桜セイバー in Fate/EXTRA   作:日向辰巳

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二十二話

「ラン、ラン、ルー♪」

 

彼女は他のマスターを殺していた、だが決戦場ではなく無差別に、である。

 

「ウーン、ナカナカオナカニハイラナイ」

 

そして殺して首だけになったマスターを弄び、食べようとして、また止めて投げ捨てる。

 

「これはこれは…かなり派手に壊してくれたものだな。 3人のマスターの血では足りないかね? …マスター・ランルーとそのサーヴァント…ランサー」

 

「ふん、貴様はコトミネか…直属のNPCもどきがここへ何をしに来た」

 

「一つ提案だ、私とゲームをしないか?」

 

神父はニヤニヤと気味の悪い笑みを浮かべながら問いを投げる。

ランサーは槍を突き出すが神父は鮮やかに躱し懐に潜り込み正拳を繰り出した。 もっとも、ダメージを与えることはできなかったし、与える気もなかっただろうが。

 

「ははは、そういきり立つなランサー。単純な趣向だ、見たまえ。

君たちは人が好きなようだからな、私が用意しておいた。…諸君!君たちもそろそろ単純な決闘だけでは飽きてきたと思ってね。 本戦から外れて私から少し違う趣向を用意させてもらった。

…この2人は度重なる警告を無視し破壊活動を続けてきた」

 

「警告?食事を寄越してきたの間違いではないか、コトミネよ」

 

「…ふん、聖杯戦争の監督役として彼らにペナルティを与えねばならない、ただここで私が彼らを処分してもつまらないのでね。

集まったマスター諸君とゲーム…”狩猟”をしてもらおう。獲物は違反者マスター・ランルーとそのサーヴァント、ランサーだ。

この2人を見事仕留めたマスターには報酬を与えよう」

 

報酬?それは何だろうか、相手はマスターを3人も殺している…そんな奴を倒すというのだ。

それ相応のリスクに見合ったものじゃないと割に合わない。

 

「報酬は4回戦対戦相手の戦闘データの情報開示…というのはどうだね?もちろん今から校舎内での戦闘もアリとしよう」

 

何だって!何てものを報酬にするんだ、これでは自分の情報が対戦相手に漏れたら容易に対策を取られてしまうという事。 もしそれが自分の情報だった場合負けるのは自分達だ。

 

「コトミネよ、我らが他のマスターをすべて返り討ちにした場合報酬はどうなるのだ?」

 

「その場合は今までのペナルティの白紙、処分の取り消しだ。 それに対戦相手がいなくなれば君たちも自動的に聖杯に近づくことになる」

 

「イイヨランサー、モウランルー君オナカペコペコダヨ。 ヒトツクライハスキナモノアルカモシレナイシ」

 

「…ふむ…善し!善し!善し!乗った! 我が槍に貫かれたいものは前に出たまえ! 串刺しの時間である!血の晩餐である!」

 

そして数名のマスターが動きランサー討伐に立ち上がる、だがランサーは数の差をものともせず敵を串刺しにしていく。 多対一であそこまで戦える技量、そして何より固い。 あの槍を突破して更に倒すのはかなりの苦労が必要だろう。

 

「神父も悪趣味なことをしますね、というかあのランサーかなりのやり手ですが…どうしますかマスター?」

 

「このまま放っておくわけにはいかない、俺たちも…」

 

「岸波白野、あなたも来ていましたか。あの二人はあなたの次の対戦相手だそうですね。 彼女がなぜ異常な行動に出るのか分かりませんが、彼女が持つ魔術回路は天性のものです」

 

現れたのはレオだった、自分達の次の対戦相手は見ていなかったのでわからなかった。

というか…彼女…?

 

「あの人…女性なのか?」

 

「ええ、マスター・ランルーは女性ですよ。 このゲーム、傍観するマスターもいるようですがあなたはどうしますか?」

 

あの二人、複数のマスター相手に戦い慣れしている…相手にするにはかなりのリスクがある。

と、自分たちが迷っている時に他のマスターが動いていた。

 

「うおい!待てセイバー!何でお前はいつも考えもなく突っ込むんだ!」

 

「心配すんな!そう簡単にしなねぇからよ!」

 

そのサーヴァントは見た目は一見普通の少女だった。が、戦い方は獰猛な獣のようで乱暴というか荒々しかった。

その少女はまったく隙の無い嵐のような連撃であのランサー相手にかなり優勢な戦いをしていた。

 

「オラオラどうしたぁ!動きが遅くなってるぞ!てめえそれでもランサーか!」

 

「ふはは!活きがいいな実に結構!」

 

ランサーもまだ打ち合ってはいるが徐々に体に傷がついてきている。

このままいけば負けるのは明白だ、それにランサーが遅くなっているのではない、少女がどんどん加速しているのだ。

 

「おや?あそこにいるのは…ふふ、やはり彼もこの戦いに参加していたようですね」

 

「レオもですか、私もあの少女には見覚えがあります、生前の縁というやつですね」

 

この二人はどちらも知り合いらしい、まあこの聖杯戦争は大規模だしこういうこともあるのだろう。

 

「…僕が出ましょう。このまま聖杯戦争の進行が止まってしまうのも困りますので…ガウェイン!」

 

「…あ?ガウェインだと?」

 

少女が一瞬ガウェインに反応したがガウェインは全く気にもせずランサーに斬りかかる。

 

「…アララ、公爵ガウェインガ出テキチャッタ、モウアレツカッチャッテモイーヨ」

 

「御意、我が妻よ」

 

敵の魔力が大幅に高まる、おそらくランサーが宝具を解放する。

そしてあの少女は即座に反応しマスターを回収しその場から離脱し二階に飛び乗っていた。

 

串刺城塞(カズィクル・ベイ)!」

 

その瞬間、ガウェインの足元や至る所から串刺しにするための槍がどんどん溢れ出る。

それに刺さって死んでしまう者、その場にいたことで巻き添えを食らって力が抜けて動けなくなる者などがいた。

 

「これがランサーの宝具…」

 

「流石ヴラド三世、吸血鬼らしい宝具ですね」

 

「き、吸血鬼!?」

 

「ええ、”串刺し公ドラキュラ”の方が名前の通りが良いでしょうか」

 

なるほど、相手の力を奪ったりその槍で串刺にしたりという宝具か、かなり厄介だ…

 

「プロメテーーーウス!この世に神は在れど吸血鬼など存在するはずがないッ!」

 

「この程度の不浄は私には通りません」

 

何か力を吸われて立ち上がれなくなり叫んでいる人がいたような気がするが気のせいだろう。

 

「マスター、見ましたか?いくらガウェインのステータスが高いと言っても宝具まで通さない程の防御力はありえません、あれはスキルの類でしょうね」

 

セイバーの言う通り、いかに化け物じみている強さと言っても宝具を受けて無傷というのは流石にありえない。 ガウェインが保有しているスキルに何か秘密があるとみて間違いないだろう。

 

「(ぬぅ...ガウェインとセイバーが健在…このままでは及び腰だった他のマスターも参戦してくるであろう…不利である…)」

 

「ここは一旦引きますぞ!妻よ」

 

そういってランサーは体育館から逃げていった、レオは全く追おうとしない、追わないのだろうか?

 

「岸波さん…化け物退治はあなたに譲ります。何せ僕は用事があるので…貴方の戦いを見れないのは誠に残念ですが健闘を祈ります。

…それに彼らが逃げた方角は保健室です、急いだ方がよろしいかと」

 

まずい!あそこには凛とラニがいる、あの二人は今サーヴァントがいない、もし巻き込まれたら…

 

「急ぎますよ!マスター!」

 

最初は俺はただ敵から逃げるだけだった、だが今は手にすることができる剣がある。遠坂達を絶対に守ってみせる!

 

〜〜〜〜

 

「…岸波白野…あなたは本当に面白い人だ。見せてもらいますよ、あなたの実力を…さて」

 

「随分と余裕じゃねえか、西欧財閥の当主さんよ?」

 

「逆にそちらには随分と余裕がないようですね、まだ大人になっていない少女まで引き入れるとは、レジスタンスのリーダー…

…獅子劫界離さん」

 

「はあ…やっぱり凛の奴は参加しやがったか。まあいい、言っても聞かない奴だったしな。 まあ今はそんな事より目の前の敵。 ここであったのも何かの縁だ、その首ここに置いて行け…行くぞセイバー!」

 

「蛮族の怒りを鎮めるのも王の務め、お相手いたしましょう、行きますよガウェイン」

 

…二人の優勝候補が互いに相手を見据え、今まさに激突しようとしていた。

 

 




作者はアポを知らないので獅子劫さんのキャラなどはよくわかっていません
なのでこの獅子劫さんはアポの獅子劫さんと見た目が似てるだけで性格などは違うと思います
一応タグは付け足しますので大丈夫…なはず

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