右手に名前も書いたし、あとは教会にいってセイバーのステータスをあげるだけだ。
「はい、改竄終わったわよ」
「どれどれ…おお!敏捷がAに、それに筋力がDになってる!」
すごい、これ程までにステータスがあがるなんて、セイバーはどれ程敵を倒したのだろうか?
「あはは…それがあの子を追いかけている時にエネミーが沢山出てきたので…片っ端から切り刻みました!」
そんな怖いこと笑顔で言わないで!
ま、まあとにかく…強くなったのはいいことだし、決勝場へと急ぐとしよう。
〜〜〜〜
エレベーターに乗り込む、そして相手はもう乗り込んでいたのだろう、すぐにエレベーターは発進する。
そして…エレベーターの明かりが点いて対戦相手が目の前にいた。
「今日もまた遊べるね」
「そうねありす、何をする?おにごっこ?かくれんぼ?それともおままごと?」
「わたしはおにごっこがいいな、お兄ちゃんがしんじゃうまで追いかけるの」
「うん、逃げたら追いかけたくなっちゃうよね、ウサギとか」
「逃げられちゃったら悲しいわ」
「逃げられないようにいっぱい走らなきゃ」
「走るのは好きだけど…お兄ちゃん捕まってくれるかしら?」
「つかまるよ!そしてつかまえたら首をチョン切っちゃうの!」
「オニだもんね!それくらいのことはしなきゃね」
これは最近学習したことだが…笑顔で怖いことを言われる方が普通に言われるより何倍も怖い…というか。
「ね、ねえ…」
「じゃましないでよ!お兄ちゃんとは話してないよ!」
「ええ、わたしはありすと話しているのだもの」
一言声をかけただけでこれである。 自分はさっきからありす達と全く会話をしていないのに話が進んでしまっている。 まあ敵同士なのだから話をして仲を深めるという事にも意味があるのかと言われたら無いのだが。
「そうよ、わたしはアリスだけと話すの」
「わたしのことを嫌うならお兄ちゃんなんていらないの」
「お兄ちゃんなんていらないの、邪魔なの」
…何だろう、自分は嫌われるようなことをしただろうか?と、その時決戦場に到着し、ありすと向かい合わせの形になる。
「気にすることはありません、好かれようが嫌われようが殺し合うことに変わりはありませんから」
「…でもお兄ちゃん達がどうしてもって言うなら今日だけは遊んであげる」
「いっぱい遊ぼうね、お兄ちゃん」
遊ぶ…か。 それはこの前のように?
「そうだよ、この前は逃げられちゃったけどもう逃がしてあげないよ」
「たとえお兄ちゃんがいなくなってもわたしはアリスと遊ぶもの。とっても楽しい、とっても幸せ」
「今日はお姉ちゃんもまぜてあげる、みんなで遊んだ方が楽しいものね!」
「子供の遊びをする気はありません、私も子供は好きですがこれからは大人の戦いの時間です、本気の戦いと言うものを教えてあげましょう」
現実には終わりがある、哀しいと思うが永遠に続く夢などないということを教えてあげよう。
「ありがとね、お兄ちゃん、あたしお兄ちゃんと遊ぶのとても楽しかったよ」
「ええ、今までの誰よりも楽しかったわ。 でももういいの、あなたはいらないわ、お兄ちゃん」
「”あわれで哀しいトミーサム、いろいろここまでご苦労様、でもぼうけんはお終いよ
だってもうじき夢のなか、夜のとばりは落ちきった、あなたの首もポトンと落ちる”」
「さあ、嘘みたいに殺してあげる!ページを閉じて、さよならね!」
姿が消える、敵のクラスはキャスターだ。
どこか遠いところへ移動したはず、まずは何処にいったかを探さなければ。
「”ここでは誰もがただのモノ、鳥は鳥で人は人でもいいじゃない、あなたのお名前いただくわ"」
「くっ…」
これは…固有結界か!このままじゃ前みたいに何もかも忘れてしまう…
「マスター!右手です!右手に名前を残したはずです、確かめてください」
ああそうか、思い出したぞ、俺のやるべき事を。
「俺の名は…岸波白野」
ピシッ
何かが砕ける音がする、やはり遠坂の推測は間違っていなかった。 物事にはルールが必ずありこの固有結界は自分の名前を思い出せれば何も怖く無いという事だ。
「あ、お兄ちゃん”名無しの森”を解いちゃったあ…」
「手に名前を書いておくなんてずるいわ。あの子にお仕置きしてもらいましょう」
「マスター!来ます!」
「行きなさい!ジャバウォック!」
こいつを倒す為の剣…ヴォーパルの剣は俺しか使えない。こいつは俺が倒すしかない! だけど…セイバーとアーチャー二人を同時に相手に出来るこいつに単身で突っ込むことはできない。 ここは…
「隙を作るんだ!頼むぞセイバー!gain_agi(32)!」
「任せて下さい!はああっ!」
縮地を使い、目にも留まらぬ速度でセイバーは敵を切り刻んでいく、だがあの怪物は斬られたところからどんどん再生していく。
「忌々しい再生能力は健在ですか…どうにかして隙を作らなくては」
「ugoaaaaaaaaaa!!!!!!!」
相手は首を落としても、腹に風穴があいても怯まず向かってくる、相手もどんどんセイバーの速さに慣れてきている。
このままじゃセイバーが捕まるのは時間の問題だ…どうする?いや、ならば逆に…
「く…私のスピードについて来ようとしてますね、このままでは…かはっ!?」
「ugoaaaaaaaaaa!!!!!!!」
セイバーが押されてきている、病弱スキルがあるということもありやはりセイバーには長期戦は向いていない、短期決戦でありすを倒すのが一番だったのだが…
「ugoaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!!!!!!!」
な、なんだ!いきなり咆哮を上げたと思ったら周囲の物が衝撃で吹き飛んでいく、そしてそれは俺やセイバーも例外ではなかった。
「うわっ!」
「くっ!…ヤツは!ヤツはどこですか!?」
上、右、左、後ろ、どこを見てもジャバウォックがいない、あの巨体で隠れるところなんて…はっ!
「下だ!セイバー!」
「下…?まさか!」
そして突如足元が崩れセイバーの足が掴まれ、壁に叩きつけられる。
「ugoaaaaaaaaaaaaaaaaa!!!!!!!!!」
「うあ…かはっ…」
そして大きな腕がセイバーに振り下ろされる、だがやらせない!今が最大のチャンスだ!
「うおおおおおおおおおお!!!!!!!!!」
「ugoaaaaaaaaaaaaaaaa!!!!!!!!!」
背中を切り裂く、そしてジャバウォックは悲鳴を上げ一瞬動きを止める。
「ジャバウォック…?あれは、ヴォーパルの剣?お兄ちゃん、見つけたんだ…」
「傷口が…再生しない!今だセイバー!」
「はい!その首貰い受けます!」
そして怪物ジャバウォックは動きを止めた、固有結界を打ち破り、ジャバウォックも倒した、もうこれでアリス達に戦う手段はないはずだ。
「ジャバウォック負けちゃった…お兄ちゃんの勝ちだね」
「マスター、悲しいとは思いますが心を決めて下さい。…ご指示を」
「まだ…まだだよ!ありすの物語は私が終わらせない!」
アリスはまだ諦めていないのか本を取り出し魔術を行使しようとする。 だがもうこの範囲は既に剣の間合い。 魔術師が剣士に近接戦闘で勝てる道理はない。 せめて楽にと思った時、ありすはいきなり頭から血を流し苦痛に呻いていた。
「うっ!かふっ!…うう.…アリス…いたいよお…」
ありす!?ついに自分のサーヴァントの出力に耐えきれなくなってきている、あんなに血みどろになって…
「もうやめろアリス!そんなことしてもありすが苦しむだけだ!」
「いやよ!折角お友達を手に入れたんだもの! ありすは私のものなの!こんな所で終わりたくない! イヤ!」
「…終わらせよう、セイバー」
「…はい、マスター」
セイバーの突きが炸裂し、剣がアリスの腹部を貫く。この瞬間、三回戦の勝者が決まった。
そして今回も勝者と敗者を分かつ壁が姿を現した。
「うう…まだ…まだ終わってないんだから…」
「…もういいよ、アリス。わたしね、本当はわかってたよ、きっと…何もかもなくなっちゃうって…」
「な、何を言っているの?ありす…?」
「だって…よく覚えてないけれど…わたしはもう死んでるもの…」
ありす…本当は気づいていたのか…
「あの病院にいた頃からわたしには何もなかった。
誰もわたしをみてくれなかった。
ひとりだった。
いたかった。
…だれもわたしを人間として扱ってくれなかった。
でもありすが友達になってくれて嬉しかった、誰かがわたしのことを見てくれたのが嬉しかった。
…ねぇ…お兄ちゃんはわたしのこと…見てくれた?」
「ああ…ありす、また一緒に遊ぼうな」
「…お兄ちゃんは…優しいね…ほんとはもうちょっと遊びたかったけど…バイバイ」
「ありす…わたしもありすと一緒にいられて、幸せだったよ…」
〜〜〜〜
…これが聖杯戦争のルール。
何度も経験しているとはいえ、こんなものが当然なのだとは思いたくなかった。