桜セイバー in Fate/EXTRA   作:日向辰巳

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fgoの七章楽しかった!とにかく話が好きでした。 ギルガメッシュが強い優しい!cccを思い出しましたよ。
七章は六章より難易度優しめだったかな? 特に苦戦したイメージは無かった。 だからこそ次のソロモン怖い。
それに30個聖晶石が届くなんて太っ腹ですね! これでケツァルコアトルを当てろということか。
エルキドゥと術ギル? もちろんうちのカルデアには来てくれませんでしたよ?
まあウチには超絶美少女の沖田がいるので全然悔しくなんてないです。本当です。 何故沖田は出番が少ないんだ…もっと出てきてもいいんだよ? …失礼、取り乱しました、それでは本編をどうぞ!


第7幕 『最高の相棒』

「ギヒィッ!?」

「あぐっ…あああああ!痛い…なんで私が…痛い…」

 

パッションリップ。彼女は自分の腕がどうなっているのか分からない。

彼女の中ではこれが普通、これが通常。 全てを自分に都合のいい解釈をするため自分は普通の人間と変わらない、そう考えてしまっている。

つまりは極度の認識障害なのだ。 だから彼女は分からない。 何故みんなが自分を恐れるのか、何故自分が触ったものは全て壊れるのか。 その腕は全てを破壊する最強の矛だということに気付かない。

彼女は気付かない。最強の矛は時に自分を傷つける刃にもなるということに。

 

「ふぅ、 ふぅ、 がはっ!? アハははは!見ろよオキタァ!

あの野郎自分の攻撃で死にかけてやがるゼざまあねぇなぁ! こりゃ傑作だ、 ああ痛ぇ、 あいつも死にそうだが俺も死にそうだ、 いやこのままじゃ確実に死ぬ! 早くあいつを殺してくれ、ヨ。

そしてオレをハヤクたすけろオキタァ!」

 

沖田は瞬時に理解した。

この自分を呼んでいる男は岸波白野ではない。 その姿をしたナニカだと。

あの男は何かを叫んだ。 あれは紛れもなく宝具だった。 攻撃した筈のパッションリップがダメージを受けているということはカウンター系統の宝具。

だが自分に与えたダメージをはね返す、それだけではない、何故なら自分にもダメージがあり、死にかけている。

こんな異常な宝具は見たことがない。 今の岸波白野は普通ではない。

 

「ア?どうしたオキタ、早くそいつを…ガッ!?」

 

考えた末に沖田がとった行動は、逃走。

自分の主人の姿をした何かを気絶させ抱えて走る。

今、パッションリップは死にかけている。 どういう理屈か分からないが今はチャンスだ。深追いせずに無事逃げ帰ることを考える。

岸波白野の異変も伝えなければならない。

沖田は冷静だった。

 

「あと少し…あと少しで外に…」

 

「出られるといいわね」

 

死角から放たれた斬撃。 沖田は紙一重で回避し放たれた方に目を向ける。

そこにはまたもや桜と似たような姿をした少女がいた。

 

「初めまして、私の名前はメルトリリス。 貴女の抱えているそいつを殺しに来たの。 そいつを置いて逃げるなら貴女だけは見逃してあげるけど、どうする?」

 

沖田の行動は早かった、瞬時に敵に背を向け全力で逃げる。 本来なら絶対に敵に背を向ける何て事はしない、だが今はマスターがいる。

この状態で戦って勝てると思うほど沖田は馬鹿ではなかった。 今はただ、逃げきるという事だけを考えていた。

 

「例えこの身がどうなろうともマスター、貴方だけは無事に帰してみせます」

 

「うふふ、いい根性ね、でもそういうのって大嫌いよ。 …死になさい!」

 

斬撃が飛ぶ。 当たる瞬間に主人から手を離し自らが盾となる。 そして見事に沖田に命中し、沖田の背中からは鮮血があふれ出ていた。

その時沖田が考えていたのは傷のことではなく、岸波白野に斬撃が当たっていないかという心配だった。

「あら、そいつだけは守ったの? よく守ったわね、褒めてあげる。 でもこの距離ならどうかしら。

そこで貴女のマスターが殺されるところを見ていなさい」

 

「や…めろ……」

 

まさに絶対絶命のピンチだった。

敵に背を向けて逃げた時点で死ぬ覚悟はしていた。 だがここで自分は死ぬとしてもせめてマスターだけでも逃がしたかった。

「死になさい」

 

「ぐうううぅ…まだ、まだ…私は」

 

盾くらいにはなれる、その思いで飛び出した。 無論メルトリリスの攻撃は直撃し、沖田の脇腹は無惨にも切り裂かれた。

 

「いい、凄くいいわ、すぐ死んだらつまらないものね。 でももう終わり。

貴女は頑張った。 でも私からはどう足掻いても逃げられない、これまでお疲れ様。そしてさようなら」

 

悔しいが相手の言う通りだった。

例え自分が全快していても勝てるかどうか分からない相手にこんな傷を負っていて勝てるとは思えない。

手負いの状態でこの敵から逃げられるとはとても思えなかった。

自分にもっと力があれば…自分の力不足を嘆いた。

 

 

「いや、お前はよく頑張ったさ。 選手交代だ沖田総司。 …やれ!モードレッド!」

 

「これこそは我が父を滅ぼし邪剣!我が麗しき父への叛逆(クラレント・ブラッドアーサー)!」

 

激しい赤雷と共に現れたのは獅子劫界離。

リンが所属しているレジスタンスのリーダーでもありレオと渡りあえる程の実力の持ち主だった。

 

「今の内にマスター連れて逃げろ。 足手まといがいると邪魔なだけだからな」

 

沖田は思わぬ助っ人に感謝しながらも力を振り絞り立ち上がった。 出口まであと少し、 外に出れさえすれば主人の傷も治せる、自分の傷も治せる。 なけなしの力を振り絞り主人を抱え歩き出した。

 

「獅子劫解離…確かレオと渡りあえる唯一のマスターでレジスタンスのリーダー…だったかしら? 貴方が私を足止めする気なら無駄よ。 私はガウェインより強いもの」

 

「足止めなんてしねぇよ。 テメェはオレの手で死ぬんだからな」

 

まあそういうこった、そういい獅子劫は相手を睨みつける。 敵は僅かに苛立った様子を見せ余裕の態度を崩していた。

もちろんこれはハッタリ、ブラフのつもりだ。敵の魔力が桁違いなのは見て分かる、対策も無しに挑めば恐らく負ける。

だからこそ俺は撤退の意思を崩しはしない。 モードレッドにもハッタリだという事は伝わっている。

だからモードレッドも無闇に敵に仕掛ける事はしない。 このまま岸波が出口に到着するまでの時間稼ぎに徹する事。 それが今獅子劫が出来る最善の事だと判っていた。

張り詰めた空気の中、モードレッドは不穏な空気を感じ取っていた。 ここから離れろ、さもなければ自分達は死ぬ。 そう直感が告げていた。

次の瞬間、後ろで凄い轟音が響いた。 後ろで、出口の方で何かあったのだと気づいた。

 

「行っても構わないわよ? 大丈夫、邪魔なんてしないから。 急いでいかないと危ないかもしれないわよ」

 

クスリ、と笑いながらメルトリリスは挑発する。 だが確かに敵意はあっても殺意は感じられない。 今は岸波達の無事が最優先と判断し出口へと急ぐ。

するとそこには地面に這いつくばった沖田と撃退された筈のBBが出口を何かで塞いでいた。

 

「残念でしたねセンパイ。 私、センパイに早く会いたくて傷を超高速で治してきちゃいました。 ふふ、もう、絶対に逃がしませんから」

 

「くっ…あと一歩の所で…」

 

流石の獅子劫も絶対絶命だと悟った。

怪物級の魔力をした二人に挟まれ、二人は手負い。

これでは勝ち目どころか逃げる事さえ出来やしない。

だが後悔はしなかった。 ここで仲間を助けにいかなかったら絶対にリンは泣いていた。

仲間の死が、獅子劫は誰よりも嫌だった。

だから戦いでは先陣を切る事がよくあった。

 

「うふふ、獅子劫さん。 絶望ですか? 絶望ですよね?

助けに来た筈がただの犬死にをしに来ただけだった、 なんて絶望的ですよね! あははははは!

でも貴方には選択肢をあげます、このまま死ぬのは余りにも可哀想ですから。

この門はもう一人しか通れません。 そう作り替えました。 貴方が残ってセンパイを助けるか、センパイを見捨てて自分が助かるか、 貴方が選びなさい」

俺か岸波どちらかが助かるか…か。

俺がこの門に入るメリットは何だ。少なくとも俺が入れば自分だけの命は助かる。 それ以上のメリットは思いつかない。

それに運が良ければ岸波が捕まったとしても生徒会の連中が何か打開策を閃いて岸波を助けに行けるかもしれない。

何だ、簡単な話じゃないか。

俺が、この門に入ればいい。 リンには何か適当な言い訳でもすればいい。 力が及ばなかった。 すまなかった、など適当な言い訳をすればいい。どうせバレるわけはない。

俺も人間だ、命は惜しい。 力になれなくてすまなかったな、岸波白野。

 

「決めたぜ、そこを退けBB」

 

「…まあそうですよね、自分の命が一番大事です。 早くここから立ち去ってください。

今は気分が良いので特別に見逃してあげましょう」

 

「そうだな、俺も自分の命が惜しい。 すまんな岸波、力になれなくて」

 

「そうです、だから早く……って、待ちなさい! 一体何を…」

 

悪いなBB、 俺もさっきまで自分の命が惜しかった。 本当に逃げる気でいたさ。

だけどな、 ふとよぎったんだ。 仲間が泣く姿が。 リンが泣いている姿が、だから…

 

「おらよ岸波! 後はお前に任せたぜ! リンを泣かせたら承知しねぇからな!」

 

岸波を持ち上げ出口へと放り込む。

…ほらな、簡単な話だった。 最初から答えなど決まっていた。

自分の為だったら踏み出せなかった足も仲間の為だったら簡単に踏み出せる。

ここから出るのは岸波ただ一人だ。 決して俺のような奴じゃない。

 

「…なんだモードレッド、文句でもあるのか」

 

「あ? 何言ってんだ、文句なんかあるわけねぇだろ。お前がその門に入ったらオレがお前を殺したっつーの。 そんな腑抜けにオレのマスターは務まらねぇよ。

だから、今のは正しかった。 正しかったんだよ。

それにな、あのすました面を崩してやった。 それだけでオレは今最っ高に気分がいいね!」

 

本当にモードレッドは良い相棒だ。

時折振り回されて危ない目にあった事もあるがこれ以上ないくらいに気が合った。

見ろよ、あいつの顔を。 俺たちがあいつをイラつかせたんだぜ。 予想外の行動をしてやったんだ。

やってやったぞクソッタレ! 一泡吹かせてやったぜ! 俺達の気持ちは同じだった。

文句は言うが付いてきてくれる。

そんなお前が大好きだ。 愛してるぜ相棒。

 

「チッ…まあいいです。 センパイは逃がしましたが沖田総司は人質として捕らえました」

 

よく見れば沖田には何か首輪の様なものと手錠が付けられており拘束されていた。

あれのせいで霊体化出来なくなっているのだろう。

…さて、ならばやる事は決まった。

 

「沖田さんがいる限りセンパイは必ず来ます。ですがその前に貴方達を殺します、 というか不愉快です、せめて楽に殺してあげます」

 

「最後の大仕事だ。 あれを破壊するぞモードレッド」

 

「おうよ、いい覚悟だぜマスター。 オレたちの全身全霊、 受けて見やがれ!」

 

これが俺達の最後の戦い。 気合いを入れ直し敵へと向きなおる。

例え負けるだけの戦いでも傷を付けるくらいの事はしてやろう。

 

窮鼠猫を噛む。 俺達の最後の力…を…

その瞬間、恐ろしい光景を見た。 あのモードレッドが触れられてもいないのに…倒れた。

馬鹿な、メルトリリスはもちろんBBも全く動いていなかった。 一体どうやってあのモードレッドを…

 

「残念だったなアンタら。まあでも、いい線いってたと思うぜ?」

 

どこからともなく男の声が聞こえた。

何故か知らないが俺の体も痺れて来ている。 これは毒だ。 クソ…全く気づかなかった…

 

「残念でしたね獅子劫さん。 私が何も準備せずに来たとでも? 万全の構えで来たんですよ私は。…それでもあの選択は予想外でしたけど」

 

あんなに啖呵切っといて格好悪りぃな… だがお前には謝らねぇぞモードレッド。

俺の選択を信じてくれたお前を裏切るわけにはいかねぇからな。

俺が死ぬとしてもこの選択は間違っちゃいない。

間違ってないんだよな、モードレッド。お前には色々と大切な事を教わったよ。

さて、今日は人生で一番疲れた日だった。 こんな日は酒でも飲んで疲れを取るに限る。 モードレッドの奴も酒好きだからな…また久しぶりに飲み比べでもしよう。

…その時はお前の過去を教えてくれよ、 俺も教えるからよ。

そしてまた一緒に酔い潰れて…また一緒に朝日を見よう。

おやすみ…モードレッド。

 




そういえばサブタイトルを工夫することにしました。 まだccc編しかしていませんがそのうちextra編も変えようと思います。 うわ、何だこいつのサブタイトル気持ち悪っ、センス無いんじゃねぇのかと思ってもどうか、どうか皆様温かい目で見守ってくださいm(__)m

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