二役/二股/二枚舌をする者[一時凍結] 作:無の空間の存在維持
長く歩き続けると、一つの部屋にたどり着く。そこには先ほどの部屋とは違い、ベッドと水色のカーテン、上にぶら下がっているライトしかなかった。ベッドはカーテンで覆われ、ライトはベッドの真上にあるため、その中に一つの部屋として成り立っていた。
希乃はその中に入らずにもう一つのカーテン、灰色のカーテンを開け、奥へと進む。そこには巨大な装置が中心となり、その周りに数えきれない人形が置かれている。その中に、先ほどの人も含まれていた。さらに、奥にある巨大な装置へと進む道があり、その操作パネルへと進めるようになっている。
希乃は多くある人形の群れの中に入り、一つの人形へ到着する。それは自身の身体とは異なり、低学年ではあれど、顔立ちや髪の色が異なっていた。目の前にある人形は茶髪で短髪である。
希乃はその人形の横に立ち、目を閉じる。数秒後、隣の『短髪で、茶髪の人形』が目を開ける。その人形はすぐに自身の手を見て、何も持っていない両手を軽く握る。
「…うん、問題ないね」
この人形は声を出す。いや、この人形はただの人形ではない。今は希乃という人間だ。希乃は先ほどの身体からこの人形へと意識を移動させたのだ。
すでに隣りは人形と化し、ただの空っぽになっている。これを含め、すべての人形が当てはまる。これらは希乃にとって人形であり、『クローン』である。
希乃という人間はある能力を持ち合わせている。明確な能力名はない。それでも希乃はこう呼んでいる、『支配』と。
希乃は自身の能力がきちんと起動するかを先ほどの人形で試す。
「右手だけ挙げて」
それに人形は反応し、右手だけが真上に上がる。希乃は引き続き、動作を人形に命令する。人形はそれに応答し、左手を上下させたり、右手を上下させたりした。特に異常が見られないため、希乃は深呼吸をする。
希乃はこの身体で歩き始め、黒いカーテンを閉める。そのまま水色のカーテンを開け、ベッドへ移動し寝る。
△ △ △ △ △
しばらくすると、希乃は起き上がる。どれくらいか、時間が経っている。希乃は声を発する。
「…あー。あー。…うん、何とかなりますね。」
先ほどの声とは違い、少し丁寧な言葉を使い、大人びた声になる。そこで、さらに声を続ける。
「念のため、間違えないように
そこで、『希乃』という名前から『古奈』へと変えた。…
古奈は基本動作(“歩き”や“座る”など)が問題ないことを確認すると、ベッドから離れる。水色のカーテンから開けて、内側の部屋から出る。古奈は何もない道を歩き続ける。
さらに、しばらく歩き続けると、トンネルから出る。そこにはまた違った部屋に出る。そこはテレビやソファなど、他の部屋よりも家具が多く設置されていた。生活感があるかとなれば、それほどでもないが、少し明るい部屋になっている。横にはベランダがあり、透明なカーテンが閉じている。
古奈は透明なカーテンを開け、窓を開ける。ベランダに出ると、道路や公園などがあった。どうやら、ここは全30階建てのマンションであり、古奈は20階の1LGKを借りていた。
古奈はそこで女の子用のスーツへと着替えると、部屋を出る。マンションの玄関まで移動し、何処かへ向かった。