「英語の課題やった?」
「やったけど」
「見ーせーて♡」
「やだ。気持ち悪い」
「サツキのケチ!」
今朝も、口喧嘩しながら教室に入る。
「おー。アイリサツキおはよー」
「未々。おはよー。あ、ねえ。英語の課題やった?」
「あ。やってない」
「俺やってあるけど。見る?」
「サツキありがとー!」
「ねえちょっと待って‼︎サツキ、アイリには見せてくれなかったじゃん‼︎」
「……はて、そうだったっけ」
私もサツキのノートをチラ見して、サツキにばれないうちにノートを仕上げる。
「……はよ」
ふわあと大きな欠伸をして現れた李人くん。
「李人くぅん♡今日もカッコいいねえ」
「おいアイリ。未々に睨まれてるからやめなさい」
「嘘だよー。未々ちゃんごめんね睨まないでー」
「別に。こんな奴どーだっていいし」
「こっちのセリフだ」
……はあ。
このツンデレカップルが。
もっと素直になればいいのに、意地っ張りだもんなぁ。
「……腹減った。未々なんか買ってきてよ」
「はぁ⁉︎私はお前のなんなんだよ」
「……下僕?」
「最低」
とか言いながら、李人くんは未々の手を掴んでいる。
ほんと、ツンデレだなあ。2人とも。
「このノートもーらいっ!」
ヒュッと手が伸びて、サツキのノートを誰かが奪い取った。
「エイキ!」
エイキと呼ばれた男の子は、ノートを持ってニヤリと無邪気に笑った。
「……あの、誰?」
「俺?桐原英輝だよ!よろしく!ミレイちゃんでいいかな⁉︎」
「いきなり名前呼びは嫌」
「えっ嫌⁉︎ごめんごめん。じゃ仲良くなるまで東野さんで!」
「仲良くならないから一生私の名前は呼べないね」
出会って2秒で意気投合(?)しているミレイと桐原くん。
なんか、桐原くんって笑顔が可愛いな。
小学生みたいというか。
こっちまで明るくなってしまう。
「てか、戸川さんだよねー!俺1回話してみたかったんだー!」
「えっ?えっ?そうなの?」
いきなり桐原くんに手をブンブン振り回される。
「ねえ桐原。気安くアイリに触るな」
「えーダメー?」
「ダメ」
ミレイ。恐いよ‼︎
「おいエイキ。ノート貸すからどっか行け」
「ちぇー。ハイハイ。いーもんね!李人に構ってもらうから!」
「李人は彼女とどっか行ったよ」
「あー‼︎愛しの李人がー‼︎」
サツキに教室から追い出される桐原くん。
「あいつうるせえだろ」
「うん。すごく」
盛大な溜息をつくミレイとサツキ。
「まあ悪い奴じゃないと思うけど。でももうちょっと後に出てきて欲しかったな」
「富岡がいたらアイツ完全にボコられてたよ」
桐原くんかあ。
ミレイもああ言ってるけど結構気に入ってるっぽいし。
もっと、仲良くなりたいな。
「あー李人ー‼︎このハンバーグほしー」
「300円」
「お金取るの?」
「ったりめーだ」
と言いつつ、未々の口にハンバーグを入れる李人くん。
そんな2人を少々睨みつけながらお弁当を食べる私達。
いつもお昼休みには、私、サツキ、ミレイ、未々、李人くんで屋上に集まって食べる。
「はーいいなあ。アイリも李人くんみたいな彼氏ほしいっ‼︎」
「ほんと。羨ましすぎるけど未々と李人でお似合いだと思う。美男美女だし」
「誰かいないかなー?運命の人!」
「運命?何白馬の王子様的なの待ってるの?そんなの夢の話だよ。現実見なさい」
「あれー?初恋の人をずーっと待ってるミレイさんに言われたくないな〜」
「……くっ……アイリ、覚えてろ」
ミレイは、よく告白されてるのに、全部断っている。
きっと、その初恋の人が忘れられないんだ。
いーなー。ミレイも未々もピュアな恋で。
私なんか、今まで本気で好きになった人なんていないのに。
「サツキは?彼女いたっけ」
「いるわけねえじゃん。第一彼女いたらアイリなんかと登下校しないよ。殺されるわ俺」
「そっかー。でもなんで?サツキってモテるよね。彼女作らないの?」
「あーまあ。とりあえず。アイリの面倒見なきゃいけないし」
「何ぃー?アイリはサツキがいなくても社会人できますぅー」
「嘘つけ。前マンホールにはまって泣き喚いてたくせに」
「それはそれ、これはこれ」
「意味わかんね」
「あっあのね。今日、サツキの家行くね」
「はあー?学校以外でアイリに会いたくねえんだけど」
「嘘つけ。毎日のようにアイリの家入り浸ってるくせに」
「宿題見せに行ってあげてるだけなんだけど?」
私はあまりサツキの家に行ったことがない。
だって、私がサツキの家に行こうとする前にサツキが来るんだもん。
「あれ?今日のアイリの弁当美味しそう。いつも食欲失せるくらいの下手くそ弁当なのに。一口ちょーだい」
「‼︎未々ヒドイ〜‼︎」
「……‼︎うま‼︎え、美味しっ‼︎ミレイも食べてみなよっ‼︎」
「オッケー。……‼︎美味しー!アイリ、どうしたの⁉︎」
ミレイと未々は、私の美味しいお弁当に興奮中。
「ふっふっふ〜。実はそれ、サツキに作ってもらったんだあー」
「え‼︎サツキ料理出来るんだ‼︎イケメーン‼︎」
「サツキはアイリの嫁かよ」
「たまたまだよ」
今日朝外に出て、サツキを待っていたら。
お弁当はいって渡されて。
_____凄く嬉しかったことは、黙っておこう。
「おばさんこんばんはー」
「あらアイリちゃーん。久しぶりー!」
「……ただいま」
学校から帰って、そのままサツキの家に行く。
サツキのお母さんが、ニコニコ出迎えてくれて安心する。
「ごめんねーサツキいつもそっちに入り浸っちゃってー」
「いえっ。私もサツキにはいっぱいお世話になってますから」
「あらそうー?たまにはうちにも遊びに来てね」
「はいっ」
もうテーブルには、ご飯の準備がしてあって。
サツキのお父さんが、新聞を広げている。
うちは、お父さんが仕事で遅いから、お父さんと食事をするのは新鮮だ。
「サツキお帰り。彼女か。可愛い子だな」
「違うよ。隣ん家のアイリ」
「あ、戸川さんとこの。どうぞ、座って」
「はいっ。お邪魔します」
サツキの隣に座る。
家族の中に、私みたいな他人がいるなんてちょっとくすぐったいな。
仮にも、サツキの彼女になったみたいだ。
「おー‼︎サツキの部屋だー‼︎久しぶりー!」
サツキの部屋に入るなり、ベッドにダイブ。
「アイリ、はしゃぐなよ」
サツキは、椅子に座って黙々と学校の課題をやっている。
サツキの後ろ姿を、ぼんやり眺める。
……サツキは、好きな人いるのかな。
もしいるんだったら、私、邪魔じゃないのかな。
「……サツキはさ、好きな人とかいるの?」
サツキが手を止めて怪訝そうな顔で振り向く。
「……は?」
「好きな人いたら、私サツキの恋の邪魔じゃないのかなぁって」
「………ぷ。あははははっ!」
突然笑い出したサツキ。
頭の中がクエスチョンマークでいっぱいになる。
「何変な心配してんだよ。安心しろ。好きな奴いないから」
「……へー。そーなんだ」
「……恋ってさ、どうしたらできるんだろうね」
ボソリと、独り言のように呟いた私。
「……何、アイリ。さっきからおかしいぞ、お前」
「いやー?皆どうやって恋してるのかなあって」
「できるときにできる」
「そういうもん?」
「……うん」
「てか私の初彼ってどんな人だろうね。気になることない?」
「……ああ。気になるな。どんな変な奴なんだろう」
「どういう意味」
また口喧嘩が始まりそうな私たちに。
真っ暗な空に映える月か教えてくれた。
_____あなたの運命の人は、すぐ傍にいますよって。
でも私は、月からの教えに、まだ全く気づいていない。