桜セイバー in Fate/EXTRA   作:日向辰巳

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十話

何だか今日は体が怠い… うーん、昨日の毒なら桜に治療してもらったはずなのだが…

 

「マスター、今日はどこに…」

 

バタリ

セイバーはそう言って倒れてしまった、だがどこかいつもとは違った

いつもならセイバーが倒れる時は病弱スキルで吐血する時だ、これはまずい。

そう思ってセイバーを抱えて急いで保健室へと向かう。

 

「これは…昨日と同じ毒?そんな...何故セイバーさんにだけ…」

 

あの時だ。 セイバーが自分を突き飛ばした時。 あの時は避けたと思っていたが、セイバーは矢に当たっていたのだ。

つまりセイバーは毒の霧に加えて毒の矢も受けていたということになる。

 

「ごめんねセイバー、気づけなくて」

 

そう言ってセイバーの頬を撫でる。

そうか、自分とセイバーは魔力で繋がっている、だから自分にも毒が少し流れ込んできたのだろう、どうりで体が怠かったわけだ。

 

「セイバーさんなら大丈夫ですよ、あとは安静にしておけば治ります」

 

「あと先輩、保健室にこんなものが落ちていたんですが…」

 

桜が持っていたのは弓矢だった、もしかしてこれは昨日のドタバタの?

 

「はい、昨日保健室を修復術式で直していたんですがその時に床に落ちているのを発見したので、どうしようかと思っていました」

 

「もらってもいいかな?」

 

「もちろんいいですよ」

 

これはラニが言っていた手がかりになるだろうか?どうせダメ元だし、一応持って行ってみるとしよう。

 

「マスター…」

 

「セイバー、少しだけ待っててね」

 

そうしてまた頬を撫でるとセイバーはいい寝息をたてて眠ってしまった。

 

〜〜〜〜

 

「さて、ラニはどこにいるかな…」

 

そういって自分はラニと初めて会った教会に行ってみたが、やはりラニはいなかった

さて…じゃあ遠坂あたりにでも聞いてみようか?

 

「昨日はすまなかったな、岸波白野」

 

そういって声をかけてきたのは二回戦の相手、ダン・ブラックモアだった。

 

「もう気にしてませんよ、でも令呪を使ってくれるとは思いませんでした」

 

「そうだな...自分でもどうかしていたと思っていたところだ、3つしかない令呪をあろうことか敵を利するために使ってしまうとはな…

…だがこの戦いはわしの初めての個人的な戦いだ、 軍務であればアーチャーを良しとしただろうが …生憎今のわしは騎士でな、そして思ったのだ。……妻はそんなわしを喜ぶか…とな」

 

「…………」

 

「君はまだ迷っているようだな、自分の在り方を...少年よ、迷っているのならこの戦いを見て知るといい。結末は全て過程の産物に過ぎん、後悔の轍に咲く花のように歩いた軌道にさまざまな実を結ばせる。

………つまりだ少年。

己に恥じぬ行為だけが後顧の憂いから自身を解放する鍵なのだよ」

 

……誤りだったと感じた過程からは何も生み出されない。

誇れる道程のさきにこそ聖杯を掴む道があるということだろうか。

 

「…つまらない話に付き合わせた、老人の独り言と笑うがいい」

 

そういって老騎士は去っていった、だが彼には大切なものを教えてもらった気がする。

 

「ごきげんよう…岸波白野、協力に応えてくれるのですね。礼を言います」

 

「…ラニ、不躾で悪いけどさ、ちょっと聞いてもいい?」

 

「……?はい、私に答えられる事ならば」

 

これはラニに答えられるというよりはラニにしか相談できない事だ。今俺が相談しようとしていることを遠坂に言えば恐らく俺は殺されるだろう。

 

「その服は…ラニの趣味なのか?」

 

「服…ですか、いえ、これは師が私に用意してくれた衣服ですが、それが何か?」

 

「いや、何でもないよ。 …でも、そうだな、 あえて言うならラニのよう師とは良い友達になれそうな気がする」

 

「……はあ」

 

まったく良い趣味してるじゃないかアトラス。 もしもセイバーがこれを着たらと思うと…おっと、鼻血が。

俺、この戦いが終わったらラニに師を紹介してもらうんだ。 おっと、死亡フラグみたいになってしまった。 ゴホンゴホン。

 

「じゃあ改めてよろしく、ラニ」

 

ダン卿は間違いなく強敵だ、一回戦の時と違い相手には強い覚悟がある、やれることは十分にやってそれでやっと戦いになる。

 

「勝手に相手のことを調べるのは気がひけるけど、今は少しでもこの戦いの事が知りたいんだ。 ラニ、これが星を詠む手がかりになる?」

 

「……これならば」

 

俺は桜からもらった弓をラニに渡す、そしてラニは静かに星詠みを始めた。

 

………そして自分はアーチャーの過去を知った。

 

時には汚名も背負い、暗い闇に潜んだ人生。 緑の衣装で森に溶け込み、陰から敵を射続けた姿…。

隠れ続け、卑怯者として闇から敵を撃つ人生……。

マスターであるダン卿の騎士たる戦いとはあまりに対照的だ、なぜこの二人が組んでいるのか自分には理解できなかった。

 

〜〜〜〜

 

「セイバー、いる?」

 

「お疲れ様です、マスター」

 

保健室に行ったらマイルームに帰ったということだったので急いで帰った、よかった…顔色はいいみたいだしもう支障はないだろう。

 

「マスター、明日は教会に行きませんか? エネミーも倒したので結構経験値がたまっていると思うのですが」

 

そうだ、すっかり忘れていたがかなり経験値がたまっていたはずだ。

新しいコードキャストも手に入れたし、明日は図書室に行くついでに教会にも行かなくては。

 

「あ、そうだセイバー 遠坂にも相談したいことがあるんだけど...いいかな?」

 

「別にいいですが…」

 

何だろう、セイバーはいつもより歯切れが悪い気がする

 

「いいですか、マスター。 余計なお世話かもしれませんがあまり人に頼るのは良くないと思います。 たしかに凛さんは頼りになりますが…これは聖杯戦争です、いつかはあの人も敵になります。 そこら辺は注意してくださいね?」

 

セイバーに言われてハッとする、たしかにこれは聖杯戦争だ、仮に相手が遠坂だった場合、逆に弱点を教えるようなものだ。

 

「わかったよ、セイバー。 じゃあ今回は遠坂に頼らないで自分たちで頑張ってみようか」

 

「はい。 頑張りましょう、マスター!」

 

こうして今日、自分の手に入れた情報をセイバーにも話し、どうやって攻めるかなどの作戦をたてて眠りについた

 

 


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