「ここで決めるぞ、アーチャー」
「おうよ、つーわけでてめーの面もここで見納めだ。 いざ別れるとなると涙が出てくるなあ… これは餞別だ、 涙の数だけ弓矢をおみまいしてやるよ!」
「結構です。 その代わりと言ってはなんですが私からも敗北という名のプレゼントを用意しましょう。 誇りのために誇りを棄てた皐月の王よ、最後の救いを受け取るがいい!」
「上等じゃねぇか。行くぜ旦那、あの野郎を全力で射殺してやる! 卑怯なんて言うなよ?」
そしてアーチャーは地面に何かを投げつけるこれは…煙玉か!
「危ないマスター!」
突如として現れた矢をセイバーが弾く、しまった、また相手に先手を許してしまった。
「一旦離れよう、セイバー!」
「はい、ではゆっくりと後退してください。 マスターの背後は私が守ります」
そしてアーチャーの矢の嵐から脱出する、早くなんとかしなければ…このままではジリ貧だ。
「よし今だ!release_mgi(a)!」
新しく手に入れたコードキャストを発動する、これは長距離を飛んでいく弾丸だ、そして逃げる途中の柱を少しずつ折っておいたので…
ズゴゴゴゴゴ…
隣の建物が崩壊して砂埃が舞う、この隙に乗じて隠れるとしよう。
「ちっ、見失ったか。 意外と大胆な手を使うじゃねぇのあの野郎」
「真面目にやれ、アーチャー」
「俺はいつでも真面目ですよ、サーの旦那...まあ俺相手に距離をとったのは相手のミスだ。 …宝具を解放する!魔力を廻してくれ」
「…いいだろう、仕留めるがいい、魔弾の射手よ」
〜〜〜〜
「よし、上手くいった 取り敢えず今は隠れよう、セイバー」
「はい、ですが次無茶する時は言ってくださいね?もう少しで瓦礫が頭に落ちるところでした」
取り敢えずアーチャーもこちらを見失ったようだが、これからどうする?
こちらから動くと確実に見つかるしあれだけ用心深いやつだ、向こうから姿をあらわすとは思えない。
その時、緑色の瘴気を纏った霧が突如として出現する。
「これは…イチイの毒!ごふっ...」
「くっ、また毒ですか…うっ!はあ…はあ…ガハッ!」
セイバーに毒はかなりの弱点だ。
病弱というマイナススキルに体力に自信がないセイバーに長期戦をやらせるわけにはいかない、早く何か考えなくては。
「……これしかない」
〜〜〜〜
「さあて、あの小僧 あと何分持ちますかねぇ」
……自分を偽り、勝つためならば手段を選ばない。
皮肉な話だ、軍属だった頃の私と何一つ変わらない。
私はなんのためにこの戦いに…
「動いた!だが……一人か、セイバーは何処に…まあいい、マスターさえ仕留めれば俺たちの勝ちだ。…仕留めるぜ」
すると何を思ったか彼はいきなり走り出した。
「はっ、死に物狂いで走ってくるとは本当に毒が頭に回ったようだな!少しばかり速いスピードで走っただけでオレの狙撃から逃げれるとでも?」
少しばかり私はあの少年に期待を寄せていた。いや、昔あった男に目が似ていた、という理由だけで期待した私が馬鹿だったのだ…
〜〜〜〜
俺は今、一か八かの賭けに出ている。
この賭けに勝ったとしても勝負に勝つかはわからない、だがここで諦めるわけにはいかない。
俺はセイバーと勝利をつかむ!
「チェックメイトだ!」
「ぐうっ!」
「ふう…勝ちましたよ旦那、意外と最後はあっけなかったが…まあこんなもんか」
アーチャーの矢が腹部に刺さり、自分は倒れる…そして自分は一か八かの賭けに…勝った。
「今だ!セイバー!」
「なっ!?」
「任せてください!はああっ!」
セイバーの一撃によりイチイの木は切り倒される、だが自分達はまだ勝ってはいない、まだ同じ土俵の上にあがっただけだ。
「くそっ、結界が! …何故だ!あの矢はかすっただけでも致命傷だ!耐性を持っている人間ならともかくただの人間であるあの小僧を殺すのには充分だったはずだ!」
「これだよ」
そう言って取り出したのは前に桜からもらったアーチャーの弓だ。折れてしまっていたのでぐるぐるに束ねて防御しやすくしている。
「もちろんこれを防御に使っただけじゃ毒は無くならない。だからもう二つ使わせてもらった。一つは状態異常を無くすコードキャスト、そして硬化のコードキャストだ」
「君の狙撃を怖がっても始まらない、かと言って動かなかったらこちらが敗北する。
なら俺は、君の弓がどこを狙うか予測してそこだけに全力を出して防御したんだ」
「…何故オレの狙撃する部位がわかった」
「そんなの…ただの勘だよ」
そうだ。 何もかも絶望的なあの状況で信じれるのは俺には己の運しかなかった。 一か八かどころではない賭けだったが俺はその賭けに勝ったんだ。
「なんだと…」
「ダン・ブラックモア。 話がある!あなたは確か正面から相手をすると言った。 …俺もだ、正面から勝負をしよう、来い!」
我ながら無茶苦茶な挑発だと思った、だけどあの老騎士なら来てくれると信じていた。
「迷いを捨てたか…いいだろう、相手をしよう」
「はあ!?正気かよマスター!こいつらの言葉に惑わされてんじゃねぇ!アンタ、どんなことしても勝たないといけないんじゃなかったのかよ!?」
「冷静になれ、アーチャー お前の技量はわしがよく知っている、わしのサーヴァントである以上ひとりの騎士として振舞ってもらいたい。
…信頼しているよ、アーチャー」
その時、弓兵の脳裏に思い浮かんだのは幼い頃に見た美しく気高い騎士の姿だった。 そうだ、 思い出した。 …オレは、強くてカッコよくて誰かを守れる騎士になりたかったんだ。
「……騎士、か。へっ、令呪を使う必要は無いぜ、マスター」
「ほう…今度こそ正々堂々と戦うのですね」
「ああ、酔狂なマスターに当てられてな!」
アーチャーは両手にナイフを持ち、セイバーと相対する、その目には今までと違って本物の覚悟が感じられた 。
セイバーは疲労しているといっても剣士だ、アーチャーもナイフの使い方は上手かったがセイバーはナイフをすんでのところで後ろに躱し…渾身の突きでアーチャーに止めをさした。
「あーあ、負けちまったか」
「すまなかったな…アーチャー」
「いや、いいんだ、旦那。 生前は縁がなかったが、一度くらいはお姫様を助けるナイト様みたいに俺も格好つけたかったんだよ。
……最後にどうしても手に入らなかったものを掴ませてもらったさ」
そう言ってアーチャーは消えていった、この老騎士ももう消えてしまうだろう。
「岸波白野…これから先、 誰を敵に迎えようとも誰を敵として討つことになろうとも必ずその結果を受け入れてほしい。
…迷いも悔いも消えないなら消さずとも良い、ただ結果を拒むことだけはしてはならない、それを見失って進めば君は必ず未練を残す。すべてを糧に進め、覚悟をするとはそういうことだ。
さて…ようやく君に会えそうだ…長かったな…アン…ヌ…」
そう、この先には三回戦があり、まだその先もある。
しかし戦うしかないのならばせめて戦った過去に、命を奪った相手に恥じない戦いを。
「ダン卿、あなたに教えてもらいました。…俺の在り方を」
二回戦終了...休みだったので連続投稿頑張りました...