これからもこのペースで頑張って書いていきたいと思います。
では!どうぞ!
――龍一郎サイド――
「そのような重要な場に何の対策も立てずにいたと思うたか」
「・・・貴様」
総隊長の言葉が終えると同時に四カ所で起こった衝撃と氷柱の出現に、バウスは歯軋りをしそうな程に歯を強く噛み締めて此方を睨んでくる。
無論これもエルフィと浦原さん。そして総隊長の考えた作戦に組み込まれていた事だった。
結界を張る要となる珠を破壊しようと考えるのは、簡単に予想がつく。
ならばその珠のある場所に腕利きの隊を配置し、守護を任せたのだ。
ちなみに個人ではなく隊を配置したのは、相手が数で押してきた時に対する保険のである。
そして守護するのとは別の隊は四番隊を除いて臨機応変に対応できる遊撃隊となっている。
実は最初は更木隊長率いる十一番隊は門の守護をする隊ではなく遊撃隊に加えるつもりだったのだが、意外にも更木隊長自身がこれを拒否したのだ。
なんでも更木隊長曰わく『此処で待っていれば、わざわざ動かなくても敵の方が来てくれるじゃねぇか』らしい。
なんとも更木隊長らしい考えである。
そういう訳で門を守護する隊を二、六、十、十一番隊。
遊撃隊を七、八、十三番隊。
バウスを迎え撃つのを俺とエルフィを含む一番隊。
そして四番隊は救護舎で待機となったのだ。
「バウスよ。これで貴様も終わりじゃ」
総隊長が突き付けると同時に、周りを囲む流刃若火の炎の勢いも威圧感も更に増していく。
「・・・っ!」
その威圧感に背を押されるかのように、バウスは歯を噛み締めて地を蹴り、総隊長に一気に襲いかかる。だが――
「穿て!厳霊丸!」
「はあぁっ!」
斬魄刀を解放した雀部副隊長と俺の振るう刃がその動きを止める。
「邪魔だあっ!」
足を止められたバウスは煩わしげに拳を振り回してくるが、その動きは明らかに鈍くなっており、俺も雀部副隊長もその拳打を容易く避け――
パン
バウスの真正面に立った総隊長が、軽い音と共に呆気ない程簡単にその拳を流刃若火を携えていない方の手で受け止めた。
「・・・な」
バウスの顔に始めて恐怖の色が浮かぶ。
「決め手を封じられ冷静さを失い、ただ激情のままに拳を振るうとは・・・愚かなり」
総隊長の言葉に、バウスの表情に再び怒りが宿る。
「貴様の敗因は、儂等に十日という時間をわざわざ与えた貴様自身の驕り故じゃ」
「ふざけるなぁぁっ!!」
バウスは吠え、止められていない方の拳を振り上げる。だが――
「流刃若火一ッ目・・・」
その拳が振り下ろされるよりも早く、総隊長は刀身に炎を纏わせ――
「撫斬」
一閃させた。
音も無く刃はバウスの正中線をなぞる様に振り抜かれ、刹那の間を起いてバウスの身体をそれぞれ左右の半身に断った。
やった!そう思い笑みを浮かべたその瞬間、俺の背筋にゾクリと不気味な寒気が走った。
(え?)
突然の事に戸惑いを覚えつつも、俺は左右に断たれたバウスに視線を向け・・・『それ』に気付いた。
左右に断ち切られたバウスの目が確かに笑っていたのを。
「総隊長!!」
その事に気付いて俺が叫ぶのと――
ブワッ!!
左右に断たれたバウスの身体から闇を思わせる程に黒い霞の様なものが飛び出し、総隊長を覆い尽くしたのはほぼ同時だった。
「元柳斎殿!」
「雀部「待て」・・・っ!何するんだ!!」
顔色を変えて総隊長の元に駆け出す雀部副隊長に続こうとした俺の裾を掴んで止めてきた相棒に、俺は非難の視線を向ける。
「我が2人に付いて防御膜を張る。龍は万が一に備えて此処に残れ」
「でも「あの2人は汝が心を砕かねばならぬ程弱い者達ではない」」
静かだが有無を言わせぬ口調に、俺は口を噤んでしまう。
「心配は無い。我の力は汝も知っている筈だ。それとも、汝は相棒を信じられぬか?」
狡いと思った。
そんな事を言われたらこう応えるしかないじゃないか。
「頼む」
「了解した」
即答して小さく頷き、エルフィは雀部副隊長の後を追って、総隊長を覆っている黒い霞の中に飛び込んだ。
そして2人の姿が黒い霞の中に消えてから、僅か数秒の後に闇を思わせる霞は空中に霧散していき、やがて完全に晴れたその場にいる筈の3人の姿が忽然と消え失せ、同時に周りで燃えていた流刃若火の炎も消え去っていた。
「なっ!」
[龍。聞こえているか]
突然の事態に、俺は動揺を露わにしてパニックとなるが、頭に響いた相棒の声によってなんとか正気に引き戻された。
「エルフィ。今何処にいるんだ?総隊長達は無事か?」
[総隊長達は無事だ。だが今我が何処にいるのかは把握できない。どうやら異空間に強制転移されたようだ。試しに心話をやってみたが、どうやら問題ないらしい]
「そうみたいだな」
話している内に冷静さを取り戻した俺は、相棒の言葉に頷き同意する。
因みにエルフィが言っていた心話というのはその名の通り、心で会話する事が出来るエルフィの能力の一つだ。
とはいっても、超能力のテレパシーの様に素質のある者しか聞き取れなかったりする訳ではなく、エルフィが話しをしたい相手にリンクを繋げておけば何時でも話せるという仕組み的には電話にかなり近いものだ。
メリットはリンクを繋げた相手にのみ話せるので盗聴の危険性が無い事と、伝令神機を使わなくても現世とソウルソサエティ間で会話が可能だという事。
デメリットはリンクを繋げるというワンリアクションを必ず行わなければならない事だ。
だが後から聞いたが、エルフィは念の為に俺が恋次さんと引き分けて寝ていた時に、護廷十三隊の全ての隊長・副隊長格と一護さんに予めその事を話してリンクを繋げておいたらしい。
用意周到な相棒に感謝である。
閑話休題
[じゃあエルフィ、総隊長達が無事な事を全員に伝えておいて欲しい。いきなり総隊長の霊圧が消えて士気に影響が出たら流石に拙い]
完全に冷静さを取り戻した俺は、声に出さずに心話に切り替えて、護廷十三隊に広がるであろう動揺を止めるべく相棒に頼み込む。
[了解した。龍はどうする]
[あぁ。俺は・・・]
俺は途中で心話を区切り、振り返りざまにエクセリオンブレードを横薙に一閃した。
ギィンッ!
金属音と共に手に伝わる堅い感触に若干顔をしかめながらも、俺はその先にある存在を睨み付ける。
[こいつの相手をする!!]
俺の睨む先。其処には――「危ねぇなぁ。おい」
たった今総隊長に両断された筈のバウスが、腕から生やした鎌の様な刃でエクセリオンブレードの刀身を受け止めて立っていた。
「やっぱりさっき倒したのは、お前の分身体(ファントム)か!」
「あぁそうだ。倒された時に一定範囲内にいる奴を異空間に強制転送する特別製のな」
確認と心話で聞いている相棒への説明の2つの意味を込めて叫ぶ俺に、バウスは邪悪な笑みを浮かべて肯定し「お前も含めた全員をとばすつもりだったんだかな」と付け足した。
「総隊長達を甘くみるなよ。お前の作った異空間なんて直ぐに壊して戻ってくる!」
「だろうな」
エクセリオンブレードを押し込む力を込めながら吠えた俺の言葉を、バウスは意外な程にあっさりと認めて、力比べを嫌ったのか大きく後ろに跳んで間合いを広げた。
「跳ばされた先がだだの異空間ならな」
「・・・どういう事だ」
バウスの思わせぶりな言動に、俺は眉を顰めながらもエクセリオンブレードの切っ先を向けた正眼の構えを取る。
「なぁに大した事じゃない。二百体のグラウモンスターと、百体の囚人ヴァンデルがいるだけだ」
「!!」
俺は自分の顔が強ばるのが分かった。
グラウモンスターとはバウスの持つ魔銃器グーランガで生み出された体の色が黒いのが特徴のモンスターで、通常のモンスターよりも遙かに多くの冥力が内包されている。
その為同種のモンスターよりも遙かに手強く、生命力も再生力も高い。
そして囚人ヴァンデルとは、恐らく魔牢獄に収容されている多くの改造ヴァンデル達の事だろう。
そんなのが全部で三百体もいる場所に放り込まれたら、いくら総隊長達でも脱出にかなり時間が掛かる事は明白だ。
「そう簡単には戻ってこられねぇぜ」
「・・・っ!」
ギリッと歯を噛み締めて睨む俺に、バウスは「それに・・・」と続けて懐から金属のリングに通してひとまとめにされた四つの鍵、四つの鍵穴があけられている錠前を取り出し・・・・・・ってまさか!?
バウスの取り出した物に見覚えがあった俺は、これから起こるであろう未来が予想できてしまい、思わず顔が曇る。
そして――
カチャッ・・・カチン
呆気ない程に鍵は鍵穴に差し込まれ、回された次の瞬間――
バウスの周りに不気味な紫色をした四つの光が輝き、その光が収まると其処には――。
四体のヴァンデルが重要人物を護るSPのようにバウスの周りに立っていた。
炎がそのまま人の形をかたどったような姿形に、人間の顔に当たる部分に怒りを現す仮面を付けたヴァンデル。
バウスを超える程の一際大きな体躯に重厚な西洋の鎧のような体をしたヴァンデル。
バウスを含めた五体のヴァンデルの中で最も恰幅があり、それに比例して自らの強力を示す様な太い両腕を備えた薄暗い緑色の体色が特徴的なヴァンデル。
死者を思わせる青い体色に、口に当たる部分に平行に入る魚の鰓の様な切れ込みと、鼻に当たる部位に首まで伸びる鯰を思わせる一対の髭が印象的なヴァンデル。
『憎悪の炎』ジェラ
『重鉄騎』アートロン
『死の強奪者』ハング
『千の腕』ストローガ
間違い無い。冒険王ビィトエクセリオンでバウスの元で主人公達と戦い苦しめた魔牢獄の四天王と呼ばれた強豪ヴァンデル達だ。
「お前等。東西南北四つの門に行って、天力が発生している媒体を破壊しろ」
「「「「はい、獄長」」」」
バウスの下された命令に応え、四体のヴァンデルは再び紫色の光に包まれた後にこの場から姿を消した。
だが俺は四体のヴァンデルが消えても動揺を表に出さずに、ただバウスを睨んでエクセリオンブレードを構えていた。
「意外だな。お前等の策の要を壊しに行ったってのに、邪魔をしようともせず、焦りもしないとはな」
「四つの門には俺よりもずっと腕の立つ隊長達がいてくれている。何の心配も無い」
きっぱりと言い切る俺にバウスは忌々しそうにチッと小さく舌打ちをしたが、何かを思いついたのか表情を一変させてニヤリと邪悪な笑みを浮かべて「一つ良い事を教えてやろう」と人差し指を立てた。
「分身体の俺が指を鳴らしていただろう?あれは瀞霊廷と現世の各所に配置したモンスター達に攻撃を開始するように呼び掛ける合図だったんだよ。
つまり今頃は現世にも大量のモンスターが攻め込んでいるって訳だ。
そして瀞霊廷内にも門の所だけじゃなく、あちこちでモンスターの破壊活動が始まったんだよ」
嘲る様に語るバウス。だが俺は冷静にただバウスに向けてエクセリオンブレードを構え、バウスの言葉を――
「それがどうした」
一蹴した。
「何?」
「現世には一護さん達がいてくれるし、瀞霊廷の各所には遊撃隊として幾つもの隊がいてくれている。さっきも言ったが、心配などしていない」
ブレードの柄を強く握りしめて、俺は意外そうに此方を見るバウスに続ける。
「俺はあの人達を信じている。だから心配なんてしない。それは信じたあの人達に対する侮辱となるからだ。だから・・・」
そう思っていたからこそ、俺はなんとか冷静さを保つ事が出来た。だからこそ・・・
「俺は俺のやるべき事を全力でやる!!」
俺は白眼を写輪眼に切り換えて決意を込めて吠える。
だがバウスはそんな俺を見下す様に顔を上げてフッと鼻で笑った。
「お前のやるべき事ってのはこの俺を倒す事か?十日前を忘れた訳じゃ“ダンッ!”・・・っ!」
俺は此方を見下して語っているバウスの台詞を遮る形で地を蹴った。
エクセリオンブレードの切っ先を右下に下げて下段に構え、瞬歩で一気に突っ込む。
ブレードの重力制御能力によって速力を増した瞬歩で一気に間合いに入り、右下に下げていたブレードを思い切り左に切り上げた。
だが不意を突いた俺の一閃を、バウスは上半身を仰け反らせただけで苦も無く避けてみせた。
そのバウスの顔には『だから言っただろ』とでも言っているかの様な見下した笑みが浮かんでいる。が――
「ぐっ!」
バウスのその余裕の表情は刹那の後に歪み、笑みを浮かべていた口からは呻きが漏れ、動きが止まる。
俺はその隙を逃さずに連撃を叩き込もうとするが、バウスが動き始める方が僅かに早く、振るったエクセリオンブレードの刀身は大きく跳び退いたバウスのマントを浅く切り裂いただけだった。
「・・・貴様」
跳び退いて間合いをとったバウスは先程までの表情とは明らかに違う
憎悪の目で俺を捉えており、右の脇腹には浅いが確かについた切り傷が血を滴らせていた。
俺はその傷と、ブレードの柄を握る手に残っている確かな感触に口の端を上げた。
そう。バウスの脇腹についている傷は紛れもなく今俺がつけたものだ。
バウスが俺の一撃を避けようと仰け反ったその時。俺は時雨蒼燕流攻式五の型・五月雨を使い、バウスの脇腹に一太刀入れたのだ。
ただ斬りつけたのが片手一本だけという事と、結界で弱められているとはいえ、バウスの防御膜に威力を殺された事もあり、少し血が出る程度の浅い一撃に留まってしまったが。
(片手一本の斬撃でも斬れる事が分かった事を吉と思うか・・・それともバウスに警戒心を抱かせてしまった事が凶と思うか)
僅かに思う不安を表に出さず、俺は敢えて自信に満ちた笑みを浮かべた。
「舐めるなよバウス。俺だってこの十日間をただ漫然と過ごしていた訳じゃないんだ」
「・・・貴様ぁっ」
憎々しげに此方を見るバウスに、俺は自らを鼓舞する意味も込めて吠える。
「もう一度言わせて貰う・・・バウス!俺がお前を倒す!!」
執務室に誓いにも似た俺の声が響いた。