龍の軌跡 第一章 BLEACH編   作:ミステリア

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第八話

 

 

――龍一郎サイド――

 

「行くぞ!!」

 

「おうっ(はいっ)!!」

 

ルキアさんの号令に応え茶渡さん、恋次さん、一護さん、俺の順でムガインに向かって駆け出した。

 

そしてそれと同時に俺達の合間を縫うように石田さんの矢が通り抜け、ムガインに命中する。

 

(凄い!)

 

その正確無比な精密射撃に感嘆する俺。だが――

 

ガガガッ!!

 

命中した矢は全てムガインの冥力壁に阻まれ、音を立てて弾き散らされてしまう。

 

「フッフッ…何度やっても無駄ですよ」

 

余裕綽々といった笑みを浮かべるムガイン。だがそれは全て承知の上の行動。

 

俺は石田さんがムガインの気を引いている間に、オケアヌスの輪を腕から外してフラフープ位の大きさに変えて飛燕をしまい込む。

 

「破道の三十三!蒼火墜!!」

 

ルキアさんの放った蒼い炎がムガインを呑み込んで爆裂する。

 

当然奴は平気な顔をしているが、本当の狙いは蒼火墜の炸裂時に起こる爆音と煙。

 

その煙に乗じて茶渡さんが一気に接近する。

 

「いくぜ恋次!」

 

「おうっ!」

 

一護さんの一言。それだけで全てを理解したらしく、恋次さんが力強く頷いて蛇尾丸を眼前で構え、一護さんも斬月を携えた右手を掲げ、それを支えるように左手を添えた。

 

「「卍解!!」」

 

二人の声が重なる。

 

蛇尾丸の刀身が輝き、そこから流れ出た霊圧がまるで竜巻のように恋次さんを中心に吹き荒れ、その竜巻を切り裂くように巨大な白骨化した大蛇が現れた。

 

そして一護さんの斬月からも霊圧が流れ出し、辺りに風が巻き起こる。

 

その風が収まった後には、漆黒の刃を携えてマントを思わせる死覇装を纏った一護さんの姿があった。

 

「狒狒王蛇尾丸!」

 

「天鎖斬月!」

 

卍解した二人の霊圧に、俺は周りの空気がビリビリと震える感覚を肌で感じた。

 

(これが卍解した隊長格の霊圧……やっぱりとんでもないな)

 

俺も卍解を使う事はできるが、果たしてあの二人にどこまで近づけるか……。

 

そう思うと、隣り合って立つあの二人の姿が非常に羨ましく、眩しく感じられた。

 

この時俺は二人に強烈なまでの憧れを抱いた。漫画やアニメを通しての憧れではなく、本人を前にしての本当の憧れを。

 

(もっと強くなりたい………あの二人の隣に立てる位に)

 

俺は心の底からそう思った『イレギュラーズを倒す為に強くならなければならない』と思ったことはあったが、心の底から強くなりたいと思ったのはこれが始めてだった。

 

(でも今は、俺の出来ることを全力でやる!)

 

決意の後即座に頭を切り替え、俺は才牙をイメージしてオケアヌスの輪に手を入れて、ムガインに向かって一気に駆けた。

 

そして俺が駆け出すのとほぼ同時に茶渡さんが奴に肉薄し――

 

「巨人の一撃(エル・ディレクト)!!」

 

力を込めた拳を冥力壁に叩き付けた。

 

ガァァァン!!

 

鉄板を叩いたような音が響き渡るが、依然として奴は平然と立っていた。

 

「無駄ですよ無駄ぁっ!」

 

冥力壁に阻まれた茶渡さんの一撃を嘲笑うムガイン。だがこれで奴の注意は完全に茶渡さんに向けられた。

 

俺はオケアヌスの輪に入れた手を握り締め、『それ』を掴む。

 

イメージしたのは至高の才牙。

 

俺は一気に間合いに入り、オケアヌスの輪から『それ』を引き抜く。

 

そこにあるのは一護さんの斬月とほぼ同じサイズの翼のような外観の大剣。

 

その姿から放たれる荘厳な迫力に、皆が一瞬息を呑む。

 

光の才牙。エクセリオンブレードがブリーチの世界に出現した瞬間だった。

 

「はぁぁぁぁっ!!」

 

裂帛の気合と共に、俺はエクセリオンブレードを振りかぶってムガインに振り下ろした。

 

ガギィィン!!

 

刃が『何か』にぶつかった手応えが柄を通して掌に伝わり、力を込めて振り下ろした刃が動きを止める。

 

だが同時に俺は感じていた。振り下ろされた光の刃が、目の前にある『何か』を確実に切り裂いている事を。

 

「なっ!貴様……それはまさか!!」

 

俺の手にあるものを見て、ムガインの顔が始めて驚愕に染まる。

 

どうやら気付いたようだが、もう遅い!

 

才牙の力を引き出す真髄。それは魂で振るい魂で放つこと。ならば剣に宿る魂と対話し、同調すればいい。斬魄刀の始解と要領は同じだ。

 

「いっけぇぇぇぇぇっ!!」

 

想いを込めた咆哮。それが俺の魂を表に出す最も手っ取り早い方法だった。

 

その咆哮に答える様にエクセリオンブレードの鍔にあたる目の部分がキラリと輝き、まるで今まさに飛び立とうとする鳥のようにエクセリオンブレードの翼の様な刀身がバッと広がると、同時に爆発的な力が刀身から放出され、ムガインの冥力壁によって止められた刃が壁を切り裂きながら進んでいく。

 

そして俺は渾身の力を込めて光の刃を一気に切り払った。

 

ザンッ!!

 

掌に『何か』を断ち切った手応えを感じ、俺は即座に横っ飛びに跳んで声を張り上げる。

 

「恋次さん!一護さん!」

 

「おぉっ!」

 

「任せろ!」

 

俺の合図に恋次さんが狒狒王蛇尾丸を操り、ムガインに攻撃する。

 

巨大な蛇型の刀身が口を一杯に開いてムガインを飲み込む。だが――

 

「ぐぅうっ!」

 

ムガインは蛇尾丸の上顎を両腕で。下顎を両足で押さえつけて、自身が噛み裂かれるのをなんとか防ぐ。

 

しかし攻撃を防がれても、恋次さんの顔には笑みがあった。

 

「攻撃…通ったぜ!」

 

先程まで完全に防がれていた攻撃が始めてムガインの身体に届いた事に歓喜の声を上げる。

 

そして恋次さんの役目はムガインを倒す事ではなく、動きを封じる事。本命は――

 

「これで終わりだぜ」

 

「なっ!」

 

ムガインの背後からかかる声。それは瞬歩で奴の背後に回り込んだ一護さんの発したものだった。

 

そしてこの時一護さんは既に霊圧を高め、刀身に力を集約していた。

 

ムガインは驚愕の表情を浮かべてなんとか避けようとするが、蛇尾丸によって捕らえられ、身動き一つできないでいる。

 

「月牙…」

 

「そんな……馬鹿な……」

 

自らの身に起こっている事が信じられないといった様子でいるムガイン。

 

「……南無阿弥陀仏」

 

歪みによって理不尽に生み出された存在に僅かながら同情した俺の呟きと。

 

「戻れ!蛇尾丸!」

 

恋次さんが卍解を解除するのと。

 

「天衝!!!」

 

「ばかなぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

一護さんの放った黒い斬撃がムガインの叫びを飲み込んだのはほぼ同時だった。

 

 

――夜一サイド――

 

「やったか……一護」

 

井上の双天帰盾の力によって傷を癒し、再び戦場に戻った儂の視界に一護の月牙天衝が光景が入り、思わずポツリと呟いた。

 

援護に来たつもりじゃったが、どうやら少しばかり遅かったようじゃな。

 

「夜一殿。傷はもういいのですか?」

 

「あぁ。井上の力のお蔭でもう全快じゃ」

 

軽く手を振ってルキアに無事を伝えると、コンクリートの床にへたり込んでいる龍一郎が「それは良かったです」と笑う。

 

お主の方が大丈夫か?

 

まぁ十日前まで気質だった男がこの短い間に喜助、虫共、ムガインと三連戦をすればこうなうのも当然か。

 

「井上。龍一郎にも回復を頼む」

 

「は、はい」

 

儂の呼びかけに井上が駆け足で龍一郎に寄り、双天帰盾を発動する。

 

取り敢えず龍一郎はこれでいいじゃろう。

 

「それにしても、本当にあの泥野郎は倒せたのか?」

 

「確かに。黒崎の月牙が当たってから姿が無い。粉微塵になったのか、姿を消して様子を伺っているのか…」

 

疑わしげに恋次が呟き、石田が左右を見て同意する。一護は「少なくとも手応えはあったぜ」と答えた。

 

確かにそれは儂も気にかかる……ふむ。

 

「エルフィ!出てきてくれ!!」

 

「何か用か?」

 

「「「「「なっ(えぇっ)(ム)!!」」」」」

 

儂の声に即座に応えて文字通り『出現』したエルフィに、周りにいる一護達(龍一郎は除く)が突然の事に仰天し、中には武器を構える者までいた。

 

「あれ?あなたは確か吉波君と一緒にいた女の子…?」

 

そんな中で最初に気付いた井上がエルフィの姿をまじまじと見る。

 

その井上の言葉に全員が「…そういえば」といった顔をして武器を下ろしていった。

 

「如何にも。我が名はエルフリーデ=クライスト。龍一郎の相棒だ。愛称はエルフィ。名前が言い難いのなら愛称で呼んでもらっても構わない」

 

手短に名乗ったエルフィに一護達が返事をする間も置かずに儂が割って入った。

 

「エルフィ。悪いが先に頼みを聞いてはくれぬか?」

 

「構わぬが何だ?」

 

「ムガインが本当に倒されたのかどうかを確認して欲しいんじゃ」

 

「それなら既にサーチを発動して確認済みだ」

 

その手際の良さに儂は思わず「ほぅ」と漏らし、回復を終えて井上に礼を言った龍一郎が「で、どうだったんだ?」と結果を聞く。

 

「ムガインは完全に消滅した。取り敢えず今現在でこの空座町に存在しているイレギュラーズは……あれだけだ」

 

そう言って一点を指差すエルフィ。

 

そこには最初に儂が蹴り飛ばし、龍一郎が縛道で動きを封じた中甲虫が赤い光に縛られたままでひっくり返された亀のように手足をばたつかせていた。

 

……すっかり忘れておったわ。

 

すっかり失念していたことに思わず苦笑いが浮かぶ。

 

一護達もそれは同じらしく、皆が皆わざとらしく咳払いをしたり、頬を軽く掻いたり、眼鏡を直したり、明後日の方向を向いたりしていた。

 

「まぁ、後で喜助に引き渡せばよかろう。何か奴等の弱点の一つでも見つかるかもしれんしのぅ」

 

儂の意見に皆が頷く中、龍一郎が「あれ?」と言って首を傾げた。それに気付いたエルフィが口を開く。

 

「どうした?龍」

 

「いや、そういえば浦原さんはどうしたのかなぁと思って。後を追ってくると言っていたけど、いくらなんでも遅くないか?」

 

む?確かにそう言われてみると…。

 

「よし、なら一旦浦原商店に行こうかの。色々と話もあるじゃ「いやいや~お待たせしました~」」

 

儂の声を遮り、聞き覚えのある声が後方から聞こえた。

 

声のした方を見ると、喜助と鉄裁。そして自らの身長程もある巨大な棍棒『無敵鉄棍(むてきてっこん)』を携えたジン太とマシンガンポッド『千連魄殺大砲(せんれんはくさつたいほう)』を担いだ雨がいた。

 

「皆さん~って………………あれ?」

 

キョロキョロと辺りを見回す喜助。当然辺りには龍一郎が縛り上げた中甲虫以外には何も無い。

 

どうやら己が相当出遅れた事を察したらしい。

 

……はぁ。全く。

 

「あの~もしかして僕……ちょっと遅かったっスか」

 

気まずそうな顔をする喜助の顔に――

 

「遅すぎじゃ戯けっ!!」

 

儂の蹴りがめり込んだ。

 

 

 

 

 

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