サイカイのやりかた【38話完結】   作:あまやけ

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「28話のあらすじ」
キンジと理子が付き合ってることがわかった

#大変遅れました。今週から週一に戻れます。今週中に次の話を投稿予定です。
久々の戦闘シーンあります


29.脅威、密かに迫る

平日〜am8:00〜

 

「修兄、おはよ」

 

「…おー…」

 

髪がボサボサ状態のセーラがダボダボのジャージから指先だけを出し片目を擦りながら起きてきた。

 

「朝ごはんは?」

 

「お〜作っといたぞ〜テーブルー」

 

「ありがと」

 

「お〜」

 

「…食べないの?」

 

「…あ〜も〜少ししたらな」

 

「…そう」

 

いつもは一緒に座って食べる俺がソファーから動かないことに首をかしげるセーラ。俺は空を見ながらぼやっと返す。

 

「………んー…」

 

「いただきます」

 

「…………んー?」

 

俺はたまたま近くの机に置いてあった鉛筆をクルクルと回しながらひたすらに頭の中で考える。んー?

 

「…何かあった?」

 

「………あ?なんか言った?」

 

「……。」

 

箸の手を止めセーラがなにか言っていたようだが聞き逃してしまった。あー、しまった考えすぎちまうのは俺の悪い癖だな。

 

俺はセーラの向かいに座り俺の分の朝飯を食べ始める。

 

 

 

さて、そろそろ俺の悩みを言うとしよう。

 

 

理子に無視され始めて、あの2人が付き合っていると知ってから数日経ったある日。もやもやを抱えながら過ごす中で俺はあることに気づいたのだ。

 

 

最近、理子の元気がない。

 

それに気づいたのはすぐだった。教室で楽しそうに談笑する理子。その横をちらと通った時に見えた顔が、なんというか笑っているのに疲れを隠そうと努力しているような、頭の中は一杯一杯なのに無理に取り繕うとしているような、そんな風に感じてしまったのだ。

 

それから俺は教室で、廊下で、食堂ですれ違うたびに見てしまう。その度に疲れが増していっている感じがするのだ。

 

なんでそんな疲れた顔してんだ?キンジと付き合い始めたばっかりのはずだし今が一番楽しい時期じゃないのか?

 

それかやはり俺が何かしたことをまだ引きずっていたりするのか?

それで落ち込んでしまっているとしたら…なんとかしてやりたいがそれはキンジの役割のような気もするし…

 

いやそもそも人の彼女の心配なんてそもそもする必要がないのか…?いやでも見るからに元気ないのを無視するのは友人としてどーなのよ?いやでも…

 

俺の中でこのような疑問が何度も生まれては否定されていた。

 

「……んー…。…いやいや…?………ん〜??」

 

「…ねぇ、何かあったの?」

 

なんてことを考えていると、セーラが声をかけてきた。あー悩んでるの顔に出してたか。それを悟られるって少し恥ずかしい。

 

「いや、お前には関係ないことだから気にすんな」

 

「……そう」

 

人の彼女が元気ないから相談に乗ってくれなんて言えるわけがない。なんか横取りしようとしている感じがするし、はっきし言ってなさけないわ。

 

「………ん〜。………でもなあ…」

 

「………。」

 

疲れてるのはキンジと遊びすぎて、とか?…いやでも毎日俺ン家に来てた時は一回もあんな顔したことなかったし、朝から晩までゲーム大会した時だってずっと楽しそうに笑ってたし…。

 

…わからん、さっぱりだ。

 

 

「…ん〜

 

…っん?どしたセーラ、こっちまで来て??」

 

「馬鹿馬鹿しい、関係なくてもいいから悩んでることあるならさっさと言うっ」

 

「アタタタタ!?言う、言います!言いますからっ!!引っ張んなっ!!」

 

いつの間にか俺の横まで来ていたアホセーラが寝起きで力加減が制御出来ていない状態で俺の耳を思いっきり引っ張りやがった。…朝から耳を冷やすことになるなんて考えもしなかったぜ

 

ーーーーー

 

あの雨の日から2日経ったが学校生活に変化はない。俺は俺らしく授業に出て午後は強襲科の訓練をこなしていた。いつもと変わらない日々が過ぎていく。

 

…やはり、理子の様子がおかしい。

 

俺を無視し始めた時からおかしかったのだが日が経つにつれそのおかしさはよりわかるようになっていた。友人と楽しそうに話しながらもどっか別のことに意識を向けているような、笑顔の中に影があるような気がするのだ。本当に、どうしたんだ??

 

そんなことを考えているとチャイムが鳴った。これで4時間目も終わり昼休みだ。クラスメイトは思い思いに集まり食事を取り始める。

 

もちろん俺は1人だ。理子以外に仲良く話す友達なんてアリアとキンジくらいだが、飯食う仲ではないしな。

 

友達と仲よさげに話すクラスメイトの中で1人ポツンと座ってじっとしてしまう俺。…いつもなら全く気にしない風景なのだがやけに寂しく感じてしまう。やっぱ人ってのは一度楽しいことを覚えたら後がつまんなく感じるのか。あのバカ…いや、理子がどれだけ救いになってたかこの頃実感する。

 

チラと理子を見ると自分の弁当を取り「きゃっほーい!今日はアジのフライだぁ〜!」なんて周りと盛り上がっている。

 

やはり無理をしているようにも見えてしまうのは、流石に気のせいなのだろう。…が、俺には何もすることは出来ないわけで。

 

…散歩でもしに行くか。

 

そしてクラスにいるのが耐えられなくなった俺は廊下を出て行く先もなくなんとなく階段を降りる。こう居心地が悪く暇な時間はやけに長く感じてしまうものだ。

 

しかし、本当に行く場所ないしどうしたものか。

 

「…久々にあそこ行くかね」

 

 

 

ーーーーー

 

「おらおら、暇人が相手してもらいに来たぞ、もてなせ」

 

「知らないし、今は授業中のはずなのだ」

 

「んな硬いこと言うなっての、俺とお前の仲じゃん?」

 

「授業ボイコットするような悪い人と仲良くしちゃダメだって言われてるのだ」

 

「それはその、あれだ。単位足りてて授業に出る必要の無くなった平賀ちゃんが寂しがってないかなっていう俺なりの気配り…みたいな」

 

「…はぁ。お茶入れてあげるのだ」

 

なんだかんだ言いながら追い返す気はないらしい。ピョイっと椅子から飛び降りるとポットのある奥の部屋へと行ってくれた。

 

本当に寂しかったのだろうか。

 

などと思いつつも口に出すと怒られるので暇つぶしに部屋を見渡す。

 

久しぶりに訪れた平賀研究室は今日もよくわからない機械がゴロゴロ転がっている。この見るからにガラクタが大手企業も気にするほどの機械になるのか…?

無造作に置かれている機械、そのなかの一つを適当に取り、ホース上のなにかをぐいっと伸ばしてみる。

 

 

バキッ

 

 

 

「目を離して数秒で壊さないで欲しいのだ」

 

「…すまん」

 

 

ああまたかといった感じの目で俺を見つつ俺の眼の前にお茶の入ったコップをくれる平賀。俺は謝りつつ割れた機械をそっと戻しお茶を一口。…うまい。

 

「んじゃ、いつもの頼むわ。使えそうで使えない商品紹介〜ドンドンパフパフ〜」

 

「その言い方だと出したくないのだけど、まあいいのだ。前に岡崎君に渡した物を改善しておいたのだ!」

 

「おーそれは楽しみ

 

ダンボールをゴソゴソ…中から一発の銃弾を取り出した。

 

「まずはコレなのだ!『冷却弾』を改良した『冷却弾!』」

 

「まんまじゃねーか」

 

パチンとウインクしながら渡してきたのは以前理子の依頼をこなす為に訪れた際もらった冷却弾の改良版だった。

確か、150mlの水を瞬時に凍らせるだったか。

 

「水がないとダメだった部分を改良したのだ!コレなら打つだけで瞬時に当てたものを凍らせることが可能になったのだ!」

 

「へぇ、んでダメな部分は?」

 

「5秒で元に戻っちゃうのだ」

 

「使えねー」

 

平賀がなにおー!?と怒っていたが、実際使えないだろ。5秒凍らせてなにするってのよ。

 

「むむ、じゃあこれはいらないのだ?300円と値段は変わってないのに」

 

「買おう」

 

まあ実際時間は短くなったが水代込みで300円なら妥協点と言えよう。六発くらい買っとくか。

 

「次にコレなのだ!火炎弾を改良した『火炎弾!』」

 

「だからまんまじゃねーか」

 

次に取り出してきたのは倉庫で撃ったにも関わらず何も起きなかった不良品火炎弾…それの改良品か。見た目はやはりただの弾だが…?

 

「前回の岡崎君の話から使いやすいように改良してあげたのだぞ!これは前と違って『飛ぶ爆弾』にしたのだ!」

 

「飛ぶ爆弾?」

 

「なのだ!これはただ撃つだけだとただの弾なのだけど、手元のボタンを押せば…なんと爆発するのだ!!」

 

「…なるほど、手動爆弾を遠距離から設置できるってことか」

 

「なのだ!物分りがよくて嬉しいのだ」

 

これなら遠くから撃って敵の隙を見て奇襲を仕掛けることもできるってわけか。…いいじゃん。ある分(36発くらいか?)を購入

 

「…ただ、撃った時の反動がかなり大きいのだ。脱臼するほどじゃないとは思うけど、あまり乱用はオススメしないのだ。もちろんこれも実験中だからちゃんとなるかもまだ分かんないのだ」

 

「…いいじゃん、気に入った。あるだけくれ」

 

「まいどっ!」

 

こらは中々にいい商品じゃないか?マイナス点もそう大して問題にならなそうだし、色々と応用できそうだ。

 

「次は新商品なのだ!…といっても戦闘で使う武器とかじゃないのだ。どちらかというと作業用なのだ、その名も『なんでもくっつける速攻ボンド』なのだっ!」

 

「名前がわかりやくすくていいのだ」

 

語尾を真似つつ黄色い見慣れた容器に入ったボンドを手に取る。内容も名前通りらしくなんでもくっつけてくれるらしい…すげ。

 

「ただ使用するときは専用の手袋を使ってくれなのだ。これなのだ」

 

「あいあい」

 

それから女子の裸が見えるメガネやとべーる君 2号など失った物を全て補充した。

 

「とりあえずこんなもんなのだっ。…あ、これはいらないのだ?」

 

最後に平賀が取り出したのは『絶対温か毛布 コンパクト』だ。

 

これは…どこにやったっけ?…えーと

 

 

 

『理子今が一番楽しいかも』

 

『…そうかい、そりゃ、よかったな。でも、疲れてるんじゃないか?寝ててもいいんだぞ?…というか寝て欲しいんだけど』

 

『えー?しゅーちゃんもっと話ししよーよ』

 

 

 

あ、理子に渡したまんまだ。足を怪我したあいつをおぶって山下りたんだっけ…。俺の右足も限界の中、山降りたんだよなあ…。

 

…え

 

 

あ、あれ?なんで俺そんなことしたんだっけ?流石の俺でも足が折れてるのに運ぶとかありえねぇだろ…。痛いのはこっちの方なんだし、あいつも1人の武偵なんだからあれくらい歩けるはずだって考えるのが普通だし…。……ただ、

 

 

…理子になら別にしていい気もする…?あいつが痛がって歩いてる姿想像したらなんか嫌な気分になるし、あいつの苦しんでる顔見るくらいなら俺が……?

 

 

いや、言い方に違和感が、ある…?

 

 

 

 

理子()()()してもいい気がしている、のか??

 

 

なんで…?

 

 

「岡崎くん?」

 

「……あ、いや、悪い悪い。それはまだ持ってるから大丈夫だ。サンキュな」

 

手に持ったままぼーっとしてしまったようだ。俺は平賀に謝りつつ返す。

 

 

…一体、なんだってんだよ。

 

 

 

ーーーーー

〜昼休み 5分後〜

 

『…行っちゃった…』

 

『おい理子、人を呼んでおいてなにドア見てんだよ?』

 

『ああ、ごめんねキー君、えっとアリアは…?』

 

『今も繰り返し「ご主人様」連呼してるよ。…で?俺には何するつもりだ?』

 

『くふふ、それは行ってからのオッ楽しみ!救護科(アンビュラス)の第七保健室に来てね!』

 

ーーーーー

 

流石に次の講義もサボる気はなかったのだが、自分の変な感覚に馴染めずぼーっとしていると時間が勝手に進んでいた。でもま、次は身体検査だったはずだから大丈夫だろと次の授業も諦め、気分転換に外を散歩していた時だった。

 

 

危険は突然現れる。

 

 

グルルルルル…

 

 

 

唸り声が聞こえる。

 

 

 

「あ?なんだ、お前?」

 

俺の前にはなぜか一匹の白い犬が…。完全に俺を威嚇している。俺が何かしたのだろうか…?

 

「…あー、腹空かしてるならあっちの研究室にでもいって奢ってもらえーー」

 

俺は後ろ頭をかきながら先ほどまでいた研究室を指差す。まああいつならドッグフードくらい持ってるだろうと判断したのだ。決して俺が買うということを避けたかった訳ではない。

 

グルルルル…グォッ!

 

そんな言い訳を心の中でしていると、犬は大きく吠え、走り出してきた。

 

 

ーー俺の刺した指を食いちぎろうとせんばかりの勢いで

 

 

 

「っとと!?おいおいなんだよ反抗期?」

 

ギリギリ手を引くことで噛みつかれるのを回避しつつ一応の戦闘態勢を取る。…が正直混乱状態だ。どしたのこの犬?

 

だが、考える暇を敵は与えない。

 

最初の飛び込みが避けられたと瞬時に察知しすぐに方向転換、俺の周りをぐるりと一周し攻撃の来る方向を混乱させようとする。

 

相当頭の良い敵だ。考えている間に殺られると感じ、俺は直感で横に飛んだ。

 

瞬間、元々いた場所に凶暴な歯が襲いかかる。

 

「ちっ!俺動物になら好かれてると思ったんだけどな…っと!!」

 

犬の動きは最初と同じだ。また避けられたと察し方向転換…しようと前足に力を入れる隙に俺は逆に犬へ飛び込み蹴りを放つ。

 

正直動物虐待的なことはしたくなかったが仕方ない、すまんと内心謝りつつ思いっきりその体を宙に放る。

 

しかし犬はその勢いを利用しくるりと回転し上手く地面へ降りる。そしてその鋭い牙で威嚇しながら距離を取り始めた。

 

「…ったくこのクソ犬。強えじゃねーか」

 

いつの間にかテンションが上がっているのを感じつつ、防弾制服のブレザーを脱ぎ右手にグルグルと巻きつけグローブのような物を作った。俺も本格的に戦闘モードでやろう。

 

うん、どーしてこーなった?

 

犬は一度吠えると右左に動きながら俺に急接近、口を大きく開け俺の体を噛もうとする。…と見せかけて俺のすぐ側で体制を低くしタックルを繰り出してきた。

 

上に防御体制を取ってしまっていた俺はその動きについて行けず、そのまま地面へ押し倒される。

 

グルルルルルルルアアア!!

 

「この…っ!やめ…いっって!!」

 

俺の上に乗り優位にたった犬はそのまま俺の顔を噛みちぎろうと迫り来る。俺は犬の口に防弾制服を丸めた右手を押し込み左手で口を閉じさせないよう顎を開かせる。牙を抑える指から血が溢れ出すのももう仕方がない。ただ指に力を込めこれ以上の進行を阻止する。

 

しかし力は犬のほうが強い、次第に口が閉じ始めていく…。

 

限界がくるその一瞬早く、柔道の巴投げのように犬の腹に足を添え投げ飛ばした。

 

グルルルル…!

 

今度は体から地面に落ちたにも関わらずすぐに立ち唸る犬に流石に頭をかく。しゃーね、手に入れたばっかのアイテム祭りといくか…?

 

 

 

 

ピクッと犬の耳が動き、他所を向いた。

 

「…なんだ?」

 

俺もその方向を見るが、校舎があるだけでこれといって変化はない。

 

が、犬は1度大きく吠えるとその方向へ走り出す。俺なんてもう見向きもしない。

 

 

 

「…一体なんなんだよ」

 

呼吸を整えながら手の制服グローブを取り外す。右手は大丈夫だったが左手がズキリと痛んだ。まるで紙で指を切ったように、見た目の割にかなり痛い。武偵なら我慢しろとか言われそうではあるが…

 

「保健室、行くか」

 

痛いもんは痛い。俺は救護科へと行くことにしたのだった。

 

 

 

ただ

 

 

 

あの犬もその場所へ向かっているなんて、俺は思っても見なかったのだ。

 

ーーーーー

 

パリンッ!

 

「「きゃあっ!?」」「っ!?しゅーちゃん!?」

 

俺の体はガラスに体当たりし、周りから女子の悲鳴が聞こえつつも先ほど別れたばかりの犬ごと教室内に転がり込む。理由は犬なのか俺なのか…正直俺の将来終わったかもなんて飛ばされながら考えてしまう。

 

どうして俺がこうなってしまっているのかよりも今はどうしてそう思ったのかについて簡単に言おう。

 

簡単な話だ、ここはさっき言った女子の身体検査をやってる真っ最中の室なのだ。つまりは女子は全員下着姿。

 

oh…パラダイスと興奮したかったのだがそれよりも俺捕まっちゃうんじゃね?なんて心配してしまった。…いや、捕まるよね最悪…!?

 

「ちっ…なんで向かった先にいんのこのクソ犬っ!?本気で飼ってやろうか!?」

 

犬という単語を声を大にして言う。みなさん理解してください、俺変態じゃないよ?

 

救護科に向かった矢先、またまたあの犬とエンカウント。まるで犬に誘導されるようにこの部屋の窓に打つかった。…おいおいこの犬まさか俺のエンジェルだったりする?それなら許すんだが、代償高えよ。

 

しかし、そんな俺を周りの女子は気にしてなどいなかった。ただ割れた窓付近にて未だ威嚇している犬に集中している。危ねぇ危ねぇ…俺人生終わるとこだっ…

 

「先輩、どうしてここに…?」

 

…いや、1人だけこっちに意識向けてるやついたわ。

 

「俺が聞きたいっての。なんなのあの犬…親のしつけがなってないよな。桃もあんな子育てちゃダメ……だ…。………。」

 

 

「…その、あまりこっちを見ないでくれるかしら」

 

 

また巻き込まれた嫌味を桃にぶつけようと声の聞こえた方を見て固まった。…おいおい、美人でタイプの子のあられもない姿って今のちょっと緊迫した状況でも気が抜けるほどの威力あんのな…!

 

なぜ2年の検査で桃がいるのか全く分からないがそんなことどうでもいい!や、やばっ!?これやばっ!?

胸元を両手で隠してあの普段クールで表情の変わらない桃が顔を赤らめてるのってすごい貴重なんじゃないのか…?下着下は見えまくってるし隠していてはいるけど緑色の下着もチラチラ見え…

 

「……っ!!」

 

「ふごっ!?」

 

なんてことを考えながらじっと見ていると顔を真っ赤にした桃の蹴りが思いっきりぶち当たった。これは俺が悪い。

 

「修一っ!バカなことやってないで教えなさい!なんなのこいつはっ!」

 

頬をさすっていると真横にアリアが並ぶ。あ、そうだった今ヤバイんでした。

 

「急に懐かれたんだ…俺凄くない?犬なんて飼ったことないけど飼おっかな?」

 

「牙むき出しの懐き方なんてないわよ!それにあれどう見ても犬じゃなくオオカミじゃない!」

 

「…やけに噛み付いてくるのが痛いと思ったら」

 

「本気で気づいてなかったの!?バカじゃない!?」

 

アリアとの軽い言い合いは犬…もといオオカミが飛び込んできたことで中断された。おいおい、本気で俺気に入られてるじゃんかよ。

 

血の滴る左手をグッと握り脇を閉める。まだ続けるならこちらだって容赦しない、徹底的にやってやる…!

 

ーーと、目を細めた時だった。

 

ウォォォォォン!

 

オオカミは一つ大きく吠えると、俺の方から目をそらし、下着の女生徒の合間を縫って走り出すと

 

 

「…う、うぁあ!?」

 

何故か下着女子室に元からいた唯一の先生、小夜鳴先生の元へ襲いかかった。

 

「小夜鳴先生!」

 

先生は武偵高先生であるにも関わらず情けない声を上げると迫り来るオオカミの爪を腕で受け止めてしまう。そのまま先生は体制を保てずオオカミに馬乗りにされてしまう。

 

「おいおい…!先生なんだからもう少ししっかりしろよっ!」

 

思わず毒を吐きながら俺はオオカミに近づきその腹を蹴り飛ばす。

オオカミは相変わらずの運動神経をもって軽く受け身を取ると、颯爽と窓から飛び出した。…って飛び出すのかよ!?なぜに!?

 

「本当、なんだってんだ…」

 

結局目的の見えなかったオオカミが消えたことで、一瞬室内が静かになる。…が流石武偵高生徒、すぐさま逃げ出した窓の先を見るは…

 

「あり?なんでキンジがいるんだ?」

 

俺の横を走り抜けたのは何故かいた遠山キンジ。キンジは、オオカミのせいで棚に挟まれてしまっている男武藤からバイクの鍵を受け取るとオオカミを追って窓から出て行ってしまった。いろいろわけが分からないが、とにかくオオカミも消えたことで一応事件は収束。

 

…今度こそシンと静まり返る室内。

 

 

んなわけがなかった。

 

 

「先生!大丈夫ですか!?」

「大変!血が出てますよ!!救急箱救急箱!!」

「…血…先生の…血っ!レア…!」

 

流石武偵高校の女子生徒とでも言うのか、荒事があったにも関わらずイケメン先生との一大イベントを優先し、我先にと走り出した。…俺の方が怪我してるんだけどななどと思いながらもまあイケメンだから仕方ないと諦める。

 

「おーい武藤さん、大丈夫?」

 

「おお、岡崎。悪いが持ち上げてくれるか?」

 

そうして俺は、あまり下着女子を見過ぎてもなと1人棚と格闘する武藤の手助けをすることにした。左手の手当をしたかったが、生憎救急箱は全て先生行きだしな。

 

「んで、なんでいんのお前?性転換?」

 

「バカ言え覗きだ」

 

「…お前、男としてそれはやっちゃダメだろが」

 

全くコイツは…ここには桃がいるんだぞ…!?殺されたいのかこいつは…!!

 

「責めるならキンジも同罪だろ。あいつだって俺と同じなんだからよというか、あいつの方がわけわからんからな」

 

「何がどうわけわかんないんだっての」

 

「あいつ『理子に頼まれたんだよ』なんて変な嘘ついてごまかそうとしてたんだ。それに比べたらおれの方がまだ潔いいだろ?」

 

「…理子に?」

 

確かにあのキンジが覗きなんてするとは思えない。どちらかというと頼まれたと言われた方が信憑性が高い気もする。…ただ、どうして理子がそんなこと…?

 

もし仮にだが、今回のオオカミの件を理子が先に察知していてそれをキンジにサポートしてもらうためにここに呼んだとしたら…?

 

つまり、理子はその情報を調べる要素を手にしてたってことになる…?

 

それはつまり…

 

 

「あいつ、また事件抱えてんのか…?」

 

理子が抱え込むタイプだってのは知っている。もしあいつがなにか事件に巻き込まれていたとして

 

それを恋人のキンジにサポートを頼んだとしたら辻褄が合う。

 

ちらっと最初に俺の名前を呼んだあいつ、その聞こえた声の方を見る。

 

その場所にはすでに、彼女の姿はなかった。

 

「…………。」

 

 

 

ーーーーー

 

「先輩」

 

「どした?」

 

あれから数十分が経ち、ようやく俺の元に救急箱がやって来てくれた。ラッキーと思いつつ片手で苦戦しながら包帯を巻いていると、なんとなんとあの桃さんが手伝ってくれたのだった。制服は着ている。…ガッデム。

 

もう二度と見れないであろう夢の光景を脳内で思い出しつつ彼女に向き直る。

 

「ちょっと気になったことがあって。勘違いかもしれないけど」

 

「気になったこと?」

 

彼女は包帯を巻きながらその手をただじっと見つめ話を進める。

 

「あのオオカミ…本名称はコーカサスハクギンオオカミね。絶滅危惧種に指定されてる珍しいオオカミよ。私も初めて見たわ」

 

「ほうほう」

 

スルッと親指と人差し指の間をガーゼが通る。

 

「あんなオオカミなんて見る機会ないし、あのオオカミの匂いなんて嗅ぐ機会一度もなかったのよね」

 

 

もう一周くるっとガーゼが回ろうとして

 

その手が、止まった。

 

 

 

「でも私、あのコーカサスハクギンオオカミと同じ匂いを嗅いだのよ。

 

さっきそのオオカミに噛まれた

 

 

小夜鳴先生からね」

 

 

「……へぇ」

 

今もまだ女子に囲まれ手当を受ける小夜鳴先生を見た。女子に囲まれ困った顔をしているあの先生の匂いと、あのクソ犬の匂いが同じか…。

 

それにあのオオカミ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ようにも見えたし…。

 

偶然の一致にしては、出来すぎている気がしないでもないが、動機もない。

 

女子の裸が見たかったとかはありえないし、てかあの先生ならみたい放題だろうし…羨ましい。

 

「あくまで私の感覚だし、それがどうしたって訳でもないから適当に流しておいてもらって構わないわ。…はい、終わり」

 

考え事をしている間に桃の手当は終わってた。…おお、すげっ。綺麗に巻かれてる。

 

俺は桃に感謝の言葉代わりに伝えることにした。

 

「ちなみに、俺も気づいたことが一つ」

 

「何かしら?」

 

帰ろうとしていた桃が俺の方に振り返る。

 

俺はニカッと笑って親指を上に立てた。

 

「お前って意外と胸デカいのな。やっぱ桃さん最こーグフッ!?」

 

 

 

女子から二回も本気で蹴られたのは生まれて初めての経験でしたっ!後悔はしていないっ!!

 

 

ーーーーー

『セーラー、たっだいまー』

 

『…おかえり。…どうしたのそのアザ?』

 

『幸福の代償、かな』

 

『?…まあいいや。そんなことより峰理子とはどうなったの?』

 

『あーそれなんだけど俺

 

あいつときちんと話てみることにするわ。

 

あの2人が付き合ってるからって俺がなにもしちゃいけないってわけじゃないだろうし、力になりたいしな』

 

 

 

『…そうだね。頑張って、修兄』

 

「おう!」

 

 

 

 

 




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