答えるように「ブゴーッ!」とホークママは鼻を鳴らしドンドコドンドンと次の町を目指して走っていく。エリザベスとメリオダス。彼らの物語はここから始まっていく。

 

 

 

 

 

 

 





次からはオリ大罪の二人のエピソードを書いていこうと思います。

次はヘルメスさんの登場回!?
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