「私の名前は蒼崎橙子だ、よろしく…。で…こっちが改竄係の蒼崎青子だ」
「蒼崎青子よ、よろしく」
俺たちは今、魂の改竄をしに来ている。
魂の改竄をするにはどうすればいいですか?と聞いたらいきなり自己紹介されてしまった、つまり頼めばいいのだろうか?
「で、どうするの?改竄するの?しないの?」
頼めばよかったらしい。
「で、敏捷を上げればいいのよね?」
「はい、よろしくお願いします」
「敏捷ね〜、はいはいっと、これが改竄の結果よ」
どれどれ…おお!敏捷がCになっている!ステータスが上がるとやはり気持ちがいいな。それに戦術の幅も広がるしいい事づくめだ。…ふと、気になったことがある。俺達がここまでステータスを上げれるなら他のマスター達もステータスを上げて強くなれるのだろうか?
「ん? 他のマスターも改竄してるのかって?」
「はい。俺達がステータスが上げられるのなら他のマスター達もサーヴァントを強化できるんじゃないかと…」
「なるほど。 …それはできないだろうな」
な、何でだろうか。 俺は何処から見ても未熟なマスターだと言い切れる自信がある、俺程度のマスターができるなら他のマスターにも出来て当たり前なんじゃないだろうか。
「いいかね、他のマスターは皆自分なりに魔術師としてのスキルを極めてからこの戦いに参加している。 だからサーヴァント達もそれなりのステータスを獲得しているはずだ。
…だが君は何故か魔術師としてのスキルが全くない。魔力もそこそこ、君が改竄を使えるのは今成長しているからだ」
…そうだったのか。 簡単に言うと俺はレベル1で他のマスター達はレベル100くらい、ということだろう。改めて自分の立場というものを知ってしまった。かなりピンチな状態だったんだな、俺。
「どうでしょうか?私のステータス何か上がってましたか?」
「うん、敏捷が一つ上がってCになってたよ」
「本当ですか!?頑張った甲斐がありましたね。マスター」
よかったよかった、セイバーもこんなに喜んでくれたし、これなら明日の勝負も…ってあれ?セイバーは?
「君のサーヴァントならいきなり吐血して地面に倒れているが…」
「すみませんマスター…少し興奮しすぎました…がふぁ!?」
「せ、セイバーぁぁぁぁぁぁ!!!!」
病弱スキルも未だに健在なのであった。
〜〜〜〜
一回戦の期日は明日…明日自分は…
記憶が戻らないまま死んでしまうのだろうか…
「そんなに不安そうな顔をしないでください、マスター。あなたを守るために私がいるんですから、何があっても私があなたを守ってみせます」
「セイバー…」
彼女にはいつも気を遣わせてばかりだな……そうだ、彼女が諦めていないのにマスターである俺が勝手に諦めてどうする。
「ありがとね、セイバー」
「はい、これからもどんどん私を頼って下さいね?マスター」
〜〜〜〜
「きたか、岸波白野。…この扉に入ったらこの校舎に戻るのは一組だけだ、覚悟を決めたのなら闘技場への扉を開こう…覚悟は決まったかね?」
ここで逃げるわけにはいかない…
今の自分には過去がない…前に進むしかない!
「…はい!」
〜〜〜
エレベーターに乗り込み前を見る。すると相手はもう乗り込んでおり透明な壁を隔てた向こう側には敵マスターであり俺の友人だったシンジがいた。
「お前も馬鹿だなぁ…わざわざ負けにくるなんてさ」
「…………。」
「その自信ありげな顔…気に入らないな、白野のくせに…
そうだ、白野…君さあ、この戦い、わざと負けてくれない?」
「…………。」
「どーせ勝つのは僕なんだから余計な怪我をさせることもないしね、しかも本気で戦うとなると僕のサーヴァントは手加減できないし…
……悪いけど、君じゃあ僕に勝つことはできないよ、どーせ負けるんだからさっさと棄権すればよかったのに」
「…………。」
「それに戦いってのはいかに戦力を温存するかにかかってる…たとえ勝ちが見えていても勝者はカードを切らなきゃいけない。
だけどほら…君がわざと負けてくれれば僕は力を温存できるし、君も痛い目にあわずにすむ!」
「…………。」
「おい...さっきから何無視してるんだよ!まさか?勝てるとか思っちゃってる?おい…何とか言えよ!」
「………?悪いけどシンジ、俺は君が何を言っているのか全くわからないよ」
なぜなら…
さっきからシンジが口を開くたびにセイバーが耳を塞いでくるから。
「いえ、このような聞くに耐えない罵倒をマスターに聞かせたくなかっただけです」
あ、俺罵倒されてたんだ、だから耳を塞いでくれてたんだね。
……ちょっと身長足りないから背伸びしてたけど。
「お、お前!ちょっとかわいいからって調子にのりやがって…もう謝っても許してやらないからな!」
あ、シンジが涙目になってる。
まあでもあんなに得意げに話してたもんなあ、それを無視されたら精神的ダメージはかなりのものだろう。
シンジ…何て言ってたんだろうな。
「アッハッハ!なめられてるねぇマスター」
「お、お前!いったいどっちの味方なんだよ!」
「うん?そりゃあんたに決まってんだろマスター。……でもなぁ、 八百長なんてつまらないだろマスター、 あんたも悪党なら手加減抜きで派手にやらかせばいいんだよ」
「誰が悪党だ! お前なんかと一緒にするなこの脳筋女!」
「ハッハッハ!いいねシンジ! その悪態はなかなかのもんだよ!」
「うわっ!酒くさっ!お前…僕の見てないところでまた酒飲んでたな!や、やめろ、やめっ、ちょっ…まじで…ちょっまって、頭撫でるならせめてもうちょっと優しく…」
微笑ましい光景だ、だかこのやり取りももう終わりだ、どちらかが死に、どちらかが生き残る、聖杯戦争とはそういうものだから。
激しい振動と共にエレベーターが止まる。
これから始まるのは泥くさい戦い…断じて誇り高い決闘などではない 。
「ふん…素直に降参していればとどめの一発くらいは勘弁してやろうと思ったのになあ…お前に圧倒的な実力差ってやつを思い知らせてやるよ! 僕のエル・ドラゴのカルバリン砲でボロボロになって後悔するんだね!」
エレベーターを降りる。もうすぐ始まる…殺し合いが。
「セイバー…勝とうね」
「もちろんです…このパワーアップした私の姿…きちんと目に焼き付けておいてくださいね」
「間違っても手は抜くなよエル・ドラゴ、この僕に歯向かったんだ…かける情けなんて一つもない」
「アタシは海賊、情けなんて最初からもっちゃいないが…了解だ!マスター!さあ破産する覚悟はいいかい?一切合財派手に散らそうじゃないか!」
この話は元々は前の話と繋がっていたんですが、文字数が大幅に増えてしまったので分割することにしました
戦闘描写は苦手なので上手く書けないと思いますがそこは温かい目でお願いします...