次回の投稿はおそらく来月頃になると思います。
――龍一郎サイド――
キキィン!キンッ!ザッ!
十一番隊舎から程なく歩いた場所にある岩場で幾度も火花が散り、足が地を蹴る音が響いた。
「八回!」
声と共に繰り出された刺突が俺の二の腕を浅く切り裂く。
痛みに僅かに顔をしかめるが、俺は反撃とばかりにバーニングランスを振るうが、軽く避けられてしまい――
「九回!」
苦し紛れに振るった事により生まれてしまった隙を見逃さずに、袈裟斬りに振り下ろされた刃を俺はなんとかバーニングランスの柄で受け止めるが、崩れた体勢で重いその一撃を受け止める事は出来ずに、たまらず吹っ飛ばされて岩に背を叩き付けられる。
「がっ!」
衝撃に飛びそうになる意識を気力で留め、ランスの握る手を強めて足を前に踏み出――そうとしたが、俺の足はとめられた。
眼前に突き出された刃の切っ先によって。
「十回だ。これで十回死んでるぜ」
淡々と告げられた現実に、俺はきりっと奥歯を噛み締めた後に、ランスで眼前に突き出された刃を払い――
「もう一回!お願いします!」
吠えた俺に、相手――斑目三席はどこか楽しげに目を細めた。
さて、何故このような状況となっているのか。
話は一時間程前に遡る。
恋次さんと共に十一番隊舎を訪ね、斑目三席に長柄の手解きを請うたのだが、正直始めはあまりいい顔をしなかった。
戦の支度で忙しいし、何よりあまり人に物を教える柄ではないと渋っていたのだが、俺と恋次さんの2人で頭を下げて頼み込んだ結果、斑目三席の出した2つの条件を此方が呑む事でなんとか了承してくれた。
一つ目の条件は斑目三席曰わく『さっきも言ったが、俺は物を教えるのは得意じゃ無ぇ。だから俺との戦いの中でてめぇに合いそうな動きを盗むんだな』だ。
つまりは浦原さんとやった実戦式の鍛錬と同じという事だ。
そして二つ目の条件は、仕事の合間でしか出来ないから、精々1日の内1時間位しか付き合えないという事だった。
そして現在。斑目三席と相対しているのだが、得物があまり扱いに慣れていないバーニングランスという事もあり、一方的に押されていた。
勿論俺も写輪眼を発動してはいるのだが、斑目三席の戦闘スタイルは浦原さんや恋次さんとはかなり毛色が異なり、フェイントやトリッキーな攻撃が多彩に盛り込まれている為、先を読むのが困難となっていた。
「はぁぁっ!」
バコッ!
「・・・がっ!」
一声と共に振るわれた鞘の一撃が脳天に直撃し、俺は崩れ落ちるように俯した。
「どうした?これで終わりか?」
「ま・・・まだまだ・・・」
直接脳に受けた衝撃によってガンガンと襲う頭痛と、平衡感覚の麻痺が俺の立ち上がる行為を阻害するが、俺はバーニングランスを杖代わりにする事で危なげながらもなんとか立ち上がってランスを構えた。
産まれたばかりの子鹿を思わせる程にガクガクと震える足を左右に広げて、倒れ難いスタンスをとる。
そんな俺を見て、斑目三席は「はぁ~」と溜め息を一つ吐き、剣の切っ先を下に下げて構えを解いた。
「休憩だ。少し休んでろ」
「大丈夫です!まだやれます!」
強がる俺に、斑目三席は鞘の先で俺の額を軽く押しやった。
すると俺の体はあっさりとバランスを崩し、尻餅を付いてしまう。
「その根性は認めてやる。いいから休んどけ」
俺を見下ろしてそう言い、斑目三席はさっさと近くにある手頃な岩を椅子代わりにして腰を下ろした。
そんな斑目三席を見て、俺はふうっと息を吐いて熱くなっていた頭を冷やし、写輪眼を解いて体の力を抜いて回復体制に入った。
そしてお互いが無言のままで数分程時が過ぎた後、不意に斑目三席が口を開いた。
「お前、何でそこまでして強くなりたいんだ?」
「・・・後悔をしたくないからです」
さして間を置かずに答えた俺に、斑目三席は一瞬意外そうな顔をしたが、何も言わずにふっと僅かに口の端を吊り上げて「そういえば、まだちゃんとお前の名前を聞いていなかったな」とどこか嬉しそうに言った。
この時点で俺は恋次さんと共に十一番隊を訪ねた時には名字を言っただけで、まだ斑目三席にフルネームで名乗っていなかったのに気付き、頭部に受けたダメージがある程度回復したのを確認して立ち上がり改めて名乗る。
「吉波龍一郎です」
「龍一郎か。良い名前じゃねぇか」
あまり名前を褒められた覚えがない俺は鼻の頭を軽く掻いて「そうですか?」と聞いた。
「名前に一が付いている奴は、才能溢れる男前と相場が決まっているんだよ」
自信たっぷりに断言する斑目三席に俺は「じゃあ斑目三席もですか?」と再び問うが、斑目三席は「その言い方は辞めろ」と強い口調で言い放ち、戸惑う俺に続ける。
「お前は護廷十三隊じゃ無ぇだろう。だったら堅苦しく呼ぶな」
「いえ、でも「それに、阿散井には普通に名前で呼んでるだろ」」
教えを受けている以上、敬いや敬意をはらうのは当然だと言おうとするのを遮られ、「なにより、そういうのは窮屈で好きじゃねぇ」とまで言われては、俺に反論の余地は無かった。
「分かりました。一角さん」
再度頭を下げて言う俺に、一角さんは「おぅ」と短く答えて下ろしていた腰を上げた。
「さぁって、休憩は終わりだ」
一角さんは抜刀して左手に持った刀を前に出し、右手に逆手で持った鞘を後ろにやって構える。
俺もバーニングランスを中段に構えて「はい」と応えた。
「行くぜ!」
一角さんの一声と共に地を蹴る音。
そして刃と刃がぶつかる音が響いた。
――一角サイド――
俺の名は斑目一角。
ソウルソサエティ最強の十一番隊で二番目に強い男だ。
一昨日瀞霊廷を襲撃してきた奴等が九日後に再び来ると正式な報告があり、俺は来るべきその戦いに向けて戦の支度と共に鍛錬をしようと思っていた。
しかしその考えは恋次と一緒にやって来た奴によってかなり変わる事となった。
そいつの事は更木隊長から話には聞いていた。
神によってこの世界にやって来たという到底信じられない胡散臭い奴だと隊長は言っていたが、正直俺も最初に聞いた時は俄には信じられなかった。
更に言うのなら恋次と一緒に来た時に最初に思った感想は『軟弱そうな野郎』だった。
その立ち振る舞いには戦う者ならば必ずといっていい程ある、どこかぴりぴりとした緊張感を帯びた雰囲気が全く感じられず、どこか出会ったばかりの頃の一護を彷彿とさせた。
恋次はこんな奴と引き分けたのか?
思わずそんな疑問が頭を過ぎったが、取り敢えずそれは隅に置いて何をしに来たのか聞くと、俺に長柄の武器の手解きをして欲しいと頼み込んできた。
しかし俺はそれを一言の元に断った。
戦の支度や鍛錬と、俺もやる事が山積みだという理由もあるが、断った大きな訳は他人に手解きをするなんざ俺の柄じゃ無ぇし、何より俺の斬魄刀の鬼灯丸は三節根だ。長柄武器じゃ無ぇ。
恋次みたいに戦い方を教えてくれと頼み込んで来るのならやりようはあるが、長柄の手解きをしてくれと言われても正直困る。
だから断ったんだが、二人揃って頭を下げて何度も頼み込んできたのに、俺もついに根負けして二つの条件を出して引き受けた。
そして十一番隊舎の近くにある岩場。かつて恋次に戦い方を教えた場所で鍛錬を始めたのだが、正直拍子抜けだった。いや、失望したといってもよかった。
いくら慣れない得物を使っているとはいえ、動きがぎこちなく攻撃も直線的で単調なものばかり。
話に聞いていた勾玉模様の入った赤い目――確か奴は写輪眼と言っていた――のお蔭か反応は悪く無いんなんだが、その秀でた反応故に呆気ない程簡単にフェイントに引っ掛かる。
体捌きも所々に見せるのは剣を振るうそれで、槍を振るうものじゃ無ぇ。
しかし俺はそんな奴を見放す事無く付き合っていた。
その未熟ぶりもだが、何度倒されても立ち上がって向かってくる根性も、強くなりたいと必死になるその姿も。戦い方を教え始めた頃の恋次を思わせたからだ。
結局、俺は強くなろうと一点を見ている奴は嫌いじゃねぇって事だ。
そんな事を思いつつ鍛錬をしていると、俺は奴の微妙な変化に気が付いた。
始めは俺の攻撃に対して防戦一方だったが、徐々に躱しはじめ、フェイントにも引っ掛からなくなり、要所要所で反撃もしてきた。
奴の体捌きや動きそのものは、大して変わっていないにも関わらずだ。
となると何が変わったのか。それは奴の目を見た時にすぐに察しがついた。
何故なら、さっきまで赤い目の中に上下2つあった勾玉模様が、いつの間にか3つに増えてやがったからだ。
俺との鍛錬の中で急激な成長をしたのか、それともこれまで戦ってきた経験からなのか、それは分からねぇ。
だがどちらにしても、少しはやるようになってきたって事だ。
そう思い割と本気で当てにいったのだが、結局最後まで危なげながらも直撃を避け、この日の鍛錬は終わった。
因みに帰り際に奴の目の勾玉模様が増えているのを言うと、奴自身は全く気付いていなかったらしく滅茶苦茶驚いていた。
そして次の日、鍛錬を始めて早々に俺は驚かされた。
前日の時点でぎこちなかった奴の動きが格段に滑らかになっていたからだ。
何でも昨日帰った後も、夜遅くまでイメージをしなから槍を振るい、少しでも身体に馴染ませようとしていたらしい。
始めに会った時から馬鹿正直な感じだとは思っていたが、まさかここまで真っ直ぐな馬鹿だったとは・・・。
だがその成果は確かに出ていた。
この日・・・俺に鬼灯丸を解放させる程に。
(こいつは、思ったよりも早く終わらせた方が、良いかもしれねぇな)
そんな事を思っているうちに、二日目の鍛錬は終わりとなった。
主人公が一角に教えを乞うのはわりと初めの方から決まっていました。
一角はBLEACHのキャラクターの中でベスト5に入る程に好きなキャラです。