「さあセイバー…準備はいいかい?
先手を取ったのはライダーだった、アーチャーと戦っていた時のようにライダーはあの2丁拳銃でこちらを狙ってくる。
「ふっ!」
セイバーが敵の銃弾を刀で弾く。
「マスター!ご指示を!」
戦力差で負けている以上こちらは事前に練った策で倒すしかない!
どんなにかっこ悪くてもいい…どんな汚い勝ち方でもいい…絶対に勝ってみせる!
「仕掛けろ!セイバー!」
セイバーは縮地で間合いを瞬時に詰めてライダーを攻撃する、縮地…これは特殊な歩法で瞬時に相手との間合いを詰めるセイバー自身の保有スキルだ。それを使えば例えステータスが低かろうと多少は補うことができる。
「ッ!…速い!!」
「はあああっ!」
作戦通りライダーに奇襲を仕掛け傷をつける。
よし、まずはこれで相手の意表をつけた…だけどまだだ!
「セイバー!相手を逃がすな!gain_agi(16)!」
そしてさらにスピードを上げる、これがセイバーを最大限生かす戦いだ。
「く…やるじゃないかセイバー しかしあのボウヤがここまで容赦ない戦いをするなんてねぇ…」
「精々油断しておいてくださいね…油断している内にその首…私が貰い受けます!」
そうだ、たしかにセイバーはほとんどのステータスが最低ランクで相手のサーヴァントに負けている。
だけどこっちには事前に練った策がある、そして何よりもあっちにはない勝つための意地、覚悟がある!
この戦い絶対に負けるものか!
「くっ…これはマズイねぇ…こっちの攻撃は当たらないのにあっちからの攻撃はバンバン当たるときた」
優勢。誰がどう見ても岸波白野とセイバーは優勢だった。 だがセイバーは内心焦っていた。 相手に格下と侮らせその隙を見ての完璧な奇襲。 だった筈なのに致命傷は避けた。決めるつもりだった。完全に今の一撃で仕留められなかったことをセイバーは焦っていた。
だとしても警戒されてしまった今、最早マスターの指示に全てを委ねるしかない。 気持ちを切り替え敵の方へと向きなおる。
「チッ!岸波のセイバーなんかに傷をつけられやがって!ああもう、仕方ないな!」
この時を待っていた。相手が劣勢になればサポートするためにマスターがでてくるということはわかっていた。シンジが魔術を使うタイミングを見計らってから…
「今だ!shock(64)!」
シンジに向かってコードキャストを使用する、これは弾丸のような魔力の塊を飛ばすコードキャストだ。
威力はさほど無いが相手を一瞬だけでも怯ませることができる、そして一瞬怯ませれるだけで充分だ。
「うわっ!」
こうして魔術の行使を妨害することができる。
そしてセイバーの筋力はたしかに最低のEだがああやって何度も何度も斬りつけていけば…
「はぁ…はぁ…」
結果は見えている、例え威力が少なかろうと何回も積み重ねていけば大ダメージだ、その証拠にライダーは傷を抑え苦しそうにしている。
「くそっ!何やってるライダー!あんな奴のサーヴァントに負けるなんてふざけるなよ!」
「さすが私のマスターだねぇ…ボロボロの私にさらに鞭を打つとは…」
「う、うるさい!カルバリン砲だ!吹き飛ばせ!ライダー!」
「ふうぅ…砲撃用意!」
きた、カルバリン砲だ、4つほど背後から出てきた砲弾がセイバーを狙うが敏捷が上がったセイバーには一つとして当たらない。
「遅いです!」
これが俺たちの戦い方だ、一つの事に特化して相手の弱点を突いていく、防御を捨て、攻めに転じる、いわば超攻撃型スタイルだ。
そしてライダーの腹にセイバーの突きがヒットした。
「これで終わりだ、シンジ。ライダーはもうボロボロ、シンジのサポートも間に合わない、この戦いは俺たちの勝ちだ」
「…はあ!??お前何言ってんの!?僕が負ける?僕が負けるなんて有り得ない!アっハははハはははははは!」
「シ…シンジ?」
いきなりシンジは狂ったように叫びだした、それは子供の強がりのようで一瞬俺は怯んでしまっていた。
「ライダー!宝具の使用を許可する!あいつらを塵一つも残すなよ!」
「ッ痛!ん?ああ…了解だ!マスター!…残念だよセイバー…アタシはあんた達のこと気に入ってたんだが最早ここまでだ。…さっきのように逃げ切れると思うなよ?」
今、一瞬ライダーの様子がおかしかったような…
いや、今はそれどころではない、このままでは相手の宝具が直撃してしまう、それだけは避けなければ!
「逃げろせい…」
「させるかよ白野!」
シンジのコードキャストが今度は俺に命中する。
ぐ…しまった、あんなに偉そうに言っておいて自分が妨害を喰らってしまった。油断した。
「マスター!危ない!」
「安心しなよセイバー…死ぬのはマスターだけじゃない…あんたも一緒に殺してやるよ!」
「アタシの名前を覚えて逝きな!テメロッソ・エルドラゴ!太陽を落とした女…ってなあ!」
”フランシスドレイク”
彼女の宝具は自分の人生の相棒とも言える船だった。そして彼女は海賊らしく船には大量の砲弾があり、その全てがこちらを向いている。
まさか…あの砲撃が全てこちらに飛んでくるのか!?まずい…このままでは二人共死んでしまう!
「”
「くっ!マスター!」
「…ははははは!宣言通り塵一つも残さず殺してやったよ!あいつも僕を怒らせなかったらこんな無残な死に方はしなかっただろうになあ!」
「気を抜くなよシンジ…まだ終わっちゃいないさ…おい!無賃乗船はよくないねぇ…セイバー」
「は?何言ってんだお前?セイバーはさっき…」
「生憎ですがまだ私とマスターは生きています…無傷とまではいきませんでしたが…」
…こうなった時の対策はしていた、相手はフランシスドレイク、船を使って攻撃するとは思っていた。だがその作戦は成功したはずなのにこの様である。
完全に回避したと思ったんだけど…凄い威力だ。
これじゃ相手が万全の状態だったら回避も出来ずに殺されていたかもしれない、何て恐ろしい宝具だ。
「ライダー!まさか手を抜いたんじゃないだろうな!」
「アタシはちゃんと全力で撃ったさ…それを奴らが何らかの形で回避しただけだろ…うっ!」
そしてライダーは自分の腹部を押さえる、あれは…傷?
やはりライダーは傷を負いながら戦っていたのか。
だがシンジはそれに気づかない、それに敵が弱っている。…そんな隙を見逃すほど俺たちには余裕はない。
…悪いとは思わない、ここで決めさせてもらう。
「な、何だと…ならもう一度だライダー!」
「もう一度はありません」
そういうとセイバーはライダーに問答無用で刀を振り下ろした…そしてこの瞬間、一回戦の勝者が決まった。
フランシスドレイク。 彼女が召喚された時のシンジの印象は意外にも面白そうな奴、だった。
プライドは高いが魔術の腕は高い。 魔術の腕は確かだが魔術師にはなれない。 そんな印象を抱いた。
自分の欲しい物を聞いては献身的に用意し渡してくる。 見た目と違い心はもっと子供で負けず嫌い、 勝ち抜いて優勝しよう。 そんな言葉を言われた。遠回しに自分の力を信頼して貰えて此方も嬉しかった。そんな不器用な愛情表現が嬉しかった。 勝たせてやりたい、そう思った。
だが負けてしまった。
心に残ったのはシンジへの謝罪。もっとそばに置いて鍛えてみたかった。
……すまないね、シンジ。
「な、何でだよ!何で僕が負けるんだ!くそ、こいつのせいだ!こんなハズレを引かされたせいで僕は…クソ!こんなゲーム、つまらない!つまらない!」
「…帰りましょうマスター、もう聞いていられません」
「…………。」
「お前もこんなゲームで勝ったからって調子に乗るなよな!いいか…地上に戻ってお前がどこの誰だかはっきりしたら…」
その瞬間、シンジの腕がまるで粘土の腕のようにボロリと地面に落ちた。
「シ…シンジ!」
「うわあああああ!ぼくの腕が!体があ!何だよこれ...僕の体が消えていく!?」
「…そりゃ死ぬだろ、普通。アタシ達は戦いに負けたんだ。…つまり負けるっていうことはそういうことだ」
「し、死ぬなんてよくある脅しだろ?電脳死なんてそんなの本当にあるわけ…」
「…シンジ」
シンジの顔が見えなくなっていく、最早シンジの体は半分以上見えなくなり今もどんどん黒くなっている。
「そんな…やだよ…今更そんなこと言ってんなよ…僕を助けろよ! 僕を助けろライダー! サーヴァントはマスターを助けてくれるもんなんだろ!?」
「そんな簡単に破れるルールなら最初から作られちゃいないさ…ふぅ、アタシも長くは持たないか…」
「逃げるのか!勝手に死ぬのか!お前のせいで僕は負けたんだぞ!」
「…負けた理由なら腐るほど考えつく、アタシの実力不足…アンタの慢心…そして運…だがねぇ…一番初めに契約した時に言ったろ?坊や。
…覚悟しとけよ?勝とうが負けようが悪党の最期ってのは笑っちまうほどみじめなもんだ…ってねえ…
…この死に方だって贅沢なもんさ…愉しめ、愉しめよシンジ」
「いやだぁっ!まだ僕は死にたくない!本当の僕はまだ八歳なんだぞ!?こんなとこ…
ーーー消えた。
間桐シンジという人間、その魂が、完全に。一欠片の痕跡もなく、残っているのは勝者のみ。
…俺の聖杯戦争の一回戦はこうして終結した。
シンジ君敗退、悲しいですね...あ、そういえばセイバーの服装は戦闘時は羽織を着ていない方の忍者みたいな服、マイルームなどでは普通の和服ということで脳内補完お願いします