サイカイのやりかた【38話完結】   作:あまやけ

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33のあらすじ
あまりにも強すぎる敵に戦意を失ってしまう修一。

それでも再び立ち上がる彼の中には


彼女の涙と彼女の笑顔があった。




34 彼女の涙 サイカイが望むものは…

〜彼女が任せる数十分前〜

 

『おう、俺だ俺。…ちっと面倒な敵になりそうなんでな。

 

 

 

 

力、貸してくれや』

 

 

ーーーーー

 

riko side

 

「…しゅーちゃん…」

 

暗い商店街をタクシーが走る。その中で暗闇の空をただ眺める理子にキンジはただ優しく声をかける。

 

「理子。岡崎なら大丈夫だ。ブラド相手でも勝てるさ。一人で戦うとは言ってたが一階にはジャンヌやあの倉庫で見た夾竹桃とかいう奴もいた。あの二人も加われば必ず勝てる」

 

「………。」

 

キンジの言葉を聞きながら彼女の中に様々な思考が巡る。確かにキンジの言う通りかもしれない。彼ならもしかしたらブラドを倒せるかもしれない。

 

 

 

彼の()()()()()()()()()()()を見ていれば期待してしまうのも無理はないと理子は思っていた。

 

 

しかし、彼女は本当の彼の姿も知っているのだ。

 

 

だからこそ…

 

 

「…っ!でも、やっぱり私は…!!おい、運転手!今すぐ車止めねぇとテメェの頭ぶち抜くぞ!!」

 

理子が拳銃を取り出し運転手の頭に押し付けた。運転手は驚きのあまり車を急停止させる。

 

「お、おい理子待て!」

 

車が止まり切るよりも早く扉を開けた理子は、キンジの制止も聞かず元来た道を走り始めた。

 

 

ーーーーー

 

二階

 

 

もう仕掛けは使い果たした。

 

 

桃の車にどっさり積んであった重機をワイヤーで起動させるトラップ攻撃、冷却弾とのびーるによる多方向攻撃、ボーリングの球による砲撃…

 

その他全てのできる限りの攻撃方法で試すも、ブラド本人にすら分からない位置にある魔臓を四つ同時に潰すことなど出来はしなかった。

 

「…ちっ。化け物め」

 

「どうした?貴様の強がりもここまでか??」

 

ここにあるのは、いやここには広々とした空間が存在するのみであるものなんて存在しない。特徴を挙げるなら床中にヒビが走ってしまっている状態であることくらいだが、それは修一の足元が悪くなったというマイナス要素にしかならない。

 

修一は相変わらずの怪物の様子に唾を吐き捨てる。

 

「何度でも言う!貴様程度じゃ俺様には勝てん!いい加減に諦めろ!!」

 

ブラドは意味のないはずのトラップを仕掛け足止めしてくるザコにイラつき始める中…

 

 

 

 

 

 

修一は冷や汗をたらしながら時を待っていた。

 

 

(…まだか…まだかよおい…!?)

 

 

彼はここに来てからずっと待ち続けていたものがある。

 

息も切れ、心拍も上がり、長過ぎる時間を死と隣り合わせの状態で精神を保ち続ける修一は、もう限界を超えている。

 

 

 

 

 

 

その時修一の後方でー

 

 

 

 

 

 

 

ピカッ

ーと

 

赤く何かが光った。

 

 

 

(ーーきた!!)

 

 

 

 

それは準備ができた合図だ。

 

 

 

 

「……ッ!」

 

 

修一はその合図を見た瞬間に走りこんだ。

 

その限界を超えた足に振り絞るように力を加え床を強く踏みしめる。

 

 

そして、目を閉じた。

 

 

 

(たった数秒…1秒でいい。あの時の力をもう一度…!!)

 

最後にするべきことがまだ残っている。それをするためには修一の力をフルに使わなければならない。

 

修一の強い敵と対立するときに発生していたあの湧き上がる感情を、自らで奥深くに封印したあの感情を…

 

 

修一は初めて、自分のためではなく人のために呼び起こした。

 

 

「…ッ!」

 

体勢を低くして、脱兎のごとく駆け出す。思わず身を引こうとするブラドの懐に潜り込むと木刀とデュランダルを重ね力の限りを尽くし振るった。

 

 

「ーーぉぉぉおおおおおお!!」

 

「ーーッ!?」

 

 

 

そしてーー

 

 

ゴンッ!!

 

 

 

勢いよく振り落とされた二つの武器がブラドの胴体に叩き込まれる。前よりも強力な一撃に甘く見ていたブラドが二、三歩下がった。

 

 

しかしそれだけ。ものの数秒で傷ついた体がまた再生されてしまう。

 

「…はぁ…はぁ…よし、()()()…!!」

 

「いい加減にしろ!貴様が何度俺様に打撃を行おうがすぐに回復するんだよ!!いつまで希望を持ってやがるんだ!」

 

「…ッ!?…ガァッ!!」

 

猛獣の雄叫びと共にそう放つブラドは力を使い果たし硬直した修一の体を吹き飛ばした。限界を超えた修一の体は簡単に宙を舞い、壁にメリ込む。砂埃が立ち込め、壊れかけのビルが揺れた。

 

「ザコめ…無駄に時間を使わせやがる…」

 

ブラドは動かなくなった人間に興味などなく、神崎・H・アリアと遠山キンジの跡を追おうと背を向ける。

 

 

 

 

 

「…おい、はぁ…デカブツ…っ」

 

 

敵はまだ立ち上がる。頭から血を流し、立つだけで体が震え始めているザコは、されど敵にその鋭い目を向け続ける。

 

ブラドは背を向けたままその弱りきった男を見ていた。

 

 

「…なぁ、おい。そんなでかい頭して疑問に思わなかったか?俺みたいなザコがどうして()()()()()()()()()()姿()()()()()()()()()

 

「…アァ?」

 

修一は震える手でポケットに手を入れる。

 

そう、彼は様々な罠を仕掛けブラドを倒そうとしていた。だがそれは全てブラドに大打撃を与えるようなものではなかったが、修一がわざわざブラドの前に姿を現さなければならないトラップは一つもなかったのだ。

 

しかし修一は姿を現し続けた。まるでブラドに自分の存在を意識させ続けさせるかのように。

 

 

つまり…

 

「俺は、(おとり)だ」

 

 

ポケットから取り出したスイッチを起動させる。

 

 

その瞬間、ブラドの周囲()()()()に仕込んであった『火炎弾』がブラドの真下で勢いよく爆発したーー。

 

 

「ーンナァ!?」

 

 

ブラドの足元が無へと化す。

 

 

突然の爆発、急な重力落下にブラドは何も出来なかった。

 

ガクンと体制の崩れたその巨体が重力に従って落下していく、

 

 

しばらくしてズンッーー!と地響きが起きた。

 

 

これで、作戦の9割が完了した。

 

 

「…っぁ…!はぁ…はぁ…成功…っ」

 

「--お疲れ様」

 

座り込み過呼吸のように息を切らす修一の前に、ビルに入った直後別れた夾竹桃とジャンヌが現れる。

 

「…よう、桃、いいタイミングだった…はぁ…。後少し遅れてたら、っヤバかった…」

 

「あんた、会話もまともにできないくらい息切れしてるじゃない。大丈夫?」

 

「あぁ…ふー。もう、大丈夫だ。ジャンヌもお疲れ」

 

「私は言われた通りに()()しただけだ。私よりも礼を言わないといけない人がいるだろ」

 

 

「岡崎くん、まーた無理してるのだ!」

 

ジャンヌが指さした方向にもう一人、移動中の車で呼び寄せた天才がいた。

 

「ふつうならもう寝てる時間なのにこんな()()()!メンテもしてきたのだぞ?」」

 

平賀 文である。彼女の協力がなければここまでの作戦は出来なかっただろう。

 

「おー、サンクスな。今度またガラクタ買ってやるから許せ」

 

ふてくされる平賀に軽く誤った後、最後の仕上げに動き出す。

 

修一は立ち上がりブラドが落ちた穴へと近づいた。

 

穴の下には二階の床の残骸の上にあのブラドが倒れている。もちろんこんなことであの強敵が倒せるなどということはない。すぐに目を覚ました大狼は立ち上がり、上から見下ろす修一に牙を向ける。

 

この攻撃がブラドの沸点を超えさせてしまった。

 

「このクソザルがァ!いい加減俺様も我慢の限界だ!粉々に噛み砕いて最も醜い死体に変えてやる!!俺様に勝てるかもしれんと思ってしまったその低脳な頭を呪え!!

 

ォォォォガァァァァァァァアアアアア!!」

 

 

ブラドの体が赤黒く変色し、筋肉がさらに膨張し始める。身体中の血管を浮かび上がらせ地面にヒビを走らせる。今までのがお遊びであったとそう言われても頷いてしまうようなその強大な力をついに解放させたのだ。

 

その様子を修一はただ黙ってみていた。今更強敵がさらに強くなったところでやることは変わらないのだ。それに

 

敵が強いからという理由で負けたというのは認められないのだから。

 

 

「…ったく、お前は初めっから一つ勘違いしてんだよブラド。いつどこで()()()()()()()なんて言ったよ?」

 

「アァ!?俺様がいつ勘違いしたってんだァ!?」

 

修一は体制を立て直し木刀を構える。

 

 

「最初に言ったはずだ。『お前は今日、最も見下し侮辱していたサイカイに負ける』って」

 

 

多くの隙間の空いたビルに、月の光が差し込む。それは修一を後ろから照らし、そしてブラドのいる一階をまるで証明のように鮮明に照らした。

 

 

 

 

 

そして修一はブラドに本当の敵を伝えた。

 

 

 

 

()()()()()()()()()()()()()んだよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

光が差し込み、ブラドは自分の周りの異変に気付く。

 

 

 

そこには…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『『『侵入侵入者発者発見侵侵入発見入見!!侵死んで下さ死んで下さりやがれですりやがれです侵発見入入!!侵入!!!者発発侵入見見!!』』』『『『死んで下死んで下さ死ん見侵侵入発見で下さりや見侵侵入発見死んで下死んで下見侵侵入発見さりやがれですさりやがれですがれ見侵侵入発見ですりやがれですさり死んで下さりや死んで下さりやがれで見侵侵入発見すがれですやがれです!死んで見侵侵入発見下さ見侵侵入発見りやがれです!!』』』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一階。そこは最初ただ何もないただの広い空間が存在していた…が、今は違う。

 

そこには、あの他人に頼らず、バカみたいに抱え込んでしまうあの不器用な一人の人間が、作り上げ完成された機械兵器がブラドを取り囲むかのように設置されていたのだ。

 

 

 

「…なんだァ…このガラクタどもは…?」

 

「そいつはお前のいう雑魚が作った()()だ。お前から逃げるために、お前から自由を取り返すために誰にも頼らず作り上げたあいつの『願い』だよ」

 

 

カシャンと音を立てその巨大な狼に狙いを定める機械兵器約25機。これによる無数の砲撃であれば魔臓がどの位置にあろうが問題ではない。

 

 

この機械兵器を作った人物こそ、ブラドにとって最大の敵。

 

 

修一は月の逆光を浴びながら木刀を敵に向けた。

 

 

 

お前を倒すのは、() ()()()だ。

 

 

 

 

 

そう、修一はブラドと戦う前から決めていたのだ。

 

この敵は理子の才能によって倒すべきだと。彼女のことを勘違いしている馬鹿野郎を真の意味で打ち負かすべきだと。

 

だからこそ彼は一人でこの強敵と対峙した。

夾竹桃やジャンヌの力を借りて倒したとしても彼女の勝ちにはならない。だからこそ自分が、彼女よりサイカイである自分が手助けするだけならブラドの敗因に峰理子に負けるという事実が消えることはない。

 

これが修一の不器用ながらに選んだ。彼なりの『一番いいやり方』なのだった。

 

 

「グファファ!このクソどもで俺様が倒せるだと、笑わせてくれる!!」

 

 

しかしブラドはただ笑う。先ほど修一が与えたダメージはすでに回復している状態でこの状態が抜け出せないわけがないのだ。こんなガラクタが包囲したところで造作もない。

 

 

「俺様を舐めるのもいい加減にしろクソザル!まずは貴様から切り刻んでやる!」

 

 

ブラドは上へと飛んだ。調子に乗ったザコへ最後の一撃を喰らわせるために。その跳躍力はもちろん人間の比ではなく、二階にいる修一の元へ簡単に飛べてしまう。

 

対して修一は今の興奮状態のブラドを叩き落とすことは出来ると武器を構え『のびーる君』を射出した。

 

 

 

しかし修一はこのとき()()してしまったのだ。

 

 

 

 

 

 

落とした時点で勝ちだと、それくらいの問題は解決出来るだろうと。

 

 

 

身近に仲間を感じ極限の緊張状態が解けてしまったことから起きた

 

 

 

 

 

ミス

 

 

 

ーーーズキッ!

 

 

 

「ーーっ!?」

 

左足に激痛が走った。おそらく先ほどの激しすぎる動きに、ついに治りかけていた足が悲鳴を上げたのだ。

 

「貴様には何度も重症な傷を負わせ続けたからナァ!!もういい加減動けまい!!」

 

 

「…しまっ……っ!」

 

その数秒はブラドを自分の目の前まで跳躍させその巨大な腕の攻撃を受けるには十分すぎる時間でーー

 

修一の行動を予想していたからこそ動くのに遅れてしまった夾竹桃も呆気にとられたジャンヌも動けずーー

 

 

(…嘘だろ…こんな王手一歩手前で……しくじるのか、俺は…!!)

 

 

 

「死ね!才能もないクズ人間ガァ!!」

 

 

その強大な力が修一に迫る。それは先ほどまでの、武器で防ぐことができるような弱い力ではない。喰らえば一瞬にして肉片になるような強烈な一撃が、死を纏った究極の一撃が迫り来る。

 

 

 

 

 

 

その最後の一瞬の中ーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

--シュン

 

 

 

 

 

小さく音を出した何かが修一の耳横を通った。

 

 

その瞬間--

 

 

「ぐ、ガァァァ!?」

 

 

 

突然ブラドの身体がくの字に折れ曲がる。力を開放し、さらに強力になっていたはずのブラドが雄たけびをあげた。

 

その目には

 

 

魔法のように()()()()()()が突き刺さっていた。

 

 

「…は…」

 

 

ズシャズシャズシャ!!

 

修一の目の前で振り下ろされるはずだった腕が顔の方へと移動した直後、その体に鋭い威力を持つ矢が次々と突き刺さる。まるで止むことのない矢がまるで雨のようにブラドに降り注ぎ、穴の中へその巨体を再び突き落とす。

 

そして、

 

ドスッ!

 

最後の一撃と言わんばかりの大きさと威力をもつ、矢というより大きさ的には槍ほどの物体がブラドの喉を突き刺した。

 

音を立て一階の地面に突き刺さったそれは、ブラドを宙づりにする。それは丁度機械兵器が全身を撃ち抜くことが出来るように体を立てていた。

 

修一はそのたった1秒ほどの光景をポカンと見つめ、こんなことができる天才の心当たりをすぐに見つけた。

 

「…あの居候娘、来るなって言ったのに…後で説教だなこれ」

 

周りを見渡すが姿はない。おそらく外からの狙撃だろう。

修一は後ろ頭をかきながら嘆息しつつも心の中で礼を言う、あの銀髪をどこかでなびかせながらこちらを見ているであろうあの居候に

 

お前のおかげで、最後のピースが埋まったぞと。

 

 

 

獅子の雄叫びのような声が穴から聞こえる。

 

 

 

槍もとい矢は杭のように突き刺さったまま離れない。ブラドも抜こうとしているようだが舌ごと貫かれたらしい。魔臓を一つ刺された状態では本来の力を発揮することが出来ないようだ。

 

 

修一が一歩踏み出しその強敵の有様を上から見下ろす形になるのを、ブラド自身が理解したその瞬間であった。

 

 

 

 

修一は片手を挙げる。

 

 

 

 

 

 

「お前に一つ言いたいことがある」

 

 

「……!………ッ!?」

 

 

 

そして、彼は、強者(サイジョウイ)に対し言い放つ。

 

 

 

 

 

 

「この戦いは峰 理子の()()だ。

 

 

リュパン四世だか遺伝子だかなんだか知らねぇが、んなもんであいつが弱いだとか勝手に決めつけてんじゃねーよ。あいつはもう、お前なんかが縛っておけるど弱い人間じゃない。

 

理子は、()()んだってことちゃんと理解しろ。

 

 

「お、俺様が…あの才能を受け継いでないロクデナシに負ける…!?泣くだけしか能のない、あのクズに負けると言うのか…!?ありえん…!、ありえんありえんありえんぞ…!!そんなことは、断じてありえんのだ…!俺様は、俺様は世界で最も強い種族の……!!」

 

 

修一は未だに真実を見ようとしない強者に、いや、自分を強者だと自惚れ他者を蔑み続けていた者へとたった一つ言葉を伝えた。

 

 

 

 

 

 

峰理子(サイカイ)…舐めるな!!」

 

 

 

 

 

 

 

「ク…クソヤロウガァァァァァァァァァァァア!!!」

 

 

 

修一が腕を振り下ろす。

 

その瞬間、ブラドの元へ無数の銃弾が発射される。それはまるで彼女の感情が憑いているかのように真っ直ぐに突き進み…

 

 

 

そして…

 

 

 

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

「………………。」

 

 

そして、彼女は見た。

 

 

 

 

 

『このクソ野郎がっ!床にカスこぼしやがって!』

 

『……ッ!?』

 

 

 

 

 

どれほど酷い仕打ちを受けても対抗しなかった。してもまた同じ痛みが繰り返されるとわかっていたから。

 

 

 

 

 

『イタイイタイ…!…イタイ…!!…やめ、やめて…くださっ…!』

 

『ちっ、もうグロッキーかよ。これだから人間のガキは嫌いなんだ』

 

 

 

 

懇願することしかできなかった。抵抗なんてすればそれこそまた痛みが増えるだけだと知っていたから。

 

 

彼女にとってその敵は『自分にとって絶対的な強者だった』。勝てるという望みすら存在しない。

そんな絶対的な強敵が

 

 

今、自身の力で倒れようとしている。

 

「……っ!………ぅ……っ!!」

 

 

 

『どうだい理子、アルセーヌ・ルパンでも倒せなかったブラドを俺たちが倒したんだ。()()()()()()()()()()

 

『ふぅん。じゃああんた、初代ルパンを超えたってわけね』

 

 

キンジとアリアと自分。三人でブラドを倒したと思った時、それでも理子は嬉しかった。初代ルパンを超えたと…それだけで彼女の心が透き通った感覚があったのも事実だ。

 

しかし、それでもまだ胸につっかえた何かがあったのもまた事実だった。三人で勝った?三人の勝利?二人に任せれば簡単に解決できた…?アリアとキンジがブラドに勝った??

 

それでは今までの自分の過去に我慢した意味はなんなんだ?今までの自力で抜け出そうと頑張っていた意味は、一体なんだったのだ?と。

 

 

そう思ってしまう欲張りな自分も確かに存在していたのだ。

 

 

 

そして…

 

 

 

 

『この戦いは() ()()()の勝ちだ』

 

 

 

それを理解してくれたのは、サイカイだった。彼は彼女が昔なにをされたかなど知らない。彼女が今どんな感情を持っているかなど知らない。

 

そんな、自分の内情を理解していないくせに、自分の最も望んだ夢を叶えてくれたのは彼だった。

 

 

 

「……ッ!……ッ!!」

 

 

 

口元が震える。

 

 

 

喉が激しく熱くなる。

 

 

 

今目の前に広がる光景に、みるみる視界が見えなくなる。

 

 

 

 

その光景を自らが作り出した、自らの力による光景であるということに

 

 

 

 

理子の乾いた心が()みるように暖かく潤う。

 

 

 

 

 

「……っ!……ぅぅ……しゅう、いぢぃ…!!

 

 

 

 

 

 

 

あり、がどゔ………っ!!!」

 

 

 

 

 

 

鼻水も涙も混じった顔をくしゃりと歪め、そう伝える彼女は

 

 

 

 

 

巨大な敵が全ての銃弾を受け地面に倒れる中、

 

 

 

初めて、自分のために涙をこぼした。

 

 

 




大変お待たせしました。…実はこれ制作に二週間かかりました。あー長かった…。

さて、いかがだったでしょうか?最終話のブラド戦はこれで終わりです。この小説も残り四話となりました。

みなさんそれぞれで様々な感想を抱いていただけると作者として嬉しく思います。


次回はついに、理子と修一の関係が…。

ではでは~

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