龍の軌跡 第一章 BLEACH編   作:ミステリア

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数日間寝込んでいましたが、やっと復活しました。
お待たせしてすいません。


第十五話

――平子真子サイド――

 

一護達を見送って、俺は目の前の相手に向き合った。

 

此方を伺う様子や佇まい。それに雰囲気から、こいつがそこそこの力を持っとる事がよう分かるわ。

 

せやけど、何時までもここで睨めっこしとる訳にもいかんやろし、ちゃっちゃと決めたろか。

 

「悪ぅ思わんといてや」

 

俺は意地の悪い笑みを浮かべて敵に一言侘びを入れ、刀を持つ手を逆手にして手を離す。

 

「倒れろ…逆撫(さかなで)」

 

斬魄刀を解放し、規則正しい感覚で複数の穴が開いた刀身と柄尻に付いたリングが特徴的な剣が俺の手に握られる。

 

「こうして向かい合っとるだけでも、お前が他の旅禍と比べて頭一つ抜けた強さを持っとるのは分かる……せやけど」

 

柄尻に付いたリングの輪の中に手を入れて剣そのものを回し、ヒュンヒュンと風を切る音を立てさせながら、目の前の相手に語る。

 

別に遊んどる訳やない。こうする必要があるんや。

 

逆撫の能力を発動させる為にな。

 

そして俺が語った後に一旦口を閉じた瞬間、斬魄刀を解放した事で強くなった俺の重圧(プレッシャー)に押されたのか、奴が一気に突進してきて槍を突き出しよった。

 

やけど無駄や。お前は既に詰んどるで。

 

そして案の定。奴は途中で足を止めて、その場で槍を無茶苦茶に振り回し始めよった。

 

どうやら無事に発動したようやな。見た目やと鼻が無い様に見えたからどうかと思たけど、俺の考えすぎやったようやな。

 

おそらく奴の目には、俺の姿も周りの景色も全てが逆に見えとるやろ。

 

「強者(つわもの)であればある程に引っ掛かる」

 

そして俺は奴に語り掛けながら瞬歩で近付いて剣を一閃し、首を跳ね飛ばした。

 

「それが俺の斬魄刀。逆撫の能力や」

 

首を斬り飛ばされて音も無く消滅していく奴に、聞こえへんと分かっとっても俺は最後まで語った。

 

(それにしてもルキアちゃんの報告通り、倒したと同時に消えていきよった。

 

世界を破壊しようとする存在。イレギュラーズ……そしてそのイレギュラーズを倒す為に神とやらに送られた奴。吉波龍一郎……か

 

なんや七面倒な事になりそうやなぁ)

 

俺がそんなことを思って吉波の方を見ると、あいつはまだ相手と睨み合いをしとった。

 

(ま。まずは今のあいつがどれ位の力を持っとるか見極めんのが先やな。

 

神から貰ったっちゅう力の一端。見せて貰おうやないけ)

 

俺は完全に傍観を決め込んで吉波の奴に視線を向けた。

 

 

――龍一郎サイド――

 

「はぁぁぁっ!!」

 

裂帛の気合と共に俺は全体重を乗せてエクセリオンブレードを振り下ろす。だが――

 

ガギィン!!

 

スピードとキレよりもパワーと重さを重視したその一撃を、鉄騎貝は楕円形の盾で完全に受け止めていた。

 

「まだまだぁっ!」

 

一度止められた事にめげずに二度三度とブレードを振るうが、結果は最初の一撃と同じく全て盾によって防がれてしまい、一旦後ろに下がろうと手を止めた瞬間に、鉄騎貝が反撃の一撃を突き出した。

 

「っ!」

 

ボッ!と空気を切って迫る突撃槍を体勢を崩しながらも身を捩(よじ)ってなんとか躱し、苦し紛れに突き出た槍の側面にブレードを叩き付けた。

 

ガンッ!と重い音が響き、まさか突き出した槍に攻撃してくるとは思わなかったらしく、鉄騎貝の体勢が僅かに崩れてよろめいた。

 

その間に俺は瞬歩を使って後方に移動し、間合いをとって崩れた体勢を立て直した。

 

(…参ったな)

 

離れてブレードを構えた俺は、鉄騎貝の盾を見て内心歯噛みしていた。

 

何故なら鉄騎貝の持つ盾には先程の斬撃による傷が幾つか付いてはいたが、その全てが小さく細かい傷で、とても盾そのものを切断できると確信が持てる程の大きい傷は皆無だったからだ。

 

たしか原作では主人公の振るう不完全なエクセリオンブレードでも、鋼鉄の塊をバターの様に切り裂ける程の力がある筈だが、今現在鉄騎貝の盾を見る限りではとてもそこまでの力を持っているようには見えなかった。

 

それは何故か。その答えはすぐに見当がついた。

 

足りないのだ。俺の力が。

 

引き出せていないのだ。エクセリオンブレードの力を。

 

俺は今になって浦原商店の勉強部屋で、斬魄刀や鬼道などの死神の戦闘技術の鍛錬だけでなく、その後も自主練で己を鍛えておかなかった事を悔やんだ。

 

だが今は過去を悔やむよりも、今この場を凌いで後に生かす事を心に誓い、エクセリオンブレードを構えて今自分が出来る事を頭の中で整理する。

 

まず得物だが、才牙から斬魄刀に持ち替える事も一瞬考えたが、その考えは即座に打ち消した。

 

冥力を持つ相手ならば斬魄刀よりも才牙の方がダメージを与えられるし、何より今後ウ゛ァンデルが出てきた時に備えてなるべく才牙の扱いに慣れておいた方がいいと思ったからだ。

 

遠距離の牽制としての鬼道。そして動体視力上昇させる写輪眼は大いに使える。

 

あと俺がまともに扱うことが出来て使えそうなのは、獣魔術と影分身の術のみ。

 

だが獣魔術は1日の使用回数は確か2、3回。

 

しかも浦原さんとのテストで光牙(コアンヤア)を一発撃ったから、残りは1,2回。

 

切り札にするには少々心許(こころもと)無い。

 

後は影分身だが、陽動や撹乱。援護や牽制など色々と使い道がある。

 

(…ふむ)

 

自分の出来る範囲での行動を割り出し、纏め、策を練り、俺は写輪眼を発動して再度エクセリオンブレードを構えた。

 

(一か八かの賭けになるけど…これしかないな)

 

自らの命が天秤に掛かった博打に感じた恐怖を無理やり押さえつけ、俺は瞬歩で一気に鉄騎貝に突進して行った。

 

飛燕を解放した時ほどではないが、エクセリオンブレードの重力制御能力によってスピードを増した俺は、瞬時に鉄騎貝の懐に潜り込んで、比較的装甲の薄い首に一点を貫く刺突を放つ。

 

だが鉄騎貝は僅かに体を移動して最小の動作で俺の突きを躱し、軽く数歩下がって間合いを取って反撃に突きを一閃する。

 

しかしこれは俺の予想の範囲内。鉄騎貝が数歩下がっていた時に俺は足のスタンスを変えていた。

 

足を前後に開いた構えから、左右に開いた構えに。

 

つまり前後に動くことを重点に置いた体勢から、左右に動くことを重点に置いた体勢に変えたのだ。

 

鉄騎貝が突きを放った瞬間、俺はサイドステップで槍を避ける。

 

そして此処が俺の狙っていた瞬間だった。

 

「縛道の九!撃!」

 

鉄騎貝に赤い光を放ち、動きを封じ込める。

 

これが俺の狙い。縛道で鉄騎貝の動きを封じて、渾身の一撃で仕留める。

 

セコイとか卑怯とか思うかもしれないが、これが俺の勝てる確率が最も高いのがこの手段しかなかったのだ。

 

俺はさっきの攻防でこのまま鉄騎貝とガチンコでぶつかり合えば、互いに消耗するのを待つ持久戦になる確率が非常に高くなると察し、体力がまだ残っている今の内に強引にでも決めようと思った。

 

そして動きを封じる鬼道を確実に当てる為に必中の距離にまで接近し、鉄騎貝が槍で攻撃してきた瞬間にギリギリで避けて鬼道を撃ったのだ。

 

しかも万が一にも盾で防がれないように、盾を持っている右側ではなく突撃槍を持っている左側に避けて。

 

もちろん常人に出来ることではない。一級の洞察眼である写輪眼があるからこそ出来る事だ。

 

そして此処からが勝負。一桁の縛道で鉄騎貝を長時間縛れる訳が無い。

 

一応手は打っておくが、迅速に仕留める一撃を鉄騎貝に叩き込む。

 

俺は後方に跳んで間を開き、十字に印を切って影分身の術を発動。分身体を一体のみ出す。

 

「頼むぜ」

 

「応っ」

 

一言のみの遣り取りをして、俺はエクセリオンブレードを肩に乗せて目を閉じ、意識を集中して魂と同調させる。

 

そして分身体の『俺』は鋼の錬金○師の主人公のように胸の前で手を合わせ、言葉を紡ぐ。

 

「自壊せよロンダニーニの黒犬! 一読し・焼き払い・自ら喉を掻き切るがいい!」

 

後述詠唱。

 

詠唱破棄で放った鬼道に詠唱を追加して強化する技術だ。これで縛道を強化し、鉄騎貝を封じている時間を少しでも長くする。

 

「…いくぜ」

 

その一言のみを発して、俺は目を開けて塚を握っていた左手を離し、拳を鉄騎貝に向けて突き出した後に親指と人差し指のみを開いて、二本の指を天に向ける。

 

丁度俺の目から、親指と人差し指の間に鉄騎貝がロックオンされたように映る。

 

(いくぞ…ブレード)

 

俺の心の呼び掛けに応えるようにブレードの目の部分がキラリと輝いた。

 

それを見て俺は突き出していた左手を戻し、再びブレードの柄を握り締めた。

 

その瞬間。現世でムガインを倒した時と同じようにエクセリオンブレードの刀身がバット大きく開かれる。

 

これで準備は整った!

 

「おおおぉぉぉっ!!」

 

俺は雄叫びを上げて瞬歩で一気に突進し、その勢いを乗せて鉄騎貝との擦れ違いざまに渾身の胴打ちを叩き込んだ。

 

ザンッ!!

 

切り裂いた確かな感覚が掌に伝わる。

 

「…フェザースラッシュ」

 

その技の名を紡いだ後、俺は振り切った刃の勢いを力ずくで止めずに敢えて身を任せて回転し、切り裂いた鉄騎貝に体を向けて残心の体勢を取る。

 

本来はここから再度突進して二撃目の胴打ちを打ち込むという技なのだが、半ばから断ち切られて消えていく鉄騎貝を見て、俺はふぅっと息を吐いて警戒のレベルを一段下げた。

 

(始めて使った技だけど、何とかうまくいったな)

 

俺は手に持ったエクセリオンブレードを見て穏やかな笑みを浮かべた後に恋次さんと平子隊長の方に視線を移すと、其処には手に持った斬魄刀を肩に乗せてこっちを見ている平子隊長と、青い炎に身を焼かれながら上下に断ち切られた鉄騎貝を見ている恋次さんがいた。

 

どうやら俺と恋次さんが鉄騎貝を倒したのはほぼ同時だったようだ。

 

そんなことを思いながら、俺は二人の元に歩を進めた。

 

 

――恋次サイド――

 

「うおおぉぉっ!!」

 

俺は戦いが始まると同時に吠えて、奴に向けて蛇尾丸を突き出して一気に延ばした。

 

奴は一瞬避けようとする素振りを見せたが、蛇尾丸の速度が思ったよりも速かったらしく、避ける事を諦めて盾を構えて防御の体勢を取る。

 

だが甘ぇ!!

 

俺は敢えて最も頑強そうな盾の中心部に蛇尾丸をぶち込んだ。

 

ガァン!!

 

派手な音が辺りに響き、蛇尾丸の力に耐えられなかったのか、構えた奴の盾に蛇尾丸の刃が突き刺さり、其処を中心に細かい罅(ひび)が放射状に入る。

 

だが、それだけじゃ終わらせねぇ。

 

俺は刃を突き刺したままで更に蛇尾丸を延ばし、力ずくで奴を塀の壁にまで押しやった。

 

(これで後ろには下がれねぇぜ!)

 

俺は狙い通りに行ったことに口の端を上げ、蛇尾丸の刃節を戻さずにそのまま切り上げて盾に刺さっていた刃を抜き、其処から切り上げの対を成す打ち下ろしの袈裟切りを振り下ろした。

 

すると奴は再び蛇尾丸に向けて盾を構えて防御の体勢を取った。

 

(とったぜ!!)

 

俺の顔に会心の笑みが浮かぶ。

 

奴と対峙した時、俺は奴の持つ盾が見た目以上に厄介だと思った。

 

あの大きな盾がある限り、奴に決定的な一撃を叩き込むのは難しいと思った俺は、まずその盾をぶっ壊そうと考えた。

 

その為にまず最初の一撃を思い切り盾にぶち込み、亀裂を入れて耐久力を下げると同時に、力任せに壁に押しやって退路を減らした。

 

後は盾で防ぎやすい攻撃を亀裂目掛けて打ち込めば、盾を破壊若しくは使い辛い状態に出来る。

 

そして俺は奴の持つ盾の亀裂に蛇尾丸の刃を食い込ませた。

 

ギャリィィン!!

 

刹那――

 

金属音が辺り一帯に響き、その音が齎(もたら)した結果に、俺は目を見開いた。

 

俺の見る先。其処には蛇尾丸の刃節が空中に舞う中で悠然と佇む奴の姿があった。

 

蛇尾丸の刃が盾に食い込んだあの一瞬。こいつは振り下ろした蛇尾丸の攻撃を完全に盾で受け止めずに、一度受けた後で蛇尾丸の攻撃の流れに合わせて盾を左に払い、蛇尾丸の一撃を完璧に逸らしやがった。

 

言うのは簡単だが、実際にするのは容易じゃねぇ。それをこいつは完璧にやりやがった。

 

そして決めの一撃を外されて呆けた俺に、奴は払いのけた体勢のままでショルダータックル気味に突っ込んできた。

 

奴が突っ込んできた事で我に帰った俺は蛇尾丸を振るって迎撃しようとしたが、既に最大攻撃まで使ってしまったことに気付き、慌てて延ばした蛇尾丸を元に戻す。

 

だが、その一瞬が奴の接近を許してしまうことになった。

 

奴は蛇尾丸の刃節が戻る前に俺の懐に入り込み、ショルダータックル気味の体勢から一気に身体を逆に捻り、その捻りを生かして引き絞った矢を放つような突きを放ってきた。

 

「っ!!」

 

その一撃が危険だと本能的に察知した俺は、自らの体勢が崩れるのも厭わずに、自分から仰向けに倒れるような形で何とか奴の一撃を避けた。

 

ゴゥッ!!

 

でかい石が高速で飛んで行くような重い風切り音を立てて、奴の突撃槍が眼前を過ぎるのと同時にガチンッ!という音と握った手に伝わる振動で蛇尾丸の刃節が元に戻ったことを悟り、俺は妙に頭の中が冷静になっていくのを感じた。

 

当然何故だと疑問に感じもしたが、俺は一先ずその疑問をどけて、奴を倒すことにのみ集中することに頭を切り替えた。

 

「破道の三十三!蒼火墜!」

 

眼前にある槍の元を視線で辿って奴の位置と体勢を探り、攻撃してきたことでがら空きとなった奴の脇腹に蛇尾丸を持っていない方の掌を広げて、詠唱破棄の鬼道をぶっ放した。

 

俺が不利な体勢のままで即座に反撃をしてくるとは思わなかったらしく、奴は蒼い炎の奔流をまともに受けて吹っ飛んだ。

 

(まだだ!!)

 

俺は更に追い打ちを叩き込もうと素早く立ち上がって体勢を立て直して跳躍し、蛇尾丸を延ばして左薙ぎに一閃した。

 

「おぉぉぉっ!!」

 

咆哮と共に薙いだ刃が蒼い炎に包まれて苦しげにもがく奴の胴を両断し、炎と共に消えていく奴を見て、自分で思っていたよりも気を張っていたらしく、俺は思わずふぅっと息を吐いて額に浮かんだ汗を拭っていた。

 

 

 

 




主人公が使った『フェザースラッシュ』は、冒険王ビィトのNDSソフトで実際にビィトが使う技の名前を少し変えたものです。
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