「ようこそ、決戦の地へ 。 …身支度は全て整えたかね?」
「扉は一つ、再びこの校舎に戻ってくるのも一組、覚悟を決めたのなら闘技場への扉を開こう」
「開けてくれ」
「いいだろう、若き闘志よ ささやかながら幸運を祈ろう。それでは…存分に殺し合い給え」
自分はこの戦いで何かを掴んでみせる、そして覚悟を決めてエレベーターに乗りこむ。
するとやはり目の前には相手のマスターがいた。
〜〜〜〜
「…………。」
やはりこちらと話をする気はないのか、老騎士の方は目も合わせてくれない。
「アンタ今何で何も話してくれないのか、って思ったでしょ?」
すると隣のアーチャーが話しかけてきた。
「だって話する意味ねぇじゃんよ、アンタたちはもうすぐ消えるんだしさ。 …まあ、つってもこれじゃ俺がつまらねぇしな、ウチのダンナは無駄がなさすぎてねぇ…茶飲み話とはいかんのよ。
ところでどうよ? そっちのマスターさん、ウチのマスターに話しかけてみないかい?」
じゃあ、と言って気になっていたことを質問した。
「なぜ戦うんですか?」
「…戦いに何故はない。 戦地に赴く以上、 あるのは目的だけだ。 加えてわしは国に仕える軍人だった、個人に戦う理由は必要とされなかった。
…今は多少違うがな。であっても何故、と自問することは無い」
「ありゃ、やっぱりダメだったか。 ご足労さん、つまみ程度には楽しめたぜ」
やはり言葉を交わすことに意味はなかった、この人と交わすべきなのは言葉ではなく剣だ。
「マスターとは対照的に随分とおしゃべりが好きなサーヴァントですね、あなたからは英霊らしさなどを感じませんが」
「あまりにも英霊の姿とかけ離れすぎてマスターとサーヴァントが逆転したのかと思いましたよ」
日頃こんなことを言わないセイバーにしては珍しい姿だった、何か思う所があるのだろうか?
「はんっ!そうであるならどんなに楽か!ウチのダンナはちょいと堅物すぎてね、英霊らしからぬ俺としては何度も衝突して困りものさ。 …しかしアレかい?アンタは英霊全部が高潔な人格者だと思ってるクチ? だったら疲れるぜぇ? また後ろから撃たれないように気をつけな」
あんた隙だらけだしな、とアーチャーは笑いとばす。
「目的のためなら手段は問わないですか…私は別に間違ってるとは思いませんが、あまり好みはしませんね。 今回はマスターが特殊ですし、戦いらしい戦いをしないとマスターの迷いが晴れないと思いますので」
「アンタらが勝手にそう言うのは構わないが、オレを巻き込まないでくれよ。
…なあそっちのマスターさん、闇討ち、不意打ち、だまし討ちは嫌いかい?ってかそもそも汚い戦いが嫌い?卑怯な手口そのものが気に入らない?」
「…いや、否定はできない」
それをいうなら一回戦でシンジに自分が使った手も否定することになる。 不意打ち、だまし討ちは立派な戦法だ。 毒などは自分ではする気にはならないがそれも一つの戦い方だろう。
「そいつは上々、毒と女は使いようってな。いい勝負になりそうだ」
なるほど、やはりこのアーチャーは使える物は使う、それがどれ程汚いことであっても大切な物を守るためには自らの手を汚さなければならない。
…その覚悟を持っている、立ち振る舞いは全く違うとしてもやはりこの二人はどこか似ている、そう思った。
「随分と楽しそうだな、アーチャー?」
「おや?そう見えましたかい?ダンナ」
「戦いを前にしながら倒すべき敵の人となりを楽しんでいる……少なくともわしにはそう見えるな」
「ご明察、 ま、 おしゃべりなのは大目に見ていただければと。 何しろ敵と話すこと自体珍しいもんでね、あとダンナはもちっと若者の声に耳を傾けるべきですよ?」
「気遣いには感謝する、だが無用だよ。 戦いに相互理解は不要な感情だ、敵を知るのは戦いが終わったあとでいい」
「うわ、ほんっと遊びがねぇよこの人タダでさえハードな殺し合いなのに余計にストレス溜まっちまいそうだ、たまには息抜きに楽しむことも必要ですよ?ね?アンタもそう思うでしょ?」
そんなこと聞かれても分からない、自分は生き残るのに必死でまだ余裕などないのだから。
「げっ、なんて潤いの無い返答だ。 なんだよ、 この場で若者は俺だけか?」
「楽しむのもいいが、アーチャー 戦いではこちらの意見に従ってもらうぞ」
「げっ、やっぱり今回もっすか?わかりましたよ従います、オーダーには従いますよ。
…けどなぁ…誰もが自分の人生に誇りを持てるわけじゃないってことを分かって欲しいんだよなあ…」
「あなたは…後悔しているんですか?自分の生前の在り方に」
唐突にセイバーが口を開いた、やっぱり何か思う所があったのだろう。
「いんや…後悔はしてない、無念はあったけどな」
「何故後悔はしないのですか?」
「なんだい嬢ちゃん、アンタは後悔してるんだな?」
「…………。」
「だんまりか、まあいい。 俺は後悔はしてない、後悔してしまったら俺が生前残してきたものが全て否定されてしまうからな。
例え誰に感謝されぬものだとしても、例え報われぬものだとしても、俺だけは後悔しちゃいけない。
汚名を被ったとしてもそれら一切合財含めて今のオレの在り方だからな」
「ま、これはオレの自論だしな…そんなにあてにするなよ?」
「……ありがとうございました」
…もうすぐ戦いが始まる。
ここから先は生きるか死ぬかの殺し合い、俺はセイバーのことが気になる
もっとセイバーのことを知りたい、今俯いた理由を知りたい
そのために絶対に自分は生き残らなければいけない、アーチャーが言っていた通り、例え卑怯な手を使ってでも。
「たつぞ、アーチャー。 戦場に還る時が来たようだ」
「行くよ、セイバー」
「はい!戦場に事の善悪なし…ただひたすらに斬るのみです」
俺はこの戦いで迷いを振り切ってみせる…相手は遥かに格上の存在。全身全霊の力で相手を倒すしかない!
本当にこの調子だったらすぐ終わってしまいますね...短編にするべきだったでしょうか?でもccc編をその分頑張ろうと思うので大丈夫ですよね!これからもどうか温かい目で見守ってください!