アストルフォ、欲しかったなあ...
「ugoaaaaaaaaaaa!!!!!!!!」
桁違いな力。
これが彼女達のサーヴァントか、近づくもの全てを破壊しようとするあの姿はまさにバーサーカーだった。
「こいつ…素早い!」
なんという速さだ、コードキャストが当たらない、バーサーカーとはまだ戦ったことは無かったがここまで凶悪で理不尽な破壊をするサーヴァントだったのか。
「岸波くん、妨害系のコードキャストは当たらないと思ったほうがいいわね…使うならサポート系のコードキャストよ」
「そうだな…gain_agi(16)!」
たしかに速い…が今のセイバーはその速さを上回っている、それにアーチャーもライダーと戦っていた時とは動きが全然違う。
やはりあの時は力を隠していたのか。
「はああっ!」
セイバーは縮地を使って背後に回り込み確実にバーサーカーの身体に傷を付けていく、このまま順調にいけば勝てるだろう。
「ugoaaaaaaaaaaaaaaa!!!!!!!」
「ふん、まるで獣だな…攻撃に誇りなどが微塵も感じられん、私が言えたことではないが貴様本当に英霊か?」
そう言うとアーチャーは持っていた双剣を投げ捨ていきなり弓を取り出した。
バーサーカーは大きく両手を振りかぶった、アーチャーは静かに弓を構えて動かない...あのままじゃアーチャーが危ない!
「大丈夫よ岸波くん、あいつは強いから」
「ugoaaaaaaaaaa!!!!!!!」
だがその大きな両手は振り下ろされることは無かった、アーチャーが投げた剣が戻ってきてバーサーカーの腕を切り落としていた。
「ふん!」
そしてバーサーカーの腹に風穴をあける、これほどまでに強力なサーヴァントだったとは…そして遠坂も的確にアーチャーの支援をして火力を底上げしている、サーヴァントとはここまで化けるものなのか…
「すごい…」
「アーチャーさん、これは…」
「ちっ、これはまずいな…」
しばらく大人しくなっていたバーサーカーがまた立ち上がる、あんな傷を負ってもまだ戦えるなんて…
「違うわ岸波くん。見なさいあいつを」
傷が…再生している!
その身体にはセイバーがつけた傷はもちろんアーチャーにやられた穴も綺麗に回復していた。
「ジャバウォックは強いでしょ?もっともっと遊んでよ!お兄ちゃん!」
くそ…このままじゃジリ貧だ。どうすればいい、どうすれば…
「うっ!かはっ!」
しまった!こんな時にセイバーのスキルが…
「ugoaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!!!!!!」
「う、うああああああああああ!!!!」
動けなくなっていたセイバーは思いきり掴まれ、ミシリミシリ、と音をたててバーサーカーに握り潰されそうになっている。
その瞬間、俺は走り出していた。
「ちょっと、岸波くん!」
「セイバーを離せぇ!!この野郎!!!」
そして奴の目玉に全力のコードキャストをお見舞いする、例え効果が薄いとしてもゼロ距離ならば怯むくらいはするはずだ!
「ugoaaaaaaaaaaa!!!!!」
よし!上手くいった!あとはセイバーを助けて…
その時、バーサーカーが自分に殴りかかってくるのが見えた。
まずい、体が動かない、死ぬ…
「バカか貴様は!サーヴァントに生身で立ち向かうなど一丁前にヒーロー気取りか!?一歩間違えば死んでいるぞ!」
アーチャーが自分の前に出てきてバーサーカーを止めてくれていた。た、助かった…
「俺はただ…セイバーを助けようと」
「ふん、助けようとして自分が死にかけるとは元も子もないな。…とりあえずリンに作戦があるらしい、貴様はセイバーを連れて下がれ」
そう言われセイバーを抱えて遠坂のところまで下がる。
「すまん遠坂…足手まといになってるな、俺」
「過ぎたことはもういいわ、いい?今から私が脱出経路を探すから、それまであいつの足止めをお願いね」
遠坂を信じてセイバーに回復のコードキャストを掛ける。
こうなったら遠坂が脱出経路を探し当てるまで全力で守る!なら俺はセイバーのサポートをするしかない。
「サポート感謝します、マスター ですが…いえ、この話は後にしましょう」
「わかったよ、行くぞセイバー!」
そして数十分が経過した頃…セイバーも、そしてアーチャーも呼吸が乱れ始めている、いくら斬っても瞬時に回復して襲ってくる怪物に流石の二人にも限界が来始めていた
「ugoaaaaaaaaaaaaaaaa!!!!!」
「うわあ!」
衝撃で俺も吹きとばされる、くそ…このままじゃ全員死んでしまう…
「お兄ちゃん、もう壊れちゃったの?もっと遊びたいなあ…」
「前いた所はつまらなかったけどここはとっても楽しいわ、だってお兄ちゃんがいるから。
お兄ちゃんはようやく出会えたありすの仲間だもの。
今度はちゃんと触れ合えるの、真っ赤な血もあたたかいの」
そう言ってありすは俺の血を触っている…
話せるチャンスは…今しかない。
「ありす…あのサーヴァントを止めてくれ…セイバーが、死んでしまう…」
「サーヴァント?ジャバウォックのこと?違うよお兄ちゃん、あの子はサーヴァントじゃないよ?」
サーヴァントじゃ…ない?そんな馬鹿な、あの狂気を纏ったサーヴァントはバーサーカーしかいないはず…
「そうだ!じゃあヒントをあげるね!
”ヴォーパルの剣”ならきっとあの子も止めることができるわ!
でもそれは存在しない架空の剣…さあどうやって見つけたらいいでしょう?」
ヴォーパルの剣?そんなものがあるのか…いや、そもそも存在しない剣なんてどうやって見つければいいんだ…
「見つけた!岸波くん、セイバーに足止めお願いできる!?」
「うぐ…わかった!頼むぞ、遠坂!」
今はとにかくここから逃げよう、だが今の俺では脱出する手段がない、あとは遠坂に任せてあいつの足止めに全力を尽くす!
「アーチャー!あそこよ!あのほころびを広げるためにあなたの弓をぶちかましなさい!」
「生憎だが、リン。 今のオレの魔力ではあの小さなほころびに傷をつけることはできないだろう」
「な!ちっ…わかったわよ…だったら奥の手を使うわ、まさかこんなところでこれを使うことになるとはね…」
「その思い切りのよさが君のいいところだな、リン」
「アーチャー!汝がマスター 遠坂凛が令呪をもって命ずる!限界を超えて出力!あのほころびに大穴をあけなさい!」
「了解だ!マスター!」
「
その瞬間、アーチャーからとてつもない魔力を感じる…これがアーチャーの本気の一撃、ということか。
「
そしてそのほころびはガラスのように砕け散り、俺たちは脱出することに成功した。
「あ〜あ、お兄ちゃん逃げちゃったあ...あの子も寂しそう」
「また一緒に遊べるわ、ありす 楽しみにしましょう」
〜〜〜〜
「マスター、あの時は本当に危なかったんですからね!反省してますか!?」
「うん、ごめんねセイバー、あの時は頭に血がのぼって…反省してるよ」
「ですがマスター…あなたが助けに来てくれた時、すごく嬉しかったですよ」
「セイバー…」
確かにあの時は危なかった、命の危機だったはずなのに今のセイバーの笑顔で疲れなどは吹き飛んでしまっていた。
助けられてよかった、本当に心からそう思った。
「コホン、ちょっといいかしら?」
あ、遠坂を忘れていた。
そういえば自分が遠坂を巻き込んでしまったのだ、謝らないと。
「遠坂、ごめん、今回君を巻き込んだのは俺の責任だ。
それに令呪まで使わせてしまって...」
「ああ、もう終わったことを蒸し返さないの。
それより白野くん…あなたの対戦相手のことで話があるのよ」
やっぱり遠坂は頼りになる、冷酷に振舞っているが遠坂も面倒見がいいのだろう、いつも自分を助けてくれる。
今回も存分に頼らせてもらうとしよう。