龍の軌跡 第一章 BLEACH編   作:ミステリア

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第六話

 

 

――龍一郎サイド――

 

「こんっ…のおっ!」

 

俺は飛燕を振るい、傍にいた中甲虫の一体を切り伏せる。

 

夜一さんと共にこの場に降り立ち、勢い良く突っ込んでいったまでは良かったのだが、予想していたよりもかなり苦戦していた。

 

というのも。実際に中甲虫を相手にして、思っていたよりも厄介な事が2つあったからだ。

 

1つ目が数の差。

 

いくらなんでもこっちは俺一人(エルフィはステルスモードで待機して貰っている)。対する中甲虫達は30~40体。どう考えてもこっちのスタミナが持たない。

 

そしてもう1つが中甲虫の外甲殻の硬さが予想以上だったことだ。

 

俺の鎌鼬をまともに受けても僅かな罅程度で済んでしまう。

 

こいつ等を完全に倒すには甲殻の間の間接部分を狙って斬るか、威力重視の技をあてるか。もしくは火の鬼道で焼き尽くすしか方法は無い。

 

悔しいが、スピード重視の飛燕と強靭な外甲殻を持つ中甲虫との相性は最悪のようだ。

 

ならば才牙を取り出そうとも思ったが、四方八方を囲まれて相手の攻撃を捌くのに手一杯のこの状況で、オケアヌスの輪からこいつらに有効な才牙を出すのは不可能だった。

 

(どうする……どうする……)

 

迷いながらも飛燕を振るい続け、中甲虫の一体を押し返す。

 

(チャンス!)

 

俺は押し返して体勢の崩した中甲虫の死角に瞬歩で入り込み、その場で左右の足を交差させて体の捻りを作り出し、その捻りを一気に爆発させて辺り一帯に円を描くような薙ぎ払う斬撃を放った。

 

飛燕の2つの技の1つ。鎌威綱(かまいづな)だ。

 

接近しなければ使えないという欠点もあるが、体の捻りによって生まれる爆発的な力と飛燕の速度を加えた薙ぎ払いは、自らを中心に吹き荒れる台風のような一撃となる。飛燕の最大攻撃技だ。

 

その一撃は中甲虫の胴を両断し、周りにいた他の2体も切断する。だが……

 

(っつ!)

 

既に2回程鎌威綱を使っていた為、俺の足の筋肉が悲鳴を上げ始めていた。

 

鎌威綱は攻撃力は高いが、捻りを一気に爆発させる部位。つまり足に負担がかかり、あまり多用することが出来ない技なのだ。

 

(ちょっと鎌威綱を使いすぎたか……でも!)

 

今更ながらに反省するが、ここで引くわけにはいかない!

 

自らに気を入れ直して飛燕を構え――

 

ザンッ!

 

斬撃音と共に俺の横にいた中甲虫が両断され、

 

ドドドッ!!

 

周りにいた奴らが光り輝く矢に貫かれ、次々と倒れていく。

 

周りを見ると黒崎一護の斬月が、阿散井恋次の蛇尾丸が中甲虫の外甲殻を紙のように切り裂く。

 

茶渡泰虎の右腕から放たれる衝撃波が、数体の中甲虫を轟音と共に吹き飛ばしていく。

 

朽木ルキアの放つ鬼道が、石田雨竜の矢が前線に立つ3人を援護する。

 

どうやら加勢に来てくれたらしい。正直助かった。

 

「大丈夫!」

 

心配そうに俺に駆け寄って来てくれた井上織姫に「大丈夫です」と返すが、実際はあまり大丈夫という状態ではない。連続で鎌威綱を使った反動で足の筋肉が痙攣していた。

 

当然そんな状態を隠し通せる訳も無く即座に気付かれ、「ちょっとじっとしていて」と一言言って井上織姫が双天帰盾を発動して俺を回復してくれた。

 

「有り難う御座います。あなたは?」

 

素直に感謝の礼を言い、一応知ってはいるのだが名前を聞く。

 

いきなり名前を言い当てたりしたら誰でも警戒するだろうから、それを防ぐ為だ。

 

「私は井上織姫。あなたは?」

 

「吉波龍一郎です」

 

「そうなんだ。よろしく吉波君」

 

挨拶と一緒に浮かべた屈託の無い笑顔に少し罪悪感がわく。

 

「はい。こちらこそ…」

 

挨拶を返そうとした俺の声が詰まる。

 

俺の正面、つまり井上さんの背後に中甲虫が迫ってきていたからだ。

 

「井上さん!伏せて!!」

 

「え?…う、うん」

 

切羽詰った俺の声に戸惑いながらも、井上さんがその場に伏せる。

 

俺は前に踏み出して相手の死角に入り込み、鎌威綱を放った。

 

ザンッ!

 

斬撃音と共に中甲虫の胴体が断ち切られ、上半身と下半身に分けられる。

 

(あれ?足が痛くない)

 

無我夢中で鎌威綱を使ったが、先程まで感じていた足の痛みを全く感じなかった。痙攣も治まっているし、全快の状態といってもいい。

 

(流石は事象の拒絶だな)

 

改めて原作キャラの力に感心する俺に、伏せていた井上さんが「あの…有り難う」とお礼を言ってきたので、俺は一寸(ちょっと)笑って「どう致しまして」と返した。

 

「中々やるじゃねぇか」

 

近くに降り立った原作の主人公。黒崎一護が声をかける。

 

主人公に褒められたことに、嬉しさのあまりにやけそうになるのを必死に堪えて井上さんに聞いたのと同じように「あなたは?」と名を聞いた。

 

「俺は死神代行。黒崎一護だ」

 

「俺は吉波龍一郎。人間です」

 

名乗り返すと一護さんは「人間?死神じゃないのか?」と首を傾げた。

 

「はい。俺は人間ですよ」

 

「じゃあなんで斬魄刀を持っているんだ?」

 

一護さんの視線が俺の飛燕に向けられる。やっぱり気付かれたか。

 

「それは……こいつ等を倒した後で話します」

 

取り敢えず話を先延ばしにして飛燕を構える。

 

「そうだな。今はこいつ等を何とかしないとな」

 

一応納得してくれたらしく、一護さんも斬月を構えた。

 

「「うぉぉぉっ(はぁぁぁっ)!!」」

 

俺と一護さんの二人は獣のように咆哮を上げて中甲虫達に突っ込んで行った。

 

 

               ☆

 

「はぁっ!」

 

一護さんの気合と共に振り下ろされた斬月が最後の中甲虫を縦に両断した。

 

「ふぅ……これで全部みたいだな」

 

断ち切られた中甲虫がサァッと霞のように消えるのを後目に、辺りを見て確認して斬月を肩に乗せる。

 

「あぁ。これで残っているのは夜一殿が戦っている奴だけだ」

 

俺もエルフィに頼んで広範囲を探ってもらったが、他にモンスターはいないそうだ。……あれ?

 

「あの~すいません。そういえば夜一さんはどうしたんですか?」

 

確かに指示を出している格上の存在を夜一さんに任せはしたが、ちょっと遅すぎじゃないか?

 

「夜一さんは向こうでムガインとかいう泥の塊みたいな奴と戦っているぜ」

 

そう言って一護さんが親指でくいっと指差す。

 

成る程。だから遅いのか。……………ってムガイン!?

 

「一護さん!!今なんて言いました!!」

 

顔色を変えて肩を掴む俺に若干怯みつつ、一護さんが「ど、どうしたんだよ」と戸惑いを露わにして聞く。

 

「今、ムガインって言いましたよね!!本当ですか!?」

 

「ほ、本当も何も…自分からムガインって名乗ったんだよ」

 

「落ち着け!何故そこまで問い詰めるのだ!」

 

朽木ルキアが一護さんの肩を掴む俺の手を強引に引き離して割って入る。その目には僅かに疑いの色があった。

 

「もしや貴様、あのムガインという奴の事を何か知っているのか」

 

「「「「「!?」」」」」

 

朽木ルキアを除く全員の注目が俺に集まる。そしてその中で一番反応した阿散井恋次が俺の胸倉を掴んで揺さぶってきた。

 

「てめぇ!何か知っているんなら、全部話しやがれ!!」

 

「恋次、少し落ち着け」

 

凄い剣幕で詰め寄ってくるのを一護さんが諌めるが、彼の勢いは止まらない。

 

「黙ってろ一護!今の所こいつが唯一の情報源なんだ!邪魔すん「それが人に物を尋ねる態度か戯け!」……う゛ぉっ!」

 

台詞の途中で朽木ルキアの注意&蹴りが入る。

 

蹴りが入ったことで一瞬体勢が崩れそうになるのをなんとか持ち直し、キッと朽木ルキアを睨み付けた。

 

「ルキア!いきなり蹴り入れるとはどういうつもりだ!こらぁ!」

 

「少し落ち着け。貴様の悪人面をドアップにして問い詰めたら、話してくれるものも話さなくなる」

 

「んだとぉ!」

 

「すまぬな。奴が迷惑をかけた」

 

青筋浮かべて怒鳴る彼を完全に無視して俺に謝ってくる。

 

(いや…そもそもこうなった火種はあなたが投げ込んだんじゃなかったか?)

 

喉まで出掛かった突っ込みを俺は敢えて飲み込んだ。

 

言ったら更にややこしいことになるのが目に見えて分かったからだ。

 

「幾つか聞きたいことがあるのだが、いいだろうか?」

 

「構いませんけど、先に俺から1つ聞いてもいいでしょうか?」

 

「む?なんだ?」

 

若干虚を突かれたような顔になったが、すぐに真顔に戻った。この辺の切り替えの早さは流石だと感心させられる。

 

「皆さんの名前を教えて貰えませんか?いくらなんでも名前も知らない人に話すのは気分的に嫌なんです」

 

無論俺はここにいる人達の名前を知っているが、一応ちゃんと名乗りあっておかないと後々面倒なことになる可能性が高い。

 

そう考えて咄嗟に思い付いて言ったのだが、理屈的に間違ってはいない筈だ。

 

「あ。一護さんと井上さんはさっき聞きましたから、別にいいですよ」

 

2人に断りを入れる俺を見て、朽木ルキアが「ふむ…確かに」と呟く。どうやら納得してくれたらしく、周りの人の顔を見る限り反対する人はいないようだ。

 

「貴様の言う事も一理ある。改めて名乗ろう。護廷十三隊十三番隊副隊長・朽木ルキアだ」

 

「同じく護廷十三隊六番隊副隊長・阿散井恋次だ」

 

「石田雨竜。滅却師(クインシー)だ」

 

「茶渡泰虎。人間だ」

 

各々が名乗り、皆の視線が俺に向けられる。

 

「俺は吉波龍一郎。人間です」

 

先程一護さんに言った事と全く同じ事を言った。

 

「人間だと?死神ではないのか?」

 

「いえ。俺は人間ですよ」

 

「ふざけんな!!」

 

朽木さんの問いに答えた俺に、恋次さんが怒鳴る。

 

「てめぇの持ってんのは明らかに斬魄刀だろうが!それを使いこなしているのに死神じゃねぇなんて理屈が通る訳ねぇだろうが!!」

 

柄の悪い口調なのに理路整然としていると、なんか変に感じるのは気のせいだろうか?

 

そんなどうでもいい事を考えている間に、「私も同感だ」と朽木さんも恋次さんに賛同していた。周りを見ると皆も同じ意見らしく、どこか疑わしげな視線で俺を見ている。

 

「なぁ話してくれよ。お前さっき虫達を倒したら話すって言っていたじゃねぇか」

 

一護さんの言葉に、俺は十分ほど前に己の出した言葉に少し悔いた。

 

(…はぁ。言うって言っちゃった以上、しょうがないか)

 

「分かりました。全て話します」

 

信じてもらえないかもしれないけどな。と内心思ったが、俺は自分の全てを明かす事を決めた。

 

「実は――」

 

ドゴォォォン!!!

 

(………なんか前にもこんな事があった気がする)

 

せっかく決意して話そうとしたのに水を差され、少し苛つきを露わにした表情で爆音の方を見て―――俺はその光景に目を疑った。

 

俺の視線の先。そこには仁王立ちをしているムガイン。そしてそのムガインにまるで跪く様に膝を屈している夜一さんの姿があった。

 

 

 

 

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