青春桜   作:flower.H

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☆戸川藍莉

「アイリ。おっせーよ、早くしろ!」

 

窓の外から、幼馴染の五月の声が聞こえる。

 

「待って!まだリボン結んでない!あと靴下も!」

「はあ?高2にもなって寝坊かよ」

「寝坊じゃないよ!ただ朝から目覚ましと格闘してただけで」

「やっぱり寝坊じゃねーか」

 

いつも、サツキとこうやって網戸越しに会話するのが日課になっていた。

 

サツキは、2歳だか3歳の頃からずっと一緒にいるご近所さん。

保育園の頃からの成り行きで、今も一緒に登下校する。

サツキは、喧嘩してばっかだけどほんとは優しい、いい奴。

女子と話すより、サツキと話す方が楽だったりする。

 

 

だからサツキは_____。

 

ただの、幼馴染。

 

 

「ふう。間に合ってよかったねー」

「……全然。よくねえよ。このペースでいくと1限サボることになるだろ」

あれから、何もしていないことに気づいて。

髪セットしたり、朝ご飯食べてたら。

サツキを思い切り巻き込んで大遅刻。

 

……まあでも。

最後の方はサツキも諦めたらしく、私の家でくつろいでいた。

「1限目、何だっけ」

「数学」

「数学!サボれてラッキー♪」

「まあな」

「ふふん。感謝しなさい」

「何が感謝だ。こっちが被害者だっての」

「まあまあ。別にいーじゃん」

「よくねえよ。このガサツ」

「ガサツじゃないよぉーだ」

ゴトン、ゴトン……と揺れる電車。

気持ちいい振動に、とろとろと目が閉じていく。

 

 

 

「……おい。アホアイリ。起きろ」

「ふぇぇ?アホじゃないよー」

寝起きで頭がぐらぐらする。

自分の頭をコツンと叩いて、目を覚まさせる。

 

……あれ。

教室の前だ。

さっきまで、電車の中だったのに。

「アイリ。さっさと降りろって」

……降りる?

ああ、ダメだ。

私の頭、完全に起きてない。

 

 

……って、嘘っ‼︎

私は、サツキにおんぶされていた。

「ええっ⁉︎何、サツキ⁉︎アイリの知らないとこで何してんの⁉︎」

「黙れ。お前が駅着いても夢の中だったから、仕方なく」

「降りる‼︎さっさと降ろして‼︎」

「こっちのセリフ。つかありがとうくらい言えよ」

私は地面に降りて、教室のドアを開けた。

 

「ミレイー!未々ー!おはよー!」

大声で叫ぶ私。

ミレイと未々は、きょとんとした顔で私を見ている。

「アイリ。遅刻しといて何がおはようだ」

「うおー。アイリー。今日はアイリどうしたのかな?と思ったら遅刻かあ!あははははは」

「え……えへへ。ミレイ笑いすぎ」

「てかアイリ。あんた今日数学の補習。忘れてた?」

「わ‼︎忘れてた!サツキ!サツキもきてね!」

「俺はお前の親じゃねーんだけど」

親友のミレイは、可愛くて、優しい。

たまに意地悪してくるけど。

 

未々はなんと、雑誌「lemonade」の専属モデル。

すっごく可愛いけど、口が悪い。

でも本当は優しいいい子なんてことみんなわかってる。

 

 

 

ミレイ、未々、そしてサツキ。

 

みんなみんな、私の大好きなお友達。

 

 

 

 

 

「ふっふふー♡今日のお弁当はアイリ特製うさちゃん弁当でーす」

「おお。どれどれ」

私は、パカリとお弁当の蓋を開けた。

「……ぷ。あははっ‼︎うさぎ耳取れてる!偏ってる!目ずれてる!」

「うわーん。今日走ってきたからだ……」

「遅刻してんのにキャラ弁作ってるアイリが悪いだろ」

偏った残念キャラ弁を一口食べてみる。

……わあお。

なにこれ。

砂糖入れすぎ。甘過ぎる。

こんな甘いご飯食べたことない。

 

「アイリ。ところでそのリボン、milkの新作でしょ?可愛い」

「そうそう!ミレイありがとう♡」

「そのカーディガンも可愛いよね。アイリってめっちゃオシャレだよね〜」

「えへへ。モデルの未々に言われると照れるなぁ」

 

 

私は、オシャレが大好き。

週一はショッピングモールでお買い物。

学校でもみんなと同じ制服は嫌だし、学校でもオシャレでいたい。

家のクローゼットには、洋服やアクセサリーがズラリ。

 

 

将来は、デザイナーになって洋服をデザインするのが夢なんだ。

 

 

「……俺も一緒していー?」

クラス1のイケメン・松田李人くんが未々の隣に座る。

李人くんは、未々の彼氏だ。

「あ、李人。いいよー」

「いいよねえ。彼氏持ちは」

「アイリは17年間彼氏できたことねえもんな」

「うるさいっ!」

私は、17年間彼氏がいない。

彼氏がいる未々が、とても羨ましい。

彼氏ができたら、世界が変わるのか、どういう世界なのか。

私はまだ知らない。

 

 

「てかサツキもじゃん!」

「俺はいいの」

「どういうこと⁉︎」

「別に」

サツキも彼女いたことないんだよね。

……あれ。

サツキって結構モテるはずじゃなかったっけ。

 

 

「てか、はい。あげる」

李人くんが、大きな袋を中央にドンと置く。

「……何、これ」

「パン」

あー、そっかー!

李人くん、パン屋さんでバイトしてたっけ。

 

「アイリにちょーだい!アイリの弁当、味失敗して。最高に不味いの!」

「いいけど。味失敗したの?」

「俺が味見してやるよ」

「味見⁉︎いいって!イヤだイヤだ!」

サツキはひょいと私を押しのけて激甘弁当を口にした。

「げ‼︎何これ!甘っ。何入れた⁉︎」

「砂糖」

「入れすぎだろ!」

「私、スイーツ好きだから」

「そういう問題じゃねーだろ」

「えへ」

「俺の弁当食ってみろ」

「なに?激辛?」

「ちげーよ。いいから」

「……‼︎‼︎うまっ‼︎」

「ははは。そうだろう、そうだろう」

「えーすごーいサツキー。アイリこれからサツキにお弁当作ってもらっちゃおっかな♪」

「ふざけんな」

サツキの弁当を取り合っていたら、未々とミレイが立ち上がった。

 

「ええっ⁉︎何っ‼︎」

「私、午後から撮影なんで。お先っす」

「私も留学の手続きあるからお先ー‼︎」

屋上を後にしようとする2人をよそに、のんびりとイチゴ牛乳を飲んでいる李人くん。

李人くんは、2人に睨まれて、そそくさと屋上を去っていった。

 

 

「……何だったんだろ」

「……さー」

 

サツキと2人で、空を見上げる。

雲がふわふわ浮いてて、空は水色で綺麗。

 

サツキがゴロリと寝転んだ。

「何してんの」

「綺麗だよ」

私もサツキの隣で仰向けになる。

 

 

「……わあ。本当だ」

どこを見ても、水色の空。

 

普通に生活してると、世界は全部繋がっているなんて、考えられないけど。

こうしてると、世界は一つなんだって。

同じ空を見ているんだって。

 

空に気づかされる。

 

「ねえっ‼︎見て!あの雲!織田信長みたい!」

「はあ?織田信長あ?あれはメロンだろ」

「ええー?メロンー?」

「織田信長の方がおかしいだろ」

 

織田信長の雲が切れて、端っこに流されていく。

「うあー。切れちゃったー」

「な」

「でも」

「ん?」

「綺麗だね」

顔を見合わせて、ニヤリと笑う。

 

ひゅうっと風が吹いて、サツキの髪をさらっていく。

 

笑っているサツキに、ドキッとしたのは。

 

この綺麗な空のせいだ。

 

 

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