龍の軌跡 第一章 BLEACH編   作:ミステリア

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第三話

 

 

――龍一郎サイド――

 

「では、始めましょうか」

 

文面だけを見れば気楽な事を告げる浦原さん。

 

しかしこの場にある空気は、そんな気楽という言葉とはかけ離れたピリピリとしたものであった。

 

「お願いします。浦原さん」

 

俺は一礼して腰に差した斬魄刀を抜いて峰を返し、正眼(剣道での中段の構え)に構える。

 

浦原商店の勉強部屋に入り、鍛錬を始めてから今日で十日目。鍛錬のおさらいを兼ねてのテストをする日だ。

 

この十日間エルフィの言っていた日程(スケジュール)通りに鍛錬をしていたのだが、正直苦労の連続だった。

 

まず初日。チャクラを生成する時点で早々に躓(つまず)いた。

 

精神エネルギーと身体エネルギーの二つを練り込む。

 

口にするのは簡単だが、実際にやってみると相当難しかった。

 

結局自分一人ではできず、エルフィからアドバイスを受けて夜遅くになんとか取っ掛かりを掴み、どうにかその日のうちにチャクラを生み出すことに成功した。

 

そして二日目。写輪眼と影分身の術の習得。

 

まず写輪眼は勾玉模様が2つの初期バージョンのものだが、すぐに発動することが出来た。

 

しかしその後エルフィの…

 

「最初に言っただろう。写輪眼や白眼はチャクラさえあれば、念じるだけで発動できると。むしろ開眼するのに時間が掛かりすぎた位だ」

 

という毒成分たっぷりのお言葉に軽くorzとなった。

 

そして影分身の術だが、これの習得もチャクラ生成の時と同様にかなりぐずついた。

 

主人公のうずまきナルトもこの術が使えるようになるのに相当苦労していたようだが、それも納得のいく程に大変だった。

 

フラフラになりながらも練習し、やっと出来るようになった時には既に日付が変わっていた。

 

そして三日目から早速習得した影分身の術で『俺』を2体出して写輪眼を使用し、鉄裁さんには鬼道を。夜一さんには白打と歩法を教わり、本体は浦原さんと木刀で打ち合っていた。

 

ところがここで1つ予想外の事が起こった。夜一さんが『俺』に教える内容を白打と歩法の二つから、歩法一本に絞って教える方向に変えたのだ。

 

なんでも夜一さんが『俺』に白打を教える前になにか武術を教わっていたのかを聞いたので、我流で護身術をやっている事を話して動きを見て貰ったら、「これからの鍛錬は歩法のみでいく」と宣言したらしい。

 

夜一さん曰く

 

「どうやら既にその護身術で、基礎の土台部分が出来上がっているようじゃからな。中途半端に白打を仕込むと、今までお主が積み上げてきた土台を崩してしまう可能性が高いからな」

 

らしい。

 

とにかくそれからの鍛錬は歩法。特に瞬歩を重点的に教わった。

 

そんなこんなで昨日。つまり九日目の鍛錬が終了した後に、エルフィから最終日に実施されるテストの内容が告げられた。

 

テスト内容は黒崎一護も行ったレッスン3とほぼ同じもの。己の力の全てを使って浦原さんと戦い、帽子を落としたら合格。

 

ただ1つ違うのは、お互い峰打ちで攻撃するという事だ。ちなみにこれはエルフィが出した提案である。

 

 

 

そして今、俺は浦原さんと向き合っている。

 

横で見ているメンバーは夜一さんと鉄裁さんとエルフィ。そしてジン太とジャンケンをして勝った雨(うるる)だ。

 

敗北したジン太は浦原商店の店番をしている(最初はすごくむくれていたのだが、鉄裁さんの迫力ある説得を長時間受けて渋々店番に行った)。

 

浦原さんは既に仕込み杖を抜いて刀身を露(あらわ)にしている。

 

俺は正眼に構えたままで呼吸を整え、今自分が出来ることを頭の中で整理していた。

 

今朝エルフィが『サーチ』という対象者の体調や状態を調べることのできる魔法で調べて貰ったところ、十日前よりも卍解と虚化の保持時間が延びたらしい。

 

卍解は約15秒に。虚化は約2秒半に。

 

保持時間が倍以上に長くなるのは有り難いのだが、浦原さんが相手となるとまだまだ短いというのが正直な所だ。使うとするならば最後の切り札としてだろう。

 

鬼道は詠唱をすれば六十番台まで使え、詠唱破棄だと三十番台まで使う事ができる。もっとも、詠唱破棄での鬼道は威力が相当落ちてしまうのが難点ではある。

 

瞬歩は夜一さん曰く「護廷十三隊の一般隊士クラスのレベル」らしい。

 

魔法系と獣魔術は今回の鍛錬では一切使っていないので、使える回数は変わっていない。

 

忍術も幻術も同様。

 

魔眼の類は一応は使用可能…と。こんなところか。となると……

 

俺は持ち札の確認を終えて考えを纏め、一気に行動を開始した。

 

写輪眼を発動して瞬歩を使用。浦原さんの懐に入る。

 

「!」

 

いきなり突撃してくるとは思わなかったのか、浦原さんの目に動揺の色が浮かぶ。

 

俺は一度懐に入って再び瞬歩を使い、浦原さんの右側に瞬時に移動。

 

峰を返した斬魄刀を振りかぶって袈裟斬りに斬りつけた。

 

ギィン!

 

響いたのは鋼が肉を打つ音でも、刃が空を斬る音でもなく、鋼と鋼がぶつかり合う音。

 

俺の振り下ろした刃は浦原さんの刀によって防がれていた。

 

(ちっ)

 

内心舌打ちをして、俺は大きく後ろに跳んで距離をおく。

 

「驚きましたね。まさかこの短期間で一般隊士並の瞬歩を身に付けるとは」

 

「儂が教えたんじゃ!当然じゃろう!」

 

自慢げな夜一さんの横入りが入る。

 

浦原さんは驚いたと言っていたが、俺は内心歯噛みしていた。何故ならば今の瞬歩のスピードが今の俺の最大速度だったからだ。

 

最大速度で仕掛けた奇襲をあっさりと防がれた以上、瞬歩で浦原さんの隙を突くのは難しい。

 

(ならば…)

 

「破道の三十一!赤火砲!」

 

詠唱を破棄して、赤い火球を俺と浦原さんの間。地面に打ち込む。

 

ドォン!

 

火球が炸裂し、土煙が舞い上がる。そして俺は一直線に走り、舞い上がった土煙の中に突っ込んだ。

 

(これで俺の姿は浦原さんに見えない筈だ。次は…)

 

「破道の五十八・闐嵐(てんらん)」

 

浦原さんが竜巻を放ち、俺ごと土煙を吹き飛ばそうとするが、それは俺の予想の範囲内!

 

「「はぁっ!」」

 

土煙が吹き飛ぶと同時に接近していた2人の俺が左右同時に浦原さんに斬りかかる。

 

土煙の中に入ったあの時、俺は影分身の術を使って2体の分身を出して、浦原さんが土煙を吹き飛ばそうと鬼道を放った瞬間に攻撃を仕掛けたのだ。

 

そして残った俺は浦原さんの放った竜巻を高く跳躍して避け、霊子で足場を形成して空中に立ち詠唱を開始する。

 

「散在する獣の骨!尖塔・紅晶・鋼鉄の車輪!」

 

唱えているのは雷吼砲(らいこうほう)。俺の使える鬼道の中で最大の破壊力を持つ一撃だ。

 

浦原さんが俺の詠唱に気付いて阻止しようとするが、2人の俺に邪魔されて近づけないでいる。

 

「動けば風!止まれば空!」

 

分身の一体が浦原さんの峰打ちを受け、ボフンと音を立てて消える。そして浦原さんはもう一人の俺を無視して、瞬歩を使って俺との距離を詰めてくる。

 

(間に合え!)

 

「槍打つ音色が虚城に満ちる!「残念」」」

 

詠唱が終った瞬間、俺は浦原さんの峰打ちを首筋に受けてしまった。浦原さんの瞬歩の速度が、俺の予想を遥かに上回っていた。

 

だが…

 

ボフン

 

「えっ?」

 

首筋に峰を受けた俺が音を立てて消え、予想外の事に浦原さんの動きが止まる。

 

そして俺はこの時を待っていた!

 

「吉波龍一郎の名において命ず!」

 

そう。雷吼砲の詠唱をしていたのは影分身。本体の俺は浦原さんに斬りかかっていた2人の片割れ!初めからこれを狙っていた!

 

俺は掌を浦原さんに向けて狙いを定め、一気に解き放つ。

 

「出でよ!!光牙(コアンヤア)!!」

 

俺の掌から放たれた三つ目の光の龍が、文字通り光速で浦原さんに襲い掛かる。

 

(貰った!!)

 

確信から笑みが浮かぶ。だが…

 

「起きろ『紅姫』」

 

バシュッ!!

 

辺りに響いたのは、光の龍が四散する音だった。

 

そして浦原さんの手には今までの仕込み杖ではなく、短めの直刀が握られていた。

 

「斬魄刀を…解放したか」

 

自信のあった一撃を簡単に防がれた事に俺は少なからずショックを受けたが、それ以上に目的を達成できたことによる喜びの方が大きかった。

 

「いや~驚きました吉波さん。虚を突いたりするのがお得意なんですね」

 

空中に立ったまま、どこからか取り出した扇子で自らをパタパタと扇ぐ浦原さん。

 

「勘違いしないでください浦原さん。今俺がそういう戦い方をしたのは得意不得意という事じゃなくて、ちゃんとした理由というか目的があったからです」

 

「目的…ですか?『あった』ということは、それを果たしたということっスか?」

 

「はい。俺の目的は浦原さん。あなたに斬魄刀を解放させることです」

 

「どういう事ですか?」

 

俺の言葉に浦原さんは眉をひそめた。

 

「今の俺とあなたとの間にある力量差が、とても大きなことくらい俺にだって分かる!

それこそ正面からガチンコでやりあったら、斬魄刀を解放しなくても負けると予想出来るほどに!!」

 

俺の声がだんだんと大きくなってくるが、浦原さんは黙って聞いてくれている。

 

「でも俺は、今出来る全力を込めてあなたと正面からのガチンコ勝負がしたい!だけど斬魄刀の解放もしていないままのあなたに負けるの俺の納得がいかない!」

 

我ながら器の小さい事を言っているとは思うが、ささやかな俺の意地である。

 

「だからまず私の斬魄刀を解放させる事に重点をおいて戦った…と?」

 

浦原さんの確認に無言で頷く俺。

 

「……そうですか」

 

ゴウッ!!

 

呟いた刹那。浦原さんから圧倒的なプレッシャーが放たれた。

 

まるで心臓を直接鷲摑みにされたかのような圧迫感を感じ、俺の鼓動が一気に速くなり、呼吸が乱れる。

 

体の奥から震えがはしり、歯がカチカチと音を立てる。

 

俺はこのプレッシャーの正体を知っていた。

 

殺気

 

文字通り相手を殺す意志が攻撃的な気配となって放出されるもの。

 

今まで抑えていたものをある程度解放した。浦原さんにとってはその位のものだろう。

 

だが俺にとっては違う。

 

怖い。逃げたい。息が苦しい。幾つもの弱音が頭の中で喚いている。

 

だが俺はそれらを全て強制的に無視して目の前の人を見る。そしてこの殺気に込められた浦原さんの『覚悟』を感じ取る

 

ささやかな俺の意地に浦原さんが応えてくれた。

 

そのことが殺気に震える俺に笑みを浮かばせる。

 

―あなたがそれを望むのならば、私はそれに応えましょう―

 

浦原さんの目がそう告げている。

 

ならばと俺も応える浦原さんに応えるべく再び正眼に構えて吠える。

 

「舞い上がれ!!『飛燕(ひえん)』!!」

 

俺が創造したオリジナルの斬魄刀の1つを解放する。手に持った日本刀が薄刃のサーベルに変わる。

 

相対する浦原さんは彫像のようにその場で足を止め、微動だにせずにいる。

 

俺が斬魄刀を解放して警戒しているのもあるだろうが、対峙している俺には分かる。

 

待っているのだ。俺に隙ができう一瞬を。虎視眈々と狙っているのだ。

 

(これは…迂闊に動けないな)

 

頬に汗が伝う感触を感じつつ、俺は飛燕を正眼に構えたままでその場から動かずにいた。

 

 

――エルフィサイド――

 

「お二人共動きませんな」

 

「あぁ。どちらが先に動くにしろ、この膠着は長く続くだろう」

 

右隣に立つ握菱鉄裁の呟きに我が同意する。

 

「おそらくじゃが、先に動くのは喜助じゃろう」

 

左隣にいる四楓院夜一が自信ありといった感じで言い切る。

 

「なぜそう思う?」

 

「簡単なことじゃ。今はお互いが動かない状態じゃが、二人の動かない理由がそれぞれ違うからな」

 

「理由…ですか?」

 

夜一の横にいる紬屋雨が首を傾げる。

 

「喜助が動かないのは、龍一郎が斬魄刀を解放をしたから警戒のレベルを1つ上げたからじゃろう。能力が分からないものに下手に突っ込んで行って、後の先を取られたら洒落にならぬからな。

龍一郎が動かないのは、ただ単にレベルを上げた喜助の威圧に押されているからじゃ。どちらが先に動くかは明白じゃろう」

 

「成る程な。警戒している者とびびって動けないでいる者の違いという事か」

 

「簡単に言えばそうなるのぅ」

 

さくっと切る我に夜一は若干苦笑して認めた後に「それにしても」と言ってくっくっと喉の奥で笑った。

 

「どうかしたのか?」

 

「いやな。まさか龍一郎の奴が喜助に正面からのぶつかり合いを臨むとは予想外でな。あ奴もまだまだ青いと思ってな」

 

「龍はまだ高校生だ。当然といえば当然だろう」

 

「御二人共。何気に酷いことを言っていませんかな?」

 

我と夜一の話に、鉄裁がやんわりと窘めてくる。

 

いや。少なくとも我は貶しているつもりはないのだが。

 

「ん?別に儂は龍一郎を馬鹿にしている訳ではないぞ」

 

夜一はにっと笑みを浮かべて返し、我は無言で通す。

 

すると納得したのか、鉄裁は視線を龍と浦原喜助に戻した。

 

「そういえば今龍一郎が解放した斬魄刀は、龍一郎が自ら創造したものなのか?」

 

今思い出したといった感じで夜一が問う。

 

「あぁそうらしい。それとこの前龍から聞いたのだが、この世界で龍が使う斬魄刀はあの飛燕のみだそうだ」

 

「他のは使わないんですか?」

 

雨の頭上に?マークが浮かぶ。

 

「草冠宗次郎(くさかそうじろう)の一件があるからだ」

 

「…そうか」

 

「…成る程」

 

我の一言で全てを悟ったらしく、夜一と鉄裁は顔を曇らせて頷いた。

 

草冠宗次郎。

 

劇場版二作目で黒崎一護達の敵として現れた存在であり、現十番隊隊長・日番也冬獅郎の親友であった男。

 

彼は日番也冬獅郎と同じ斬魄刀である氷輪丸を手にしていた。

 

だが同じ斬魄刀が複数本存在する事は、ソウルソサエティにとって排除せねばならぬ事態。それは世界の存続と均衡を保つ為の絶対の掟。

 

だから草冠宗次郎はソウルソサエティに粛清されてしまった。そして後に秘宝・王印によって蘇り、事件を起こすことになる。

 

その斬魄刀が複数本存在したことで起こった悲しい出来事を、龍は原作を見て知っていた。

 

だから己が使う斬魄刀を一本に限定することにしたのだ。

 

なにせ龍の使える斬魄刀はオリジナルで創造した七本だけでなく、原作で出ている全ての斬魄刀を解放し扱うことができる。

 

もしもそのことがソウルソサエティに知られたら、厄介な事になるのは確実だらかだ。

 

それを察した夜一と鉄裁は草冠の一件を思い出したのか、どこか悲しげな目で龍と浦原喜助を…否龍を見ていた。

 

「汝等が気にせずとも良い。龍も馬鹿ではない」

 

「まぁそうじゃの…………おっ」

 

何かに気付いたのか、二人を見る夜一の顔色が変わる。

 

「どうかしたのか?」

 

「いや。そろそろ膠着が解けるようだと思っただけじゃ」

 

どういうことだ?

 

そう口に出そうとした瞬間だった。

 

ガギィン!!

 

二つの刃がぶつかり合う音が勉強部屋に響いた。

 

 

 

 

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