仮面ライダーナスカ RETURN AtoZ/運命のガイアメモリ 作:零六五五
風都。私はこの街を愛している。素晴らしい風が吹くこの街を。
傾いた日。とても綺麗な夕日だった。
「私と一緒に園崎の家を出てくれないか。」
ここは風都のビル屋上。冴子に挑む最後の賭け。
「そうしてくれ、私を愛しているなら。」
冴子の肩を掴む、私がこの街に居続けることができる唯一の手段。まだ死にたくない。これからもこの街に居続けたい。この人と共に。
「分かったわ。あなたがもう私に必要無い事。」
冴子はガイアメモリとガイアドライバーを取り出しそう言った。
『TABOO』
冴子はタブー・ドーパントへとその姿を変える。振り返った彼女は高熱弾を発射しようとしていた。
どうやら最期の時が来たようだ。私の犯した罪に見合う最期ということかもしれない。最愛の女性に殺される。
「冴子・・・・・。」
高熱弾が迫る。私はもうすぐこの街から消えることになるだろう。だが後悔は無い。この街には『希望』がある。仮面ライダーという希望が。
だが・・・、この町に本当の危機が迫った時に彼らは乗り越えられるだろうか。そして雪絵は・・・・
『HYPER CLOCK UP』
タブー・ドーパント、高熱弾、風都タワー、この世の全て・・・そう時間までも全てが止まっている!
何が起こった?目の前に居たのは銀と赤の・・・仮面ライダーだろうか。カブトムシのような赤く鋭い角。七色の羽を広げたその姿は美しくも神々しかった。
「園崎霧彦。お前を待っている時代がある。共に来て貰おう。」
―――――――――――
傭兵部隊NEVERによって風都タワーが占拠されてから既に数時間が経過していた。
エターナルメモリの効果でT2以外の全てのメモリは使用不可能。最後のメモリを巡って街では大騒動が起きていた。
そして最後のメモリは、この街の希望の手へと渡っていた。
「どうやら『切り札』は常に俺の所に来るようだぜ。」
『JOKER』
ロストドライバーを己が腰に巻き、左手で差し込むジョーカーメモリ。ドライバーに浮かんだ『J』。ゆっくりと右から左へと手を回し、ギリギリと音が鳴るほどに右拳を握りしめる。
「変身。」
左手でバックルを展開。
『JOKER』
左翔太郎を包む紫の波動。そして姿を変えた。
「仮面ライダージョーカー。」
スナップで作ったJの文字。
黒い太陽(ブラックサン)の様な仮面ライダー。これが仮面ライダージョーカー。
風都の一角の水路。橋から飛び降りた二つの影。
一つは赤いメモリの怪人ヒート・ドーパント。
「さあ、行こうか。ファイヤーガール。」
そう呟き仮面ライダージョーカー=左翔太郎はヒート・ドーパントの距離を詰めるべく走り出す。
拳の間合いに入る。ジョーカーが繰り出した蹴りをドーパントは合わせるように防御を行う。
それはジョーカーのスピードにドーパントがついて行けていない、確かな証拠だった。
そして防御すらもできないほどにその胸へと連続でパンチを叩き込む。締めの一撃でドーパントを大きく吹き飛ばす。
踝ほどの水位の水がそれぞれの動きに合わせて飛び散り、舞う。
「くっ・・・・」
ヒート・ドーパントも負けじと突っ込む。がだがその攻撃のどれもが交わされるか止められるかで有効打とはならない。そして攻撃を行うことで生まれた隙。そこにまたしてもジョーカーの拳が叩き込まれる。
すこし距離を置いて、構えを直すジョーカー。
「これで決まりだ。」
腰のロストドライバーから引き抜かれたジョーカーメモリ。
それを左手で右腰のバックルへと差し込み、叩く。
『JOKER MAXIMUM DRIVE』
メモリから力を引き出し解放するマキシマムドライブ。そのエネルギーがジョーカーの足、一点へと集中する。
一気に走り出し、彼はその技名を叫ぶ。
「ライダーキック。」
地面を蹴って空中へと跳ぶ。溜まっていたエネルギーが解放され紫の炎となって現れる。
その蹴りを食らったヒート・ドーパントは数メートルもの距離を吹き飛ばされ地面に激突。そのエネルギーを全身に受け爆散するのであった。
この瞬間この世界の運命は狂い始めた。
空中から突如として現れた影。ジョーカーは影に体当たりを食らい、吹き飛ばされる。
影は地面へと着地した。その影、紫の怪人はカッシスワーム。
「なんだ!?お前は・・・・。新手のドーパントか?」
翔太郎は突然の展開に驚くがすぐに体勢を立て直す。例え目の前の敵の正体が分からなくとも今は戦わなくてはならないのだ。
「貴様がこの世界のライダーか?ふん、クロックアップも使えない奴など相手にもならない。」
カッシスワームはそう言い、右手に備わった剣を向けジョーカーに迫る。
それをジョーカーは両の拳で受け止める。それを下へと受け流し、隙の生まれた胸に拳を数発叩き込み、相手を怯ませる。
「ほう、思った以上にやるようですね。では手加減は止めるとしよう。」
翔太郎の目の前からカッシスワームの姿が消える。辺りを見渡すが影や気配すらも無い。消えたとしか言いようが無かった。
「逃げやがったのか・・・・。」
そう呟いた瞬間に背中に斬撃のダメージが入る。咄嗟に後ろを振り向き、応戦しようと拳を振るう。がそこには影も形もない。
困惑する翔太郎。敵は逃げたのでは無い。必ずこの近くに潜んでいる。だがどうやってこちらに攻撃を仕掛けている?姿を消しているのか?そこで彼は一つの記憶に思い当たる。彼はかつて似たような状況を経験していた。
ナスカの超高速、トライアルメモリのマキシマムドライブ。
「まさか・・・・、超スピードか?」
そう彼が気付いた時には既に遅かった。首元に入ったダメージ。火花を散らしながらジョーカーの身体が跳ぶ。数センチずれていれば確実に致命傷となっていた。
「ぐあぁぁぁああ!!」
クロックアップが解除されて、再びジョーカーの前へと現れるカッシスワーム。彼は剣をジョーカーに向けて言い放つ。
「終わりにしましょうか。ライダースラッシュッ!」
右手の剣が紫の電光を纏う。大きく貯めた動作をしたのちその衝撃波は実体となってジョーカーを襲う。
『NASCA』
だがその攻撃は成功しなかった。仮面ライダージョーカーとカッシスワームの間に現れた一人の怪人。
その怪人の持つブレードが衝撃波を弾く。
青い身体に金と黒の地上絵の様な紋章。腰に巻かれた銀のベルト。そして、翻る二枚の羽。
「まさか・・・園崎冴子か!?」
翔太郎は驚きのあまり声を上げる。振り替え返ったナスカ・ドーパントは園崎冴子の変身したそれではなかった。ナスカブレードを下げて彼は言った。
「この時代では、冴子がナスカを使っているのかい?嬉しい限り、だな。」
「まさか、お前は・・・!」
彼は霧彦、園崎霧彦だった。
カッシスワームは予想をしていなかった乱入に一度は驚く物も、すぐに平静を取り戻す。
「何匹増えようが同じ事だ。すぐに葬ってくれる!」
もう一度ナスカブレードを斜めに構える。霧彦は翔太郎に言いながら走り出す。
「さぁ、行こう、左翔太郎。この街を汚す者を綺麗にするとしよう。」
「どうして俺と戦わずに協力するんだ、霧彦。」
「今の君を真っ二つに割っても面白く無さそうだ。それに言っただろう。」
カッシスワームとナスカ・ドーパントが向き合い、それぞれの得物をぶつけ合う。火花を散らしながら霧彦は言った。
「私もこの街を愛しているとね!」
水平に振るったナスカブレードをカッシスワームは受け止めて、切り返す。だがナスカは次の瞬間にもう一度刃を突き刺す。カッシスワームは寸前でそれを交わし、逆にナスカの懐に右手の剣を押し込もうとする。
だがそれに対し左側から妨害が入る。仮面ライダージョーカーの拳だ。右手をジョーカーに蹴り飛ばされ、数歩後ずさる。その隙に、ナスカの左拳、ジョーカーの右拳がカッシスワームへと命中する。
「おのれェッ!!」
そう叫びカッシスワームは二人の眼前から消える。それは先ほどジョーカーの前で見せた物と同じ。霧彦には分かっていた。この感覚は恐らく――ッ
「左翔太郎、ここは私に任せて貰おうか。」
霧彦はそう言いナスカの橙に塗られた翼を広げる。そして、ナスカメモリの真の力を解き放つ。
「超高速ッ!!」
空中に浮かぶ水飛沫。本来なら重力に従って元ある場所に戻るだけ。だが水の粒は浮かんでいた。ゆっくり、ゆっくりと下へと落下しながら。
剣と剣がぶつかりあう。お互いがお互い、高速同士なのでまるでその世界に二人だけかのように動く。
カッシスワームが垂直に剣を振り下ろし、ナスカがそれを受ける。数歩下がりながらカッシスワームの攻撃を受け止めていく。
「クロックアップの世界に入って来るとは驚いたが・・・・これで終わりだッ!!」
カッシスワームの剣に青紫の閃光が走る。水平に構えてナスカ・ドーパントへと一気に迫る。
「ライダーカッティングッ!!」
ナスカは刀を滑らせ、敵の技の威力を殺しつつ、右へと避ける。技が不発に終わった。
その時、二人の作り出した罠が完成した。
人へと擬態する罪深い生き物の目前に紫の炎が迫る。その拳は打ち砕いた。
「ライダーパンチ。」
仮面ライダージョーカーの拳は低速だった。だが避けられないほどに眼前に迫っていた。なすすべもなくその技を受けて遠く吹き飛ぶ。そして、高速の世界は解除されてカッシスワームは紫色の炎と共に空中へと爆散するのであった。
「さすがだね、仮面ライダー。私の意図した通りに動いてくれた。」
「まさかこんな作戦成功するとはな。こっちも吃驚だぜ」
翔太郎はそう言いながらロストドライバーを閉じ、変身を解除する。それを見た霧彦もガイアドライバーを外す。
「霧彦、どうしてお前がここに?生きていたのか!」
翔太郎は霧彦へと詰め寄る。だが霧彦はいつもの、翔太郎にとっては懐かしいクールな笑顔だった。
「そう慌てないでくれ、左翔太郎。実は私もどうしてこうなっているのかよく分からない状況でね。・・・・うっ!」
額に脂汗を浮かべて倒れ込む霧彦、翔太郎はその肩を庇いながら起き上がらせる。
「おい、お前。大丈夫なのかよ!?」
「大丈夫さ。それより今の状況を教えてくれ。」
「・・・・・・・・・・。あぁ、分かったよ。」
翔太郎はそう言い、ソフト帽をその頭に被せた。
鳴海探偵事務所前。そこで2人は話していた。NEVERの事、T2ガイアメモリの事、そして彼の相棒であるフィリップの事。
「その説明で行くと私のナスカメモリも使えないはずでは?」
「そのはずなんだが、そこんところはわからねぇ。だが言える事はお前はそのメモリを使って戦うことができるって事だ、霧彦。一緒に戦ってくれ。」
その言葉に霧彦は少し俯いた。彼は迷っていた。相手の力はとても強大だ。とても二人で敵うような相手ではない。そして一番の心の迷いは。
「私はこの街に多くのガイアメモリを流しすぎた。その結果あのような子ども達を産んでしまった。知らなかったとはいえ私はこの街を汚してしまった。それに街を救うのは人々の希望、仮面ライダーの仕事だ。私のようなドーパントのすることではないのだよ。それではな。」
翔太郎に背を向ける霧彦。そしてゆっくりと歩き出す。彼らに背を向けたまま。その背中に翔太郎の声が、届く。
「おい、霧彦!じゃあなんでさっき俺を助けた!」
彼は右手を挙げて、その場から立ち去ろうとする。その顔にまだ迷いの表情を浮かべたまま。左翔太郎からその表情を見ることはできない。
だがその背中は語っていた、霧彦の心を。
翔太郎はその心を見逃さなかった。それは彼が探偵だったから。人の心を救う、探偵だったからだ。
「さぁ、お前の罪を数えろ。」
唐突なその台詞に驚き、霧彦は思わず振り返る。そこには左手を自らに向けた探偵の姿が映る。左手を下ろし、翔太郎は霧彦に歩み寄り、次の言葉を続けた。
「罪を数えるのは、その罪を償う為だ。霧彦、お前の罪を数えたなら今度はその罪を償う番だぜ。」
「それによ、仮面ライダーって言うのは何もダブルドライバーやアクセルドライバーで変身する奴等の事だけを言うんじゃねぇ。仮面ライダーっていうのは『街を守る希望』だ。お前は風都を愛しているんだろ?そして風都を守れるんだろ?ならお前も仮面ライダーになれるんだ。」
霧彦は手を広げて己のガイアメモリを見る。ナスカメモリ。
「私が仮面ライダー・・・・・・。」
「そうだ。だから、お前は、」
「仮面ライダーナスカだ。」
連載中の小説が他にもあるんでこっちを続ける余力がいまいち・・・・。
お気に入り、感想、評価等、頂けると次話を書くモチベーションとなるので是非是非お願いします。
「きりひこ」って変換するとPCが古いせいか霧非虎刃とは霧英彦山とかとんでもない誤字誤字誤字です。消して書き直すのめんどくさいッ!!
後、序盤にでてきたのはお察しの通りハイパーフォームのカブトです。シスコン繋がりとかじゃありません。違います。
そもそも霧彦さんはシスコンなんだろうか・・・・。