撤退しまくってます。流石円卓ここまでとは、あとオジマンかっこいいですね!…当たんなかった…
「おのれ人斬り貴様…感動の再会だと言うになんとひどい扱いじゃ…わしがこの時をどれ程待ちわびたものか…」
「知りませんよそんなこと。というか真名で呼びます?普通。ああ、馬鹿なんですね一度死んで蘇って出直してきてはいかがでしょう?」
………そうだ。
あいつの名前は沖田総司。俺は確かにあの少女と共に聖杯戦争を戦ったはずだ。
……何も、思い出せない。
「沖田…総司………総司」
「…マスター?」
………なのに、俺は自然と、挨拶をするような自然さで沖田を名前で呼んでいた。
何故だろう、もう一度会ったら名前を呼ばなければならない気がした。
「どうしました?何処かお怪我でも…」
……気が付けば、俺は沖田を抱きしめていた。
涙を見せたくない。離したくない。だから沖田を抱きしめた、こうすれば沖田に涙を見られることもなく沖田がいなくなる事もない。
「…どうかしましたかマスター?」
「ごめん…何でかわからないけど涙が出てきてさ、見られたくないんだ。しばらくこのままでいさせてくれ」
「…私程度でいいのなら、喜んで」
……体温を感じる。
沖田はここにいる、それを再確認し一度深呼吸。気持ちを落ち着かせてから沖田との抱擁を終える。
「…よし、もう大丈夫だ。ありがとな沖田」
「……総司で」
「え?」
「総司と、呼んで下さい。…そちらの呼び方の方が嬉しいです」
沖田…いや総司は俺が名前で呼ぶ事を許可してくれた。名前を知ったのは偶然だが真名は俺の記憶に関わる重要な事だったのかもしれない。だって……こんなにも俺の心は満たされているのだから。
「…ところでさ、総司」
「何でしょう?」
「何でもするって言ったよね?うん言った、絶対言ってた。何してもらおうかなぁ〜」
ああ、今日は何ていい日なんだ。
名前で呼ぶことを許可され、総司は何でも言うことを聞く…最高じゃないか!
「うっ、やっぱり覚えてましたか…
…じゃああんまり過激じゃないのでお願いします…」
「わかったよ、あんまり過激じゃないやつだね。あんまりね」
あーあ、そんなことを言っちゃっていいのかな?過激だって?そんなのは個人の価値観によって違うものだよ総司クン。
…あ、鼻血でてきた。
「甘っ…何この展開甘すぎるのじゃ…」
すっかり敵のことを忘れていた。
「ふっ!沖田さんのあまりの可愛さにマスターは魅了に掛かっているのですよ!マスターと私は相思相愛ですからね!」
「ぐ、ぐぬぬ…おい!そこの男、本当にこんなやつのことが好きなのか!?友達として、とかはナシじゃぞ!?」
「一人の異性として、大好きだよ」
「言い切った 言い切りおったよ この男 byノッブ」
「沖田さん大勝利〜!まあ、何といいますか?やっぱり大事なのは
どうしたんだろう、何もしていないのに敵が崩れ落ちている。
……そういえばずっと気になっていたことがある。敵のサーヴァントがいる以上、敵マスターもいるはずだ。たしか織田信長、アーチャーのマスターは何処にいるのだろうか。
「アァァァァァチャャャャャャーーー!!!!!」
「貴様達はええのう、仲が良くて。わしらは全然仲良くないというに…」
「アンタ本当にバカじゃないの!?いきなり敵の正面からでてきて真名を教えるなんてありえないでしょう!」
そしてアーチャーが出現した時のように相手のマスターが突然出現する。
ツインテールの黒髪に赤を中心とした服、彼女の名は遠坂凛、聖杯戦争に参加していた優勝候補の一人の凄腕魔術師だったはずだ。
…あれ?たしかに遠坂のサーヴァントはアーチャーだった気がするがあんなに残念な人だっただろうか?もっとカッコよかったような…
「エッヘン!なのじゃ!」
…うん、絶対違う。
…相変わらず記憶は戻らず分からないことだらけだがこれだけはハッキリ言える…
…あのアーチャーはアーチャーではない!!!
「…コホン、ようこそ私の城へ、岸波くん。これっぽっちも嬉しくないけど歓迎だけはしてあげる」
「城?…まさかこの迷宮の主は遠坂なのか?」
「当然でしょ、侵入者を見つけてそこにサーヴァントを連れて殺しに来て、それで主じゃない何てことがあると思う?
…私はこの城の女王にしてムーンセルの新しい支配者……月の女王様とお呼びなさい!」
「……………!!!!」
「うわぁーイタイイタイ。これは恥ずかしいですねー。はい凛さんの黒歴史追加でお願いしまーす」
総司は遠坂に手厳しいなー、まあそれはともかく遠坂が月の女王?
……えっと、彼女は正気なのだろうか、その、確か表側での彼女はこんなだっただろうか?
「ふん、貴方達の考えなんてお見通しよ。この裏側から出たいんでしょ?
だから唯一の出口であるこの迷宮にやって来た、でもざーんねん、ぜっっっったいに出してなんてあげないんだから!」
…話し合いではどうにもならない。あちらの目的もしっかりとしている以上降参してくれる、なんて甘い考えは通用しないだろう。
…裏側に落ちた岸波白野には戦闘経験が全くない。できれば戦闘は避けたいのだが…
「ああ、そういえば貴方も記憶が抜け落ちてるんだっけ?戦闘経験も全くないまま此処に来るなんて死にたいっていうことよね?
なら、此処で殺しても構わないわよね?」
……ッ!!!!
遠坂は本気だ、本気で俺を殺そうとしている。すると遠坂は威嚇するように片手を上げた。そこにあるのはマスターとしての令呪…
「さあ出番よアーチャー!……あれ?アーチャーは?」
「あ、凛さん、ノッブなら大事な用があるとかで先程帰って行きましたよ。ほら、そこに紙が落ちてますよ」
総司が指差した方には一枚の紙きれが置かれていた。
「えーと何何…”最近だーくそうる2にハマってしまったので続きをしに帰ります。戦う時は呼んでください”……え?何やってんのアイツ」
……………………。
…沈黙が痛い。やれやれ、此処からどうしたものかな…
「ぷぷぷ…”此処で殺しても構わないわよね”ですって!あんなにかっこよく決めたのに残念ですね凛さん!あー面白い」
…あ、総司が言ってしまった。しかも大がつく程の爆笑ときている。遠坂はかなり頭にきたのか、体をプルプルと震わせている。
「き、今日のところは見逃してあげるわ」
「それって私達のセリフですよね?何で凛さんが上から目線で言ってるんです?…あ、女王のプライドってヤツですね?女王様(笑)」
それ以上傷口を広げないであげて総司!遠坂の顔がみるみる赤くなっていく、俺には分かる。この遠坂…煽り耐性ゼロだ!
「いい加減頭きた。もうあんた達容赦しないわ。死んだほうがいいってくらいの目に合わせてやるから!
…だから明日も来なさいよ、待ってるから。…でも勘違いしないでよね、私はこの迷宮の番人だからあなた達を待ち構えとくだけなんだからね!」
「はいはいツンデレツンデレ」
「特にアンタ!アンタだけは絶対許さないから……!!!!!」
そう言って遠坂は消えていった。
…色々あったがとりあえず今日の探索は終了だ。あと調べることといえばずっと気になっていたあの扉だ。
鍵穴のような形をした大きな扉が道を塞ぎ奥へと進めないようになっている、一応調べてみよう。
まあ調べると言っても俺にはそういう技術はないのでレオや桜に調べてもらうしかないのだが。
「いやー白野さん、先程はお見事でした。まさかあの遠坂さんが敵になるとは…笑わせていただきました」
そうだ、そういえばレオはこちらの様子を監視していたのだった。
…ということは遠坂の様子はレオにも見られていたということか。
「すみません、その壁の調査でしたね。…これは…セキュリティ段階は…☆?どういうことですか?桜」
「ありえません…セキュリティ段階は本来サーヴァントのパラメーターと同じものです。もっとも強いものがA,弱いものがE,例外としてEXがありますけど…☆、何てカテゴリはありません。…少し調べてみますね。
…うそ、計測、不能…?数値にすることができないなんて…」
桜が驚きの声をあげる。ムーンセルの上級AIである彼女から見てこの扉は常識外のもの…いや、あってはならないものらしい。
「とりあえずその扉のことはこちらで考えておきます、岸波さんは探索を終え戻ってきてください」
たしかにもうここで調べることはない。敵の確認も済んだことだし旧校舎に戻るとしよう。
〜〜〜〜
「あ、岸波さんにはマイルームを用意したので今日はお休みください」
レオにそう言われ総司とマイルームに入る、そこには家具などは置いておらずベッドと机が並んでいるだけだった。
「ここが私とマスターの拠点ですか、少し寂しいですけどマスターと一緒なら文句は言えませんね」
たしかに俺も総司がいるなら何も要らない、だがこのままでは本当に何もなく雰囲気も何もないのでぼちぼち何か家具でも買っておこう。…まあ今はそんな事より
「じゃあ総司…何でも言うことを聞くって言ったよね、じゃあ…」
「は、はい。私に出来ることなら…」
ああ、何をしてもらうかな。
こういうのっていざとなったらなかなかでないものだし…やっぱりいいことに使うしかないな。
「じゃあ総司…俺は膝枕を所望する!」
「…え?そんなことでいいんですか?」
な、なんだとう。童貞にしては結構頑張ったんだぞう。ふん、そこまで言うのなら欲望の全てを総司に聞いてもらおう。
「じ、じゃあ俺に料理を作ってあーんしてくれ、あと俺の背中を流してくれ、あと一緒に寝てくれ、あと、あと……」
「はい、何でしょう?」
…ああもうずるい。何でそんなに微笑みながら聞いてくるのか、そんな顔されたらこっちもいかがわしいことなんて言えないじゃないか。
「……じゃあ、ずっと一緒に居てくれ、総司」
「…はい、マスター」
…ああ、やっぱり総司は優しい。いつも俺のことを第一に考えてくれる。それは優しさではないのかもしれない、ずっと一緒に居ることなんてできないのかもしれない、だが俺にとって一緒に居てくれる、そう言ってくれたことがとても嬉しかった。
「ずっと一緒です、これからも私は貴方だけの剣、貴方だけの沖田総司です。
これから大変なことばかりと思いますが二人で頑張りましょうね、マスター」
…綺麗だった。
夕日に照らされた総司の笑顔が眩しく、俺はその美しさに見惚れてしまった。
…明日も探索がある、気合を入れ直さなくては。
頬を叩き自分に気合いを入れなおし俺はその日を総司と共に過ごした。