仮面ライダーナスカ RETURN AtoZ/運命のガイアメモリ 作:零六五五
「誰なんだあんた一体」は読み方そのままです。間違っても「ダリナンダアンタイッタイ」とか読まないように。
霧彦はその水辺に倒れ込んだ。花火の音遠くに聞こえる。だが花火の光はよく見えた。
身体の様々な箇所が悲鳴をあげて軋んでいる。
このままでは・・・。
霧彦は一度起き上がって、その場に腰掛ける。そうしようとして上を向いた時点で彼は気付いた。
自分の真上に位置する空のある一点に光が全く無いことに。夜空と言えども全くの無というのはあり得ないはずだ。
「あれがやつらの開けた次元の裂け目だ。もうこんなにも広がっていたとはな。」
その言葉を聞いて霧彦は身構え振り返る。そこにいたのは男だった。
肩まで伸びたウェーブの掛かった髪。そして切れる様な鋭い目つき。霧彦は驚いた顔で聞き返す。
「誰なんだあんた一体。」
「おばあちゃんが言っていた。俺は天の道を往き、総てを司る男。天道総司。」
「はぁ…。」
「良い事を教えてやろう。あの裂け目からもうじきうじゃうじゃとワームが湧いてくるぞ。それこそ虫のように、な。」
霧彦は初めて耳にする単語に表情を曇らせて、続きを促す。
「ワームだと?」
「お前があの河で戦っていた奴の同類だ。そいつらが次元を超えてここに来ようとしている。人間を殺し、擬態するためにな。」
そこで霧彦の意識は引き戻されるかのように一気に醒めた。その話が本当ならば風都は今、かなり危険な状態だ。
「擬態?人間が変身するわけじゃないということか。」
「見ろ。奴等のお出ましだ。」
見上げた無の空間から、一匹二匹三匹と次々に現れるサナギワーム。霧彦は懐からナスカメモリを取り出しボタンを押そうとしたところで天道に制される。
「そう急ぐな。この事態を引き起こしている元凶を止めなければ奴等は湧き続けるだけだ。ここは俺に任せてお前は元凶を止めてこい。」
「君はこのワームとやらに対抗する力を持っているのかい?」
そこで天道はポケットから手を出し、上着を煽って腰に身に付けられたベルトを露わにさせる。そうして右手を構えた時、次元の裂け目から機械仕掛けのカブト虫が飛来する。
「変身。」
『HENSHIN』
銀の身体に赤いライン。青い大きな瞳。それは仮面ライダー、仮面ライダーカブトだった。
「まさか君はあの時の…!」
「元凶は高崎金属跡地にいる。急げ!」
走り出そうとした霧彦を天道はもう一度呼び止めた。
「言い忘れていた。コイツを持って行け。」
カブトは右手から何か赤い物体を投げる。それを霧彦は受け止めた。ロストドライバー、先ほどの戦いで左翔太郎が使用していた物だ。
「あの東京タワーのような所から回収しておいた。お前なら使えるのだろう?」
「恩に着るぞ、天道総司!」
そう言って霧彦は再び走りだす。それを見送った天道はワーム達と対峙する。数を確認し、彼はベルトのホーンを180°回す。
「キャストオフ」
『CAST OFF』 『CHANGE BEETLE』
――――
霧彦は廃工場のドアを蹴り飛ばし中へと入る。その廃工場は天道総司が説明し居たとおり何かを隠しておくにはうってつけだ。
純白のスーツを身に付けた数人の男がそこにはいた。全員が一斉にこちらを向く。が、表情がピクリとも動かない。中央で機械を操作していた男がこちらを向く。七三に分けた髪にサングラス、そして白いスーツ。
その男はにやりと笑いながら霧彦に話しかけた。
「ようこそ、財団Xへ。園崎霧彦君。私はレム・カンナギだ。」
霧彦は警戒したように身を一歩引くが、カンナギはお構いなしに霧彦に近付く。
「どうして君は戦うのかな?そんな身体になってまでも。園崎家の君なら我々の恐ろしさなど分かりきっている筈だが。」
フッと笑って霧彦はこちらからカンナギに近付く。
「君がこの街に害悪を呼び込もうとしている。理由はそれだけで十分ですよ。」
右手を挙げたカンナギを合図とし、回りの男達が一斉に首筋へガイアメモリを突き刺す。
『MASQUERADE』
マスカレイド・ドーパント達にあっという間に回りを囲まれる。霧彦は右手のドライバーを腰に当てて展開させる。
その時だった。そのドライバーからは
左手を挙げて彼はこういう。
一人目は鳴海宗吉の、二人目は左翔太郎の、彼らの言葉に言葉を重ねて。
「さぁ、お前の罪を数えろ!」
『NASCA』
ドライバーを開き、彼の身体をナスカ文明の記憶が覆う。水色の身体になびくオレンジ色のマフラー。シンプルに洗練されたその姿こそが彼の本当の姿、仮面ライダーナスカ。
八方から襲い来る敵戦闘員。瞬時にナスカブレードを出現させ回転切りで回りを蹴散らす。素早い最小限の動きで敵を切り刻んでいく。量産型戦闘員など彼の相手ではなかった。
総てのマスカレイド・ドーパントが消えたところでレム・カンナギは手を叩き始めた。
「素晴らしいね、君は。流石園崎家の人間だよ。だが私の前では全くの無力だ。やがて銀河の王となる私の前ではな…!」
カンナギが持っていたのは青いメモリだった。メモリのボタンが押される。
『COSMIC』
コズミック・ドーパント、それはレム・カンナギの新たな姿。自らの身体を確かめるように見つめた後に彼はこういう。
「私のことを呼ぶなら、超銀河王と呼びたまえッ!!」
ここで霧彦はある違和感に気付く。どこかおかしい。だが一体どこが…?
それが分からぬまま戦闘は開始される。ゆっくりと超銀河王が近付いて来たのだ。背後には大きな機械がある。おそらくアレが次元の裂け目を発生させている物だ。
先に仕掛けたのは超銀河王だった。一気に近付いて右手の拳を繰り出す。ナスカは左手で受け流し、カウンターと言わんばかりにブレードを胴体に入れようとするも、それは超銀河王の蹴りで中断される。ナスカは少し吹き飛ばされるが、空中で体勢を立て直す。
パワーは明らかに超銀河王の方が上だ。だがスピードならナスカの方が素早い。超高速を使わなくても、だ。
地面を蹴ってナスカは跳ぶ。突き刺すようにブレードを構える。無論超銀河王は止めようと両腕を構える。が、ナスカはその直前にその動作を止め、その場でもう一度地面を蹴り空中でブレードを垂直に振りかざす。超銀河王は一瞬驚いたように動きを止めるが右に避ける。ブレードは直撃せずに肩をかすっただけだ。
「スピードなら勝てるとでも思ったのか?コズミックメモリの本当の力を見せてやろう。」
超銀河王は力を貯めるような動作で眼を光らせる。その時、空中から突如現れたのは「流星」。
だが瞬時に一歩下がり、ナスカは回避する。そして霧彦は思い当たる。その流星は間違いなく自分を風都タワーから下ろした『アレ』だ。
「つまり最初から犯人はお前だった・・・と。」
「私はただ時空と時空を繋ぐ実験をしているだけさ。君やあの男が来たことは本当に予想外だった。」
「実験…?実験だと?その為に風都がどうなっても良いというのか。」
「大道克己も言っていたが、この街は所詮ガイアメモリに運命を握られた哀れな街だ。そんな街がどうなろうと知ったことか!自ずと滅ぶのがこの街の命運だ!貴様もそうだろ?ガイアメモリのせいで貴様は死にいたり、妹は記憶まで無くしてしまったのだろう。憎むべきはそんなこの街ではないのか!!」
ナスカはうなだれた後にゆっくりと首を振る。霧彦は確かに悲惨な人生だった。自分の身体は利用され、愛した人に殺され、妹は記憶が消え、そして今、身を削って戦っている。だがそれは全て、霧彦が愛した物を守るためだ。霧彦はもう一度ブレードを握りしめる。
「この街を愛しているというこの気持ちがある限り、私は絶対に折れない!!貴様の狂言に惑わされることもない!」
近付いて、ブレードを右から、左から、次々に打ち付けていく、だがその全ては弾かれていく。超銀河王の動きは先ほどまでに比べ、明からに劣っていた。今がチャンスだ。だが決定打が無い。決定打…?そこで霧彦は気付く。なぜ敵は先ほどの流星を撃たない?奴のメモリはコズミック、銀河。
銀河だと?
財団Xは何故かミュージアムのガイアメモリの情報を集めている次期があった。まさかこのメモリ…。
一度身を引いて体勢を立て直す。睨み合いながらゆっくりと位置を移動する。それに合わせて敵も動く。お互いがお互いの隙を狙っているのだ。
ある一点でナスカの足が止まる。そしてブレードを地面に落とし、その場で膝をついてしまった。肩で呼吸をしているナスカ、それを見る超銀河王。
「フハハハハッ!!どうやらメモリの毒素が限界まで来ているようだな。園崎琉兵衛に仕組まれた上にメモリを直刺しまでしていたな。今まで生きていたのが不思議なくらいだ。さぁ。ここで消えて貰おう。園崎霧彦ォォォォォオオオオ!!!!!」
空中に流星が形成される。今までよりも一回り大きい。立ち上がろうとブレードを杖にするが、それでも上がりきれない。このままではナスカに流星が激突してしまう。だが無慈悲にもその一撃は放たれ。仮面ライダーナスカへと迫る。
だがナスカは避けた。突如として立ち上がり、その一撃を回避する。そして流星は明後日の方向へと飛んでいった。
「動けたのか……!まさか、」
勝ち誇ったように霧彦は笑った。
「よく考えてみたまえ。君と私では勝利条件が違うのだよ。君は私を倒さなければならないが、私は君を倒す必要は無い。その機械を停止させることが私の勝利条件なのだよ!ナスカのパワーで完全に破壊するのは難しい。だから君のその流星を利用させて貰ったのさ。」
超銀河王はナスカの背後にあった次元を繋げる機械に眼をやる。流星が直撃し、今にも爆発せんとしている。
「まさかそのために毒素にやられたような演技を…!」
「そのことを知っている君なら騙されると思ったよ。確かに君との決着は興味深いものだが。私も四の五の言えないほど切羽詰まっているのでね。」
「貴様!!」
「そしてそのコズミックメモリだが、ガイアメモリではないな?」
「気付いていたのか・・・。」
「ガイアメモリとは地球の記憶。銀河の記憶など存在するはずがない。つまりそれは財団Xが勝手に作った紛い物だ。だから『エネルギー切れ』が発生する。今君はかなり大きな流星を撃ったね?私の一撃・・・避けられるか?」
ナスカはドライバーからメモリを抜き出し右のスロットへと移し、その腰を叩く。
『NASCA MAXIMUM DRIVE』
空中へと飛んで、マフラーを展開させる。背中からオレンジ色の翼が出現し一気に超銀河王へと迫る。右足を突き出す、キックの構えだ。それは見事命中し、コズミックメモリを砕く。地面へともう一度降りたところで背後の超銀河王は爆散した。
「残念無念!!!」
ナスカは振り返るとそこには砕けたコズミックメモリだけ。レム・カンナギの姿が無い。
「逃げられたか…。」
事件は終わった。ドライバーを閉じて変身を解除する。元の身体に戻った所で霧彦はあることに気付く。先ほどの流星があったマシンが今にも爆発しようとている事を。だがそれに気付いた時には既に遅かった。巨大な爆発が発生し炎と衝撃が霧彦の身体を襲う。そこで彼の意識は暗転した。
―――
怪我を庇うようにして歩くレム・カンナギ。彼はそこでぼそりと呟く。
「まさか、あの男にやられるとはな。だが実験結果は手に入った。これでSOLUも未来のコアメダルも私の物だ…。」
―――
「・・・き・・・て・・・おきて・・・・。」
道路に投げ出された霧彦。その近くには一人の女性が彼の身体を揺すっていた。ゆっくりと目を開ける。彼の瞳に映ったのは須藤雪絵、彼の妹だ。
「雪絵…。」
「大丈夫ですか!今救急車を・・・。」
伸ばした雪絵の手を霧彦は掴む。身体の怪我、メモリの毒素、霧彦は気付いていた。自分は助からない。
「雪絵…。良かった…。君の手を…もう一度…握ることが…!」
風が吹いていた。その街には風が吹いてた。
「風都・・・やっぱり、いい風が吹くなぁ・・・。」
彼の身体は塵になっていた。その死を悼む様に風が塵を運んでいく。そこに残されたのは霧彦の衣服とドライバー、メモリ、そしてあのスカーフだった。
雪絵はそっとそのスカーフを持ち上げる。そしてそのスカーフに涙がこぼれ落ちる。
「分からない…どうして?どうして私は泣いているの…?」
雪絵はただ泣いた。その場でただ。
「分からないよ、教えてよ。兄さん……えっ。」
「にい・・・さん・・・?」
(^U^)申し訳ありません。このような小説で。
あとナスカメモリはこのあと天の道を行く人が過去に届けたそうです。
なんで天道は霧彦さんを未来に連れて行ったかって?そりゃシスコンだった・・・・・・なんでもないです、ごめんなさい。
短い間でしたがお付き合い頂きありがとうございます。