一話
…彼の名前は岸波白野。 成績を見ると中の上、特技・趣味は無し。叶えたい夢など持っていない、 など良くも悪くも彼は平凡だった。 偶に友人の手伝いで生徒会の仕事を手伝わされる事はあったがそれでもこれという特徴はない。
強いていうなら少し人より諦めが悪いという所か、 まあそんなもの只の高校生である彼には何の意味もないのだが。
…これは、そんな何もない空っぽの人生を送る筈だった彼が一つの
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「おはよう!今日もいい天気で何より何より!」
「おはようございます、一成生徒会長、いつも元気ですね」
「ウム、生徒会長たるもの生徒に情けない姿は見せられんからな」
それはいつもの朝のことだった。
いつものように学校へ行き、挨拶をし、校門をくぐる、そんな作業めいたいつもの日常に今日はどこか違和感を感じた。
「痛っ!」
ふいに左手に痛みが走る、だが手には何の傷もない。
少し気になったがそんな違和感はすぐに消え、自分の教室へと向かう
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「おはよう、白野!」
「おはよう慎二、今日はやけにご機嫌だね」
こいつの名前は間桐シンジ、 何故かわからないけど気に入られていてよく二人で話をしている。 と言っても彼が一方的に話をしてくるので俺はいつも聞き役だが。
「何でか教えてやろうか?それはな…PJでこの僕が第2位という高スコアを残したからさ!」
「そうなのか、すごいなー」
PJというものがよくわからないので適当に相槌を打っておく、わからないが2位ということはかなりの好成績なのだろう。
シンジは学校でも成績はトップクラス。 自分もシンジにテストのヤマを教えてもらった時にはその科目だけ学年一位になった事もあった。…それ以降教えてもらえる事は無くなってしまったが。 …まあ取り敢えずシンジは頭がいい、 ついでに言うとプライドも並の人より高い。
「でもシンジが2位なんてな…1位の奴はそんなに強いのか?」
「あいつ…ジナコはただの廃人プレイヤーさ!プレイ時間が膨大なだけ!純粋なテクニックなら僕の圧勝だね!」
「う、うん、ソウダナー」
シンジの剣幕に押されつつ相槌をうつ。
これもいつものことだ、何てことはない、普段と何ら変わらない日常だ。
「おはようございます!今日も気持ちのいい朝ですね!」
彼の名前はレオ・ビスタリオ・ハーウェイ 先日転校してきた大企業の御曹司だ。 彼は珍しくシンジが俺以外に気を許している友人の一人だ。 成績はやはりトップクラス、いつもシンジと点数の競い合いをしている。 俺? 俺は平均コエテルカナーとそんな感じだ。
俺もシンジも最初は少し身分の違いにたじたじだったが、今では気さくに話をする友人になっている。
「ところで先ほどから何の話をされていたのですか?」
「ああ、シンジがPJで2位になったって話を…」
「それは素晴らしい!では今度1位になったら僕の家でパーティを開きましょう!」
「聞いたか白野!今度はレオの家で戦勝パーティだ!楽しみにしとけよな!」
微笑ましい光景だ。 いつも通りの日常だが、 それがまた気持ちがいい。 とジジ臭い事を思いながら俺は窓の外を見ながら一人物思いに耽っていた。
キーンコーンカーンコーン
鐘がなる。今日も1日が終わる。 いろいろな事があり今日は疲れた。 早く家に帰ってゆっくりしよう、そう思った時だった。
(あれ…?俺の家ってどこだっけ?)
ノイズが走る。 頭に靄がかかったように何も考えられなくなる。
不意に窓ガラスが割れる。
教室が地震が起きたように揺れ始める。
ピンポンパンポーン
”マスター候補者ノ皆様ニオシラセデス。間モ無ク参加者ニヨル聖杯戦争ガハジマリマス。参加者の皆様ハ急イデ本選ニオ進ミ下サイ”
「へぇ…もう始まりですか…僕としてはもう少し楽しみたかったのですが…仕方ありませんね」
「お前いきなり何言ってんだよ!この状況で頭おかしくなっちまったのか!?」
シンジの言う通りだ。 …いきなり何を言い出すのだろうか。
その言い方はまるで何かを知っているかのような…
「それではシンジ、白野さん、機会があればいずれまたお会いしましょう」
そういってレオは消えてしまった、 突然の出来事に混乱し理解が追いつかない。 一体何が起こったのだろうか。
「何だよこれ…何がどうなってんだ…」
「とにかく逃げようシンジ、ここは危ない」
レオがいきなり消えてしまったのが気にかかる所だがここに留まっていても何も始まらない、 それ所かここに居ては危険な予感がする。
自分と同じく混乱しているシンジに声を掛けようとしたその時。
「…ふふふ、あっははははははは!…なるほどね…思い出した…思い出したよ白野!僕は取り戻したぞ!」
「……シンジ?」
「じゃあな白野!僕は次のステージに行くとするよ!君との高校生活は割と楽しかったよ」
そう言うとシンジは何かを思い出したようにして突然姿を消した。
何だ?シンジは今何と言っていた?…思い出した?何かを…シンジは何かを思い出した…?
何だ…このとてつもない違和感は…聖杯…戦争?
自分は今、大切な物をなくしているんじゃないか? この校舎は…偽り、ならば俺がやるべき事はただ一つ。
真実に…目を凝らす…
〜〜〜〜
さっきまで俺は校舎にいたはずだ、だが目を開けるとそこはどこか神秘的な雰囲気を思わせる場所へと切り替わっていた。
「ここは…どこだ?」
周りを見渡してみるが特に変わったものはない。
すると突然置いてあった人形が立ち上がって近づき、俺の前まで来たところで…ガラスのように砕け散った。
(…え?何だったんだろう…?)
「とりあえず先に進もう」
今の人形が何者だったかは分からないがここで立ち止まってもいられない、どこかに出口があることを信じて前に進むしかない。
〜〜〜〜
「うわあああ!危ない!」
先に進んだ所で待ち構えていたのはボールのような敵だった。
俺を殺すために真ん中の目?からビームや爆発などで攻撃を仕掛けてきていた。何か防御の手段があればいいのだが俺にそんなものはない。今俺にできるのは逃げることだけだ。
「はあ…はあ…やっと逃げ切れた…」
ヤバかった、あんなのが10体もいるなんて…
死ぬところだった…運が良かった。普通なら死んでいた。
広いところに出た。
そこにさっきの人形と同じものが転がっている。
そしてどんどん近づき、俺は先程のように砕け散るのかと思っていた
俺の前で砕け散ったはずのその人形は…襲いかかってきた。
「うわあああああ!」
俺に防御する手段は何もない、逃げ場もなく情けないが腰が抜けてしまい足もガクガクに震え立つことすら叶わない。
そして手が振り下ろされ…
俺は肩から腰にかけて真っ直ぐに切り裂かれた…
(あはは…俺、死んだのか?血って結構あったかいんだな…
…怖い。 …死ぬのも怖いがそれ以上に無意味に死ぬのが一番怖い。
…怖いままでいい…痛いままでもいい…
でも、このまま終わるのは許されない。
だって、自分はまだ一度も…自分の意思で戦ってすらいないのだから…!)
立ち上がる。
ここで立ち上がっていても結果は変わらず俺は負けるだろう…その事実は揺るがない…だとしても!!
まだ終わっていない…ここじゃ死ねない…
ここでは終われない!
「…一度倒れても立ち上がる、希望を捨てずに立ち向かう。 その在り方に興味が湧きました。私の名は…いえ、サーヴァントセイバー、誓いを受けて参上しました」
目の前に淡い光と共に一人の少女が姿を見せる。 手に持っているのは日本刀。 俺と敵の人形の間に割って入るようにして現れたその少女は曇りなき瞳で問いを投げた。
「…あなたが私のマスターですか?」
どうでしょうか?処女作なのでいたらぬ点もあると思いますがそこは温かい目で見てくれると嬉しいです