目を開けると、そこは決戦場だった。大気中に放電する魔力の火花、ラニを中心にアリーナは融溶しだしている。
「は、白野くん!?嘘でしょう、どうやってここに!?」
「今は説明してる時間はない!ラニ!自爆を止める方法はないのか!」
「…はい、一度自爆を決行させたら解除することはできません…さらに私のサーヴァントには令呪を使って任務遂行を強化させてあります
…もう誰にも止められません」
”アリーナに第三者の介入者あり、規定に従い20秒後に強制退出します”
「◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎ーーー!」
バーサーカーが咆哮をあげ、その衝撃で遠坂は壁に激突し気絶する。バーサーカーは俺たちを侵入者だと認識し、こちらを排除しに来ようとしていた。
「セイバー!軌道をそらすだけでいい!俺も魔力を回すから全力で凌いでくれ!」
そしてセイバーはバーサーカーの弓矢を軌道を逸らそうとする…だがバーサーカーの弓は少し威力が弱まっただけで真っ直ぐこちらへ向かってくる。
…くそ、ダメか…
「”
助けてくれたのは赤い弓兵…アーチャーだった。
目の前に七つの花弁の盾を出現させ、バーサーカーの投擲を完全に防ぎ俺を守ってくれていた。
「助かったよ、アーチャー」
とは言ったもののラニはあと20秒もしないうちに自爆するだろう、セラフの強制退出じゃ間に合わない。 …一体どうすれば。
「ふん、貴様らは此処へ何をしに来た、足を引っ張りに来たのか?違うだろう。…ならば、後の事…リンは任せた。 残り20秒、ここからはオレが請け負ってやる」
そう言うとアーチャーは両手の双剣を消し代わりに巨大な斧剣を出現させる、だがその反動が大きいのか身体中の魔術回路が悲鳴を上げ血管から血を流していた。
「チッ、流石にこの投影は反動が大きいか…完璧に再現する事は今の魔力では厳しいな…」
「◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎ーーー!!!」
そして激しいつばぜり合いになりアーチャーは一瞬たじろぐがなんとかバーサーカーを吹き飛ばす。
その隙を見失わず弓を取り出し、バーサーカーが向かってきているのに見向きもせずラニに向かって弓を引き絞った。
「
「
「◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎ーーーー!!!」
激しい砂埃が舞う、アーチャーの本気の一撃は確実にラニの心臓を狙っていた。
結果はどうなったのだろうか…
「う…ああ…」
アーチャーが放った弓はラニに向かっていき…その心臓を的確に射抜いていた。
セラフの強制退出が作動し、自分は遠坂を抱えて脱出する、そしてアーチャーにも脱出するよう呼びかけるが...
「アーチャー!お前…」
「なんとか間に合ったか…ああ、この怪我のことなら気にするな、戦場ではよくある話だ。 …だが少々無理をしすぎた、オレはここいらでお暇をもらうとしよう」
アーチャーは右半身をバーサーカーに吹き飛ばされ、今にも消滅しそうになりながらもいつもの皮肉な笑みを浮かべていた。
「正直な所、マスターを無傷で守りきれる自信がなくてね、君が来てくれて助かった。…リンは怒るだろうが、まあ勘弁してほしい。 …後のことは任せたぞ、岸波白野」
「アーチャー……!」
アーチャーを残してセラフの強制退出が始まる、アーチャーの声は何処か寂しそうでもあったが何処か満足したようでもあった様に聞こえた。
〜〜〜〜
目がさめるとそこは保健室だった。
その左手には冷めた熱とともに数を減らした令呪。そして寝ている凛とラニ。
傍には消耗して俺のベットに潜り込んで寝てしまっているセイバー。うん、可愛い。
「起きましたか、先輩。 遠坂さんなら一度起きたんですが…立ち上がった瞬間に溜まっていた疲労がピークに達したみたいでまた眠っちゃいましたよ?」
そうか、なら良かった。 一度起きたということはもう体に異常はないということだ、 桜の話では健康状態に問題はないらしいしここで目覚めるまで待つとしよう。
「うん…?おはようございます…マスター…」
と思ったら遠坂より先にセイバーが起きてしまった
「おはよう、よく眠れた?」
「はい、おかげさまで…って…はあ…」
セイバーが溜息を吐く、やっぱり令呪を使ってしまったことを怒っているのだろうか?
「はい、ものすごく怒ってます、そりゃもう怒るを通り越して呆れたというくらいです」
「あの時は不満なんてなさそうだったのに…」
「あったに決まってます!自分のマスターが危険なところに向かうなんて本当は死ぬほど嫌だったんですよ!?
…ですがあの様に真摯に頼まれたら断れないじゃないですか…」
もうそろそろ遠坂が目覚めそうになっている、その気配を察してセイバーは霊体化する。
「マスター?これで終わったわけではありませんよ?おしおk...お説教はまた後ほど…」
何か恐ろしい事聞こえた様な気がするが気のせいだろう。
だってあんなに笑顔が眩しいセイバーが怖い言葉を言うわけないじゃないか!
…うわーい、楽しみだなぁ…セイバーとのお話…
「アンタなんて事してくれてんのよ!」
開口一番、怒られた。
「なんで助けにとか来ちゃってんのよ!…私が死にそうだったからとか?ふん、勝算なら十分にあったんだから。
ラニの自爆は確かに脅威だったけど私のアーチャーならサーヴァントごとラニを止められたわ。…それに、ちょっと見せなさいよ。…はあ、やっぱり令呪使っちゃってる」
…聖杯戦争で使える令呪は2つ、最後の令呪は使用した途端に聖杯戦争の参加資格が奪われてしまう、つまりはあと一回しか使えないという事だ。
「あんな無茶そうじゃないかと思ったけど…この後の戦いあんたどうする気よ?」
「後のことは何も考えてなかった…でも後悔はないよ」
「反省しなさい!バカ!」
酷い言われようだ。まさか人助けでここまで怒られるとは思わなかった。
「…まあいいわ、なんか納得いかないけど一応お礼は言っとく、ありがと。私は勝敗が決まる前にアリーナから出たから令呪は剥奪されてない。 …けど勝者出ないものにはもう対戦は組まれない、この矛盾わかる?
…今の私は生き残るのはただ一人である聖杯戦争のシステムから外れたイレギュラーな存在なんだと思うわ」
凛は令呪を確認するがそこには灰色になった令呪が存在するだけだった。
「まあ正直言うとあの戦い、勝っても深刻なダメージは避けられなかった。次かその次できっと負けてたわ、それなら今の立ち位置の方が可能性はある。
聖杯は無理だけどレオを倒せれば私の目的は達成と言えるんだし。
…それでも最後までアーチャーと一緒に戦いたかったとは思うけど…ダメね、そんなのは心の贅肉だわ。
…ごめん、本当は少し感謝してる、ありがと」
照れているのか拗ねているのかなんだか複雑な表情をしている。
「ここからが大事な話よ!あなたどうやって私たちの戦いに介入できたのよ!」
遠坂にとっては今までのは前座だったらしい。
これからマイルームに戻ってもこっちは恐ろしいことが待ち受けてるっていうのに…まったくやれやれだぜ。
「決戦場のセキュリティレベルは最高レベル-あの障壁を破ろうとすれば攻性プログラムで逆に脳が焼かれるはず… いったいどんな手を使ったのよ?」
遠坂に頬をつままれながら事の経緯を説明する、視聴覚室での事、そこでの映写機での事。
「…その話は本当ですか?」
そしてラニがおきる、がその胸にはアーチャーに開けられたはずの穴が無くなっていた。
「私のの身体はそういう風に作られましたから…私も爆発でサーヴァントを失ってしまいました、私を爆風から守って…
…おそらく私も遠坂凛と同じ状況に置かれているのでしょう」
「アーチャーをやられた恨みはあれど、聖杯戦争から外れたならあんたと戦う理由はこちらにはないわ」
「岸波白野さん、あなたは本体の脳が焼かれても平気だった…それが何を意味するのかわかりますか?」
ここに来る前に失った記憶。 さっき見た夢の事といい妙な胸騒ぎがする。 本音を言うとその先の答えを聞きたくなかった。
「私の仮説が正しければ…岸波白野…あなたは人間ではありません」
「な、何言ってんだよ…いきなりひどいなラニ。俺は人間だよ」
「ラニの話を聞いて確信した部分もある、私もそこからたどり着いた答えをはっきり言うわ。白野くん、あなたひょっとして本体がないんじゃないの?」
「本体が…ない?」
「言葉通りの意味よ、他のマスターはみんな魂をデータ化してここに来ている、でもあなたは違うあなたは今データしかない状態なのよ。
攻性プログラムに攻撃されても大丈夫なのはあなたが本体と繋がってないから、どこにも繋がっていないから本体の脳が焼かれることもない、なぜならあなたはただのデータにすぎないから」
…待ってくれ。それじゃあ俺はこの戦いで勝ったとしても戻る肉体がない、なぜなら俺はあの言峰神父のようなNPCでしかないから…
…ならば俺が戦う意味なんて…
「待ちなさい、何か勘違いしてるわね。 本体がないっていっても単に繋がってないだけだから、予選を通過した時にトラブルがあったってこと、つまりそれが原因よ。
その時に肉体とのリンクが途切れて修復できないままここまで来たってこと。
当たり前よね、自分の肉体と接続が途切れているんだから記憶が曖昧なのも頷けるわ」
「なるほど、記憶は思い出せないのではなく肉体から引き出せなかっただけなのか…」
「そう、つまり途切れたリンクを回復させればあなたの記憶が取り戻せるってこと。 セラフ解析のついでにあなたの肉体くらい探してあげるわ、ちょっと時間かかるけど我慢してよね」
でもよかった…これで記憶が戻る。
そうすれば自分はどんな人生を歩んできたのか、なぜこの戦いに参加したのか知ることができる。
これで俺も胸を張って戦えるはずだ。
「ラニ!」
「はい、なんでしょう?」
「俺は君が生まれたところがどんなところかは知らないけれど自爆してまで任務を遂げさせる考えは間違っていると思う。
お師さんにもらった命を大切にして生き残ることを考えよう」
「…はい!」
そして電子手帳が鳴る、いつもの対戦相手の発表かと思ったが...どうやら違うようだ。
”至急マスターの皆さんは体育館に集まってください”
なんだろうと思いながら体育館に向かう、マスターということはもう遠坂たちは関係ない。
俺はまだ怒っているセイバーと一緒に体育館に向かうのであった。